堤未果 America, Inc.'s plan to dismantle Japan
堤未果著「株式会社アメリカの日本解体計画」経営科学出版(2021)
堤未果という人はなかなか頭のいい人です。文章を読めばすぐわかります。実際日本エッセイストクラブ賞、中央公論新書大賞、日本ジャーナリスト会議新人賞など受賞しています。また学術畑の人ではなく、国連や米国野村証券に勤務していたという国際政治や資本主義のインナーサイドにいた人なので説得力があります。
内容の多くは反政府系のウェブサイトではよく知られていることですが、たいていの人はそんなサイトは見ていないので、このようなコンパクトにまとめた書籍で出版するというのは大いに有意義なことだと思います。いまや世界はGAFAやゴールドマンサックスなどの思惑通りに動かされている社会とそれに抵抗する勢力とに2分されています。日本も郵政民営化やGPIFの運用を突破口として強欲資本主義の餌となりつつあります。
個別の記述にも興味深いものがありました。米国が無理矢理イラク戦争を強行した裏に何があるのだろうと私は疑問に感じていたのですが、この本を読むと、そのひとつの理由はチグリス・ユーフラテス流域の肥沃な農業地域を米国企業の支配下に置くことだったと書いてあって、実際に流域の農家は自分たちで種をつくることができなくなっているそうです。これで腑に落ちました。そうしてみると米国がウクライナを支配下にいれようとしていたことも理解できます。21世紀は気候変動で農産物の取り合いになることを見越して、米国は食糧支配に着々と手を打っているというわけです。これには水の支配も含まれます。
堤氏はGAFAによる情報支配の危険性も指摘していますが、これについて今日興味深い情報がありました。それは旧統一教会系の建物に張り出してあった自民党国会議員のポスターが、グーグルストリートビューでモザイク処理が施されて見えなくなっているということです。
https://johosokuhou.com/2022/08/19/60860/
不都合ならポスターを剥がせばすむことなのに、それはしないでグーグルと組んで偽りのストリートビューを作成するとは驚きです。こうしてみると不都合な情報はGAFAによってすべて隠蔽され、一般市民は偽りのバーチャルな世界だけしか見られなくなる世界になりつつあるという恐怖を覚えます。
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