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2021年5月31日 (月)

変異株の脅威と検疫

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インド株のクラスターが発生しているようです(1)。これはもう最悪ですね。それもこれも感染者が空港検疫をすり抜けたのが原因であることは明らかです。その空港検疫がザルじゃないかということはいろんな報道で危惧していたのですが、なんと判明率が37%とは頭がクラクラしてきます(2)。これじゃともかく何かはやりましたというアリバイ作りをやっているだけとしか思えません。検疫はPCRできちんと待機期間をとってというのが世界の常識ではないのでしょうか?

インド株が蔓延したら、誰かが責任とらなきゃいけませんよ。責任とったって蔓延は止められませんが、それでもです。田村大臣は職員の会食で陳謝しましたが、こんな検疫をやっていて陳謝もしないんですか? 職員の会食なんてかすむくらいの重大な問題ですよ。ベトナムではさらに危険なインド株と英国株のハイブリッドが発見されたといいますし。

1)https://news.yahoo.co.jp/articles/fd7cd451bcb66301da35fd47cbfca54fa11637aa

2)https://johosokuhou.com/2021/05/31/47535/

ひとつ不可解なことがあります。都響は6月26日と7月1日にアラン・ギルバートの指揮でコンサートを予定していて、一部チケットをもう販売しています(3)。ところが彼は6月17日・18日にハンブルクのNDRエルプフィルハーモニーでのコンサートをやることが決まっていて(4)、それが終わってすぐに来日するとしても、検疫を行った後リハーサルをやる日程を確保できるのでしょうか? 都響のサイトは「現在、アラン・ギルバートの入国に向けて、関係省庁との協議を行っておりますが、必要な防疫措置と隔離期間を満たした上での公演開催可否が最終的に判明するのは6⽉中旬以降の見込みです。」とアナウンスしています。ということは、関係省庁の裁量で検疫の期間が変動するということを意味しています。

アランはすでにコロナに感染して入院治療し回復した人なので、実際には入国しても大丈夫だとは思いますが、都響の記述を見て想像されるのは、関係省庁や検疫機関にはいろんなところから早く通してくれと言う要請が引きも切らないのではないか。そしてそこに情実や圧力や金銭がからんでくるのではないかという疑いを抱かざるをえません。都響だって親方百合子ですから十分に圧力かかりますよ。

3)https://www.tmso.or.jp/j/news/13633/

4)https://www.elbphilharmonie.de/en/whats-on/17-06-2021/TICKETS/

 

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2021年5月29日 (土)

続・生物学茶話144: モノアミントランスポーター

ドーパミン、セロトニンなどのモノアミンの細胞内への取り込みを実行するのは、モノアミントランスポーターという細胞膜に埋め込まれたタンパク質で、これについての研究はジュリアス・アクセルロッド(図144-1)によって扉が開かれました。彼はポーランド系のユダヤ人で、1933年にニューヨーク私立大学を卒業したのですが、その後仕事をしながらナイトスクールに通って修士の学位を得たりして苦学したそうです。結局Ph.Dの学位を得たのは1955年のことでした。その後ようやくNIHでポジションを得て、「モノアミン系神経伝達因子はシナプスから解放された後、再度シナプス前細胞にとりこまれて再利用される」ことを証明し、1970年にノーベル生理学医学賞を受賞しました(1、2)。自伝を書いていますが、そのタイトルに「late blooming」という言葉が加えられています(2)。ジョン・キルティ(図144-1)らによって1991年にドーパミントランスポーターの遺伝子がクローニングされ、その後詳細な分子生物学的研究が開始されました(3)。

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図144-1 ジュリアス・アクセルロッドとジョン・キルティ

モノアミントランスポーターは膜12回貫通型のタンパク質で、N末・C末共に細胞内にあります。イザベラ・ゴラルらが発表したノルアドレナリントランスポーターの模式図(4)を図144-2に示しておきます。これによれば、細胞膜に埋め込まれていない長めのループが、細胞外にも細胞内にも複数あるようです。ヒトのノルアドレナリントランスポーターは617個のアミノ酸で構成されていますが、彼らはノルアドレナリンを結合する上で重要なアミノ酸は Phenylalanine F72、 aspartic acid D75、 tyrosine Y152、 および phenylalanine F317 の4つであり、特にアミノ基をトラップするのはD75(アスパラギン酸)だということを解明しました。

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図144-2 ノルアドレナリントランスポーターの模式図

図144-3にウィキペディアに掲載されていたドーパミントランスポーターの立体構造(5)をコピペしました。このタンパク質は12本の貫通ペプチドに囲まれた内部の空間に塩素イオン・ドーパミン・ナトリウムイオンを順に取り込み、次に構造を転換して細胞質側に通路を形成し、それらを細胞質に放出するというメカニズムでドーパミンを細胞内に輸送すると考えられています(6、7)。

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図144-3 ドーパミントランスポーターの立体構造と輸送のメカニズム(構造図はパブリックドメイン、メカニズムは Jacob Eriksen のアイデア)

神経伝達物質として用いられるモノアミンは脊椎動物ではドーパミン・ノルアドレナリン・セロトニンに限られますが、昆虫など一部の無脊椎動物はオクトパミン・ティラミンを利用しています。これらの分子構造式を図144-4に記します。


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図144-4 モノアミン系神経伝達物質の分子構造式

分子生物学的研究の進展によって、モノアミントランスポーターすなわちドーパミントランスポーター(DAT)、ノルアドレナリントランスポーター(NAT)、セロトニントランスポーター(SERT)、オクトパミン・ティラミントランスポーター(OAT)はすべてSLC6というタンパク質ファミリーに所属することがわかりました。SLCファミリーは Solute carrier family の略で、このファミリーは細胞膜を分子が通過するために必要な400種類以上のタンパク質が所属する巨大な分子群で、さらに66のファミリーに分けられています。SLC6は上記の分子以外にグリシン、GABA、タウリンなどのトランスポーターも含みます。このグループに共通する特徴は、すべて膜12回貫通タンパク質であり、ナトリウムイオンとモノアミン分子を同時に細胞外から取り込むということです(8、9)。

SLC6のドーパミントランスポーターとセロトニントランスポーターはあらゆる左右相称動物以外に、刺胞動物にも存在するので、少なくとも6億年以上前からそれらの生物に共通する祖先もこの分子を保有していたと考えられます(10、11)。SLC6と同様にナトリウムイオンと共に他の分子を取り込むトランスポーターは細菌や古細菌にも存在し、これらは13~15の膜貫通領域を持っていることが知られています。もともとは外界のアミノ酸を栄養として細胞内に取り込む役割を果たしていたと思われます(12)。実際グリシン、GABA、タウリンなどはアミノ酸なので、当時からの伝統は私たち人類にも引き継がれています。つまり進化の過程で、神経伝達物質の回収などという作業にこれらの分子が流用されたわけです。

左右相称動物はその後前口動物と後口動物に分岐しますが、前口動物は新たにオクトパミンとティラミンという神経伝達物質を獲得し、後口動物はアドレナリンとノルアドレナリンを獲得しました。それに伴ってトランスポーターも進化しました。Stanley Caveney らは様々な動物のモノアミントランスポーターを調査し、また他の研究者達の研究結果を統合して分子系統樹を作成しました(13)。簡略化して彩色し、日本語化した図を図144-5として示します。

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図144-5 モノアミントランスポーターの分子系統樹(Stanley Caveney らによる研究成果を模式図にしたもの)
SERT:serotonin transporter, iDAT:invertebrate dopamine transporter, MAT:monoamine transporte, OAT:octopamine-tyramine transporter, NAT:noradrenaline transporter

この系統樹は様々な興味深い示唆を与えてくれます。セロトニンのトランスポーター(SERT)の進化はシンプルです。始原的な左右相称動物(ウルバイラテリア)が持っていた分子がそのまま子孫に継承され、進化と共に放散していったことが想像されます。ドーパミントランスポーターの場合はやや複雑です。無脊椎動物の多くは2系統の分子を保有していますが、脊椎動物は1系統しか保有していません。脊椎動物に近い棘皮動物のウニは両者を保有していることから、脊椎動物はその分岐の根元あたりで1系統を失ったものと思われます。

