内田康夫「中央構造体」
これは2002年に講談社から出版された、皆さんお馴染みの浅見光彦が大活躍する内田康夫の小説ですが、スケールが大きくまさしく日本の政治経済の背骨の病巣をえぐった物語です。
モデルとなった日本長期信用銀行(長銀)はバブル崩壊によって膨大な不良債権をかかえ、結局税金を4~5兆円投入したにもかかわらず(ウィキペディア)倒産し、米国資本に二束三文で買い取られて新生銀行となりました。ひとつの企業が税金4~5兆円をドブに捨ててしまったのです。小説の中で光彦も激しく言及していますが、これで革命どころか政権交代もおこらなかったというのは日本の恥です。
先日私の預金通帳のプリントがいっぱいになったので新しい通帳にしようと思ったら、みずほ銀行の最も近い(といっても往復は半日仕事)支店である鎌ケ谷支店が廃止され、業務が船橋支店に移管されていました。たかが通帳更新のために船橋までいかなければならないとは末期的です。駅やスーパーから時計が消えたのも末期的、水道事業を外国企業にやらせるのも末期的、バスや鉄道の路線がなくなるのも末期的、交番の縮小も末期的です。最近デジタル化とうるさく言われますが、これもお役所の弱体化を糊塗するためと、外国資本へ産業を売り渡すためのプロパガンダです(堤未果著 「デジタル・ファシズム」 NHK出版)。
この小説のストーリーとはあまり関係がない会話の中で、内田康夫は何度も「日航ジャンボ機墜落事故の原因は自衛隊の誤射」と言わせています。このことははマスコミが報じていないだけで、関係者の間では常識なのかもしれません。
ウィキペディアの記事をみると、平将門は決して小説で持ち上げているような革命家ではなく(見ていませんがNHKの大河ドラマでも持ち上げていたそうです)、関東豪族間の私闘を制して自ら天皇を名乗ったお調子者のような印象を受けました。とはいえ現在でも神田明神をはじめとして多くの神社が将門を祀っていることを思うと、平安時代の当時としては将門の反乱はとてつもない大事件だったのでしょう。
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