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2021年4月30日 (金)

南西諸島で新種のゴキブリが発見されたそうです

Therea_petiveriana

この昆虫はなにでしょう? 

これは Therea petiveriana というゴキブリです。インドにいるらしいです。日本には57種類のゴキブリがいるそうですが、最近新種が2種みつかって59種類になりました。ゴキブリと言えばキッチンをごそごそしているというイメージですが、実はヒトの眼にふれることもなく、深山幽谷でひっそり朽ち木などを食べて生きている者も多いようです。

今回発見されたのはウスオビルリゴキブリとアカボシルリゴキブリで下の記事に写真も出ています。
https://www.yomiuri.co.jp/science/20201227-OYT1T50024/?from=yartcl_outbrain1

色の基調はブルーメタリックだそうですが、それが記事の写真ではよくわかりませんでした。残念。実物はとても美しいものなのでしょう。35年ぶりの新種発見だそうでおめでとうございます。

原著論文は https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33639723/

Shizuma Yanagisawa et al., Zool.Sci., vol.38, pp.90-102 (2021)

(写真は wikipedia より)

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2021年4月28日 (水)

日本語の破壊

日本語の乱れについて「ら」抜きというのがよく話題になりますが、私に言わせればそれは軽微なもので、ある種の進化のようでもあります。もっと深刻な乱れは他にあります。

たとえば図のようなメッセージがメールの添付書類を開こうとするときによく出てきますが、これ普通の日本語では「実行しないでください」という禁止命令がでているのですから、「はい」をクリックすると当然実行しない選択をしたことになりますが、実際には「はい」をクリックすると実行されます。

A_20210428111001

これは日本語を頭から否定する暴挙としか思えません。日本語では「やるな」と命令されて、その指令に従ってやらないときは「はい、やりません」と言うのです。 Yes, I don't. です。「絶対やるなよ」と言われてもあえてやるときは「いいえ、やります」No, I do. です。

つまり はい(Yes?) = I agree to your opinion ( or I obey your order ),

いいえ(No?) = I don't agree to your opinion  ( or I don't obey your order ) なのです

米英の習慣による日本語の破壊を許してはいけません。

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2021年4月27日 (火)

これはひどい 日本の空港検疫がゆるすぎる

Covid19ctpneumonia

新型コロナウィルスに犯された肺のCTスキャン(ウィキペディアより)

報道1930の情報で驚きました。なんと日本の空港では、新型コロナウィルスについてインドからの入国者の検疫を抗原検査でしかやっていないそうです。インドではトリプルミュータントまで発見されて、爆発的な感染が明らかになっているにもかかわらずです。これは信じられません。当然PCR検査をやっているものと思っていました。抗原検査がマイナスだとそのあと会食するくらいは大丈夫だと思いますが、何日かたてばウィルスが増えてきて感染可能になるかもしれません。空港ではインド経由の入国者については最大限の厳重な検疫が必要でしょう。

オーストラリアはすでに航空機の往来まで禁止しています。もしもこれでインド由来の変異種が日本国内で蔓延することになれば、政府は一体どのように責任をとるのでしょうか? いや責任とるなんてレベルじゃないですよ。

豪、インドからの直行便を停止 コロナ感染者急増受け(ロイター)
https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-australia-india-fligh-idJPL4N2MK1EW?il=0

空港検疫コロナ陽性で「行動歴インド」入国者急増!二重変異株が抗原検査すり抜け日本で蔓延か(日刊ゲンダイ)
https://news.yahoo.co.jp/articles/205a801b7380e873bd9ac31d95da08125bafdf2f

中国への貨物便のパイロットのお話というのを人づてに聞いてのですが、やはり中国に比べて日本の空港での検疫はゆるゆるだそうです。中国に着くと、すぐに係員が来てN95マスクを装着させられるそうです。

 

 

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2021年4月26日 (月)

続・生物学茶話140:ドーパミン受容体

ドーパミンの受容体はすべて細胞膜7回貫通型のGPCRであり、D1グループとD2グループとに大別されます(1、図140-1)。D1グループはGs(あるいはGq)とカップリングし、D2グループはGi(あるいはGo)とカップリングします。D1グループにはD1、D5、D2グループにはG2、G3、G4が所属し、それぞれのグループのアミノ酸配列にはホモロジーが存在します(2、図140-1)。

アドレナリンやアセチルコリンの場合と同様、ドーパミンにもcAMPの濃度を上昇させる方向に働く受容体と、低下させる方向に働くグループがあります。それぞれの神経伝達因子が、まるで地方分権のように、ある程度独立した自己制御機能を持っているようです。どうしてこのようなことになったかは、もちろん動物が進化していく上でやむをえない積み重ねであったということはもちろんですが、ドーパミン受容体が主に中枢神経系の特定領域に分布しているという局在の問題があるということと、ドーパミンはノルアドレナリンやアドレナリンの前駆体なので、ドーパミンによるシグナル伝達をノルアドレナリンやアドレナリンで制御するというのは無理があるということでしょう。ノルアドレナリンやアドレナリンを大量に合成すると、自動的にドーパミンも大量に合成することになります。アセチルコリンで制御しようとすると、ドーパミンだけでなくノルアドレナリンやアドレナリンの作用にも影響が及んでしまいます。最初から誰かが全体の制御回路を設計したとすれば、もっとスマートな制御様式を用意したに違いありません。

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図140-1 ドーパミン受容体の2つのグループ

図140-2にD1型のドーパミン受容体の構造を示しましたが、その他のすべてのドーパミン受容体もGPCRであり、細胞内側のループやC末が3量体Gタンパク質と結合しています。D1型の場合、ドーパミンは図140-2に示したいくつかのアミノ酸の働きで受容体にトラップされます(3)。

ドーパミンの生理作用はドーパミン自身が決めるのではなく、結合した受容体がどのようなGタンパク質と結合しているかによって決まります。ですからGタンパク質のαサブユニットがs型の場合アデニル酸シクラーゼの活性を上昇しさせることによってcAMP 濃度が上昇し、i型の場合アデニル酸シクラーゼの活性を抑制し、フォスフォジエステラーゼの活性を上昇させることによってcAMPが分解されその濃度は低下するなどという真逆な反応が起こることになります。

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図140-2 ドーパミンD1型受容体の構造(3)

ドーパミン受容体D1グループに結合するGs(Gαs)は受容体タンパク質のC末に、D2グループに結合するGi(Gαi)は5番目と6番目の膜貫通部位の間で細胞質に露出しているループ(IL-3、インナーループ3)の部分に結合していることがわかっています(4、図140-3)。D1型とD2型は脳内の分布に違いがあります(図140-3)。

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図140-3 ドーパミン受容体 D1型とD2型の比較

ドーパミンが受容体に結合するとGsやGiなどのGαタンパク質は結合しているGDPをGTPに変換し、複合体(Gβ・Gγ)から遊離してフリーとなり、細胞質内を移動して図140-4のような機能を行使します(5)。どんな機能が行使されるかは受容体の種類によって異なります。GPCRはヒトゲノムのなかに800種類以上の遺伝子が存在し、中には機能がまだわかっていないものもあります(6)。Gαタイプだけが機能を果たしているのではなく、Gβ・Gγもそれぞれ機能を果たしていると思われますが、Gαタイプと比べるとまだ未知の部分が多いようです。それぞれどんな手順で、どんな経路を経てこのような機能に繋がっているのかは脳科学の中心課題のひとつでしょう。

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図140-4 D1~D5のドーパミン受容体がかかわる生理機能