無脊椎動物だけが持つドーパミントランスポーターは iDAT(inveretebrate dopamine transporter) としてまとめられています。昆虫などはもう一系統をOAT(octopamin-tyramine transporter) として進化させました。ウニやナメクジウオはもう一系統をノルアドレナリントランスポーターとして進化させました。脊椎動物はドーパミントランスポーターとして使い続けざるを得なかったわけですが、この系統から新たにノルアドレナリントランスポーターを分岐させて、新たな分子を獲得しました(図144-5)。これらの進化的に新しい分子群をまとめてMAT(monoamine transporter) とよびます(図144-5)。ですから脊椎動物のDATは、無脊椎動物のiDATよりOATやNATに近縁ということになります。

さてここでひとつの疑問は、ではアセチルコリンやアドレナリンはどうやってとりこまれているのかということなのですが、アセチルコリンの場合、コリンエステラーゼですぐにコリンに変換されてしまいます。コリンは細胞膜の成分であり、トランスポーターなしで細胞にとりこまれるので問題はありません。アドレナリンについては、図144-5のMAT系トランスポーターは特異性が低く、アドレナリンもついでにトランスポートされるようです。

 

参照

1)Wikipedia: Julius Axelrod
https://en.wikipedia.org/wiki/Julius_Axelrod

2)Julius Axelrod, Journey of a Late Blooming Biochemical Neuroscientist.,
J Biol Chem, vol.278(1): pp.1-13. (2003) doi: 10.1074/jbc.X200004200.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12414788/

3)Kilty JE, Lorang D, Amara SG. Cloning and expression of a cocaine-sensitive rat dopamine transporter. Science, vol.254(5031): pp.578–579. (1991) doi: 10.1126/science.1948035.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1948035/

4)Izabella Góral, Kamil Łątka and Marek Bajda., Structure Modeling of the Norepinephrine Transporter., Biomolecules vol.10(1), 102; (2020) https://doi.org/10.3390/biom10010102
https://www.mdpi.com/2218-273X/10/1/102/htm

5)Wikipedia: Monoamine transporter
https://en.wikipedia.org/wiki/Monoamine_transporter

6)Jacob Eriksen, PhD thesis - Københavns Universitet  (2009)
https://curis.ku.dk/ws/files/19986106/PhD_Thesis_Jacob_Eriksen.pdf

7)Pramod Akula Bala, James Foster, Lucia Carvelli, and L. Keith Henry., SLC6 Transporters: Structure, Function, Regulation, Disease Association and Therapeutics., Mol Aspects Med., vol. 34(2-3): pp.197–219. (2013) doi: 10.1016/j.mam.2012.07.002
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3602807/

8)Wikipedia: Neurotransmitter sodium symporter
https://en.wikipedia.org/wiki/Neurotransmitter_sodium_symporter

9)N-H Chen, M.E.A. Reith and M. W. Quick, Synaptic uptake and beyond: the sodium- and chloride-dependent neurotransmitter transporter family SLC6. Pflügers Archiv volume 447, pages 519–531 (2004)
https://link.springer.com/article/10.1007/s00424-003-1064-5

10)Hay-Schmidt, A., The evolution of the serotonergic nervous system. Proc. R. Soc. London B Biol. Sci., vol.267, pp.1071-1079.(2000)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1690648/

11)Raible, F. and Arendt, D., Metazoan evolution: some animals are more equal than others. Curr. Biol. vol.14, R106-R108. (2004)
https://www.researchgate.net/publication/6747527_Metazoan_Evolution_Some_Animals_Are_More_Equal_than_Others

12)Tania Henriquez, Larissa Wirtz, Dan Su, and Heinrich Jung., Prokaryotic Solute/Sodium Symporters: Versatile Functions andMechanisms of a Transporter Family., Int. J. Molec. Sci., vol.22, 1880 pp.1-21 (2021) . https://doi.org/10.3390/ijms22041880
file:///C:/Users/morph/AppData/Local/Temp/ijms-22-01880-v3.pdf

13)Stanley Caveney, Wendy Cladman, LouAnn Verellen and Cam Donly., Ancestry of neuronal monoamine transporters in the Metazoa., J. Exp. Biol., vol.209, pp.4858-4868 (2006) doi:10.1242/jeb.02607
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17142674/


 

 

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2021年5月26日 (水)

失意のバルサ そして再生へ

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リーガ・エスパニョーラの今シーズンはアトレチコ・マドリーが優勝し、バルサは7ポイント差の3位に終わりました。

シーズン当初はコウチーニョが好調で、彼がコントロールタワーとなって前線にパスを供給するという新生バルサが誕生したと思ったのですが、すぐに故障して長期リタイアとなり、結局またメッシ頼みの忖度サッカーになってしまいました。

致命的だったのはアンスー・ファティが故障してしまったことで、しかも手術が失敗し結局1年棒に振って、来シーズンもどうなるかわからないという悲劇的な状況になってしまいました。デンベレが代わりをできるかというと、彼は切り返して一人抜いてシュートというのが圧倒的な特技なのですが、クロスやパスの精度が悪くて使い勝手が悪く、発展途上の選手なんですね。もうすこしまともにワンツーやゴール前のパスの精度が上がれば十分ワントップができそうですし、もう少しクロスの精度が上がればエストレーモとして優秀な選手なんですが、まだまだもどかしい感じです。

グリーズマンはコンビネーションで生きる選手なので、結局メッシとのやりとりになれてきて終盤では機能していました。でもどちらかというとストライカーではありません。攻撃的MFですね。トリンコンとブライスウェイトはクーマンが使い切れませんでした。出場機会が少なかったので、どうすれば彼らを生かせるのか定かではありません。

中盤はペドリというまだ10代の素晴らしい選手の参加で、この選手がいたのでようやく3位が確保できたというのが今シーズンのバルサでした。デ・ヨングはクーマンに便利屋のように使われたシーズンだったので十分に力が発揮できなかったように思えますが、そんな中でもチームに大いに貢献していました。リキ・プッチはフィジカル・スピードの点で力不足でした。ブスケツとピアニッチは交替で出るのかと思いきや、結局ピアニッチを使い切れず、ブスケツも年齢から来るパフォーマンス低下が感じられました。彼らを放出しでても、優秀なボランチの選手を獲得する必要はありますね。なにも噂は聞こえてきませんが。

ディフェンサは当初から予想されたとおり、ピケが故障してラングレひとりという危機的な状況になりましたが、ミンゲサとアラウホというファームの選手が結構使えてなんとか格好はつきました。とはいえはじめてのプリメーラということもあって凡ミスも結構あり、そのために敗戦という試合も何試合かありました。ミンゲサは軽快というより重厚なタイプの典型的なDFタイプの選手なので、4バックのサイドで使ってはいけません。センターバックとして経験を積ませるべきです。3バックのサイドならそれでもいいです。フィジカルもスタミナも十分で期待できる選手です。アラウホはなんと言っても高さがあるので、CK・FKの処理に有利ですし、ヘディングが得意なようなので攻撃にも使えそうです。エリック・ガルシアがバルサに復帰するという話もあるようなので、もちろん成長は必要でしょうがディフェンサは来シーズン期待できそうです。

サイドバックは左はジョルディ・アルバなのですが、彼は4バックならではの選手なので、3バックだと左の中盤かエストレーモとして出場するしかありません。もうアグエロ、デパイ、ワイナルドゥムの補強が決まっているようなので、難しくなりますね。フィルポはあまりにも出場機会が少なく、バルサに来た当初より下手になったように思いました。彼は3バックの左もできそうなので、控えとして頑張って欲しいと思います。右のデストは今シーズンさっぱりでしたが、来シーズンはもうすこし活躍できそうな気はします。ただ彼も4バックありきの選手なので、3バックだと難しくなりますね。ダニエウ・アウヴェスが居た頃は、もう4バック以外のフォーメーションはあり得ないというくらいのバルサでしたが、現在はむしろ3バックの方がいいような気がします。

