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2022年8月29日 (月)

サラの考察13: 科学の危機

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私「おいおい サラの考察の時間だよ」

サラ「眠いんで 今日はお休み」

私「そりゃないよ 深刻な事態になっているんだ」

サラ「じゃあどうぞ 好きにやって」

私「我が国の科学引用論文の数が激減して、韓国にも抜かれたらしい」

サラ「そりゃあ晋三みたいに、勉強嫌いで科学などチンプンカンプンの人が総理をやってればそうなるわよね」

私「日本の科学雑誌もどんどん廃刊になってさみしい限りだね。今年度末には理研の研究者が大量にリストラされるという噂もあるし、だいたい政府は軍事・海外援助・ワクチンには莫大なお金を使うのに、科学・教育・医療の拡充には渋いというのがいただけない」

サラ「韓国には政権交代があるけど、日本にはないので晋三のような人が長い間仕切る無能国家になるのね」


#自然科学分野の引用論文数 日本は過去最低の12位に後退
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220828/k10013791031000.html

#理研600名リストラ危機が示す研究現場の疲弊
https://news.yahoo.co.jp/byline/enokieisuke/20220402-00289482

 

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2022年8月27日 (土)

西島三重子(ツイキャス)

昨日は原宿ラドンナで西島三重子のライブでした。諸般の事情で私はツイキャス配信で視聴しましたが、なにしろセットリストがワーナーパイオニア時代・テイチク時代の作品が多くてびっくりしました。この頃の作品の粒ぞろいさはすごい。東芝時代のものでも、「海鳴り」というレアな曲が聴けて大満足でした。ただ最初の3曲くらいは全くエンジンの掛かりがわるくて心配しましたけどね。次回は是非生で聴きたいと思います。

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西島三重子さんとギターの平野融さん ピアノは織原洋子さん

セットリスト

1.愛に流されて

2.一瞬の夏

3.水色の季節の風

4.ジンライム

5.びしょぬれワルツ

6.セレナーデ

7.折り返し悲しみ行き

8.星屑のララバイ

ブレイク

9.おひさまのたね

10.AZAMI

11.ラブソング

12.かもめより遠くへ

13.海鳴り

14.恋遊び

15.星のタペストリー

16.かもめより白い心で

アンコール1.池上線

アンコール2.サイレントデイズ

一夜明けて今日はマウスの調子が悪くて、開けて掃除ができるタイプでもなさそうだし仕方ない買い換えるかとイライラしていたら、なんと水をキーボードにこぼして、大慌てでドライヤーで乾燥しましたがしばらく放置していた方がよいと思って、結局ドン・キホーテにマウスを買いにでかけました。このマウスはエレコムのブランドで売っているものですが、開けてみると EPRIM という made in china の製品でした。非常にポインターの走りが速かったので、コントロールパネルで速度を遅くすると快適になりました。質実剛健3ボタンのシンプルなものです。

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2022年8月26日 (金)

続・生物学茶話187: ナメクジウオ脳の部域化

動物(生物学用語では後生動物またはメタゾア)には大きく分けて前口動物と後口動物があります。前口動物の広大なバラエティーに比べて、脊椎動物以外の後口動物は比較的地味に生きています。図187-1の系統樹のような生物がいますが、まず棘皮動物は感覚・神経系・運動器官を退化させてある意味守備的な生き方を選択しました。脳はなく、鰭や足もなく、左右相称性も喪失しています。従って脊椎動物と比較研究するには、特に神経系の研究には不適切な生物といえます。半索動物は主として海底を這いずって生きる生物で、普通の人がみかけることはほとんどないでしょう。彼らも地味な生き方をしていますが、脊索動物の起源を探るには貴重な生物です。

これらとは別の幹が脊索動物門ですが、今生きている頭索動物は食事するときに頭を出す以外は海底の砂にもぐって生活するという生き方を選択しましたが、左右相称性や神経系、鰓孔、体節などの基本構造は脊椎動物のプロトタイプを思わせるものが多い、非常に貴重な生きた化石的な生物です。尾索動物は進化的には脊椎動物と非常に近いグループ(亜門)ですが、その主要なグループであるホヤは固着生活を選択し、棘皮動物と同様、脳はなく鰭や足もなく左右相称性を捨て、神経系や運動器官を退化させてしまったので、脊椎動物と比較するのは困難な生物群と言えます。こうしてみると、よくわずかな頭索動物(ナメクジウオの仲間)がカンブリア紀あるいはそれ以前から現代まで生き残っていてくれたものだと思います(1)。

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図187-1 後口動物の系統樹

ナメクジウオ成体の脳はマウスで言えば妊娠8.5日目くらいの形態に似ているそうですが、その頃のマウスの脳に発現している転写因子とホモローガスな因子がナメクジウオでも発現しているかどうかはまず見ておく必要があるでしょう。

FoxG1 はなかでも著名な因子で、ヒトのFoxG1症候群に関係しています。すなわちヒトではFoxG1遺伝子の異常によって発達障害と脳の構造異常という疾病が発生します(2)。この遺伝子のコンディショナルノックアウトマウスでは、ニューロンの多極性形態期の後半においてノックアウトすることでFoxG1の増加を阻害すると,ニューロンはいつまでたっても皮質板へと移動せず直下にとどまることが明らかになっています(3)。

BF-1(FoxG1) が胎生期のマウスの他、ナメクジウオや魚類の終脳に発現することは、20世紀末にすでに報告されていますが(4、5)、Benito-Gutierrez らは最近この種の研究を大幅に拡張して報告しました(6)。FoxG1は幼生期からナメクジウオの脳胞中央部分に発現していますが、成体では主として腹側に発現していて、図187-2に示されるように背側にいくにつれてその発現域は限局され、最も背側の図(P)では最前部直下のわずかな部分にしか発現していません。

Emxファミリーはホメオボックスタンパク質の1グループで、ショウジョウバエやマウスで中枢神経系の発達に関与することが知られています(7)。ナメクジウオの脳では腹側から背側、先端部から後端部まで(フロンタルアイから内分泌器官 infundibular organ まで)EmxA が満遍なく分布しています(図187-2 色が重なっていますがパープルの部分にも発現しています)。一番背側の切片標本の緑色染色した領域にジョセフ細胞が分化します。