α型Gタンパク質のひとつGsの機能としてよく知られているのは、アデニル酸シクラーゼを活性化して図140-5の反応を促進し、cAMPの濃度を上昇させることです。cAMPが細胞外からの情報伝達物質のメッセージによって細胞内の生化学的プロセスを変動させる、いわゆるセカンドメッセンジャーの役割を果たしていることを明らかにしたエール・サザランドは1971年にノーベル生理学医学賞を受賞しました。彼は貧しい農家の出身で出身大学(カンザス州のウォッシュバン大学)も無名ですが、運良くセントルイスのワシントン大学の大学院でカール・コリ教授の薫陶をうけることによって未来が開けました(7)。第二次世界大戦では軍医を務めましたが、終戦後も病人の面倒を見る医師にはならず、研究の道に進み、cAMPの発見と機能の解明に貢献しました。

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図140-5 ATPからcAMPが形成される反応とエール・サザランド博士

アデニル酸シクラーゼは正式名称はアデニリルシクラーゼという細胞膜12回貫通タンパク質で、N末・C末共に細胞質側にあります(図140-6)。細菌・古細菌から私たちを含む真核生物までユニバーサルに存在する酵素であり、6つのファミリーに分類できます。同じ反応を行うにもかかわらず、これらのファミリー間の遺伝子の関連性は希薄な場合が多いようです(8、9)。おそらく非常に古い時代に分岐したと思われます。C末にGタンパク質と結合する部位があり、Gsで活性化されたりGiで抑制されたりするようです(9、図140-6)。図140-6はGs(緑色で表示)と結合しているときの構造です(9)。

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図140-6 アデニル酸シクラーゼの構造と結合するGs(9)

cAMPの作用で最もよく知られているのはプロテインキナーゼAの活性化です。Gタンパク質の影響でアデニル酸シクラーゼの活性が高まり、cAMPの濃度が上昇すると、不活性複合体を形成しているプロテインキナーゼAの制御タンパク質にcAMPが結合して、活性化されたプロテインキナーゼAが複合体から分離してさまざまなタンパク質のリン酸化をおこないます。ただ複合体が解体されるほどcAMPの濃度が高くない場合でも、ある程度の濃度に達すると複合体を形成したまま活性を発揮するとされています(10)。サダナとデサウアーはノックアウトマウスや過剰発現を駆使してアデニル酸シクラーゼ10種のアイソフォームの機能を解析しましたが、学習・記憶・神経の可塑性・オピオイド依存性と離脱・聴覚・精子成熟・心臓拍動・痛覚・カルシウム感受性・アルコール依存など非常に影響が広範に及ぶためになかなか解析が困難なようです(9)。

参照

1)Wikipedia: Dopamine receptor
https://en.wikipedia.org/wiki/Dopamine_receptor

2)Victor J. Martinez, Laureano D. Asico, Pedro A. Jose and Andrew C. Tiu., Lipid rafts and dopamine receptor signaling., Int. J. Molec. Sci., 21, pp.8909-8926 (2020) doi:10.3390/ijms21238909
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33255376/

3)Missale C, Nash SR, Robinson SW,  Jaber M, Caron MG., Dopamine receptors: from structure to function., Physiol Rev. vol. 78(1): pp. 189-225. (1998)https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9457173

4) Pratima Pandey, Mahlet D Mersha, Harbinder S Dhillon, A synergistic approach towards understanding the functional significance of dopamine receptor interactions., J. Mol. Signal., 2013;8:Art. 13. DOI: http://doi.org/10.1186/1750-2187-8-13
https://www.jmolecularsignaling.com/articles/10.1186/1750-2187-8-13/

5)A. Bhatia and J. Lenchner, Biochemistry, dopamine receptors., statpearls (2021)
https://www.statpearls.com/articlelibrary/viewarticle/20660/

6)脳科学辞典:Gタンパク質共役型受容体
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/G%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%91%E3%82%AF%E8%B3%AA%E5%85%B1%E5%BD%B9%E5%9E%8B%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93

7)Earl W. Sutherland., Hormon Action (Nobel Lecture), December 11, 1971
https://www.nobelprize.org/uploads/2018/06/sutherland-lecture.pdf

8)Wikipedia: Adenylyl cyclase
https://en.wikipedia.org/wiki/Adenylyl_cyclaseon

9)Sadana R, Dessauer CW, Physiological roles for G protein-regulated adenylyl cyclase isoforms: insights from knockout and overexpression studies. Neuro-Signals. vol.17 (1): pp.5–22. (2009) doi:10.1159/000166277.
https://www.karger.com/Article/Pdf/166277

10)Wikipedia: Protein kinase A
https://en.wikipedia.org/wiki/Protein_kinase_A

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2021年4月24日 (土)

日本学術会議の声明

この任命拒否問題は言論の自由という観点から見て非常に深刻な問題です。学術に携わる者すべてを敵に回してもこのようなことを行う政府というのは、根本的に学術が無用の長物であるという誤った思想にとりつかれた愚かな集団であることを自白しているようなものです。声明文を貼っておきます。

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内田樹(うちだたつる)氏ブログの引用:
http://blog.tatsuru.com/

日本のイディオクラシー より 

いまの日本はどうだろうか。
 為政者が「どうすれば国力を向上させ、国民の健康や安全や豊かさを実現できるのか」その道筋を考えることがもうできなくなった。最優先するのは自分の権力の維持である。そのためには国民の支持が必要なのだが、どうすることが公共の福祉に資するのかがわからない。
 しかたがないので、それが公共の福祉に資するかどうかわからないけれど、とりあえず「自分がやりたい」ことをやることにした。国民全体の利害を計る方法が思いつかないので、りあえず自分の周りにいる人間の利害だけを計ることにした。
 これが「イディオクラシー」である。指導者も有権者も、知性においても徳性においても、とくにすぐれているわけではないし、そうである必要もないという点ではデモクラシーとよく似ているが、指導者が国民の利害を配慮する努力を放棄したという点が新しい。
 驚くべきことは、それを少なからぬ国民が支持しているということである。
 支持する理由は、イディオクラシーは仕組みがひどくシンプルだからである。
 指導者は国民の利害を配慮していないけれど、「取り巻き」の利害は配慮してくれる。だから、権力者の「取り巻き」になれば、自分一個の利益は実現し、権力の恩沢に浴することができる。権力者の縁故者がそのまま「公人」として遇され、そこに公金が投じられ、公的支援が集中する。
 「桜を見る会」の招待基準を訊かれて、当時官房長官だった菅は、「各界で功績のあった人を幅広く招待している」と説明した。「各界で功績のあった人」の中には後援会の会員や安倍支持を公言する言論人や芸能人たちが大量に含まれていた。
 このときに「権力者に近い人間=公人=公的な支援を受ける資格のある人間」という新しい基準が確定した。かつては「国民の利害」というものが独立した概念が存在した。いまはもうそのようなものはない。「集合的な利害」というような複雑で規模の大きなものを構想する知力がなくなってしまったからである。それよりは「個人の利害」を優先させる。こちらの方が話が簡単だ。
 国が滅びても、自分の私腹が肥えるなら別に困らないという人たちの数がもう少し増えて、過半を超えた頃に日本のイディオクラシーはその完成を見るだろう。これは『1984』的ディストピアとはまったく別種のディストピアである。

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2021年4月23日 (金)