今バルサに必要なのはメッシの退団です。ここをはっきりしなければ新しいバルサの編成ができません。メッシが残留すると、どうしてもメッシに合わせた中盤、ストライカー、サイドという編成になるので、バルサは変わることができません。それでうまく回ればいいのですが、そうはならないということが今シーズン証明されました。メッシ自身は今シーズン好調だったので、彼個人の不調で優勝できなかったというわけではなく、忖度サッカーが破綻したのです。決断すべきときが来ています。もし残留するなら、彼に言いたいことは、自分でゴールを狙うのはきっぱりやめて、常にスルーパスか浮き球をFWの頭にあわせるのを狙い、かつ守備をきちんとやるというスタイルでやって欲しいと思います。

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↑ ウィキペディアより

 

 

 

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2021年5月24日 (月)

まきちゃんぐ 「昼の月、夜の太陽」

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ほぼ2年近くライヴに行ってなかったので、本当に久しぶりでした。場所は下北沢の音倉。ライヴハウスはコロナ発生以来悪の元凶のように言われていますが、さすがに現在はマスクや検温はもちろんのこと、ソシアルディスタンス、パーティション、換気、静かに聴く、など非常に注意して営業しているので、ここで感染することはまずないと思いました。ただそれでは営業が成立しないことも事実で、早い収束が期待されるところではあります。日曜日の開催だったので交通機関も空いていました。

下北沢は何度来ても外国に来たような気分になります。これからの日本人はこういうおもちゃの街のようなところに楽しみを見いだして生きていくのかな? 私は夜の部参加でしたが、こちらははらかなこさんのピアノ伴奏つきで、彼女も自分の芸域を逸脱した異世界のまきちゃんぐの音楽によく付き合ってくれたと思います。巻き込まれましたね。でも後悔はしてないよね。

立って歌うまきちゃんぐは本当にすごいです。特に「愛が消えないように」は超絶でした。コロナに制圧された私たちの心情を切々と歌ってくれました。その他「鋼の心」「みなと」「木造アパート」「海月」「ジンジャエールで乾杯」「Midnight Sun」などなど名曲の数々をたっぷり聴かせてくれて有難う。

まきちゃんぐ 公式サイト
https://twitter.com/makichang_info

海月
https://www.youtube.com/watch?v=gD2ofjN0SEo

HPにセットリストがあがっていたのでコピペしておきます。

【ひるの部】
砂の城
満海
風が強い日の旗は美しい
泣きたい夜に
ハニー
シャドウ
さなぎ
合唱
あの丘へ行こう
愛が消えないように

【よるの部】
鋼の心
9cmのプライド
みなと
シアワセノタイヨウ
名前 solo
木造アパート solo
ジンジャエールで乾杯
海月
愛が消えないように
midnight sun

「ひるの部」はすべて弾き語り、「よるの部」は solo と表示がある曲のみ弾き語りで、他ははらかなこさんのピアノ伴奏です。

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2021年5月21日 (金)

続・生物学茶話143: セロトニン受容体

GPCR型(Gタンパク質共役受容体型)のセロトニン(5-HT)受容体は脊椎動物と無脊椎動物が分岐するより以前、約6億年前以前にすでにできあがっていたとされています(1)。そしてその後脊椎動物が進化する過程で、図143-1のような様々な受容体が生まれてきました。1型、2型、4~7型はすべて膜7回貫通のGPCRタイプで、3型だけがカチオンチャネルです(2、図143-1)。

セロトニンと結合することによって、5-HTと5-HTはGi/Goと共役してcAMP合成を抑制する方向に、5-HT・5-HT・5-HTはGsと共役してcAMP合成を促進する方向に作用します。前者は興奮を抑制し、後者は促進するという役割を分担しています(2)。5-HTはGqと共役して細胞内のカルシウム濃度を高め、興奮方向に誘導します(図143-1)。

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図143-1 セロトニン受容体一覧表

GPCR型受容体の機能は、それぞれが共役しているGタンパク質の機能によって様々です。Gタンパク質が合成酵素の活性を調節することによってに濃度が調節されているcAMP、IP、DAGの機能については、復習として図143-2にまとめておきました。Gタンパク質の機能についてはここでも以下簡単に解説しますが、より詳しく知りたい方にはフリーで読める総説もあります(3)。

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図143-2 Gタンパク質によって調節される情報伝達因子の構造と機能

無脊椎動物のセロトニン受容体はショウジョウバエ、軟体動物、C.エレガンスなどで1990年頃から詳しい研究が行われ、5-HT、5-HT、5-HTの脊椎動物とオルソログの関係にある遺伝子産物が存在して、それぞれGタンパク質Gs、Gi、Gqと共役関係にあることがわかっています(1、4)。つまり単に受容体の遺伝子が類縁関係にあるだけでなく、カップリングする相手のGタンパク質も進化上保存されているということになります。様々な無脊椎動物におけるセロトニン受容体のリストが文献1に出ています。

この3つのタイプがGPCR系セロトニン受容体の基本形で、それぞれの機能について図143-3にまとめました。5-HT系(5-HT4/6/7)はセロトニンと結合することによって構造を変換し、その影響でGαsタンパク質はGDPを解離してGTPと結合します。この結果GβGγと3量体を形成していたGαsはこれらと解離して単独で行動し、アデニル酸シクラーゼと結合してこれを活性化し、細胞内のcAMPのレベルを上昇させます。5-HT系(5-HT1/5)の場合、Gαi/oは逆にアデニル酸シクラーゼを阻害し、cAMPのレベルを低下させます。5-HTと共役するαqはフォスフォリパーゼCを活性化して、図143-2のようなメカニズムで細胞質のカルシウムイオン濃度を上昇させたり、プロテインキナーゼCの活性を上昇させたりすることによって、細胞を興奮方向にシフトさせます。

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図143-3 それぞれのセロトニン受容体と共役するGαタンパク質の種類による機能の違い

イオンチャネル型のセロトニン受容体は、脊椎動物以外ではC.エレガンスでみつかっていて、MOD-1と命名されています(5)。この受容体は脊椎動物の5-HTと同様Cys-loop受容体ファミリーに属しますが、MOD-1は塩素チャネルであり、カチオンチャネルである5-HTとは進化的に関係が希薄です。C.エレガンスでは行動・採餌・意思決定・嫌悪物質の学習などに、この受容体が重要な役割を果たしているとのことですが(6)、この種の受容体は他の無脊椎動物ではみつかっていません(1)。

C.エレガンスは線形動物門に属する生物で、体長1mmにも満たない目立たない生物ですが(図143-4)、すべての体細胞ひとつひとつの発生過程が明らかになっているという大変貴重な実験動物です。堆肥などリッチな土壌に棲んでいるとされています。もちろんイオンチャネル型受容体は素早いレスポンスを行うために有用ですが、彼らが敵から素早く逃れるためにこの受容体を利用しているとは思えません。ただ彼らは普通の土壌では栄養(細菌)が乏しく暮らしていけないようなので、リッチな栄養を求めて移動が必須の多忙な生活をしていることは予想されます。効率よく採餌するために、他の無脊椎動物にはないスペシャルな受容体を進化で獲得したのかもしれません。

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図143-4 C.エレガンス(雌雄同体型)のスケッチ

図143-5にGPCR系とイオンチャネル系のセロトニン受容体の構造を、フリー公開されている論文から引用表示しておきます。イオンチャネル系のセロトニン受容体(5-HT)はGPCR系とは全く異なり、5つのサブユニットが膜を貫通するある種のチューブを形成して、その中心通路をイオンが通過するようになっています。それぞれのサブユニットは膜を4回貫通するペプチド鎖で形成されており、N末・C末共に細胞外に露出しています。セロトニンはN末に結合します。サブユニットにはA-Eの5つのアイソタイプがあり、すべてAタイプの型またはAタイプと他のタイプの混合型でチャネルが形成されます(7)。