Lhx2/9 はやはりホメオボックスタンパク質の1グループに属しており、哺乳類では視覚領域の形成に重要な役割を果たすと考えられています(8、9)。これも EmxA と同様終脳全体に分布していますが、最背部には分布していません。このタンパク質は1ギルステージのような幼い頃から明瞭に脳部分での発現が見られます。脊髄に相当する部分にドット状に発現しているのが特徴的で、これはゼブラフィッシュでもみられることだそうです。(6、図187-2)。

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図187-2 ナメクジウオの脳に発現する因子1

引き続き重要と思われる転写因子の発現について調べた結果です。Pax4/6(脊椎動物の Pax6 のオルソログ) はペアードボックス遺伝子群のなかでクループ4に属する遺伝子の産物で、初期発生や幼生期における眼の形成に重要な役割を果たしていると考えられています(10、11)。成体ではこの因子は腹側にはドット状に発現するのみですが、背側では脳室の周辺に満遍なく発現しています(図187-3)。一番背側切片標本の水色部分にはジョセフ細胞が分化する部分が含まれています(図187-3P)。

Nkx2.1 はホメオボックスタンパク質のひとつでインターニューロンの発達などにかかわっており、この遺伝子の変異によってヒトではbrain-lung-thyroid syndrome(良性遺伝性舞踏病)を発症することが知られています(12、13)。ナメクジウオの場合腹側では脳の後ろ半分(コーダル側)に分布し、背側では前の部分(ロストラル側)に分布しています(図187-3)。Nkx2.1 の発現に FoxG1 の発現が関与しているかどうかはコーダル側(脊髄側)については関与していないようですが、ロストラル側(先端側)についてはまだ不明なようです。

Hh(ヘッジホッグ)シグナル伝達経路はショウジョウバエからヒトにいたるまで保存されている動物の発生にかかわる基本的な経路です(14)。ここではヘッジホッグリガンドの分布について調べていますが、腹側では脳胞全体に分布し、背側にいくにつれてコーダル側が薄れていくように見えます(6、図187-3)。フロンタルアイやジョセフ細胞の周辺には発現していないようです。

これらの転写因子あるいはそれらの相互作用が脳の部域化を行うと予測されますが、詳細はまだまだ不明です。

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図187-3 ナメクジウオの脳に発現する因子2


グルタミン酸作動性ニューロンは脊椎動物の中枢神経系で最もメジャーな興奮性ニューロンです(15)。これがナメクジウオではどうなっているのでしょうか? グルタミン酸作動性ニューロンは、少数ですが早くも1ギルステージという幼生の段階で中枢神経系に出現しています。いくつかはフロンタルアイ周辺にみられます。成体では脳の背側部分に検出されます(6)。

成体での各種ニューロンの出現は図187-4にまとめてあります。これは Elia Benito-Gutierrez らによる作図です。GABA作動性ニューロンは脳胞前よりに、グルタミン酸作動性、ドーパミン作動性ニューロンは後ろよりにあることがわかります。転写因子の発現についてはGABA作動性ニューロンの形成には Nkx2.1・FoxG1・Emx・Lhx2/9、グルタミン酸作動性・ドーパミン作動性ニューロンの形成には Emx・Lhx2/9・Pax4/6が関わっていることが示唆されました(図187-4)。

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図187-4 ナメクジウオ脳の部域化

これまでの研究により、ナメクジウオの脳にも部域による明確な違い(コンパートメンタリゼーション)があることがわかりました。Benito-Gutierrez らは、ナメクジウオ脳胞の最前部の背側を Pars anterodorsalis (PAD)と呼んで、PADが脊椎動物の脳のプロトタイプに近いことを示唆しています(6)。彼らはまたこのようなコンパートメンタリゼーションはナメクジウオ成体で確立されるものであり、また成体になっても脳室周辺の細胞が増殖・分化することによって脳細胞が補填されているとしています。

参照

1)ウィキペディア:後口動物
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%8C%E5%8F%A3%E5%8B%95%E7%89%A9

2)遺伝性疾患プラス FoxG1症候群
https://genetics.qlife.jp/diseases/foxg1

3)Goichi Miyoshi, Gord Fishell, Dynamic FoxG1 expression coordinates the integration of multipolar pyramidal neuron precursors into the cortical plate., Neuron vol.74, no.6, pp.1045-1058 (2012) doi: 10.1016/j.neuron.2012.04.025
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22726835/

4)H Toresson, J P Martinez-Barbera, A Bardsley, X Caubit, S Krauss, Conservation of BF-1 expression in amphioxus and zebrafish suggests evolutionary ancestry of anterior cell types that contribute to the vertebrate telencephalon. Dev Genes Evol., vol.208(8): pp.431-439. (1998) doi: 10.1007/s004270050200.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9799423/

5)K Shimamura and J L Rubenstein, Inductive interactions direct early regionalization of the mouse forebrain., Development. vol.124(14): pp.2709-2718. (1997) doi: 10.1242/dev.124.14.2709.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9226442/

6)Elia Benito-Gutierrez, Giacomo Gattoni, Manuel Stemmer, Silvia D. Rohr, Laura N. Schuhmacher, Jocelyn Tang, Aleksandra Marconi, Gaspar Jekely and Detlev Arendt, The dorsoanterior brain of adult amphioxus shares similarities in expression profile and neuronal composition with the vertebrate telencephalon., BMC Biology vol.19: article no:110 (2021) https://doi.org/10.1186/s12915-021-01045-w
https://bmcbiol.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12915-021-01045-w

7)Chiara Cecchi and Edoardo Boncinelli, Emx homeogenes and mouse brain development., Trends in Neurosciences vol.23, issue 8, pp.347-352, (2000) DOI:https://doi.org/10.1016/S0166-2236(00)01608-8
https://www.cell.com/trends/neurosciences/fulltext/S0166-2236(00)01608-8?_returnURL=https%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS0166223600016088%3Fshowall%3Dtrue

8)Roy A, de Melo J, Chaturvedi D, Thein T, Cabrera-Socorro A, Houart C, Meyer G, Blackshaw S, Tole S. LHX2 is necessary for the maintenance of optic identity and for the progression of optic morphogenesis. J Neurosci. 2013 Apr 17;33(16):6877-84. doi: 10.1523/JNEUROSCI.4216-12.2013.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3664457/

