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2021年3月30日 (火)

続・生物学茶話136: 副腎とアドレナリンの物語

アセチルコリンが神経伝達物質専業であるのに対して、アドレナリンはホルモンと神経伝達物質という2つの役割を果たす兼業分子です。ホルモンとしては副腎髄質で産生され、興奮状態を作り出すために必要とされています。

副腎の存在は旧約聖書に書いてあるという説がありますが、それは脂肪塊とされているだけでとても形態が確認されているとは思えません。ガレノスの記述もあいまいなものなので、おそらく最初にきちんと形態を確認したのは、1552年にバルトロメオ・エウスタキというローマの解剖学者が描いた解剖図がはじめてのようです(1、図136-1)。この解剖図は Tabulae Anatomichae Bartholomaei Eustachii というタイトルで、Nabu Press という出版社から現在も販売されていて、アマゾンなどで入手できます(2)。またフリーダウンロードも可能です(3)。私もダウンロードしました。確かに図136-1の右図に副腎とそれに繋がる血管が鮮明に描かれています。

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図136-1 バルトロメオ・エウスタキと彼が描いた副腎の図譜

リンダ・ゴーマンによると、副腎には皮質と髄質があるということを最初に見つけたのは Culver という人で18世紀のはじめのことだそうですが、 Von Kolliker によって詳しい解剖学的記載が行われたのは19世紀になってからで、その後1836年に Nagel が外側に“cortical”、内側に“medulla”という名前を与えました(4)。この頃副腎は bynieren と呼ばれており、誰が adrenal gland (ドイツ語では nebennieren)という名前をつけたのかはわかりません。Adはラテン語で「近い」、renal は「腎臓の」という意味です(5)。副腎の臓器写真と切片写真がウィキペディアに掲載されていましたので(6)、図136-2にコピペしました。

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図136-2 副腎とその組織切片

ではその副腎はどんな機能を持つ臓器なのでしょうか? その解明については、トーマス・アディソンの1855年の報告(7)が最初の糸口となりました。この報告はフリーで全文読むことができます(7)。彼は副腎の病気によって貧血や慢性疲労という症状が現れることを報告しました。この病気は現在ではアジソン病と呼ばれ、厚労省の難病指定になっています。副腎の不調は結核・自己免疫・腫瘍などが原因で発生します。ブラウン-セクァールはウサギ66匹など、様々な哺乳動物の副腎を摘出すると早期に死に至ることを、シャムオペレーションなども含めた厳密な実験によって確認し、1856年に発表しました(1、8)。彼らの研究によって、副腎は生命維持になくてはならない臓器であることが明らかになりました。

ブラウン-セクァールは自分を実験動物にするような「奇矯な」、そしてある意味「模範的な」科学者で、エピソードは枚挙に暇がありません(1)。ナポレオン3世と敵対して米国に逃れ、リッチモンドで研究していましたが、あまりに多くの動物を飼育する動物園のような研究施設に、近所の住民から苦情が絶えませんでした。また英語が下手で講義を聴くに堪えなかったので、すぐに欧州に舞い戻ることになってしまいました(9)。

アディソンやブラウンーセクァールの研究ではまだ漠然としたものでしたが、副腎の機能を明確に示したのは1894-1895年に発表されたオリバーとシェイファーの研究結果でした(10、11、図136-3)。彼らは副腎から抽出される物質が血圧上昇効果を持つことを示したのです。ジョージ・オリバーは田舎の町医者でしたが、いわば趣味で研究をやっていて、血圧測定器や動脈の直径を測る装置を自分で開発し、仔牛の副腎の抽出液を息子に注射して動脈の直径を測ると細くなっていることに気がつきました。彼は早速ロンドン大学のシェイファー教授の研究室に抽出液を持ち込んで、実験動物として使われていた猫に注射すると、その猫の血圧が急上昇したのです(11)。これがきっかけで副腎の機能がわかりました。

シェイファー研究室のムーア(図136-3)はこの血圧上昇活性をもつ物質を単離しようと試みましたが、ついにその目的は果たせませんでした。しかし彼はこの活性物質が塩化第二鉄で深緑色を呈するという重要な発見をしました(12)。この呈色反応自体は1856年にヴュルピアン(図136-3)がみつけていましたが、ムーアは血圧上昇効果を持つ活性物質がこの反応によって検出できることを示したのです。フレンケルもこのことをムーアより早く報告していましたが、活性物質の同定が間違っていたのでムーアの手柄になりました(12)。とはいえムーアも同定に成功したわけではありません。現代的見地からこの反応を説明し、新しい染色法を開発したと報告している論文があります(13、図136-3)。