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図143-5 セロトニン受容体の分子構造

セロトニン受容体は中枢神経系・末梢神経系だけでなく、血管・消化管(平滑筋)にも分布しています(8、図143-6)。消化管にあるセロトニン受容体5-HTはセロトニンの作用によって副交感神経からのアセチルコリン遊離を促進し、消化管を動かす平滑筋の活動を亢進します。血管内皮細胞のセロトニン受容体5-HTがセロトニンの刺激を受けると一酸化窒素が遊離して血管弛緩がおきます。一方血管平滑筋細胞の5-HTがセロトニンの刺激を受けると血管収縮がおきます(8)。また5-HT は血小板にあって、出血が起きたときに血小板を凝集させて血栓を形成することによって止血するという作用があります。 それぞれの受容体型にはさらにサブタイプがありますが(図143-6)、ここではそれらの機能分化については詳述しません。

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図143-6 セロトニン受容体のサブタイプとそれらが発現する場所

セロトニンの作用についてもうひとり忘れてはならないパイオニアがいます。それはベティー・トゥワログで(図143-7)、彼女は前記のウェルシュの研究室で学位をとったのですが、不可解なことにその研究をウェルシュとは別々の論文に書いて発表しています(9、10)。これはおそらくトゥワログの論文が投稿から発表までに2年もかかったことが関係しているのでしょう。編集部が受理する自信がなかったためにこのようなことになったと思われます(11)。

その内容は、ホンビノスガイ(もともとは北アメリカの大西洋側にしかいませんでしたが、現在は世界中に広がり東京湾にもいるそうです。イオンで食材として販売されているのもみかけました。図143-7)の神経による心臓の調節に関する物もので、この2枚貝の神経は心臓の鼓動を調節するためにアセチルコリンを放出しますが、アセチルコリンは鼓動の頻度や強度を抑制する働きがあります。しかしアセチルコリンアンタゴニストあるいはセロトニンは鼓動の頻度や強度を強める働きがあることを彼らは示しました。トゥワログとページはさらに哺乳類にもセロトニンが存在し、同様な働きを持つことを報告しました(12、13)。

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図143-7 トゥワログとホンビノスガイ

ヒトでセロトニンが欠乏するとどんなことが起こるのでしょうか? 安原こどもクリニックのサイトをみると次のような病状が発生するそうです(14)。

#すぐキレル
#摂食障害
#過食
#拒食
#パニック障害
# うつ
#睡眠障害(眠れない)
#寝覚めがはっきりしない
#筋収縮障害

ここで注意すべきは、セロトニンはメラトニンというホルモンの前駆体でもあるので(図143-8)、セロトニンが欠乏するとメラトニンも欠乏します。したがってセロトニン欠乏症なのかメラトニン欠乏症なのかは慎重に検討する必要があります。

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図143-8 メラトニンの生合成経路

 

参照

1)Ann Jane Tierney, Invertebrate serotonin receptors: a molecular perspective on classification and pharmacology., J. Exp. Biol., vol.221, pp.1-11 (2018) doi: 10.1242/jeb.184838.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30287590/

2)Wikipedia: 5-HT receptor
https://en.wikipedia.org/wiki/5-HT_receptor

3)Viktoriya Syrovatkina, Kamela O. Alegre, Raja Dey, and Xin-Yun Huang., Regulation, Signaling and Physiological Functions of G-proteins., J Mol Biol., vol.428(19), pp.3850-3868 (2016)
doi:10.1016/j.jmb.2016.08.002
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5023507/pdf/nihms810914.pdf

4)Tierney, A. J., Structure and function of invertebrate 5-HT receptors: a review. Comp. Biochem. Physiol. A Mol. Integr. Physiol., vol.128, pp.791-804. (2001)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11282322/

5)Ranganathan, R., Cannon, S. C. and Horvitz, H. R., MOD-1 is a serotoningated chloride channel that modulates locomotory behaviour in C. elegans., Nature vol.408, pp.470-475. (2000)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11100728/

6)Iwanir, S., Brown, A. S., Nagy, S., Najjar, D., Kazakov, A., Lee, K. S., Zaslaver, A.,
Levine, E. and Biron, D., Serotonin promotes exploitation in complex environments by accelerating decision-making. BMC Biol. vol.14, no.9. pp.1-15 (2016) DOI 10.1186/s12915-016-0232-y
https://bmcbiol.biomedcentral.com/track/pdf/10.1186/s12915-016-0232-y.pdf

7)Wikipedia: 5-HT3 receptor
https://en.wikipedia.org/wiki/5-HT3_receptor

8)日本血栓止血学会 用語集 セロトニン受容体
http://www.jsth.org/glossary_detail/?id=263

9)Welsh JH, Taub R: The action of acetylcholine antagonists on the heart of Venus mercenaria. Br J Pharmacol Chemother, vol. 8, pp. 327–333.,  (1953)

10)Twarog BM: Responses of a molluscan smooth muscle to acetylcholine and 5-hydroxytryptamine. J Cell Physiol, vol. 44, pp. 141–163., (1954)

11)Patricia Mack Whitaker-Azmitia., The Discovery of Serotonin and its Role in Neuroscience., Neuropsychopharmacology., vol. 21, no. 2S,(1999)
https://www.nature.com/articles/1395355

12)Twarog BM, Page IH: Serotonin content of some mammalian tissues and urine and a method for its determination., Am J Physiol, vol. 175, pp. 157–161., (1953)

13)Manfred Göthert., Serotonin discovery and stepwise disclosure of 5-HT receptor complexity over four decades. Part I. General background and discovery ofserotonin as a basis for 5-HT receptor identification., Pharmacological Reports, vol.65, pp.771-786 (2013)
http://www.if-pan.krakow.pl/pjp/pdf/2013/4_771.pdf

14)http://www.y-c-c.jp/drbear/?p=41

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2021年5月20日 (木)

サラとミーナ247:たまには仲良くソファーの上で

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ミーナはサラといつもじゃれ合いたいのですが、サラとしてはうざいという気持ちが先に立って逃げ腰になります。でもたまに仲良くしていることもあります。

ミーナは猫にも人間にもとてもフレンドリーなのですが、それでも腹を立てることはあります。それは目の前を早足で通り過ぎられることで、たとえばサラがそれをやると爪をたててひっかこうとします。それがわかっているので、どうしても狭い場所で通り過ぎないと行けないときは、サラはジャンプしてミーナを飛び越したりします。

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おそらく野生動物が予期せず突然別の個体に遭遇するというのは、大きな緊張を伴うものなのでしょう。同じ種ならテリトリーを守るために排除する必要があるかもしれませんし、別の種なら敵なのか、餌なのか、どちらでもないのかを瞬時で判断しなければいけません。

私は廊下で猫とすれ違うときには必ず挨拶する(声 or ボディータッチで)ことにしています。

 

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2021年5月18日 (火)

井上-都響 サン=サーンス交響曲第3番@池袋芸劇2021/05/18

緊急事態宣言が効いてきたのか、新型コロナも少し下火になってきました。ただインド株の蔓延を許してはいけませんが。今日のコンサートも一人置きの座席ではありませんでした。最近は会場で咳が聞こえません。マスクの効果は絶大です。

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マエストロ井上(ミッキー)は「風呂場の事故でも大勢死んでいるんだから、コロナなんてたいしたことない 騒ぎすぎだ」とうそぶいていたような人なのですが、音楽はたいがい素晴らしく仕上げてきます。本日のコンマスはボス矢部で、やっぱり雨か・・・。ボス矢部も近頃大分目が悪くなったのか、楽譜が近いと思いました。サイドはゆづきさん。ソリストの辻さんは折り目正しくかつ迫力満点の若手ヴァイオリニストです。

冒頭のサティの音楽ははじめて聴きました。そこで使われる楽器がびっくり。

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1.洗面器に水をたっぷり入れて、両手を開いてバシャンと水面に突っ込んで音を出します。もちろん奏者はびしょ濡れですが、周りに水が飛び散らないようビニールで囲ってあります。

2.タイプライターとベル。私たちの世代はタイプライターを使った最後の世代だと思いますが、改行するとチンとなりました。タイミングをあわせるためにチンの音はベルを横に置いて鳴らします。

