ホタルとクラゲから発展した科学
マーク・ジマーの「光る遺伝子」という本を買いました。文章を読めばだいたいどんな人かはわかります。彼は天才にありがちな、思考があっちこっちに飛び回って、凡人がついていくのが大変というタイプの人です。個々の事実をひとつひとつじっくり検証していくということはしないので、細かいことにはあまりこだわらない方が良いと思います。
それでもちょっと気になるのは、「ホタルは日本では18世紀から詩歌に詠まれている」という記述で、そんなバカなことはないだろうと思って調べてみると、意外にも万葉集でホタルを歌った歌はひとつだけだそうです。
歌人・朝倉冴希の風花DIARY ~花と短歌のblog~
【万葉集】「蛍」を詠んだ唯一の長歌
https://dasaan.xsrv.jp/archives/15439
万葉集の時代には夜外を歩くのはあまりにも危険だったし、その様な習慣もなかったからと思われます。平安時代になると「夜這い」が習慣になって、夜も普通に人が出歩くようになり、ホタルもポピュラーになったのでしょう。源氏物語には光源氏が女性の姿を際立たせるためにホタルを放ったという話が出てきます。和歌も数多く、ひとつだけ選ぶと。
物思へば沢の蛍もわが身よりあくがれ出づる魂かとぞ見る
和泉式部
ところでサイエンスの観点からちょっと面白いと思ったのは、1753年にマサチューセッツ州知事のジェームス・ボードンという人が、燐光を発する海水を布で漉すと光らなくなると手紙をベンジャミン・フランクリンに書いて、それでフランクリンは海水の発光は電気現象だという自説をひっこめて生物発光説に転換したという話です。
驚いたのは私が最も尊敬する科学者のひとりであるラッザロ・スパランツァーニがクラゲの発光について重要な記述をしていることでした。スパランツァーニは自分を実験動物にしてさまざまな実験を行った、18世紀の狂気の科学者として有名な人です。
http://morph.way-nifty.com/grey/2017/02/post-b151.html
彼は死んだクラゲが雨に当たると発光する、牛乳を垂らすとものすごく明るく発光すると記しているそうです。これはおそらくカルシウムのせいでしょう。
このあとは現代科学のお話になりますが、逸話満載で光生物学に関心がある向きにとってはとても面白い本だと思います。
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