9)Zibetti, C., Liu, S., Wan, J. et al. Epigenomic profiling of retinal progenitors reveals LHX2 is required for developmental regulation of open chromatin. Commun Biol 2, 142 (2019). https://doi.org/10.1038/s42003-019-0375-9
https://www.nature.com/articles/s42003-019-0375-9

10)Wikipedia: Pax genes
https://en.wikipedia.org/wiki/Pax_genes

11)Glardon S,Holland LZ,Gehring WJ,Holland ND, Isolation and developmental expression of the amphioxus Pax-6gene(AmphiPax-6): insights into eye and photoreceptor evolution. Development(Cambridge,England)., vol.125: pp.2701–2710 (1998) https://doi.org/10.1242/dev.125.14.2701
https://journals.biologists.com/dev/article/125/14/2701/39880/Isolation-and-developmental-expression-of-the

12)Medline Plus: NKX2-1 gene
https://medlineplus.gov/genetics/gene/nkx2-1/#conditions

13)小島泰子, 跡部真人, 青木雄介, 鈴木基正, 糸見和也, 田中達之, 齋藤伸治 非典型的症状を示したbrain-lung-thyroid syndromeの1例 脳と発達 53巻 1号 pp.44-48 (2021) https://doi.org/10.11251/ojjscn.53.44
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ojjscn/53/1/53_44/_article/-char/ja

14)ウィキペディア:ヘッジホッグシグナル伝達経路
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%83%83%E3%82%B8%E3%83%9B%E3%83%83%E3%82%B0%E3%82%B7%E3%82%B0%E3%83%8A%E3%83%AB%E4%BC%9D%E9%81%94%E7%B5%8C%E8%B7%AF

15)abcam: グルタミン酸作動性ニューロン・マーカー
https://www.abcam.co.jp/neuroscience/glutamatergic-neuron-markers-and-their-functions-2

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2022年8月25日 (木)

My favorites 12: Maureen Forrester sings Mahler

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不思議なタイトルです。さすらう若人の歌が「Song of a wayfarer」で英語、( )内にドイツ語、亡き子をしのぶ歌が「Kindertotenlieder」でドイツ語、( )内に英語というアンバランスでちょっと居心地がわるいですね。Wayfarer という言葉は聞いたことがなくて、辞書を引くと「徒歩旅行者」とありました。1958年の録音です。

歌:モーリン・フォレスター(コントラルト)、指揮シャルル・ミュンシュ ボストン交響楽団の演奏です。シャルル・ミュンシュは1891年生まれのドイツの指揮者(後にフランスに帰化)ですが、若い頃はライプチッヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団でコンマスをやっていて、当時の指揮者がワルターだったのでマーラーの交響曲は演奏しているはずです。しかしCDとして残されているのはこの歌曲の伴奏だけだそうです。

まあマーラーは当時は忘れられた作曲家で、復活したのは1970年代ですからこの1枚があるだけでもラッキーだったのかもしれません。SP時代はもちろん、LPになってからも曲が長すぎて1枚にはいりきらないので、レコード会社も売りにくい作曲家だったのでしょう。CD時代になってからはなぜかトップクラスの人気作曲家になりました。

モーリン・フォレスターはカナダ人で、日本人にはほぼいないコントラルト。本来歌詞の内容から言って、さすらう若人の歌は男性が歌うべき曲だと思いますが、フォレスターは全く自分の音楽として再構築し、まるでコントラルトにために書かれた曲のようです。亡き子をしのぶ歌にいたっては、まさに独壇場です。

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アルト・ラプソディーを歌っている映像が残されています。イゴール・マルケヴィッチが指揮している姿も見られます。
https://www.youtube.com/watch?v=IPbcGz7I-OU

ミュンシュがフランス国立放送管弦楽団を率いて来日したときの映像も残されています。
曲目はブラームス交響曲第1番(2~4楽章)。
https://www.youtube.com/watch?v=d1u4bD6Vqhk

上記の公演は多分大阪NHKホールだと思いますが、NHKの録音に不具合があり、販売できなかったそうです。それがなんとフランス国立視聴覚研究所(INA)に残されていた音源がクリアであることがわかって、2021年にCDが発売されました。これはそのうち是非手に入れたいと思っています。
https://tower.jp/article/feature_item/2020/10/16/1115

 

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2022年8月23日 (火)

大阪 どうしたんだ  

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2022年8月21日 (日)

会心の勝利

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もちろんアプリケーションを最強に設定すると絶対に勝てませんが、中くらいに設定すると勝てることもあります。これは自分の玉は完全に裸にされて風前の灯火ですが、捨て身の攻撃で相手の玉を詰めたところ。

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2022年8月20日 (土)

堤未果 America, Inc.'s plan to dismantle Japan

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堤未果著「株式会社アメリカの日本解体計画」経営科学出版(2021)

堤未果という人はなかなか頭のいい人です。文章を読めばすぐわかります。実際日本エッセイストクラブ賞、中央公論新書大賞、日本ジャーナリスト会議新人賞など受賞しています。また学術畑の人ではなく、国連や米国野村証券に勤務していたという国際政治や資本主義のインナーサイドにいた人なので説得力があります。

内容の多くは反政府系のウェブサイトではよく知られていることですが、たいていの人はそんなサイトは見ていないので、このようなコンパクトにまとめた書籍で出版するというのは大いに有意義なことだと思います。いまや世界はGAFAやゴールドマンサックスなどの思惑通りに動かされている社会とそれに抵抗する勢力とに2分されています。日本も郵政民営化やGPIFの運用を突破口として強欲資本主義の餌となりつつあります。

個別の記述にも興味深いものがありました。米国が無理矢理イラク戦争を強行した裏に何があるのだろうと私は疑問に感じていたのですが、この本を読むと、そのひとつの理由はチグリス・ユーフラテス流域の肥沃な農業地域を米国企業の支配下に置くことだったと書いてあって、実際に流域の農家は自分たちで種をつくることができなくなっているそうです。これで腑に落ちました。そうしてみると米国がウクライナを支配下にいれようとしていたことも理解できます。21世紀は気候変動で農産物の取り合いになることを見越して、米国は食糧支配に着々と手を打っているというわけです。これには水の支配も含まれます。