3.巨大なダーツ板のようにみえますが、周辺にこちら向きにピンが多数付いていて、スティックで大きく手を回しながらはじいていきます。

4.カバーをとるとサイレンが出てきます。手で回して音を出します。

5.酒瓶を吊り下げてあり、これをスティックで叩いて音を出します。音程が調整してあるようでした。

このほか曲の途中で、奏者が二丁拳銃で銃弾を指揮者に発射しますが、ミッキーは「ウァ」と言って倒れる真似をします。それにしても、まさかあのジムノペディのサティがこんなド派手な音楽を作っていたとは!! 指揮者を撃つという仕掛けは反戦のアピールのようです。

サン=サーンスのヴァイオリン協奏曲はソリスト辻さんの素晴らしい演奏を堪能しました。曲もなかなか素晴らしい。特に叙情的なパッセージが好きですね。拍手に答えてソリストアンコールもあり・・・権代敦彦:Post Festum-ソロ・ヴァイオリンのための-より「Ⅱ」。辻さんはずいぶん天井の方を向いて演奏する人だとの印象ですが、このアンコールでは地面を向いて演奏する場面もありました。

後半のサン=サーンス交響曲第3番は名曲で、芸劇名物のパイプオルガンも大活躍。私はこの曲の緩徐楽章に相当する部分が好きです。弦の響きが素晴らしい。今日助っ人で来ていたフルートの女性の音色がやわらかくて綺麗な音だなあと感心しました。どなたなのでしょう? ただ前半の2曲があまりにも強烈な印象だったので、この曲は少し影が薄くなってしまった感じは否めません。

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2021年5月17日 (月)

防衛省のワクチン予約システム

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私は行ってないので、ウェブ情報の受け売りですが、
防衛省のワクチン予約システムは

#接種期間外でも予約可能
#どんな生年月日でも予約可能(まだ生まれていなくても)
#予約済の接種番号で予約すると先に予約した人がキャンセルされる
#実在しない番号でも予約可能
#誰でも何度でも予約可能
#予約完了後の番号を紙と鉛筆で記録する必要がある

だそうです。やれやれ・・・。

ちゃんとしたシステムなんて短期間でできるわけないのですから、
結局混乱を招くだけです。

どうすればいいのか? 電話番号の末尾で来る曜日を分け、来た人に整理券渡して「はいここまで、次の人はまたお越しください」で即日接種の方が圧倒的にシンプルでいいのでは。接種したら証明書と次に来るべき時期を書いた紙を渡す。

こんなゴミシステムの設計で巨万の富を得る会社があるなんてあきれます。

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2021年5月16日 (日)

まあそれじゃあ無理だから・・・

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情報速報ドットコム より
https://johosokuhou.com/2021/05/16/47115/

5月16日の時点で大阪府の病床使用率は327%(新型コロナウイルス対策ダッシュボード統計)となり、入院している患者の3倍に匹敵する人数が待機状態や自宅療養を続けているのが現状です。大阪府の発表だと自宅療養は1万人を超える水準が続き、入院調整中の患者と合わせて、1万5000人前後の数字に膨れ上がっていました。

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大阪がこれではまあオリパラは無理だろうな

というのが普通の人の考えですが、菅政権は好々爺のように見えて、実は危ない体質と思想がコアにあることを忘れてはいけません。多分断行する方向に動いているのでしょう。

 

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賞味期限を6年過ぎたトマ缶

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倉庫を整理していたら、賞味期限を6年も過ぎたトマ缶が3ダースくらい出てきました。災害用に購入してストックしたまま忘れてしまったようです。でもあまりにもったいないので飲んでみると、結構美味でいけるじゃないですか。いまもう1ダースくらい飲みましたが、特に体に変調は来していません。缶詰めは大丈夫なんですね。

 

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2021年5月14日 (金)

続・生物学茶話142: アメフラシとセロトニン

セロトニンはドーパミンと同様にユニバーサルな化合物で、動物(メタゾア)のみならず植物にも普通に見られるモノアミン化合物です。アメーバにも合成する種があります(1)。原核生物には合成するものが報告されていないようですが、ただ最近話題になっているのは、腸内細菌がセロトニン合成をサポートしているという報告です(2、3)。セロトニンは図142-1に示されるように、トリプトファンからわずか2ステップの反応で合成される化合物なので、おそらくみつかっていないだけで、原核生物にも合成できる種が存在するのではないかと思います。セロトニンは別名5-ハイドロキシトリプタミンで、論文ではこれを省略した5-HTという名称で記載される場合が多いように思います。

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図142-1 セロトニンの生合成経路

血清中に筋肉を収縮させる活性のあるホルモン様因子が存在することは20世紀初頭から知られていました。その第一候補はアドレナリンでしたが、件の因子が腸の平滑筋を収縮させるのに対してアドレナリンは弛緩させました。オコナーはこの因子が血漿では検出できないことから、血液凝固の過程で血小板から血清中に漏れ出したと考えました(4)。生きて活動している人物に血液凝固がおこるということは、その人が負傷したということです。負傷すると血管の平滑筋が収縮して出血を防ぐというのは、生命維持のために重要なメカニズムです。

このホルモン様因子の分子的実体はなかなか解明されませんでしたが、20世紀半ばになってようやくラポルト(図142-2)らによって、謎の血清因子がセロトニンであることが明らかにされました(5、6)。ラポルトらは900リットルのウシ血清から2~3mgの因子結晶を得て、構造を解明することができました。そしてエルスパメルらのグループがエンテラミンと呼んでいた胃粘膜由来の平滑筋収縮因子が同じ物であることがわかりました(7)。ラポルトが当時の苦労話を回顧した文献があります(8)。

そして1953年にはウェルシュ(重要な人物だと思いますが、写真がみつかりませんでした)らがセロトニンが神経伝達物質であることを示唆する論文を発表しています(9、10)。彼らは二枚貝のガングリオン(神経節)が心臓の拍動を制御するに際して、アセチルコリンが拍動抑制、セロトニンが拍動促進という役割を持っていると考えました。その後ファルク-ヒラープの方法(11)によってセロトニンも可視化され、神経細胞での存在が確認されました。

セロトニンが記憶の形成において重要な役割を果たしていることを示したのはエリック・カンデルです(12、図142-2)。エリック・カンデルは1929年にウィーンに生を得ましたが、ユダヤ系であったためホロコーストを逃れて、9才の時に米国に逃れました。ニューヨーク大学医学部を卒業し、NIHでヒトの脳の研究、特に記憶のメカニズムについて関心を持って研究していましたが、やがてヒトの脳は記憶の研究を行うには複雑すぎることを痛感し、パリに留学してアメフラシを材料として研究するトレーニングをしてもらい、帰国後再びニューヨーク大学で記憶の研究を始めました。カンデルのチームはここでCREB(cAMP response element binding protein)という転写調節因子が長期記憶の形成に関与していることをつきとめました。CREBについては別のセクションで述べる予定です。

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図142-2 ラポルトとカンデル

アメフラシは最近高校の教科書にも出てくるようですが、見かけたことがない方もいらっしゃるでしょう。ウミウシと近縁の生物で、貝殻を失った特殊な貝類です。めずらしい生物ではないので、磯遊びをしているとみかけることがあるかもしれません。ただウミウシのような極彩色ではないので目立ちません。日本のアメフラシは体長15cmくらいですが、米国にはかなり巨大なものもいるようです(図124-3、13)。危険を察知すると粘液を放出します。

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図142-3 アメフラシ

アメフラシの神経細胞体は直径が 0.2mm~1mmと桁違いに大きい上に、神経ネットワークがシンプルなので基礎研究に適しています(13)。カンデルらがこの生物を実験動物に選んだのは正解でした。アメフラシは呼吸するためにエラ(鰓)と水管を装備しており、水管から水を吸い込みエラに送り込んで呼吸しています。この水管を触ったり電気刺激したりすると水管を引っ込め、エラも収縮します。これはある種の反射作用です。さらに尾の部分を触ったり電気刺激したりすると、上記の反応に加えて尾も収縮させます(14、図142-4)。

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図142-4 アメフラシに刺激を与える実験

このような刺激による反応を解析するためには、神経のネットワークを知る必要があります。水管に刺激を与えると、それを感知した感覚ニューロンは水管とエラの運動ニューロンに、それぞれひとつのシナプスで連絡し、水管とエラの収縮を誘導します(14、図142-5A)。感覚ニューロンからは別途介在ニューロンにも信号が伝達されます(図142-5A)。ここではひとつだけ記してありますが、実際には複数の介在ニューロンが刺激の増幅や抑制に関与しています。