ベランダに咲く「ジャクリーヌ・デュプレ」

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ベランダに咲く「ジャクリーヌ・デュプレ」

まだバラの季節にはちょっと早いのですが、ジャクリーヌ・デュプレが咲いてしまいました。これは英国の苗屋さんが、1987年に若くして亡くなった名チェリスト:ジャクリーヌ・デュプレの思い出に制作したバラの品種です。大輪の花ですが色は白で、清々しさも感じられます。

ジャクリーヌ・デュプレの演奏
https://www.youtube.com/watch?v=5jgIglWnPUI

バラの物語・つるバラの名花‘ジャクリーヌ・デュ・プレ’
https://gardenstory.jp/lifestyle/13908




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2021年4月21日 (水)

ついに始動 ノババックス社製本格派ワクチン

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ファイザーやモデルナのワクチンはmRNAだと言っていますが、そうではなくてUを1メチルψUに変えた奇妙な核酸で、mRNAと同様な翻訳機構で抗原が製造されていることは確かですが、その他のことはよくわかりません。アストラゼネカの製品は、コロナのスパイクタンパク質だけでなく、その担体であるアデノウィルスの抗体ができてしまうという難点があります。やめたほうがいいですね。

ワクチン接種するならやはり抗原を打つのが王道です。これでも100%安全というわけではありませんが、永年利用してきたという実績と経験があるので、信頼性は圧倒的に高いでしょう。先陣を切ったのは米国のノババックス社。下請けは富士フイルムの米国子会社で、日本では武田薬品が供給することになっているようです。政府はファイザーやモデルナではなく、このノババックスの製品を買い付けるべきです。同様な製品を塩野義でも製造するはずでしたが、こちらはまだまだ時間がかかりそうです。

抗 SARS-CoV-2 組み替えタンパク質ワクチン

Novavax社製ワクチン
ワクチン生産工場は4月までに完全に稼働可能となる見通し。
https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-vaccines-novavax-idJPKBN2B334D

Novavax社と武田薬品による日本における新型コロナウイルス感染症ワクチンに関する提携について
https://www.takeda.com/jp/newsroom/newsreleases/2020/20200807-8192/

フジフイルム・ダイオシンス・バイオテクノロジーズ
Novavax社より新型コロナウイルス感染症のワクチン候補の原薬製造を受託
https://www.fujifilm.com/jp/ja/news/list/5250#

富士フイルム 新型コロナウイルス感染症への取り組み
https://brand.fujifilm.com/covid19/jp/

富士フイルム アビガンを中国で展開
https://www.fujifilm.com/jp/ja/news/list/5590#

国産ワクチン年内供給困難に 塩野義製薬、大規模治験難しく
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/210316/mca2103161710029-n1.htm






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2021年4月20日 (火)

続・生物学茶話139: パーキンソン病とドーパミン

医師であると同時に作家でもあったオリバー・サックスは、自分が慢性神経病患者にL-ドーパを投与した経験を、ノンフィクションとして出版しました。L-ドーパは少なくとも一時的には多くの患者に劇的な症状の改善をもたらしました。これをもとにした映画「Awakenings-邦題:レナードの朝」をご覧になった方は多いでしょう。ロバート・デ・ニーロの代表作のひとつです。

本来の神経伝達物質はドーパミンなのですが、ドーパミンは血液中から脳の神経細胞に移動することができないので、前駆体であるL-ドーパを投与したわけです(図139-1)。図139-1のようにドーパミンは自身が神経伝達物質であると同時に、ノルアドレナリンやアドレナリンの前駆物質でもあります。そういう事情もあって、20世紀の半ば頃までドーパミン自身が生理的に重要な作用を持つ物質であるとは考えられていませんでした。

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図139-1 ドーパミンの生合成経路

ロンドン近郊の病院の研究室に勤務していたモンタギュー(図139-2)は、1957年8月に、人を含む数種の生物の脳などの組織にドーパミンが存在し、これはアドレナリンやノルアドレナリンのように季節によって変動することはないと報告しました(1)。この1957年の論文がドーパミン自体の意義に関する最初の報告とされています(2)。カールソン(図139-2)らもモンタギューに遅れ1957年の11月に論文を出版していますが、彼らの報告にはモンタギューの論文は引用されていません(3、4)。データもきちんと示されておらず、おそらく慌てふためいて学会アブストラクトのような論文を書いたものと思われます。これはフェアーな態度ではありません。ウィキペディアでも、カールソンはしばしば「自分が最初に人の脳にドーパミンが存在することを示した」と発言していると批判されています(2)。その後カールソンはドーパミンなど神経伝達物質の機能に関して詳細な研究を行ない、2000年にノーベル生理学医学賞を受賞しました(5)。彼が1994年に日本国際賞を受賞した際の講演要旨が日本語で読めます(6)。この講演でも彼はモンタギューについて全く触れていません。

ファルクとヒラープはファルク・ヒラープ蛍光法というモノアミンを高精度で検出する方法を開発し、モノアミンが神経伝達物質であることの証明に絶大な貢献をしました(7、図139-2)。ノーベル委員会もカールソンにノーベル賞を授与する際に「It was not Arvid Carlsson who had discovered that dopamine is a signal substance in the central nervous system」と述べているそうです(8)。ファルク・ヒラープ法による研究の実例をひとつ引用しておきます。この滋賀医科大学のグループの論文では、ジュウシマツの膵臓に3種のモノアミン含有細胞が存在することが示されています(9)。

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図139-2 ドーパミンの生理的意義の解明に貢献した研究者達

ホーニケヴィッツはパーキンソン病の原因が、脳におけるドーパミンの減少によるものであることを証明しました(10、11、図139-2)。また前駆体のL-ドーパの投与によって症状が改善されることを示しました(12)。脳におけるドーパミン作動性ニューロンは大脳基底核の一部である黒質(図139-3)に特に多いことが知られています。この部分は尾状核(図139-3)などを通じで大脳皮質の運動野などと連携し、人間の動作をコントロールしている部位です。脳の特定の部位でドーパミンが減少しているということは、その部分のドーパミン作動性ニューロンが変性または死滅していることを意味します。図139-3は wikipedia(13)および Akira Magazine (14)の図表をもとに制作しました。

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図139-3 大脳基底核の位置とその構成要素(赤い部分が基底核)

ホーニケヴィッツが子供の頃住んでいたポーランドの街(現在はウクライナ)はドイツ軍とロシア軍の攻撃をうけ、家族と彼は着の身着のままウィーンに逃れましたが、当地もやがて両軍の死闘で街と郊外に4万人の兵士の死体が散乱するという状況になりました。ホーニケヴィッツはユダヤ系ではなかったので、どうにかゲットー行きは免れました。戦後彼は半ば廃墟となったウィーン大学医学部に入学し、卒業後は薬学部でポストドクをやって、1956~1958年にはオックスフォード大学の薬学部に留学しています。そこでブラシュコに「ドーパミンは単なるアドレナリン・ノルアドレナリンを合成するための中間産物ではなく、それ自身が何かやっているはずだ」という仮説をたたき込まれました。ブラシュコはホルツが1942年に発表したドーパミンに血圧を下げる作用があるという実験結果(15)を重視していました。ホーニケヴィッツはホルツの実験の追試を行い、L-ドーパを使っても同様な結果を得られるなどの追加情報も得ることができました。オックスフォードを離れるホーニケヴィッツにブラシュコは「ドーパミンの仕事を続ければ君には輝かしい未来が待っている」とアドバイスをしましたが、ホーニケヴィッツはその通りを実行したわけです(12)。