堤氏はGAFAによる情報支配の危険性も指摘していますが、これについて今日興味深い情報がありました。それは旧統一教会系の建物に張り出してあった自民党国会議員のポスターが、グーグルストリートビューでモザイク処理が施されて見えなくなっているということです。

https://johosokuhou.com/2022/08/19/60860/

不都合ならポスターを剥がせばすむことなのに、それはしないでグーグルと組んで偽りのストリートビューを作成するとは驚きです。こうしてみると不都合な情報はGAFAによってすべて隠蔽され、一般市民は偽りのバーチャルな世界だけしか見られなくなる世界になりつつあるという恐怖を覚えます。

 

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2022年8月18日 (木)

My favorites 11: 一枚の絵

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統一教会が何かと話題になっていますが、この関連で私がまず思い出すのは桜田淳子のことです。当時のトップスターが合同結婚式で見知らぬ人と結婚するというのですから、ファンならずとも驚きました。彼女は実は19歳の頃から姉の影響で信者になり、ふたりの父親は被害者の会で活動するような家庭事情があったということを後で知ってさらにびっくり。

彼女の曲のなかでは「私の青い鳥」と「一枚の絵」のメロディが浮かんできます。
脳にこびりつくメロディというのは、優れた作曲家の証明だと思いますが、作曲した西島三重子のセルフカバーバージョンを中に挟んで、桜田淳子が歌っている作品が YouTube にアップされていました。

https://www.youtube.com/watch?v=d73iQZ6wCIE

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2022年8月15日 (月)

続・生物学茶話186: ナメクジウオの4種の眼

環境省のサイトにはナメクジウオには眼がないと書いてありますが(1)、それは脊椎動物のような形の眼はないという意味で、光受容器官がないという意味ではありません。それぞれ原始的な形態ではありますがナメクジウオの眼は4種類あるというのが事実です(2)。光受容細胞は全身に分散していますが、まとまって存在する部分も確かにあって、眼がないというのは言い過ぎのように思います。ウィキペディアには体の先端に眼点が存在すると書いてあります(1-3)。

ナメクジウオの眼点の構造を解析し、構成している細胞によって発現しているタンパク質に差があるという研究結果を報告したヴォパレンスキーらの功績は大です(4)。彼らの研究室はプラハにあるので、どうやってナメクジウオを手に入れたのかと気になったのですが、フロリダのタンパまで採集に行ったり、米国やドイツの研究者にもらったりと、かなり苦労して入手しているようでした(4)。

ナメクジウオの受光組織のうち、一番前方にあるものをフロンタルアイ(frontal eye)といいます。図186-1A(頭部の垂直断面)の長方形枠内の部分について、コズミク研で調べた各種転写調節因子・神経伝達物質の局在を示したのが図186-1です(2)。Aで黒く見える部分は色素細胞です。色素とはメラニンのことです。B-Fは免疫組織化学で各種転写因子を染色した図です。Bのシアン矢尻で示した細胞がその色素細胞で、隣のオレンジ矢尻で示したのが Row1光受容細胞です。Row1 細胞は Otx の抗体できれいに水色に染まっています(2)。

赤紺縞の矢尻で示された Row2 細胞は 5-HT(セロトニン)抗体で明瞭にに染まっています。セロトナージックな細胞はこれだけのようです。紺白縞・赤白縞の矢尻でそれぞれ示された Row3 および Row4 の細胞は Pax4/6 抗体で弱く染まっています。それぞれの識別はできないようです(図186-1B)。図186-1のCとFは水平横断面ですが、各列の細胞が複数染まっています。Row1 はアーチ状、Row2 は横1列、Row3&4 は分散状に分布している様子が見えます。

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図186-1 ナメクジウオ・フロンタルアイに発現する因子

図186-2に描かれているイラストは左がナメクジウオのフロンタルアイ、右は脊椎動物の網膜です。色素細胞(pigment cell)が左端にあるのは同じです。ナメクジウオではおそらく反射によるバックグラウンドを低下させる役割を担っていると思われますが、脊椎動物の網膜の場合、それとともに視細胞の活動をサポートするために様々な別の役割をこなしています(5)。ひょっとするとナメクジウオの場合もそうかもしれません。

色素細胞は光受容細胞や神経細胞とは役割がはっきり異なるので、発現する転写調節因子も異なるはずです。Mitfというのはメラニン生合成の調節などを行うこの種の細胞に特徴的な因子です(6)。色素細胞では光受容細胞に発現する Pax4/6 ではなく Pax2/5/8 が発現しています。オプシンや神経伝達物質は発現していません。これらの特徴はナメクジウオでも脊椎動物でも概略変わりません(2、7、図186-2)。

Row1 細胞は脊椎動物の桿体細胞に対応する光受容細胞と思われ、オプシンを保有していて光シグナル→化学シグナル→電気シグナルの変換を行う機能を持つと考えられます。Row2-4 はいわゆる中間ニューロンだと思われますが、Row2 は唯一セロトナージックな神経細胞と思われ、脊椎動物の謎深きアマクリン細胞の萌芽かもしれません。ただ GABA は検出されませんでした(図186-2)。Row3-4 にはグルタミン酸が検出されていますが、脊椎動物でも網膜の主要な興奮性トランスミッターはグルタミン酸です(8、図186-2)。

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図186-2 ナメクジウオ・フロンタルアイと脊椎動物網膜に発現する因子の比較

フロンタルアイのオプシンに結合するGαはGiで、脊椎動物のGtとは異なります。したがってナメクジウオのシグナル伝達はフォスフォジエステラーゼではなく、アデニル酸シクラーゼを介して行われます。ペルグナーらはGiの遺伝子が進化の過程でタンデムに2倍化してGtが形成されたと考えています。彼らによればこのタンデム2倍化は全ゲノム重複よりも前におこった現象とのこと(2)。フロンタルアイにおけるオプシン合成は、幼生が餌を食べる時期になるとはじまるので、眼と食事というのはナメクジウオにおいても直結しているようです(4)。