尾に刺激を与えると、それを感知した感覚ニューロンは運動ニューロンに連絡して、その運動ニューロンの働きで尾は収縮します。介在ニューロンはこのサーキットを制御する他、水管の運動ニューロンを刺激して水管を収縮させるという役割も受け持ちます(14、図142-5B)。関与する介在ニューロンは複数あり、その中には興奮性のものと抑制性のものがあります。水管を刺激した場合と異なり、尾の刺激に関してはサーキットが左右両側に存在します(図142-5B)。

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図142-5 アメフラシの神経ネットワーク

ある刺激を反復すると、その刺激になれてしまってしだいに反応が鈍くなる(馴化=habituation)というのは最も原始的な学習(記憶)です。アメフラシの神経ネットワークを使ってこの学習の実験ができます。どのくらいの強さや頻度で刺激を与えると馴化が起こるかというのは基本です。ある程度以上強い刺激をあたえると、それが何度繰り返されても馴化は起こらず、むしろ鋭敏化(=sensitization)がおこります。鋭敏化には介在ニューロンが放出するセロトニンがかかわっていることがわかっています(15)。刺激の間隔が長すぎると、前に刺激されたことは忘却して馴化がおこりません。いったん馴化がおこっても、ある時間が経過すると馴化は消滅し、もとどおりの反応にもどります。

このような馴化・鋭敏化・学習・記憶・忘却などは私たちも毎日経験しているところであり、神経ネットワークを持つ生物すべてに共通する現象であり、それを研究する基盤を確立したという意味もあってカンデルは、カールソン、グリーンガードと共に、2000年のノーベル生理学医学賞を受賞しました(16)。


参照

1)Wikipedia: serotonin
https://en.wikipedia.org/wiki/Serotonin

2)腸内フローララボ
https://www.om-x.co.jp/web/urara/2015-feb-1/

3)Stephanie A Flowers, Kristen M Ward, Crystal T Clark., The Gut Microbiome in Bipolar Disorder and Pharmacotherapy Management., Neuropsychobiology vol.79(1): pp.43-49. (2020) doi: 10.1159/000504496
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31722343/

4)O’Connor JM: Uber den Adrenalingehalt des Blutes. Arch Exp Pathol Pharmakol (founding name of “Naunyn-Schmiederberg’s Arch Pharmacol”), vol.67, pp.195-232.(1912)

5)Rapport MM, Green AA, Page IH: Crystalline serotonin., Science,vol.108, pp.329-330.(1948)

6)Rapport MM: Serum vasoconstrictor (serotonin). V. The presence of creatinine in the complex: a proposed structure of the vasoconstrictor principle. J Biol Chem,
vol.180, pp.961-969.(1949)

7)Erspamer V, Asero B: Identification of enteramine, the specific hormone of the enterochromaffin cell system, as5-hydroxytryptamine. Nature, vol.169, pp.800-801. (1952)

8)M M Rapport The discovery of serotonin., Perspect Biol Med. Winter 40(2):260-73.(1997)
doi: 10.1353/pbm.1997.0040.

9)Welsh JH: Excitation of the heart of Venus mercenaria.Naunyn-Schmiedebergs Arch Exp Pathol Pharmakol,vol.219, pp.23-29.(1953) doi: 10.1007/BF00246246.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/13099334/

10)Welsh JH, Taub R: The action of acetylcholine antagonists on the heart of Venus mercenaria. Br J Pharmacol Chemother, vol.8, pp.327-333.(1953)  doi: 10.1111/j.1476-5381.1953.tb00802.x
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1509281/

11)Falck B, Hillarp N. A, Thieme G, Torp A: Fluorescence of catechol amines and related compounds condensed with formaldehyde. J Histochem Cytochem,vol.10,pp.348-354.(1962)
doi: 10.1016/0361-9230(82)90113-7
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7172023/

12)Wikipedia: Eric Kandel
https://en.wikipedia.org/wiki/Eric_Kandel

13)ウィキペディア:アメフラシ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%95%E3%83%A9%E3%82%B7

14)D. Fioravante, E. G. Antzoulatos, and J. H. Byrne, Sensitization and Habituation: Invertebrate., DOI: 10.13140/2.1.3071.4561 (2008)
https://www.researchgate.net/publication/268523901_Sensitization_and_Habituation_Invertebrate

15)動物の生きるしくみ事典 学習:とくにアメフラシの場合
https://cns.neuroinf.jp/jscpb/wiki/%E5%AD%A6%E7%BF%92%EF%BC%9A%E3%81%A8%E3%81%8F%E3%81%AB%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%95%E3%83%A9%E3%82%B7%E3%81%AE%E5%A0%B4%E5%90%88

16)The Nobel Prize in Physiology or Medicine 2000 was awarded jointly to Arvid Carlsson, Paul Greengard and Eric R. Kandel "for their discoveries concerning signal transduction in the nervous system."
https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/2000/summary/

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2021年5月11日 (火)

新型コロナウィルスのRNAが逆転写されてゲノムに組み込まれるとは!!

SARS-CoV-2 RNA reverse-transcribed and integrated into the human genome
Liguo Zhang, Alexsia Richards, Andrew Khalil, Emile Wogram, Haiting Ma, Richard A. Young, Rudolf Jaenisch
doi: https://doi.org/10.1101/2020.12.12.422516
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.12.12.422516v1.full

(管理人による要約)英語論文が読める方は上記にアクセスされるようお勧めします。

新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)に感染した患者が、回復したにもかかわらず長期間にわたってPCR検査が陽性のままの場合があるという報告がある。我々はこのウィルスのRNAが逆転写されてヒトのゲノムに組み込まれ、その組み込まれたDNAの転写産物がPCR検査にひっかかって陽性の結果になるのではないかという仮説をたてて検証した。我々はこのウィルスRNAがヒトの遺伝子に内在するレトロトランスポゾンの逆転写酵素あるいはレトロウィルスの逆転写酵素によってDNAに逆転写されることを確認した。このことは逆転写されたウィルスDNAがヒトのゲノムに組み込まれ、その転写産物がPCR陽性の原因となっていることを示唆するものである。

(管理人による解説)

新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)はいわゆるRNAウィルスで、ホストに感染すると遺伝子RNA→鋳型RNA→遺伝子RNAの形で増殖するので、レトロウィルスのようにいったんDNAになってからRNAにもどるような過程を経ることはありません。しかし私たちの細胞にはRNAを鋳型にしてDNAをつくる酵素が存在し、またレトロウィルスに感染することもあるため、新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)の遺伝子RNAまたは鋳型RNAがDNAに逆転写されることもあり得ます。

DNAになってしまうと、ゲノムのDNAに組み込まれる可能性もあります。しかし組み込まれたDNAからウィルスができるわけではありません。ただたまたま転写されやすい場所に組み込まれるとRNAに転写される可能性はあります。そのRNAがPCR検査にひっかかるものと思われます。

裸のウィルスのRNAや逆転写されたDNAが無傷のまま細胞質に何時間もとどまっていることはほぼあり得ないので、おそらくゲノムに組み込まれるまでには断片化していると思われますが、それでもPCR検査にひっかかる可能性はあります。ゲノムに組み込まれる際に、その細胞に必要な遺伝子を破壊して組み込まれることがひとつのリスクです。神経細胞や心筋細胞など一生使う細胞が感染した場合には問題が発生するかもしれません。発がんの可能性も検討が必要になるでしょう。生殖細胞の場合、子孫の遺伝病の原因になる可能性があります。

もうひとつの問題は、mRNAワクチンのRNAが逆転写されてゲノムに組み込まれる可能性はどうなのだろうということです。もしこのRNAがレトロトランスポゾンの逆転写酵素でDNAになり得るのなら、このワクチンの安全性について再検討が必要だと思います。

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2021年5月10日 (月)

エベレストの頂上に隔離線を設置!

