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2022年9月19日 (月)

真山仁「標的」

Imghyouteki

真山仁「標的」 文藝春秋社 2017年刊

真山仁の「標的」はなかなか興味深い小説です。東京地検特捜部の検事たちの活躍が生き生きと描かれています。政治家への贈賄事件を扱っています。ありふれたストーリーかもしれませんが、作家の実力でしょうか、一気に読めます。

晋三は検察の人事を思い通りにやろうとして失敗しましたが、私はこのことと暗殺事件は関係があると思っています。山上は日本のオズワルドだったのではないでしょうか。山上が今後インタビューなど自由な発言の機会を与えられるかどうかに注目しています。オズワルドの尋問調書はすぐに廃棄されましたが、山上の場合はどうなるのでしょうか。改ざんや隠蔽が行われるかどうかを注視しなければいけません。

政権に都合のよい検察人事は困りますが、検察による政権の選別が行われるのも問題があります。まして政権と検察がつながっていると何でもできるでしょう(晋三はまさにそれを狙っていたわけですが)。この小説のタイトル「標的」というのはそのような危険性を暗示しています。選挙の後なら誰をターゲットにしてもよいというのは検察のポリシーのようです。真山仁がとりたてて興味をそそられそうもない贈賄というありふれた犯罪をとりあげたのも、政治家と検察の関係に注意を喚起したかったからだと思います。

海外のプライベートバンクに口座をもっている企業経営者の場合、賄賂を送るのは簡単なのでしょう。政治家にも口座をもたせてお金を移転させればいいのですから。タックスヘイブンを利用すれば秘密は守られます。あるいは関係者にプライベートバンクが融資するという形にすれば現金化も可能です。ただ現金そのものを秘密裏に海外から持ち込むのは、この小説にもでてきますがかなり困難なのでしょう。とはいっても、今の時代なら船からドローンを飛ばせば運べそうに思いますが、どうなのでしょう。最近スペインで麻薬を運んでいた水中ドローンが摘発されたという記事をみかけました(1)。犯罪組織のための密輸機器の製造販売を行っているグループがもうすでに存在していたようです。このグループは家族的な小さな規模だったようですが、もっと巨大な組織がすでにありそうな気がします。

1)https://www.bbc.com/japanese/62046939

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