ナメクジウオと脊椎動物の比較しうる点について述べてきましたが、脊椎動物の中で最も原始的な特徴を残していると思われる円口類ですら、圧倒的にマッチョで活動的な生物であり、あまりに弱々しいナメクジウオの形態や活動とはかけ離れています。最近の研究によればナメクジウオの脳は萌芽的な間脳と中脳が一体となっていますが、ヤツメウナギでははっきり「終脳+間脳(prosencephalon)」と「中脳」が分かれて存在しています(9、図186-3)。そして運動神経の中枢は脳に取り込まれています。ナメクジウオの運動中枢は脳の外にあります(2、図186-3)。つまりヤツメウナギの場合は、眼で得た情報を脳ですべて処理する方向に進化していて、それは私たちにも引き継がれているわけです。ヤツメウナギは脳に情報を集中させるとともに軟骨ではありますが頭蓋骨も持つようになりました(10)。このように脳が周辺組織も含めて複雑化すると、脊索の誘導では不都合になって、脊索から離れて独自に活動する誘導性の細胞群が進化の結果生まれてきたと推測できます。

ナメクジウオの視神経は交叉していませんが、ヤツメウナギの視神経ははっきり交叉しています(10、図186-3)。一般に魚類は全交叉なので、これは圧倒的な違いで、頭索動物と脊椎動物の関係がはるかに遠いことを示すように見えますが、実は私たちヒトの場合は交叉している神経としていない神経の両者を持っていますし、オタマジャクシはカエルになるときに、それまで全交叉だったのが一部非交叉の神経ができるなど結構フレキシブルです(11)。それでもカンブリア紀にはすでに魚類(ミロクンミンギア)が存在していたので、ナメクジウオの祖先から脊椎動物が枝分かれしたのは、おそらくエディアカラ紀以前ということになります。

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図186-3 ナメクジウオとヤツメウナギの眼と脳

185で掲載していたナメクジウオ光受容器の図を図186-4として再掲します(2、13)。フロンタルアイに次いでもうひとつの繊毛型光受容器としてラメラ-ボディがありますが、ここでは層状体と訳します。これについては古くから脊椎動物の松果体と相同ではないかと指摘されてきました。例えば中尾は1964年の論文の中で、電子顕微鏡による観察からこれはカエルの松果体と似ているとしています(12)。このような見方は現在でも認められています。Bowmaker と Wagner の電子顕微鏡写真を見てもその類似性は驚くほどです(14)。興味深いのはこの光受容細胞の繊毛が9+2型で、これは運動性能を持つ繊毛に特徴的な構造です(2、15)。構造の類似性から、当然層状体は日周リズムに関係していると考えられますが、これをきちんと証明する実験はまだ行われていないようです。

あと二つの光受容器は、微絨毛性の感桿型光受容細胞からなっているジョセフ細胞(Joseph cells) とヘッセ器官(dorsal ocelli)です。ジョセフ細胞の近傍には色素を持った細胞がありませんが、ヘッセ器官の光受容細胞は必ず色素細胞とペアで存在するので、後者の場合光の方向をある程度感知できる光受容器官と思われます。またヘッセ器官ではメラノプシンを発現しています(2)。メラノプシン神経節細胞は第三の光受容体としてヒトでもみつかっているので(16)、その遺伝子は数億年以上の期間にわたって頭索動物でも脊椎動物でも保存されていることになりますが、オプシンとくらべて研究はまだ途上にあります。

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図186-4 ナメクジウオの4種の受光装置

ナメクジウオの脳は、脊索動物としては最も萌芽的な構造と機能を持っていると思われる私たちの脳のプロトタイプなので、モデル動物としてナメクジウオは重要であり、その研究には興味をそそられます。

 

参照

1)環境省 せとうちネット ナメクジウオ
https://www.env.go.jp/water/heisa/heisa_net/setouchiNet/seto/setonaikai/clm3.html

2)Jiri Pergner and Zbynek Kozmik, Amphioxus photoreceptors - insights into the evolution of vertebrate opsins, vision and circadian rhythmicity., Int. J. Dev. Biol. vol.61: pp.665-681 (2017) doi: 10.1387/ijdb.170230zk

3)ウィキペディア:頭索動物
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A0%AD%E7%B4%A2%E5%8B%95%E7%89%A9

4)Pavel Vopalensky, Jiri Pergnera, Michaela Liegertovaa, Elia Benito-Gutierrezb, Detlev Arendtb, and Zbynek Kozmik, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.109, no.38, pp.15383-15388 (2012)
https://www.pnas.org/doi/epdf/10.1073/pnas.1207580109

5)Medipedia: 網膜色素上皮
http://medipedia.jp/article/%E7%B6%B2%E8%86%9C%E8%89%B2%E7%B4%A0%E4%B8%8A%E7%9A%AE

6)JCGA(Japanese version of the Cancer Genome Atlas):MITF
https://www.jcga-scc.jp/ja/gene/MITF

7)脳科学辞典:PAX遺伝子群
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/PAX%E9%81%BA%E4%BC%9D%E5%AD%90%E7%BE%A4

8)Connaughton, V., Glutamate and Glutamate Receptors in the Vertebrate
Retina. Kolb H, Fernandez E, Nelson R, editors. Webvision: The Organization of
the Retina and Visual System [Internet]. Salt Lake City (UT): University of Utah Health Sciences Center (2005, updated 2007)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK11526/

9)Albuixech-Crespo B, López-Blanch L, Burguera D, Maeso I, Sánchez-Arrones L, Moreno-Bravo JA, et al. (2017) Molecular regionalization of the developing amphioxus neural tube challenges major partitions of the vertebrate brain. PLoS Biol 15(4): e2001573. https://doi.org/10.1371/journal.pbio.2001573
https://journals.plos.org/plosbiology/article?id=10.1371/journal.pbio.2001573

10)Tadashi Isa, Emmanuel Marquez-Legorreta, Sten Grillner and Ethan K. Scott (2021). The tectum/superior colliculus as the vertebrate solution for spatial sensory integration and action. Current Bilology, volume 31, issue 11, DOI: https://doi.org/10.1016/j.cub.2021.04.001
https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(21)00479-6?_returnURL=https%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS0960982221004796%3Fshowall%3Dtrue