ホーニケヴィッツがオックスフォードを離れる前に、モンタギューがドーパミンが脳に存在するという論文を発表しました(1)。ホーニケヴィッツはウィーンに戻り、カールソンの研究室で開発されたカラムクロマトグラフィーと新発売の分光蛍光光度計を使って脳のドーパミンの測定にとりかかりました。ちょうどこの頃(1959年)に バートラーとローゼングレンがイヌの線条体(corpus striatum)に高濃度で存在するという論文を出版しました(16)。線条体は行動に関与している脳の部位です。このことはヒトの大脳基底核障害とりわけパーキンソン病にドーパミンが関係しているのではないかということを示唆するものでした。

1959年の春、ホーニケヴィッツは幸運にもパーキンソン病で死去した患者の新鮮な脳を手に入れることができて、この脳にはドーパミンが不足していることがはっきりとわかりました。それから1年かけて彼らは17例の正常対照例、2例のハンチントン舞踏病、6例の原因不明の錐体外路障害、6例のパーキンソン病、2例の正常新生児、1例の幼児の脳を収集することができました。これらを解析すると、パーキンソン病で死去した患者の脳の尾状核と被殻にだけ著しいドーパミンの減少がみられることが明らかになりました(10)。これによってドーパミンの不足とパーキンソン病との関係がはっきりしたので、血液-脳関門を通過することができる前駆体L-ドーパの投与が有効な治療法であることがわかりました。L-ドーパあるいはアゴニストの投与は、現在でもパーキンソン病の有力な治療法です。

パーキンソン病はジェームズ・パーキンソンによって1817年に6つの症例を shaking palsy と言う名前で報告されています(17)。この報告はジャン=マルタン・シャルコーによって再評価され、パーキンソン病と呼ばれるようになりました(18)。図139-4はウィキペディアに掲載されていた、1886年に描かれたパーキンソン病患者が歩行する様子です(19)。ウィキペディアのパーキンソン病の項目は160もの論文を引用した大著ですが、なんと2021年4月19日の時点で、ホーニケヴィッツの論文も、カールソンの論文も引用されていません(20)。なぜなのか投稿者に訊いてみたい気がします。

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図139-4 パーキンソン病患者が歩行する様子

参照

1)K.A. Montagu, Catechol Compounds in Rat Tissues and in Brains of Different Animals. Nature vol.180, pp.244-245 (1957)
https://www.nature.com/articles/180244a0

2)Wikipedia: Kathleen Montagu: 
https://en.wikipedia.org/wiki/Kathleen_Montagu

3)A. Carlsson, M. Lindqvist, T. Magnusson., 3,4-Dihydroxyphenylalanine and 5-Hydroxytryptophan as Reserpine Antagonists., Nature, vol. 180, p.1200 (1957)

4)A. Carlsson et al., On the presence of 3-hydroxytyramine in brain. Science vol. 127, p. 471 (1958)
http://science.sciencemag.org/content/127/3296/471.1.long

5)The novel prize. Avid Carlsson Biographical.
https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/2000/carlsson/biographical/

6)1994年 日本国際賞受賞記念講演会 脳におけるドパミンの研究: 過去、現在及び将来  アーヴィド・カールソン博士
http://www.japanprize.jp/data/prize/summary/1994_j.pdf

7)Falck B, Hillarp N-A, Thieme G, Torp A., "Fluorescence of catechol amines and related compounds condensed with formaldehyde"., J. Histochem. Cytochem. vol. 10 (3): pp. 348?354. doi:10.1177/10.3.348 (1962)

8)Wikipedia: Nils-Ake Hillarp
https://en.wikipedia.org/wiki/Nils-%C3%85ke_Hillarp

9)Katsuko KATAOKA, Keisuke SHIMIZU and Junzo OCHI., Fluorescence Histochemical Demonstration of Monoamine-Containing Cells in the Pancreas of the Finch, Uroloncha striatavar. domestica. A Preliminary Study., Arch. histol. jap., Vol. 40, No. 5, pp. 431-433 (1977)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/aohc1950/40/5/40_5_431/_pdf

10)Hornykiewicz O. Topography and behaviour of noradrenaline and dopamine (3-hydroxytyramine) in the substantia nigra of normal and Parkinsonian patients.(In German) Wien Klin Wochenschr vol.75: pp.309-312 (1963)

11)Hornykiewicz O. Dopamine (3-hydroxytyramine) and brain function. Pharmacol Rev vol. 18: pp. 925-964. (1966)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/5328389/

12)Oleh Hornykiewicz., Some Thoughts on Memories., The History of Neuroscience in Autobiography. Vol. 4, Ed. L. R. Squire, Academic Press (2004)
file:///C:/Users/morph/AppData/Local/Temp/c7.pdf

13)Wikipedia: Basal ganglia
https://en.wikipedia.org/wiki/Basal_ganglia

14)Akira Magazine 大脳基底核のおはなし
https://www.akira3132.info/basal_ganglia.html

15)Holtz P and Credner K. Die enzymatische Entstehung von Oxytyramin im Organismus und die physiologische Bedeu-tung der Dopadecarboxylase. Naunyn Schmiedebergs Archivfur experimentelle Pathologie und Pharmakologie vo.200, pp.356-588 (1942)

16)A. Bertler & E. Rosengren, Occurrence and distribution of dopamine in brain and other tissues., Experientia vol.15, pp.10–11 (1959)
https://link.springer.com/article/10.1007/BF02157069

17)James Parkinson, An essay on the shaking palsy.
http://visualiseur.bnf.fr/Visualiseur?Destination=Gallica&O=NUMM-98765

18)ウィキペディア:ジャン=マルタン・シャルコー
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3%EF%BC%9D%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%BC

19)Wikipedia: Parkinson's disease
https://en.wikipedia.org/wiki/Parkinson%27s_disease

20)ウィキペディア: パーキンソン病
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%B3%E7%97%85

 

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2021年4月18日 (日)

サラとミーナ246: 新しいソファ

サラとミーナの乱暴狼藉、といっても猫の習性なので仕方ないのですが、ソファが破壊されたので廃棄しました。これが結構大変で、普通粗大ゴミは市と契約した業者が有料(1000円くらい)で廃棄してくれるのですが、スプリングや金属フレームがはいっているものは廃棄できないということで、なんと民間の産廃業者に頼まなければいけないのです。そのためには裏返してカッターで布を切断し、内部の構造を確認しなければいけません。そうすると金属フレームがあったので、結局産廃業者に頼むことになりました。¥4000円かかりました。

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さてサラとミーナ、どちらのテリトリーになるのでしょうか?

