内田康夫「氷雪の殺人」
内田康夫の「氷雪の殺人」を読了。なんと、ご同業の大沢在昌さんが帯に推薦文を書いています。しかもカバーをはずすと、あっと驚くことに今までの表紙が畳になっていました。この小説の内容は自衛隊に関わる汚職にまつわる殺人事件です。昔テレビでも見た気がしますが、やはりオリジナルを文章で読むのはそれなりの面白さがあります。
業者と癒着することは、仕事を進める上で大きなメリットがあります。年間数十万円の取引でも任意のものなら業者はしばしば顔を見せて、御用聞きだけでなく有益な情報をくれます。例えば商品AはBに納入したけれども、○○の弱点があってクレームがついたとか、C社は経営が傾いていて、アフターサービスに不安があるとか様々。一方厳格に相見積もりをすると、安かろう悪かろうで不良品をつかまされたりします。ですからできることなら業者とフレンドリーなつきあいがしたい、そして指定業者から買いたいというのはよくわかります。
ただ取引の金額が億単位にもなれば、しかも税金ということになれば、そうも言ってられません。それでも軍隊で使う高額な装備ともなれば、事実上相見積もりが困難なこともあるでしょう。しかもどんな装備を購入するかというのは秘密の場合もあるでしょうから、不正取引やリベートの温床でもあります。どこの国の軍隊でも同じようなものでしょう。武器商人たちもそのあたりはよく心得ていると思います。
ただ日本では特に自衛隊に傷をつけてはいけないという圧力が強くかかっているので、様々な形で不正取引や利益供与が行われていても解明は難しいでしょう。内田康夫はこのあたりに関心を持って、この小説を書いたと思います。汚職はともかく、私が一番問題だと思うのは米国から装備を輸入する場合、事実上言い値で買わされることです。
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