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図136-3 副腎の抽出液による血圧上昇と呈色反応

ムーアによってアッセイの方法が確立してから、ロンドンのムーア本人に加えて、ストラスブルクのフュルト、ボルチモアのエイベルらが互いにたたき合う活性物質同定の激しい先陣争いが勃発しました。しかしそれを制したのは明治の日本人上中啓三と高峰譲吉(図136-4)でした。

渋谷駅の東口を出て六本木通りを六本木方向に進むと、すぐクロスタワーが見えてきます。クロスタワーの前を通り過ぎて少し歩くと長井薬学記念館というビルがあります。日本薬学会の事務所があるビルですが、この長井という名前は日本の近代薬学の創始者であり、薬学会の初代会頭である長井長義の名にちなんだものです。

長井長義は波乱に満ちたアドレナリン物語の起点となる人物でもあります。上中啓三(図136-4)は東京大学医学部薬学科に入学し、長井長義の研究室で薬学者としてのスタートを切りました(14)。長井らはエフェドリンの結晶化と構造決定に成功しており、上中もここで有機物質の抽出結晶化の技術をきっちりと身につけることができました。しかも図136-4に示すようにエフェドリンとアドレナリンの構造は似ており、ほぼ同じ方法で抽出結晶化ができたことが、上中の成功の要因でした。ちなみにエフェドリンは今でも使われている鎮咳薬で、塩酸エフェドリンやその誘導体が風邪薬によく含まれています。アドレナリンにも鎮咳作用はありますが、医薬品としては主に強心剤として使われます。最近では新型コロナワクチンによるアナフィラキシー反応を抑制する薬剤として用いられることで有名になりました。

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図136-4 上中啓三と高峰譲吉

上中は前記のように多くの科学者が副腎の血圧上昇活性物質の同定を競い合っている時期1899年に米国の高峰譲吉の研究室に留学しました。留学と行っても行った先はニューヨークのアパートの半地下の一室で、研究員は自分と高峰しかいませんでした。そんな中で上中は1900年にはアドレナリンの結晶化に成功したのです。高峰の才覚でパーク・デイヴィス社という企業を巻き込んで研究を進めたので、サンプルの供給などが順調にいって仕事はスムースに進行し、1901年には論文が出版されました(15)。この論文は私は読んでいませんが、石田によると高峰の単独名の論文ではあるものの、上中やパークデイヴィス社の貢献もきちんと記載してあるそうです(1)。そしてパーク・デイヴィス社は1903年にはアドレナリンを全世界に販売開始しました。高峰とパークデイヴィス社はフュルトにもサンプルを提供し、フュルトによって化学構造式が解明されました(16)。

ところが高峰が1922年に亡くなった後、エイベルは高峰らの業績は自分たちの成果を盗んだものだと言い放ち(17)、その後100年以上米国と米国の影響が強かった日本でもアドレナリンという名は使われず、エイベルが命名したエピネフリンが正式名となっていました。日本薬局方でアドレナリンと改正されたのは2006年で、なんと100年以上も間違った名前が使われていました(18)。

上中・高峰の名誉回復のきっかけとなったのは、上中の実験ノートが公開されたことだそうです(19、20)。元岡山大学教授で上中氏と同郷(兵庫県西宮市名塩)の僧侶中山沃(そそぐ)氏が、自坊の境内に石碑を建立されています(19、図136-5)。

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図136-5 中山沃氏によって建立された上中啓三翁顕彰碑

上中氏は1916年に帰国しましたが、決してエイベルの中傷でひどい目にあったわけではなく、高峰氏が社長だった第一三共製薬(当時は三共製薬)に入社し、監査役にまで上り詰めるというよい人生だったようです(21)。とはいっても、自動車も走っていない馬車時代に、最初に発見されたホルモンであり、神経伝達物質でもあるアドレナリンの精製純化と構造決定をなしとげた上中・高峰・フュルトが、ノーベル賞の栄誉に浴さなかったというのは残念であり、ノーベル財団の大失敗だったと言えるでしょう。