 

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2021年4月15日 (木)

トリチウムは放射性物質であり、風評被害だけでなく実害もあります

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福島第一原発が事故処理で出たトリチウムを海に放出することが決まりました。このことが特段に危険なことかというと、そうではありません(トリチウム以外の核種がきちんと取り除ければの話ですが)。フランスのラ・アーグ核燃料再処理施設からは年間1京ベクレル以上のトリチウムが放出されており、こんな超弩級の放出に比べれば、兆レベルの福島の排出など可愛いものだという見方もできます。厚労省が制作したゆるきゃら(上図 トリチウム君?)はそういう意味かもしれません。しかし日本は青森県の六ヶ所村にラ・アーグのような再処理施設を3兆円かけてほぼ完成させており、ここが稼働するとラ・アーグと同様な超弩級のトリチウム排出が行われると思われます。圧倒的に危険なボスキャラは六ヶ所村再処理工場です。

トリチウムは外部被曝はほぼないと言われていますが、内部被曝は確実にあります。核燃料の再処理は確実に地球を汚染し、人間も含めて地球上のあらゆる生物の遺伝子に悪影響を与えます。マスコミは風評被害という言葉を連呼しますが、これはとても危険なことです。トリチウムに実害はないという誤ったイメージを国民の脳に刷り込む効果があるからです。私は信心深い方じゃないので「神への冒涜」とは言いませんが、大量の放射性物質を垂れ流して自然を汚染すれば、当然癌は増えますし、生物相にも影響が出るでしょう。

だいたい外部被曝はないということになっていますが、本当にないのでしょうか? 確かにトリチウムが出すβ線は紙1枚で遮蔽できますが、じゃあ紙1枚がなかったらどうなるの? という話です。たとえば霧が出ると、霧は鼻粘膜とか気管支や食道に吸い込んでしまうので、外部被曝もありそうです。皮膚の表層の細胞や髪の毛の細胞は、ほぼ死んでいる細胞といってもいいのですが、メラノサイトなど一部生きている細胞も表層にあるので、これらがトリチウムのβ線に反応しても不思議ではありません。

6年前に私が書いた記事は、もうソースはリンク切れになっていますが再掲しておきます。

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週刊プレイボーイ編集部と菅直人元総理らは、福島第一原発の沖 1.5kmに船を出して、原発周辺の謎の霧観察や海水のサンプリングを行い、長崎大学大学院工学研究科の小川進教授らと共に分析しました。

少し記事を引用します。
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船上取材に同行した放射線知識が豊富な「南相馬特定避難推奨地域の会」小澤洋一氏も、後日、あれは気になる現象だったと話してくれた。「私は昔から海へ出る機会が多いのですが、フクイチだけに濃い霧がかかる現象は記憶にありません。凍土遮水壁の影響で部分的に地上気温が下がっているとも考えられますが、トリチウムが出ているのは事実なので、その作用で霧が発生する可能性は大いにあると思います。だとすれば、あの船上で起きた“気になる出来事”にも関係しているかもしれません」

その出来事とは、取材班全員が短時間のうちにひどく“日焼け”したことだ。フクイチ沖を離れた後、我々は楢葉町の沖合20㎞で実験稼働している大型風力発電設備「ふくしま未来」の視察に向かった。この時は薄日は差したが、取材班数名は船酔いでずっとキャビンにこもっていたにもかかわらず、久之浜に帰港した時には、菅氏とK秘書、取材スタッフ全員の顔と腕は妙に赤黒く変わっていた。つまり、曇り状態のフクイチ沖にいた時間にも“日焼け”したとしか考えられないのだ。
--------------------------------引用終了

トリチウムのβ崩壊

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トリチウムはDNAに取り込まれたあと、上記のようにβ崩壊してヘリウムを生成するので、その部分のDNAが壊れ(水素がはいっているはずなのに、ヘリウムがはいっている分子に変わってしまう)、突然変異が誘起されます。実際はるか昔から実験的に突然変異が発生することはわかっていました。それ以外にも、分子レベルの距離ではトリチウムのβ線は分子を破壊するだけのパワーを持っています。トリチウムは水の水素にかわることができるので、体のあらゆる部分で破壊活動を行うことができます。

皮膚にβ線(電子)がぶつかることによって、紫外線(電磁波)と同様皮膚が焼けて日焼けになったのでしょう。トリチウム焼けが日焼けより始末が悪いのは、気管支や食道に霧などに含まれるトリチウムを吸い込むと、それらの臓器まで焼けてしまうことで、つまりクリームやファウンデーションでは防げないということです。気管支や食道が日焼けすると癌が発生する可能性が高まると思われます。ともかく福島第一原発には無防備では接近すべきではないでしょう。

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六ヶ所村の再処理をやめるには、原子力発電をやめなければいけないのですが(現在はラ・アーグまで運んで再処理してもらっている)、福島第一原発の事故処理水はどこかに置いておけば済むことなので、実はそんなに困難なことではありません。場所さえ見つければ良いのです。150年くらい保管すればすべて崩壊して無害になるので、プルトニウムのような気の遠くなるような話ではありません。山林を買うか、タンカーを買うかで解決することです。小出裕章氏は船で新潟まで輸送して、柏崎刈羽原発の敷地に保管すれば良いとおっしゃってました。

とめよう!六ヶ所再処理工場(原子力資料情報室)
https://cnic.jp/knowledgeidx/rokkasho

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2021年4月13日 (火)

続・生物学茶話138: GPCRの進化

これからもGPCR(G protein-coupled receptor)にはたっぷりと付き合わないといけないと思いますので、このあたりで少し整理しておます。まず代表としてウィキペディアにあった牛のロドプシンの立体構造図を表示します(1、図138-1)。ロドプシンはGPCRの中では最もシンプルなもののひとつです。なぜなら光による構造変化がその仕事なので、リガンドをキャッチする細胞外のN末部分がいらないからです。それでも細胞膜を7つのαヘリックス(1番から7番まで番号がついています)によって7回貫通する構造、3量体Gタンパク質を保持する細胞内の構造というGPCRとしての基本ははずしていません。GPCRはかならずN末を細胞外に、C末を細胞内に露出します。

ロドプシンと似た構造を持つタンパク質はすでに真核生物以前の段階で認められています。ただし古細菌のバクテリオロドプシンは7回貫通構造はあるものの、Gタンパク質を結合することはできません。なぜなら彼らのタンパク質は情報伝達を行っているのではなく、光エネルギーによってプロトンを細胞外に排出し、細胞内外のプロトンの濃度差を利用してATPを合成する目的で機能するなど情報伝達以外の多彩な機能を持つものです。詳しくは拙稿をご覧ください(2)。

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図138-1 ウシロドプシンの構造

図138-2は一般的なGPCRの分類を示しています。ヒトゲノムには約350種類のGPCR遺伝子があるそうです(3)。この中にはまだ機能が不明なものも多いようなので、研究が進展すれば分類法も変わるかもしれません。

クラスAはシンプルな構造のロドプシンに近縁のタンパク質群で、細胞外のN末部分、細胞内のC末部分共に特に長くはないグループです。クラスBは細胞外のN末部分に長いリガンド結合部位を持つタイプのグループです。リガンドがペプチドの場合、それを認識する部位のサイズが大きくなるのはやむをえません。クラスCは2量体を形成していて、さらにN末・C末部分が共に長いという特徴があります(4、5)。クラスCのN末ドメインは細菌時代の祖先タンパク質から構造が保存されているというのは驚きです。とはいっても細菌にクラスCのGPCRがあるわけではなく、アミノ酸の輸送など全く別の機能を持つタンパクだそうですが(5)。

一般的に言って図138-2の分類は細胞の外側部分の特徴によるもの、すなわちリガンドの種類に即した構造によってわけられているもので、細胞内のC末部分による機能の違いは考慮していません。したがって細胞内部分に結合するGタンパク質の違いによって、機能が正反対になることもあり得ます。

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図138-2 GPCRの分類

ここでウィキペディアの図を使ってGPCRの動作機構を復習しておきましょう。図138-3は私が日本語キャプションを追加したものです。細胞外のリガンドを受け取ったGPCRは構造変化をおこし、その結果Gαに結合していたGDPがはずれ、代わりにGTPが結合します。GTPが結合したGαはGβγと解離し、GPCRからも離れてシグナリング活動を行います。同時にGβγも独自に活動します。Gタンパク質が離れたGPCRはリガンドを解離します。Gαに結合していたGTPが加水分解されGDPになると、Gαは再びGβγを結合し、さらにGPCRと結合してスタンバイ態勢にはいります(1、図138-3)。

