「製薬業界の闇」 by ピーター・ロスト
ファルマシアという会社はあまり一般には知られていないかもしれませんが、スウェーデンの製薬会社でさまざまな医薬品を販売していたほか、研究用の試薬についてもメジャーなメーカーだったので、20世紀の医学・生物学研究者にはなじみ深い会社です。2003年にファイザーに買収されましたが、この本の著者ピーター・ロストはそのときファルマシアで管理職をやっていた人です。
ファイザーはバイアグラなどでお馴染みの米国の会社ですが、世界でもトップクラスの製薬会社です。現在も新型コロナウィルスと戦う最前線の会社です。
そんな会社に買収されて、ファルマシアは「よかったね」というわけではなく、そこには非情な解雇という地獄が待っていたのです。ピーター・ロストはその解雇を担当することになりました。どうすればうまく解雇できるかという綿密な研修を受けて、それを実行することになったのですが、一番の問題は解雇された職員が次の就職先を探すために最も必要なこと、すなわち上司が推薦状を書くことを禁止されたことです。このようなひどい仕打ちに激怒したロストは会社と戦うことにしました。
これはロストと会社の血みどろの戦いの記録です。この本を読めばファイザーがとんでもないブラック企業であることがわかります。
ロストの言葉です「現在の米国は”強欲”の上に成り立っている。・・・強欲とは、ファイザーの最高経営責任者のような連中をいうのだ」
The Whistleblower by Peter Rost
Soft Skull Press, New York (2006)
日本語版監訳 斉藤武郎
東洋経済新聞社刊(2009)
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