11)今井眼科医院:視交叉
http://www5b.biglobe.ne.jp/~i-ganka/2006-5.htm

12)T.Nakao, On the Fine Structure of the Amphioxus Photoreceptor., Tohoku J. Exp.Med., vol.82, pp.349-369 (1964) https://doi.org/10.1620/tjem.82.349
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tjem1920/82/4/82_4_349/_article

13)Trevor D Lamb, Evolution of Phototransduction, Vertebrate Photoreceptors and Retina. Chapter I. Origin of Vertebrates and the Diversity of Extant Chordate Eyes
http://retina.umh.es/webvision/Evolution.%20PART%20I.html

14)James K. Bowmaker and Hans-Joachim Wagner, Pineal organs of deep-sea fish: photopigments and structure., J Exp Biol, vol.207 (14): pp.2379–2387. (2004) https://doi.org/10.1242/jeb.01033
https://journals.biologists.com/jeb/article/207/14/2379/14738/Pineal-organs-of-deep-sea-fish-photopigments-and

15)RUIZ, S. and ANADON, R., The fine structure of lamellate cells in the brain of amphioxus (Branchiostoma lanceolatum, Cephalochordata). Cell Tiss Res vol.263: pp.597-600. (1991) DOI: 10.1007/BF00327295
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1878939/

16)辻村誠一 第三の光受容体メラノプシン神経節細胞と明るさの知覚 光学 43巻12号 pp.556-562 (2014)
file:///C:/Users/Owner/Desktop/43-12-kaisetsu4.pdf

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2022年8月13日 (土)

サラの考察12: 小さな風景

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サラ「私はテレビはわからないから見ないけど、何か面白い番組はあるの? みるだけ無駄なような気もするけど、人間はテレビが好きね」

私「最近は阪神タイガースは弱すぎて見ないようにしているけど、バルサの試合はさすがに見たいね。あとドラマは「遺留捜査」とWOWOWの日曜午後10時のオリジナルドラマが面白いね」

サラ「ふーん」

私「それに遺留捜査はテーマソングがいいよね」

サラ「それは私も同感。小田さんはもう74才なのに才能が枯渇しないのもすごいわね」

「小さな風景」 作詞・作曲 小田和正
https://www.youtube.com/watch?v=61NyvN2uHCU

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2022年8月11日 (木)

唐辛子とセミ

Semi

セミも種類によって好きな木・嫌いな木はあるようですが、このアブラゼミはなんと小一時間もベランダの唐辛子にしがみついていました。確保していたケヤキの場所を追い出されたのかもしれません。

萩生田光一も経産大臣という役職にしがみつきたかったようですが、「こんな難しい仕事、俺以外の誰にできるんだ💢」などという愚者の証明みたいな言葉を残して解任されました。西村康稔にはできないのか見てみようじゃないの・・・と思ったら、こんなナルシストが次は自民党の政策をとりまとめる要職につくというのですから驚き。

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2022年8月 9日 (火)

2022 バルサ 行く人来る人

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2022~2023シーズンの開幕がすぐそこまで迫ってきました。
さて今シーズンのバルサはどうでしょう?

行く人

リキ・プッチ(MF)
→ロサンジェルス・ギャラクシー
無双のテクニシャンですが、スピード感のないところがね。

オスカル・ミンゲサ(DF)
→セルタ・デ・ビーゴ
私の好きな選手でした。ファイター系のディフェンダー。
新天地で頑張ってほしい。

フランシスコ・トリンコン(FW)
→スポルティング・リスボン(レンタル)
バルサではデンベレの陰で活躍できず。

ノルベルト・ネト(GK)
→アソシエーション・FCボーンマス
テア・シュテーゲンの陰で第2キーパーでした。
素晴らしい選手なので、レギュラーで活躍できる
チームに移籍できておめでとうと言いたい。

来る人

ジュール・クンデ(DF)
←セビージャ
ドリブルと密着守備が得意。

アンドレアス・クリステンセン(DF)
←ボルシアMG(チェルシーからのレンタル)
位置どりが素晴らしいディフェンダー。

ロベルト・レヴァンドフスキ(FW)
←バイエルン・ミュンヘン
FCB(エフツェーベー)を世界一のチームに押し上げた人。

ハフィーニャ(FW)
←リーズ・ユナイテッド
テクニシャンのストライカー。

フランク・ケシエ(MF)
←ACミラン
つぶし屋っぽいがテクニシャンでもある。

豪華な補強と言えますが、これでオーバメヤン、ファティ、デンベレはともかく、メンフィスやブレイスウェイトに出番があるとは思えません。フェランもいるしどうみてもFWは過剰で無茶です。まるで一昔前のレアル・マドリーのようです。放映権を売ったり相当無理をしているようですが、まあそれもバルサか・・・。

このメンツだとビッグイヤーはともかく、ラ・リーガの優勝はマストでしょう。
これでタイトルを逸するようなことがあれば、ラポルタもアレマニもチャビも辞表を書かなければなりませんね。

Himne del Barca

1.
声を あげよう
われら ブラウグラナ
地の涯からも 集いし友よ
掲げる旗のもと 拳(こぶし)を合わせよう
ブラウグラナは 嵐を呼ぶ
叫べ われらの名

バルサ バルサ バルサ

2.
嬉しい日 悲しい日
どんなときも
心ひとつに 合わせし友よ
掲げる旗のもと 勝利を信じよう
ブラウグラナは 嵐を呼ぶ
叫べ われらの名

バルサ バルサ バルサ

歌 ベト
https://www.youtube.com/watch?v=Vm_CP7L1UxY

バルサ体操
https://www.youtube.com/watch?v=Gshc1pNF-c0

 

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2022年8月 8日 (月)

暑中お見舞い申し上げます

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読者の皆様

暑中お見舞い申し上げます

皆様それぞれの夏を快適に過ごされていることと存じます。

北総の今日は外は猛暑ですが、窓を全開にした部屋の中は風があって、ボーッと過ごすにはよい雰囲気です。
団地のケヤキには数十匹のアブラゼミが上ってきて鳴き声を競っています。
今年の夏は雨も多くて、湿気が好きなアブラゼミにとっては絶好の環境です。
こんなに賑やかにしていると、たちまち鳥に見つかって食べられそうですが、そうでもないのが自然の不思議。みつかりにくいようになっているんですね。