GβとGγは強固に結合しており、その主たる機能はGαの活動を制御することにあると思われますが、独自にフォスフォリパーゼ活性やイオンチャネル活性を制御するとも言われています(6)。

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図138-3 GPCRの動作機構

文献(5)によると、哺乳類のGタンパク質α、β、γはそれぞれ20種類、6種類、12種類前後あるとされており、同じリガンドがやってきても、細胞内ドメインに結合しているGタンパク質の種類が変わると、異なる生理作用が発動されることがあります。ですからGタンパク質の分布によって、ある臓器では促進、別の臓器では抑制という結果になることもあり得ます。

図138-4では大まかなGαタンパク質の分類とそれぞれの作用を記しています。Gsのsは stimulation を意味し、アデニル酸シクラーゼを活性化します。その結果増加したcAMPはプロテインキナーゼAを活性化することによって、細胞の代謝に広範な影響を与えます。Gi/oのi/oは inhibitory/others を意味し、アデニル酸シクラーゼの活性を抑制し、フォスフォジエステラーゼを活性化することにより、Gsとは逆の効果を持ちます。Gq/11、G12/13もそれぞれ図138-4のような作用があります。それぞれの詳細な作用機構についてはここではふれませんが、詳しく知りたい方は文献(7)などをご覧ください。また後にここでも取り扱うことがあるでしょう。

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図138-4 Gαタンパク質の分類

ここでは動物(メタゾア)におけるGPCRの起源についてみていきましょう。私たちは左右相称動物の一員ですが、左右相称動物が出現する以前に地球上に存在したと考えられているのは、図138-5に代表例を示した4つのグループ、すなわち海綿動物・刺胞動物・有櫛動物・平板動物の各門に所属する動物です。

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図138-5 左右相称動物出現以前から存在していたと思われる動物

Krishnan、Schiöth らはこれらの動物のGPCRを調べました(8、9)。その結果驚くべきことに、これらの動物も、私たちと同様クラスA・B・C・DすべてのGPCRを持っていることが明らかになりました。それも1つ2つではなく、すべての門の生物が非常に多くの種類のGPCRを利用していることが明らかになりました(図138-6)。注目すべきはメタゾアに最も近いとされている単細胞生物(原生生物)の襟鞭毛虫もGPCRを持っていることです。しかし彼らのカタログからはクラスAが欠けています(図138-6)。これは多細胞生物が出現することとクラスAのGPCRが関連していることを示唆していますが、さらなる研究が待たれます。

海綿動物や平板動物のように神経系を持たない生物もGPCRを保有しているということは、メタゾアにおけるGPCRの出発点は情報伝達にあるのではなく、細胞接着などの機能によって多細胞生物としての最低限の形態を維持するなど別個の機能だったということが示唆されます。

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図138-6 左右相称動物より古くから存在する動物のGPCR

原生生物ばかりか細菌もバクテリオロドプシンという膜7回貫通タンパク質を持っていることが知られています(10)。このタンパク質はプロトンポンプであり、光エネルギーを化学エネルギーに変換する上で重要な働きを持っています。最近クロロフィルを用いた光合成機構を獲得したシアノバクテリアにもロドプシンが存在することが明らかになりました(11)。酵母には数個、植物には十数個のGPCR遺伝子が存在することが知られています(12)。de Mendoza らはGαタンパク質について大規模な調査を行い、メタゾア・真菌・アメーバ・バイコンタ一般などあらゆる真核生物にこのタンパク質が存在することを明らかにしました(13)。つまり真核生物のGPCRはGαと共同して機能してきたことが示唆されます。こうしてみると、GPCRはまさに10億年以上の生物の歴史の中で、ずっとその活動を支えてきた伝統の分子と言えます。

参照

1)Wikipedia: GPCR
https://en.wikipedia.org/wiki/G_protein-coupled_receptor

2)続・生物学茶話 112: 光を感じるタンパク質
http://morph.way-nifty.com/grey/2020/09/post-453128.html

3)群馬大学 若松研究室HP
https://sites.google.com/a/gunma-u.ac.jp/wakamatsu-lab/home/research/gpcr

4)構造生物学:ついに明らかになったクラスC GPCRの構造 (2019)
https://www.natureasia.com/ja-jp/nature/highlights/96234

5)天野剛志・廣明秀一、領域融合レビュー, 2, e003 (2013)DOI: 10.7875/leading.author.2.e003 (2013)
https://dbarchive.biosciencedbc.jp/data/leading_authors/data/Doc/Hiroaki-2.e003-PDF.pdf

6)ウィキペディア: Gタンパク質
https://ja.wikipedia.org/wiki/G%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%91%E3%82%AF%E8%B3%AA

7)A. Inoue et al., Illuminating G-Protein-Coupling Selectivity of GPCRs., Cell vol.177, pp.1933–1947 (2019)
https://doi.org/10.1016/j.cell.2019.04.044

8)Krishnan, A., Almén, M. S., Fredriksson, R. and Schiöth, H. B. (2012). The origin of
GPCRs: identification of mammalian like Rhodopsin, Adhesion, Glutamate and Frizzled GPCRs in fungi. PLoS ONE 7, e29817.
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0029817

9)Arunkumar Krishnan and Helgi B. Schiöth, The role of G protein-coupled receptors in the early evolution of neurotransmission and the nervous system., J. Exp. Biol., vol.218., pp.562-571 (2015)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25696819/

10)ウィキペディア: バクテリオロドプシン
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%82%AF%E3%83%86%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%AD%E3%83%89%E3%83%97%E3%82%B7%E3%83%B3

11)東大ら,シアノバクテリアにロドプシン遺伝子発見 オプトロニクスオンライン (2020)
https://optronics-media.com/news/20201104/69609/

12)諏訪牧子 ゲノム情報解析から概観するGPCR プロテオーム ファルマシア vol.50, no.9, pp.888-892 (2014)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/50/9/50_888/_pdf

13)Alex de Mendoza, Arnau Sebe-Pedros, and Inaki Ruiz-Trillo1, The Evolution of the GPCR Signaling System in Eukaryotes: Modularity, Conservation, and the Transition to Metazoan Multicellularity., Genome Biol. Evol. vol.6(3): pp.606–619 (2014)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24567306/

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2021年4月11日 (日)

リセ・ダヴィドセン 世界を席巻するであろう驚愕のソプラノ

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人に勧められて Lise Davidsen という人のCDを入手しました。アマゾンの検索ではこのCDしかヒットしませんでしたが、他にもすでに何枚か出版しているようです。

半信半疑で聴いてみましたが、これが驚愕のソプラノだったので紹介します。ノルウェー出身で、もう34才だそうですが、強靱さとやわらかさを兼ね備えた声は希有です。ビルギット・ニルソンの再来だという声もありますが、私はこの人の声量豊かでありながら繊細でフェミニンなところを買います。ワーグナーの楽劇にぴったりですね。サロネンが強力に推しているようです。

ともあれ聴いてみましょう。

#おごそかなこの広間よ Dich, teure Halle ワーグナー楽劇「タンホイザー」より
https://www.youtube.com/watch?v=U9TofuLQOuk

#君こそは春 Du bist der Lenz ワーグナー楽劇「ワルキューレ」より
https://www.youtube.com/watch?v=TmQOr32M7HA