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エベレスト登山をめざすキャンプ(パブリックドドメイン)

ネパールのコロナ汚染は深刻らしく、エベレストのベースキャンプでもまずい事態になっているようです。ネパールはコロナ不況でエベレスト観光に力を入れているらしく、記録的な数の登山許可証を発行しているそうです。どこかの国の go to travel を思い起こします。反対側の中国では外国人の登山を禁止しているそうで、エベレスト頂上にも隔離線を引くとか・・・対照的です。

https://www.afpbb.com/articles/-/3345934

ベースキャンプなんてところはテントもキャビンも密ですし、気が緩んでマスクなしで話もするし、寒いので酒も飲む、という状況が容易に想像されます。

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2021年5月 7日 (金)

サイコパスが跳梁する日本

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写真は Bariston氏撮影の日本を代表するサイコパス 織田信長
https://news.livedoor.com/article/detail/13496118/

刑事事件マガジンによると
https://keiji-pro.com/magazine/10/

サイコパスは次のような特徴をもつとされています

1.表面上は口達者
2.利己的・自己中心的
3.自慢話をする
4.自分の非を認めない
5.結果至上主義
6.平然と嘘をつく
7.共感ができない
8.他人を操ろうとする
9.良心の欠如
10.刺激を求める

私もそうじゃないかなという人に何人か遭遇しました。学生時代私が活動していたサークルと同じ部屋に物理学研究会というのがあって、そこに数理関係の成績が抜群の天才らしき学生がいました。彼につかまるとものすごいスピードでいろいろ話をしてくれるのですが、こちらの話は一切聞かないのです。何か言ってもそれにたいする反応はゼロで、こちらが話し終わると、彼はそれまで自分が話していたことのつづきをしゃべるだけなのです。いつもにこやかで悪い人には見えませんでした。

学生実習をやる実験所に休憩室があって、そこで一休みしているとある研究者の方が話しかけてくるのですが、とても親切で話し好きな方で1時間くらい歓談してくれたのですが、後で考えてみると内容はすべて彼の自慢話で、私の話は全く聞いてくれていないことに気がつきました。この人もその後多少の付き合いがあったのですが、頼りになりそうな親切な感じの人でした。

サイコパスって褒められたり/おだてられたり/頼られたりすることが大好きなので、そうしている限りいい人なんです。間違っても自分を理解してもらおうと思ったりしてはいけません。

最近1~10の特徴をすべて兼ね備える人がいることに気がつきました。西の方の首長のYという方です。1、3、5、6、8などはある意味首長に向いているキャラなのかなとも思いました(橋下は政治家は嘘ついてナンボと言っているそうですし)。ただ今回のような事態になると悲劇です。自分の街がガダルカナル化していても、彼はそんな中でいかにすれば自分が英雄になれるかというベクトルでしか物事を判断することができません。

彼に比べればY子さんはまともで、オリパラがなければそこそこの対処ができていたのではないかと思います。ただ過去に有能でイノセントなリベラル政治家Eをだまし討ちにしたことは絶対に許せません。

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2021年5月 5日 (水)

続・生物学茶話141: ドーパミンの普遍性とその役割

GFP(Green fluorescent protein) はオワンクラゲから発見された青色の光を吸収して緑色の蛍光を発色するタンパク質で、下村脩らによって発見され、彼らにノーベル賞が授与されました。現在では様々な色の蛍光を出すツールが開発されています。中井淳一らはこのタンパク質の発色団を取り巻くβシートにカルシウムを結合するタンパク質であるカルモジュリンと、そのカルシウム感受性を増強するミオシン軽鎖キナーゼM13フラグメントを結合させ、さらに構造をモディファイして、マイクロモル以下の少量であってもカルシウムが存在すると強い蛍光を発する高感度プローブを開発しました(1、2、図141-1)。

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図141-1 蛍光カルシウムセンサーの構造

筋細胞が神経からの指令を受けて脱分極すると、小胞体からカルシウムが細胞質に一時的に放出されるので(3)、図141-1のようなカルシウムセンサーを発現させておくと収縮する筋細胞を容易に検出できます。蛍光顕微鏡にビデオ装置をつけて観察すれば、連続的な記録も可能です。図141-2はルフェーブルらがフリーで提供してくれている線虫C.エレガンスの筋肉の動画をキャプチャーしたものです(4)。

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図141-2 筋収縮を蛍光発光で検出する

宇佐美らはこのG-CaMPを用いて、C.エレガンスが前進から後退へと行動を変化させる際にドーパミン作動性ニューロンが関与していることを示しました(5、6)。現在ではC.エレガンスの302個の神経細胞のうち8個がドーパミン作動性の神経細胞であることがわかっていて(雌雄同体の場合)、それらはこの生物の行動にさまざまな役割を果たしていることが明らかとなっています(7)。さらに驚くべきことに、ドーパミンは散在神経系しかもたない刺胞動物のヒドラにおいても、細胞間の伝達物質としての役割を果たしていることが明らかになっています(8)。最近の研究結果ではヒドラにドーパミンを与えると睡眠が促進されるようです(9)。脳がない生物にも睡眠は必要で、ヒドラが眠ることは以前から知られていました。ドーパミンは軟体動物の中枢および末梢神経系でも神経伝達物質として役割を果たしています(10)。

昆虫はアドレナリン・ノルアドレナリン系の神経伝達はありませんが、ドーパミン系は存在します(11)。岡田らの研究によれば、沖縄産のトゲオオハリアリは巣の“構成員”が全て同じ大きさと形をしており、順位争いで勝ったアリが繁殖権を得て女王となります。一方、順位争いに負けたそれ以外のアリは働きアリとなり、姉妹である幼虫の養育にあたることで集団の拡大に貢献する、という順位性の社会システムを持っています。順位争いに勝ったアリ(将来の女王アリ)と負けたアリ(将来の働きアリ)の脳内のドーパミン量を調べたところ、女王になるアリでは脳内のドーパミン量が上昇していることが明らかになりました。また、働きアリに人為的にドーパミンを投与したところ、繁殖促進効果が見られました。このことからドーパミンはアリ集団において、序列関係とアリ社会の役割分担(繁殖/子育て)とをつなぐ生理物質であると示唆されました(12)。

神戸大学の北條らの研究によれば、ムラサキシジミ(図141-3)の幼虫はアリに蜜を与えてドーパミンを減少させ、彼らの行動を操って自分の周りに留め置き、寄生蜂に卵を産み付けられないように警護させるそうです(13)。かなり多くの種類のアリがムラサキシジミの作戦に乗って警護役をひきうけるそうです。実際蟻に警護されている幼虫には、寄生蜂は卵を産み付けることができません(14)。これは考えようによっては、蟻を薬物中毒にして行動意欲を低下させ、餌には困らないというジゴロ的生活を提供することによって用心棒の役割をさせるという恐るべきテクニックです。このようなムラサキシジミとアリの関係を共生と言うかどうかは微妙だと思います。

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図141-3 ムラサキシジミとアリ

ドーパミン系の神経細胞はホヤにもあることがわかっているので(15)、左右相称動物以前からはじまって、冠輪動物・脱皮動物・後口動物と非常にユニーバーサルに存在する情報伝達のツールであることは明らかです。そこでいよいよヒトの脳では、ドーパミンは何をやっているのかということになりますが、ここに突っ込むということは脳科学の中枢となる大魔宮に突入するということなので、とりあえずリーバーマンとロングの本(16、図141-4)を読んでおそるおそるドアを開けてみました。この本は一般向けの本ですが、非常にきちんと書いてあります。ただ非常に話題を広くとっているので、これを読了するには大量のドーパミンを放出する必要がありそうです。

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図141-4 リーバーマンとロングの著書

著者はドーパミンと対峙する因子として、H&N(here and now)物質をあげています。これはオキシトシン・バソプレシン・エンドルフィン・エンドカンビノイド・セロトニン・ノルアドレナリンなどで、これらはヒトに満足感を与える役割を持っています。ドーパミンは満足感は与えず、それを得るための行動を促す役割があるとしています。私なりにまとめてみました。