夏蝉 熊木杏里
https://www.youtube.com/watch?v=INu-PqINm6U

 

 

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2022年8月 4日 (木)

2022夏

Beach-boys

夏になると思い出す
ビーチボーイズの「サーファーガール」

夏の海の雰囲気にすべてが溶解し
自然と人間が一体化するひととき
https://www.youtube.com/watch?v=hu-bXvuPm7c

若い頃の演奏もアップされていますが 個人的には ↑ 押し
https://www.youtube.com/watch?v=oL25lgUvPgs

ナレロ(na Relo)のカバー(歌詞付き)
日本人の若い女性が歌う 
ずいぶん古い曲ですが、名曲は異国でも伝承されるんですね
日本語なまりの歌がさわやかな感じ(意図してるね)
https://www.youtube.com/watch?v=fpOz2EiAMAU

サーファーガールじゃありませんが、私の好きなビーチボーイズ
のカバー(グループの名前は The Surf Girl)
https://www.youtube.com/watch?v=Lq1Ip1PxJIE

 

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2022年8月 3日 (水)

続・生物学茶話185: 頭索動物の光受容 その1

私が若い頃のPCは動画を扱うのが非常に苦手で、当時の先進的PCだったNECの9801でも、トールキンの指輪物語のロールプレイイングゲームが重すぎて全く動かなかったことを思い出します。それが現在ではCPUの発達によって、精細な動画を自在に扱うことができるようになりました。なぜ脳が発達したかというのも、やはり動画を取り扱えた方が生存に有利(捕食にしても逃亡にしても)だったからと思われます。もちろん初期には走光性、昼夜の識別、生殖の同調のためなどという理由もあったでしょう。さらに遡れば光エネルギーを化学エネルギーに変えて生きるための道具にするという目的があったのでしょう。

動物に限って言えば、光エネルギー利用の中心はなんと言ってもロドプシン、そしてそのタンパク質部分であるオプシンです。ウィキペディアの Opsin の項目を見ると、その記述は非常に難解で type I と type II の関係からして行ったり来たりで混乱します(1)。そこで「渋めのダージリンはいかが」に以前に書いた記事をたどって少し復習しました。オプシンは細胞膜を7回貫通する上にレチナールを結合する活性を持つ複雑なタンパク質ですが、真核生物が地球に出現する以前から細菌や古細菌が保有していたと考えられています。もともとは光を感じるためではなく、プロトンポンプとして機能し、エネルギー(ATP)を作り出すために利用されていたようです(2)。真核の単細胞生物では、主として光合成を行なう生物が光のある場所に移動するためのセンサーとして利用していたと思われます(3)。多細胞生物もさまざまな行動のために、光センサーとしてオプシンを利用してきました。

代表的なオプシンの形態を図185-1に示しました。オプシンはN末を細胞外にC末を細胞内に配置する細胞膜7回貫通GPCR(Gタンパク質共役受容体)のひとつです。結合しているレチナールが受光することによって構造変化を起こし、それを契機として結合しているGタンパク質が構造変化を起こして、細胞内での生化学反応のカスケードが起動され、細胞膜のイオンポンプの開閉が行われることになります。

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図185-1 オプシンの基本形態

動物(メタゾア)の場合、オプシンが集結する場所として繊毛の膜の場合と微絨毛の膜の場合があります。繊毛は鞭毛と同様9+2構造と呼ばれる微小管配置に加えてダイニンやネキシンが規則的な構造を作る運動器官ですが(4、5)、微絨毛は顕微鏡で観察できる繊毛と違って、電子顕微鏡レベルの小さな突起で、内部には特に規則的な構造のないアクチン繊維が通っています(6)。細胞膜にこのような突起を多くつくることによって細胞の表面積を増やし、そこにオプシンを配置することによって効率よく受光することができます。微絨毛に配置される光受容細胞を感桿型、繊毛に配置される光受容細胞を繊毛型と呼びます(図185-2)。

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図185-2 微絨毛と繊毛(光受容細胞がある場所)

後口動物では繊毛、前口動物では微絨毛がオプシンの主たる集結場所になります。どちらが優秀な視覚をサポートできるかは一概には言えません。後口動物では特に鳥類などは解像力に優れた眼を持っていますし、前口動物でも昆虫やイカ・タコなどは大変優れた視覚を持っています。そんな中で後口動物のルーツに近いと思われるナメクジウオの視覚は、進化の観点から興味深く思われます。

ナメクジウオはいずれも4種類の眼を持っています、といってもほぼ光受容細胞が集まっているだけの構造です(7、図185-3)。角膜、レンズ、虹彩などの組織はありません。重要なのはそのうちのふたつ、ジョセフ細胞(Joseph cells) とヘッセ器官(dorsal ocelli) が微絨毛性の感桿型光受容細胞からなることです(7、8、図185-3)。このことはナメクジウオが前口動物的な特徴を色濃く残していることを意味し、後口動物が分岐して間もない頃の形態を残したまさしく生きた化石であることが示唆されます。

驚かされるのは、彼らが神経胚の頃からヘッセ器官のルーツである光受容細胞を持っていることです(7)。これにはどういう理由があるのでしょうか?。この記事の終わりの方で少しふれます。ヘッセ器官は成体では図183-3のように砂に埋まる位置にあるので、視覚として無用なのかというとそうではありません。そうです、砂に潜ったことを確認するために必要なのです。ジョセフ細胞が光を感知し、ヘッセ器官が感知していない状態が食事の姿勢として適切なのでしょう。明か暗かを判断するだけでよいので、進化のプレッシャーなく古いままの光受容細胞が温存されたのかもしれません。ネクトン(自由遊泳生物)として生活していた頭索動物は絶滅し、ベントス(底生生物)としての生き方を見いだしたナメクジウオだけが、このグループの中で数億年もの期間命をつないだことに、これらの光受容細胞は貢献したに違いありません。