#ジークリンデ役のリセ ワーグナー楽劇「ワルキューレ」より💥
https://www.youtube.com/watch?v=a08o1iGM1Z0

#リサのアリア チャイコフスキー歌劇「スペードの女王」より
https://www.youtube.com/watch?v=Y45BmLhLxiQ

#”Schmerzen” ワーグナー「ヴェーゼンドンク歌曲集」より
https://www.youtube.com/watch?v=MRru3QruKPQ

ホームページ:http://www.lisedavidsen.com/



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2021年4月 9日 (金)

新型コロナに思う

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🚩 飲食店に補助金・助成金を出すのをやめる。Go to eat もやめる。
政府はその代わり飲食店に抗原検査キットを配って、「入店前に外で検査してもらって陰性だったら入店」にすればいいのではないでしょうか? 時短も不要で、マスク会食なんてめんどうなこともやらなくてすみます。大規模なコンサートは無理でしょうが、数十人規模の客のライブならこれでできますよ。

🚩 団体旅行は予定が前から決まっているので、政府は旅行代理店のPCR検査代金を負担して、「あらかじめ全員PCR検査してバスで旅行してもらう」ことにすれば、非常に安全な団体旅行ができます。Go to travel など不要です。

🚩 オリンピックは無観客で、セレモニーも簡素にして行うべきだと思います。もうすでに飛び込み競技などはやらない方向で進んでいるようですが、参加ありきで予選を強行するようなことはやめて、無理なくできる競技だけでやればいいと思います。

🚩 アストラゼネカのワクチンは、独仏伊では血栓症発症の恐れがあるため使わない方向で進んでいますが、日本でもやめるべきでしょう。またmRNAワクチンもまだいわば「治験」に参加するような感じなので、進んで打ちたいとは思いませんね。このmRNAは普通のmRNAではなくてUが1メチルψUに置き換えられています。どのような形で分解処理されるのかがわかりません。すでに死者もでているようです。タンパク質のワクチンが出回るようになれば、こちらは枯れた技術の製品なのでとりあえず接種したいですね。タンパク質のワクチンで死んだらあきらめがつきます。

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2021年4月 8日 (木)

懐かしいMD

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MDは絶滅したのでしょうか? いいえ、機器はティアックがまだ製造していますし、メディアはソニーが製造しています。とはいえ絶滅危惧種であることに間違いはありません。

MDはカセットテープより小さいし、頭出しもできるし、ワカメ状に伸びたりしないので、カセットテープより優れたメディアだと思いました。ではどうして絶滅危惧種になったかというと、それは iPod の登場によります。日本の野望がアップルによって打ち砕かれた瞬間です。私も iPod classic は愛用していました。しかしそれも今や製造されていません。そのたびに内容を移し替えるのに苦労しました。

クラシック音楽のファンというのは1000枚や2000枚のCDを持っているのは普通です。この人々はポップスのように演奏者ごとにわけて棚におさめるのではなく、作曲者ごとに納めます。ところが多くのCDでは複数の作曲家の曲が混在しています。ですから多くのCDが整理不可能な状態になって、取り出しにくくなっているわけです。この問題を解決してくれる iPod classic は神でした。どうしてこの製品をアップルが製造中止にしたのか理解できません。結局私はPCに移して、PCで音楽を聴くという無粋なスタイルを強いられました。

日本の家電メーカー凋落の象徴となったMDの敗戦ですが、CDはまだ生き残っています。ならばCDをやめてすべてMDで新作曲を出版すれば良かったじゃないかと思いますが、そこまで踏み切れなかったのが日本のメーカの弱腰でした。

これは私見ですが、MDがCDに取って代われなかった理由のひとつが、タイトルを小さい字で書かないといけないということだと思っています。写真のMDでも、漢字が書きにくくてひらがなにしたり、曲目を書くのがせいいっぱいで歌手の名前まで書けないとか困っていることがうかがえます。結局家電メーカーの人々は、小ささにばかりこだわって、使い勝手が良い適切なサイズということに考えが及ばなかったんですね。カセットはこんなに小さな字で書かなくても良いので、むしろMDより堂々と生き残っています。

引き出しを整理していたら、写真のような懐かしいMDが出てきました。字が小さいのでクリックして拡大して見てください。

雪の降る夜は:後藤泰代
フレンド、心の水彩画:高橋リナ
アスファルトの上の砂、風の予感:沢田聖子
フォトグラフ、大好きなシャツ:渡辺満里奈
Avec toi maintenant、すねてごめん:裕木奈江
How are you?、風の祭日:相馬裕子
あなたが好き、Feelin'blue:浜本沙良

すべて女性ボーカリストのMDでした。

浜本沙良 Feelin' blue
ゆったりとしたバラードです

https://www.youtube.com/watch?v=nwRwXhohdQo

うちのサラの名前は沙良さんのお名前を拝借したものです。

 

 

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2021年4月 5日 (月)

続・生物学茶話137: アドレナリンとノルアドレナリン

アドレナリンはホルモンであると同時に神経伝達因子であるという物質です。ホルモンとしては副腎髄質で合成され血中に放出されて、心拍数を上げる、血圧を上げる、瞳孔を開く、血糖値を上げる、消化管の活動を抑制する、痛みを感じないようにする、など「興奮状態」あるいは「闘争に適した状態」を作り出すとされていますが、実際にはもう少し複雑です。

アドレナリンはアミノ酸のひとつであるL-チロシンから4つのステップを経て生合成されます(1、図137-1)。まずチロシンのベンゼン環にもうひとつOHをつけ、次にカルボキシル基を取り外しドーパミンとなります。この時点でアミノ酸ではなくなり、カテコールアミンというグループの化合物が形成されます。ドーパミンは中枢神経系の神経伝達物質のひとつであり、かつアドレナリン合成の中間生成物でもあります。これにさらにOHが添加され、ノルアドレナリンができます。ノルアドレナリンにS-アデノシルメチオニンから持ってきたメチル基をひとつ添加することによって、アドレナリンが合成されます。

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図137-1 アドレナリンの生合成

アドレナリンの情報を細胞の受容体がキャッチしなければいけないわけですが、アセチルコリンの場合GPCRとイオンチャネルの2つのタイプがありました(2)。アドレナリンではどうでしょうか? 1948年にジョージア大学の薬理学者アルクイスト(図137-2)が得た結論は結構複雑なものでした。正確を期すため原文を引用しておきます。

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The alpha adrenotropic receptor is associated with most of the exitatory functions
(vasoconstriction, and stimulation of the uterus, nictitating membrane, ureter and dilator pupillae) and one important inhibitory function (intestinal relaxation). The beta adrenotropic receptor is associated with most of the inhibitory functions (vasodilation, and inhibition of the uterine and bronchial musculature) and one excitatory function (myocardial stimulation).