参照

1)石田三雄 ホルモンハンター~アドレナリンの発見 京都大学学術出版会 2012年刊

2)Amazon, Tabulae Anatomicae ... Bartholomaei Eustachii ISBN-10 : 1293046817
ISBN-13 : 978-1293046814
https://www.amazon.co.jp/Anatomicae-Bartholomaei-Eustachii-Bartolomeo-Eustachi/dp/1293046817

3)Historical anatomies on the web
https://www.nlm.nih.gov/exhibition/historicalanatomies/eustachi_home.html

4)Linda S. Gorman, The Adrenal Gland: Common Disease States and Suspected New Applications.,
Clinical Laboratory Science, vol.26, no.2, pp.118-125 (2013)
http://hwmaint.clsjournal.ascls.org

5)Kendra Cherry, What Are Adrenal Glands? verywellmind Psychology
https://www.verywellmind.com/what-are-the-adrenal-glands-2794816

6)Wikipedia: Adrenal gland
https://en.wikipedia.org/wiki/Adrenal_gland#History

7)Addison T., On the constitutional and local effects of disease of the supra-renal capsules., Samuel Highley London (1855)
https://wellcomecollection.org/works/xsmzqpdw

8)Wikipedia: Charles-Édouard Brown-Séquard
https://en.wikipedia.org/wiki/Charles-%C3%89douard_Brown-S%C3%A9quard

9)Sushil Dawka, Charles-Édouard Brown-Séquard: A bicentennial tribute., Internet Journal of Medical Update., January;12(1):1-3. (2017) doi:10.4314/ijmu.v12i1.1
file:///C:/Users/morph/AppData/Local/Temp/156049-Article%20Text-407274-1-10-20170516.pdf

10)Oliver, G. and Schafer, E.A. The physiological action of the suprarenal capsules., J. Physiol.(Lond.), 16, lP (1894)
George Oliver and E. A. Schäfer, The Physiological Effects of Extracts of the Suprarenal Capsules., J Physiol., vol.18(3): pp.230–276 (1895) doi: 10.1113/jphysiol.1895.sp000564
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1514629/

11)H. Barcroft and J. F. Talbot, Oliver and Schafer's discovery of the cardiovascular action of suprarenal extract., Postgraduate Medical Journal
https://pmj.bmj.com/content/postgradmedj/44/507/6.full.pdf

12)Moore B., On the chromogen and on the active physiological substance of the suprarenal grand., J Physiol., vol.21, pp.382-289 (1897)
https://physoc.onlinelibrary.wiley.com/doi/pdf/10.1113/jphysiol.1897.sp000660

13)Sylwia Baluta, Karol Malecha, Agnieszka Świst and Joanna Cabaj, Fluorescence Sensing Platforms for Epinephrine Detection Based on Low Temperature Cofired Ceramics., Sensors, vol.20(5), 1429 (2020)
https://www.mdpi.com/1424-8220/20/5/1429/htm

14)上中啓三:wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8A%E4%B8%AD%E5%95%93%E4%B8%89

15)Takamine J., Adrenaline the active principle of the adrenal glands and its mode of preparation. The American Journal of Pharmacy., vol.73, pp.523-531 (1901)

16)Furth O. von, "Zur Kenntnis des Suprarenins (Adrenalins)" . Sitzungs berichte der Mathematisch-Naturwissenschaftliche Klass der Kaiserliche Akademie der Wissenshaften, CXII. Band, Abteilung III, pp.19-48 (1903)

17)山嶋哲盛 アドレナリンの発見と高峰譲吉
https://www.slideshare.net/waii/ss-4357821

18)山野ゆきよし メルマガ 「アドレナリン」もう一つの名誉回復
https://blog.goo.ne.jp/yamano4455/e/385f8411bf242d68e525efcb2ef29a4a

19)中山沃(なかやま そそぐ) 上中啓三のアドレナリン実験ノート教行寺所蔵となった経緯
http://www.chemistry.or.jp/know/doc/isan002_article.pdf

20)山下愛子 上中啓三 : アドレナリン実験ノート Adrenaline Research Note of Uyenaka Keizo (1900)
https://ci.nii.ac.jp/naid/110007577369

21)三共(株)『三共六十年史』(1960.12) 渋沢社史データベース
https://shashi.shibusawa.or.jp/details_nenpyo.php?sid=3750&query=&class=&d=all&page=14

 

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2021年3月27日 (土)

テレ朝は姿勢を正せ

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テレ朝のサタステでは毎週マウントサイナイの山田という医師を登場させて、ワクチンを安心して打ってよいというキャンペーンを繰り広げていますが、これはいかがなものか?