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図185-3 ナメクジウオの光受容細胞

ナメクジウオ(Branchiostoma belcheri)がどんなオプシンを持っているかについては小柳らが中心となって研究が進み、2008年の段階で7種類の遺伝子があることが判明しました(8)。Pantzartziらは別種 Branchiostoma floridae について調査し、21種類の遺伝子の存在を2017年に報告しています(9)。論文9のリストをみると、小柳らのオプシン4&5と同タイプが5種(C型と言っています)、小柳らが報告していないニューロプシン型が2種、小柳らの1&2型(Goオプシン)が6種、ペロプシンとメラノプシンはそれぞれひとつで小柳らと一致、小柳らの6型のグループとしては7種の遺伝子が記載してあります。

ここでは簡略化して、ナメクジウオオプシンのリストとして図185-4を示しておきます。ニューロプシン型のナメクジウオオプシンも後にみつかっている(9)ことから、脊椎動物が持つオプシンはGq型、Gt型、Go型、ニューロプシン、ペロプシン、など多くがすでに頭索動物との共通祖先が獲得していた遺伝子の産物であることが示唆されます。遺伝子重複によって脊椎動物が獲得したオプシンは、おそらく形や色を識別するためのGt型とRGR型に限られているようです。

図185-4で微妙に興味深いのは前口動物のGq型オプシンがナメクジウオの同型より新しかったり、蚊のGt型がナメクジウオのとよく似ていていること、ホタテガイのGo型がやなりナメクジウオのとよく似ていることなどです。このような知見が進化における新たな展開をもたらすことになるかもしれません。

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図185-4 ナメクジウオオプシンのリスト * 蚊のGPRop11&12, ** 環形動物の c-opsin, *** ホタテガイの scop2, **** 脊椎動物のニューロプシン 小柳光正 オプシンファミリーの分子進化と機能多様性 比較生理生化学 vol.25, no.2, pp.50-57 (2008) などに基づいて作画

ナメクジウオは確かに砂に潜ったことを確認するために光を感知することが必要だとは容易に想像できますが、それだけではないでしょう。では他にこのような多彩な光感受性分子をどのような目的で利用しているのでしょうか?

ナメクジウオは夜行性の生物であり、成体は負の走光性を示すことは昔から知られていました(10)。パーカーはこの100年以上前の論文の中で次のように述べています・・・If, into the middle of a large vessel so placed that the sunlight falls obliquely into it through one side, living lancelets are dropped one by one, they fall to the bottom as a rule without response, wherupon they often begin swimming, and in practically every trial come to rest near the side of the glass away from the sun・・・このことはナメクジウオが明暗だけでなく、光の方向も認知できることを示しています。そのほかいわゆる眼(frontal eye)を取り去っても光を感知できるなどとも書いてあります。

文献7によると、ナメクジウオの幼生はプランクトン的な生活をしていますが、昼間は海底に近いところにいて、日没とともに水面に近いところに上がってくるそうです。成体はほとんど海底の砂の中で生活していて、餌をとるときには半身を出すようです(図184-4)。ナメクジウオは神経胚の時代から光受容細胞を持っていることを前記しましたが、神経胚はなんと正の走光性を示すそうです(11)。

昔は日本にもナメクジウオはたくさんいたようですが、最近は水質汚染などで減少し絶滅危惧種となっています。そのひとつであるヒガシナメクジウオの学名が Branchiostoma belcheri から Branchiostoma japonicum に変わりました。その事情はやや複雑ですが、西川輝昭氏が詳しく説明しています(12)。この貴重な実験動物が実験室で飼育できるというのは、関係者の特段の尽力の賜でしょう(13)。

参照

1)Wikipedia: Opsin
https://en.wikipedia.org/wiki/Opsin

2)続・生物学茶話 112: 光を感じるタンパク質
http://morph.way-nifty.com/grey/2020/09/post-453128.html

3)続・生物学茶話 113: 単細胞真核生物の眼点
http://morph.way-nifty.com/grey/2020/10/post-f702c4.html

4)ウィキペディア:鞭毛
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9E%AD%E6%AF%9B

5)鞭毛/繊毛のはたらきと構造 Kikkawa lab
https://structure.m.u-tokyo.ac.jp/summary-j/flagella/flagella.html

6)コトバンク:微絨毛
https://kotobank.jp/word/%E5%BE%AE%E7%B5%A8%E6%AF%9B-609999

7)Jiri Pergner and Zbynek Kozmik, Amphioxus photoreceptors - insights into the evolution of vertebrate opsins, vision and circadian rhythmicity., Int. J. Dev. Biol. vol.61: pp.665-681 (2017) doi: 10.1387/ijdb.170230zk
https://www.researchgate.net/publication/322360330_Amphioxus_photoreceptors_-_Insights_into_the_evolution_of_vertebrate_opsins_vision_and_circadian_rhythmicity

8)小柳光正 オプシンファミリーの分子進化と機能多様性 比較生理生化学 vol.25, no.2, pp.50-57 (2008)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hikakuseiriseika/25/2/25_2_50/_article/-char/ja/

9)Chrysouka N. Pantzartzi, Jiri Pregner, Iryna Kozmikova and Zbynek Kozmik, The opsin repertoire of the European lancelet: a window into light detection in a basal chordate., Int. J. Dev. Biol. vol.61: pp.763-772 (2017) doi: 10.1387/ijdb.170139zk
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29319122/

10)G. H. Parker, The sensory reactions of amphioxus., Proceedings of the American Academy of Arts and Sciences., Vol.43, No.16, pp. 415-455 (1908)
https://www.jstor.org/stable/20022358?seq=1#metadata_info_tab_contents

11)HOLLAND, L.Z. and YU, J.K., Cephalochordate (amphioxus) embryos: procurement, culture, and basic methods. Methods Cell Biol vol.74: pp.195-215, (2004) DOI: 10.1016/s0091-679x(04)74009-1
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15575608/

12)東邦大学広報資料 西川輝昭 ヒガシナメクジウオの氏素性
https://www.toho-u.ac.jp/sci/bio/column/019768.html

13)Makoto Urata, Nobuo Yamaguchi, Yasuhisa Henmi and Kinya Yasui, Larval Development of the Oriental Lancelet, Branchiostoma belcheri, in Laboratory Mass Cultur., ZOOLOGICAL SCIENCE vol.24: pp.787–797 (2007)
doi:10.2108/zsj.24.787

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