(拙訳)α型アドレナリン受容体は多くの興奮性機能(血管収縮、子宮・瞬膜・尿管・瞳孔拡張の刺激)とひとつの重要な抑制的機能(腸の弛緩)と関係があり、β型アドレナリン受容体は多くの抑制的機能(血管拡張・子宮や気管支の筋肉組織の抑制)とひとつの興奮性機能(心筋の刺激)に関係があります。

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現在ではアドレナリン受容体はα1型3種類、α2型3種類、β型3種類の計9種類が存在することが明らかになっています。図137-2にリストアップしました。機能は多岐にわたっていますが、このリストでは一部のみ記しています。もう少し詳しいリストを図137-4に掲載しています。

ノルアドレナリンはアドレナリン合成の中間生成物ですが(図137-1)、アドレナリンと同様ホルモンかつ神経伝達因子としての役割を持っています(4)。図137-2を見てもわかるように、アドレナリン・ノルアドレナリンは私たちを戦闘態勢にさせるとはいっても、実際はそれほど単純ではなく、リガンド(アドレナリン・ノルアドレナリン)および受容体の機能の多様性による調整も確保したものであることがわかります。受容体は基本的にアドレナリンとノルアドレナリンに共通ですが、アドレナリンに親和性が高いもの、ノルアドレナリンに親和性がたかいもの、両者に対して親和性が高いものに分かれており、アドレナリンとノルアドレナリンの使い分けが可能になっています(図137-2)。

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図137-2 レイモンド・アルクイストとアドレナリン作動性受容体の多様性

9種類の受容体はすべて膜7回貫通3量体Gタンパク質共役受容体(GPCR=GTP-binding protein-coupled receptor )です(図137-3)。アセチルコリンの受容体はイオンチャネルの場合もあるので、アドレナリンによる情報伝達はアセチルコリンほど迅速でなくても大丈夫だということなのでしょう。

GPCRは生物が発明したタンパク質の中でも最大級に重要なタンパク質であり、「薬のすべてがわかる!薬学まとめ」によると、「医療に用いられている薬の約半数は、直接的もしくは間接的にGPCRを標的としている。世の中にある薬の半分はGPCRが関わっているということである。」のだそうです(5)。細胞を家に例えればGPCRはポストに例えられるでしょう。注意すべきは、誰が開封して読むか(Gタンパク質)によってとる行動は異なるということです。

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図137-3 受容体が結合しているGタンパク質による機能の違い

α型には3量体Gタンパク質のαサブユニットがGqのもの(α1型)とGiのもの(α2型)があり、α1型はアセチルコリン受容体のM1、M3、M5型の場合と同様に、GqがPLC(フォスフォリパーゼC)を活性化し、PLCがイノシトール4,5-ビスリン酸をイノシトール3リン酸(IP3)とジアシルグリセロール(DAG)に分解し、IP3はERからのカルシウム放出、DAGはプロテインキナーゼCを活性化します。これらの反応が筋収縮などの引き金となり、生物が活発に活動するあるいは戦闘態勢にはいるための準備を行います(図137-4)。

α2型はシナプス前細胞にも存在し、放出されたアドレナリン・ノルアドレナリンをトラップして、これらの情報伝達因子が後細胞や作動細胞にいかないように抑制する役割があります。つまり過剰な反応を調整する役割を担っています。α2型はアセチルコリン受容体のM2、M4型と同じく、共役するGタンパク質のαサブユニットはGiであり、これはアデニルシクラーゼの活性を阻害してcAMPのレベルを低下させ、cAMP依存性プロテインキナーゼの活性を抑制するほか、グリコーゲンや脂肪の分解を抑制する、心筋を弛緩させる、血小板を活性化するなど、生物が休養・食事・睡眠などを行なうのに適した状態を維持するはたらきがあります(図137-4)。

β型は共役するGタンパク質のαサブユニットがGsであり、GsはGiと正反対にアデニルシクラーゼを活性化する作用を持ち、cAMPの濃度を上昇させます。したがってβ型はα2型とは正反対の生理作用をもたらします。心筋を収縮させ、異化代謝を活性化しますが、平滑筋は弛緩させます。腸を動かすのは平滑筋ですが、食事している場合じゃないということでしょうか(図137-4)。図137-4は文献6等を参考にして作成しました。

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図137-4 アドレナリン・ノルアドレナリン受容体の機能のリスト

アドレナリン・ノルアドレナリンの特徴は神経伝達物質であると同時に、副腎髄質から分泌されるホルモンでもあるということです。これはおそらく生物の進化の過程で、様々な事情で生まれてきたメカニズムであり、もし神様が生物を作ったとしたら、決してこんな混乱を生む可能性があるシステムにはしなかったでしょう。何が起こるかはアドレナリン・ノルアドレナリンが直接決めるのではなく、上記のように受容する細胞のGタンパク質の機能に依存するというワンクッション置いたメカニズムが優れていて、このようなシステムでも混乱が起こらないようになっています。

最近新型コロナウィルスワクチンによってアナフィラキシーショックが発生したときに、アドレナリンを投与するとショックが軽減されるということで、アドレナリンが話題になりました。2011年の Rosas-Ballinaらの報告によると、迷走神経の興奮によって、脾臓に投射する迷走神経から(例外的に)ノルアドレナリンが放出され、その刺激を受けてCD4+T細胞がアセチルコリンを産生し(7)、このアセチルコリンがマクロファージにおける炎症性サイトカインの産生を阻害するということがわかりました(8)。昔からストレスがたまる(交感神経系が活発に活動する)と免疫系の活動が低下して病気になりやすくなるといわれていましたが、ようやく21世紀になってそのメカニズムが明らかになりつつあります。アドレナリンを投与するとアナフィラキシーショックを軽減できるというのも、このメカニズムに関係していると思われます。

 

参照

1)脳科学辞典:アドレナリン
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%82%A2%E3%83%89%E3%83%AC%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%83%B3

2)続・生物学茶話135: アセチルコリンによる情報伝達
http://morph.way-nifty.com/grey/2021/03/post-5df6c6.html

3)R. P. Ahlquist, A study of the adrenotropic receptors. Am. J. Physiol., vol.153, no.3, pp.586-600 (1948)
https://journals.physiology.org/doi/abs/10.1152/ajplegacy.1948.153.3.586

4)Wikipedia: History of catecholamine research.
https://en.wikipedia.org/wiki/History_of_catecholamine_research

5)薬のすべてがわかる!薬学まとめ  Gタンパク質共役型受容体(GPCR)
http://kusuri-yakugaku.com/pharmaceutical-field/pharmacolory/receptor/membrane-receptor/gpcr/

6)管理薬剤師.COM
https://kanri.nkdesk.com/hifuka/sinkei25.php

7)Rosas-Ballina, M., Olofsson, P. S., Ochani, M. et al.: Acetylcholine-synthesizing T cells relay neural signals in a vagus nerve circuit. Science, vol.334, pp.98-101 (2011)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21921156/

8)Andersson, U. & Tracey, K. J.: Reflex principles of immunological homeostasis. Annu. Rev. Immunol., vol.30, pp.313-335 (2012)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22224768/

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2021年4月 4日 (日)

マミラリア(サボテン)の子株

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うちのマミラリア(サボテン)ですが、昔のブログを検索すると2008年にはもううちに居ることがわかりました。小さな頃は病弱で非常に手がかかりましたが、すっかり丈夫に育ちました。

しかしすくすくと生長するというのとは少し違って、水平に伸びていくのです。そしてコブみたいな枝が上側にできてきて、これは挿し木できるということがウェブで調べるとわかりました。それでひとつやってみましたが、どうやら無事に生長しそうです。

↑ 2008年のサボテン(マミラリアは左側)とサラとミーナ

 

 

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2021年4月 1日 (木)

サラとミーナ245: クレバーな写真写り

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なにか撮影者が抗議されているみたいですが、サラはこういう顔なんですね。抗議や要求の時は声を発します。

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2~3週間前から窓際のハイビスカスが咲いています。今年の春は異常に暖かいです。3月半ばにケヤキの青葉が出始め、今はかなり樹木全体までひろがりました。これも1ヶ月早いです。

飲用水を出して、先にミーナに飲まれると、サラは「変えろ」と抗議します。新しい水に変えてあげると早速飲みます。一方トイレ砂を新しくすると、後ろでミーナが待機していて入れている途中からでも使おうとします。これは出そうなのを我慢していたのではなく、サラより先に使いたいからなのです。

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