情報速報ドットコムによると:
https://johosokuhou.com/2021/03/27/45570/

「厚生労働省によると、新型コロナウイルスの副反応は1回目よりも2回目の接種の方が多く、37.5℃以上の発熱症状だけで35.6%となり、1回目の3.3%から10倍以上も副反応の報告が増えたとのことです。
他にも倦怠感が67.3%、頭痛が49.0%などと高い数字が並び、過去の事例だとワクチン接種直後に脳出血とくも膜下出血で死亡した女性(26歳)の報告も掲載されていました。

重いアレルギー反応であるアナフィラキシーは計181件が報告され、その内の47件が国際的な基準に該当。これまで日本国内で接種が終わった回数が約58万回となっていることから、欧米諸国と比べて桁違いにアナフィラキシー反応が多いと言えるでしょう。
副作用の症状一覧には、筋力低下や四肢麻痺、血管迷走神経反射(失神寸前の状態)、呼吸障害・呼吸不全(呼吸困難)、悪心・嘔吐(嘔吐)、顔面腫脹(顔面腫脹)、喘息発作(喘息)などと書いてあり、かなり重いケースもあったと報告されていました。

ただ、政府はこれらの報告を受けても一部の事例だとして、ワクチン接種の中止や見直しは検討せず、情報を集めながら予定通りに実施するとしています。」

となっています。報道というのはこのようにおこなうべきであって、政府がやりたいことのキャンペーンをやるだけなら中国やロシアの報道機関と同じじゃないですか。

そもそも米国でやっている接種をそのまま日本に適用するというのは、体格も体質も異なる民族なのですから無茶です。実際米国在住の日本人である大江千里氏は接種後しばらくして手が動かなくなり、最後は意識を失うという危険な目に遭っています。
http://morph.way-nifty.com/grey/2021/02/post-0d4b48.html

ですから山田医師を登場させて米国では接種が順調に進んでいるから、日本でも大丈夫という折伏はフェイクです。インフルエンザのワクチンなどとは違って、あまりにも副反応が出すぎです。

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桜便り

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北総の桜も8~9分咲きました。桜を見たくてこのあたりに住むことにしたという人もいるようです。朝写真を撮影して家に帰ってくると、壁に体長約7mmのハムシが来ていました。葉っぱについてなきゃいけない虫なのに、こんなところで何をしているのでしょう。

帰宅して調べてみると、多分 ムネアカサルハムシ (Basilepta ruficollis) だと思いますが、違っていたらごめんなさい。桜の葉っぱが好物のようです。

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2021年3月25日 (木)

ブラームス交響曲第1番 下野-都響@東京文化会館

雨の中、五分咲きの桜の中を駅に。東京に着いてみると雨はやんでいて、桜は満開でした。北総はだいたい1週間東京より開花が遅れます。上野公園の桜並木は人通りも少なくさみしい感じでした。宴会をしているのはここに住んでいるホームレスの方々のみです。

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本日のマエストロは下野(シモーノ)さん、コンマスはボス矢部でサイドは四方さんです。客席は十分にソシアル・ディスタンスをとった席割りで安心です。

最初のドビュッシーの曲はとても若い頃の曲で、でもやっぱりドビュッシーなんですね。ブルックナーの曲ははじめて聴きました。とても美しいアダージョで、こんな曲があったのかとちょっとびっくりしました。都響の弦のアンサンブルが、その凄さをみせつけてくれました。

休憩後のブラームスが圧巻でした。全体的にパワフルで豪壮なブラームス。第2楽章ではボス矢部も力を尽くすソロで曲を引き立てます。第3楽章も慌てず騒がずの骨太な進行で、第4楽章の堂々たるフィナーレになだれ込みます。最後は大見得を切りましたが、こういうのもシモーノの人徳が物を言ってOK。彼は都響メンバーからアドレナリンを引き出す術を知っています。そしてアドレナリンがあふれ出したときの都響の演奏は、聴衆を天空に連れて行ってくれます。こんな激アツの演奏会はコロナがなかったらできなかったかもしれません。やったね 都響! やったね シモーノ! やったね 矢部!