ドーパミンの役割

[何らかの行動を起こそうという意思]= ドーパミン放出 → 行動

[実際の報酬]-[予測された報酬]= 報酬予測誤差 = ドーパミン放出 → 記憶

[バラ色の未来]-[惨めな現状]= 未来現状誤差 = ドーパミン放出 → 行動

[薬物による快感]-[薬物がない状態]= 薬物への渇望 = ドーパミン放出 → 行動・薬物依存

ドーパミンが過剰になると、現在を犠牲にしても未来のために努力するという生き方をするようになり、この例として著者は最初に月面歩行を成し遂げたバズ・オルドリンをあげています。彼はドーパミン過剰のために、3度の離婚・うつ病・アルコール依存症・精神病での入院など苦い人生を送ることになりました。

一方ドーパミンが不足すると、ヒトは未来の計画をめざすための行動ができなくなり、現在の感情のままに行動しようとします。ADHD(注意欠陥・多動性障害)はその代表例です。

参照

1)J Nakai, M Ohkura, and K. Imoto., A high signal-to-noise Ca2+ probe composed of a single green fluorescent protein., Nature Biotechnology, vol.19, pp.137-141 (2001)
https://www.nature.com/articles/nbt0201_137#citeas

2)中井淳一、大倉正道 GFPを用いた蛍光カルシウムプローブG-CaMPの開発
比較生理化学 vol.19 no.2 pp.135-145 (2002)

3)遠藤實 筋細胞におけるカルシウム・イオン動員機構とその薬理 日薬理誌 vol.94, pp.329-338 (1989)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj1944/94/6/94_6_329/_pdf

4) Christophe Lefebvre et al., The ESCRT-II proteins are involved in shaping the sarcoplasmic reticulum in C. elegans., J Cell Sci vol.129 (7): pp.1490–1499.(2016)
https://journals.biologists.com/jcs/article/129/7/1490/56282/The-ESCRT-II-proteins-are-involved-in-shaping-the

5)Atsushi Usami, Keiko Gengyo-Ando, Yuko Nagamura, Yuka Yoshida, Norio Matsuki, Yuji Ikegaya, Junichi Nakai., Dynamic neuromuscular regulation in freely crawling C. elegans: High-resolution and large-scale in vivo Ca2+ imaging., Neurosci. Res., vol.71, p.e242 (2011) https://doi.org/10.1016/j.neures.2011.07.1058
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0168010211012417?via%3Dihub

6)宇佐美篤 学位論文要旨「ドパミンによる線虫 C.elegans の自発的な運動方向交替の調節」
http://gakui.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/data/h23/128357/128357-abst.pdf

7)Jason F. Cooper and Jeremy M. Van Raamsdonk, Modeling Parkinson’s Disease in C. elegans., Journal of Parkinson’s Disease vol.8, pp.17-32 (2018) DOI 10.3233/JPD-171258
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29480229/

8)M Carlberg, M Anctil., Biogenic amines in coelenterates., Comp Biochem Physiol C Comp Pharmacol Toxicol., vol.106(1): pp.1-9. (1993)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7903605/

9)Hiroyuki J. Kanaya et al., A sleep-like state in Hydra unravels conserved sleep mechanisms during the evolutionary development of the central nervous system., Science Advances 07 Oct 2020:
Vol. 6, no. 41, eabb9415 DOI: 10.1126/sciadv.abb9415
https://advances.sciencemag.org/content/6/41/eabb9415

10)宗岡洋二郎 軟体動物末梢系の神経伝達物質 動物生理 vol.1, no.2, pp.41-49 (1984)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hikakuseiriseika1984/1/2/1_2_41/_pdf/-char/ja

11)太田広人 昆虫生体アミン の分子薬理学的研究 日本農薬学会誌34(3),196−202(2009)
https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_10878322_po_ART0009199063.pdf?contentNo=1&alternativeNo=

12)岡田泰和 アリ社会の"序列" 脳内のドーパミンが制御 東京大学 総合情報 (2015)
https://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/news/topics/20150409093506.html

13)Masaru K. Hojo, Naomi E. Pierce, Kazuki Tsuji., Lycaenid Caterpillar Secretions Manipulate Attendant Ant BehaviorLycaenid Caterpillar Secretions Manipulate Attendant Ant Behavior., Curr Biol., vol.25, issue 17, pp.2260-2264 (2015)
https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(15)00819-2?_returnURL=https%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS0960982215008192%3Fshowall%3Dtrue

14)Yui Nakabayashi, Yukari Mochioka, Makoto Tokuda, Issei Ohshima., Mutualistic ants and parasitoid communities associated with a facultative myrmecophilous lycaenid, Arhopala japonica, and the effects of ant attendance on the avoidance of parasitism., Entomol. Sci., vo.23, no.3, pp.233-244 (2020) https://doi.org/10.1111/ens.12417
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/ens.12417

15)Takeo Horie et al., Regulatory cocktail fordopaminergic neurons in aprotovertebrate identified bywhole-embryo single-celltranscriptomics., Genes & Dev. vol.32: pp.1297-1302 (2018)
http://www.genesdev.org/cgi/doi/10.1101/gad.317669.118.
http://genesdev.cshlp.org/content/32/19-20/1297

16)ダニエル・リーバーマン、マイケル・ロング著 「The molecule of MORE」 邦題は図141-4の通り、翻訳:梅田智世 インターシフト 2020年刊行

 

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2021年5月 3日 (月)

インドから広がる変異株の危機

ネパールからの帰国者に、インドを凌駕する多数のコロナ感染者が出ています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_18428.html

ネパールはインドと非常に人の行き来が多く、現在感染爆発で危機的状態にあります。
そういえばネパール人がやっているカレー屋さんで、ネパールのラジオは本当につまらないので、インドの放送ばかり聴いているというような話を聞いたことがあります。

昔は日本の社会が嫌でバンコクで生活しているという人が多かったのですが、今はカトマンズに行く人が多いようで、日本との関係も思ったより深いのかもしれません。
そのうちバングラやパキスタンでもインド変異株が蔓延する可能性があります。もちろん日本も危ないので、空港検疫でなんとしても食い止めて欲しい。

Nepal

図のソース こちら

ただ日本の空港検疫には、監視が不十分という大きな弱点があるのが問題です。
https://this.kiji.is/761143377954619392

私は「無観客でオリパラ開催」論者だったのですが、大阪のガダルカナル化をみると心が折れました。もう無理ですね。

昨年からこれだけひどい状態が続いているのに、国や自治体は公的病院の新設とか考えていないようです。ていうかリストラ計画の変更もしないそうですから何をかいわんやです。

コロナ禍のなかでも病床削減💢
https://lite-ra.com/2021/05/post-5873.html

 

 

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2021年5月 2日 (日)

おかげさまでブログが16年目になりました

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サラとミーナはうちに来てから15年間ずっとロイヤルカナンの飼料で育ててきましたが、高齢のため嗅覚が弱くなって食いつきが悪くなってしまいました。そこでついに決断してユニチャームの三つ星グルメと銀のスプーンに変えることにしました。これは結構食いつきが良いことがわかって、これからは体重が増加してくれることを願っています。

 

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2021年5月 1日 (土)

アラン・ギルバート コロナに罹患するも無事生還

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都響の首席客演指揮者アラン・ギルバートがコロナから生還したようです。

フェイスブックからのメッセージ
https://www.facebook.com/GilbertConducts/

I am grateful to the many people who reached out to me over the past few weeks, and am happy to report that after a nearly-three-week stay in hospital, I am finally back home and reunited with my family. My experience has in a very personal way confirmed what we have known all along: COVID-19 is not to be trifled with. While recent news reports from the United States and elsewhere have been encouraging, the situation in many countries is still alarming and even catastrophic. I urge everyone to continue to take this virus seriously, and if you have not yet been vaccinated, please do so as soon as possible!

I will be taking the next weeks slowly as I rebuild my strength and work towards a full recovery. My thanks to everyone for their support and good wishes. I look forward to being in touch with you all again soon.

Alan

よかった よかった ご恢復おめでとうございます。

Beethoven: Overture to “Egmont”, op.84 / Alan GILBERT / Tokyo Metropolitan Symphony Orchestra
https://www.youtube.com/watch?v=zX_lJwoH6iY

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