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2021年5月11日 (火)

新型コロナウィルスのRNAが逆転写されてゲノムに組み込まれるとは!!

SARS-CoV-2 RNA reverse-transcribed and integrated into the human genome
Liguo Zhang, Alexsia Richards, Andrew Khalil, Emile Wogram, Haiting Ma, Richard A. Young, Rudolf Jaenisch
doi: https://doi.org/10.1101/2020.12.12.422516
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.12.12.422516v1.full

(管理人による要約)英語論文が読める方は上記にアクセスされるようお勧めします。

新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)に感染した患者が、回復したにもかかわらず長期間にわたってPCR検査が陽性のままの場合があるという報告がある。我々はこのウィルスのRNAが逆転写されてヒトのゲノムに組み込まれ、その組み込まれたDNAの転写産物がPCR検査にひっかかって陽性の結果になるのではないかという仮説をたてて検証した。我々はこのウィルスRNAがヒトの遺伝子に内在するレトロトランスポゾンの逆転写酵素あるいはレトロウィルスの逆転写酵素によってDNAに逆転写されることを確認した。このことは逆転写されたウィルスDNAがヒトのゲノムに組み込まれ、その転写産物がPCR陽性の原因となっていることを示唆するものである。

(管理人による解説)

新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)はいわゆるRNAウィルスで、ホストに感染すると遺伝子RNA→鋳型RNA→遺伝子RNAの形で増殖するので、レトロウィルスのようにいったんDNAになってからRNAにもどるような過程を経ることはありません。しかし私たちの細胞にはRNAを鋳型にしてDNAをつくる酵素が存在し、またレトロウィルスに感染することもあるため、新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)の遺伝子RNAまたは鋳型RNAがDNAに逆転写されることもあり得ます。

DNAになってしまうと、ゲノムのDNAに組み込まれる可能性もあります。しかし組み込まれたDNAからウィルスができるわけではありません。ただたまたま転写されやすい場所に組み込まれるとRNAに転写される可能性はあります。そのRNAがPCR検査にひっかかるものと思われます。

裸のウィルスのRNAや逆転写されたDNAが無傷のまま細胞質に何時間もとどまっていることはほぼあり得ないので、おそらくゲノムに組み込まれるまでには断片化していると思われますが、それでもPCR検査にひっかかる可能性はあります。ゲノムに組み込まれる際に、その細胞に必要な遺伝子を破壊して組み込まれることがひとつのリスクです。神経細胞や心筋細胞など一生使う細胞が感染した場合には問題が発生するかもしれません。発がんの可能性も検討が必要になるでしょう。生殖細胞の場合、子孫の遺伝病の原因になる可能性があります。

もうひとつの問題は、mRNAワクチンのRNAが逆転写されてゲノムに組み込まれる可能性はどうなのだろうということです。もしこのRNAがレトロトランスポゾンの逆転写酵素でDNAになり得るのなら、このワクチンの安全性について再検討が必要だと思います。

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