向山佳絵子さんですが、N響やめたみたいだし、このまま都響メンバーになってくれませんかね。無理だろうな~。今日は乗りに乗って弾いていたように思いました。

 

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2021年3月24日 (水)

ワクチンのmRNAはどういう運命をたどるのか??

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ファイザーやモデルナの新型コロナ用ワクチンはmRNAです。
普通mRNAは生体内では必要な時に合成され、使ったらすぐに分解されます。
でも上記ワクチンのmRNAは、ウリジン(uridine)がすべて1メチルシュードウリジン(1-methyl ψuridine)に人工的に変換されているので、酵素が分解できません。ただウリジンがもともと少ない限られたサイトは分解できるかもしれません。そうなると残された未分解部分はそのまま細胞に残されます。それがどうなるかがわかりません。

下記の文献はかなり詳しく書いてありますが、mRNAの分解については書いてありません。つまりわからないのです。困りました。

飯笹久 mRNAワクチン:新型コロナウイルス感染を抑える切り札となるか?
RNA Japan
https://www.rnaj.org/component/k2/item/855-iizasa-2

(引用)筋肉細胞でSpikeタンパク質が発現すると何が生じるのか、細かい影響はわかっていない。したがって、副作用として思わぬ症状が報告されるかもしれない。(引用終)

投与したmRNAは最終的には分解されると書いてあるが、根拠は示されていない。


1 一般社団法人日本感染症学会 ワクチン委員会 COVID-19ワクチンに関する提言(第2版)
https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/2102_covid_vaccine_2kasen.pdf

(引用)mRNAワクチンでは、さらに全身反応の有害事象が高頻度にみられています。とくに、倦怠感、頭痛、寒気、嘔気・嘔吐、筋肉痛などの頻度が高くなっていますが、これらの症状は対照群でもある程度みられていることに注意が必要です。発熱(38°C以上)は1回目では少ないですが、2回目の接種後に10~17%みられています。発熱は対照群ではほとんどみられていませんので、ワクチンによる副反応の可能性が高いと思われます。とくに高齢者よりも若年群で頻度が高い傾向があります。不活化インフルエンザワクチン、PPSV23、PCV13の発熱の頻度は、それぞれ1~2%17)、1.6%、4.2%18)ですので、mRNAワクチンでは注意が必要です。

重篤な(serious)有害事象は、ファイザーの臨床試験では接種群で0.6%、対照群で0.5%6)、モデルナの臨床試験でも両群で0.6%と差がありませんでした7)。アストラゼネカの髄膜炎菌ワクチンを対照群とする臨床試験でも、接種群0.7%、対照群0.8%と差がみられていません5)。

また、ワクチンによる直接的な副反応とは言えませんが、接種を受けた人が標的とした病原体による病気を発症した場合に、接種を受けていない人よりも症状が増悪するワクチン関連疾患増悪(vaccine-associated enhanced disease, VAED)という現象にも注意が必要です27)。過去には、RSウイルスワクチンや不活化麻疹ワクチン導入時に実際にみられています。またデング熱ワクチンでは、ワクチンによって誘導された抗体によって感染が増強する抗体依存性増強(antibody-dependent enhancement, ADE)という現象の可能性が疑われ、9歳未満では接種が中止されています27)。COVID-19と同じコロナウイルスが原因であるSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)のワクチンの動物実験でも、一部にVAEDを示す結果がみられています28)。(引用終)


SARS-CoV-2 mRNA Vaccine PFIZER CONFIDENTIAL
ファイザー社によって公表されている研究結果
https://www.pmda.go.jp/drugs/2021/P20210212001/672212000_30300AMX00231_H100_1.pdf

かなり詳しい報告ですが、これにも mRNAの運命については記載がありません。

 

 

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仰天-変態でいっぱいの演奏会

原由莉子氏 談

オールブルックナープログラムのピアノコンサートを!ほんまにやります!!!
こんな演奏会は世界を見渡してもそうそうありません。5/23京都を、地球上で最もブルックナー熱がアツい地にしましょう!

全国の変態ブルックナーファンのみなさん、絶対聴きに来てね!!!!!!!!

こちら

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2021年3月23日 (火)

続・生物学茶話135: アセチルコリンによる情報伝達

神経伝達物質やホルモンの研究において、自然にはないのに同様な作用を示す試薬であるアゴニストは重要です。なぜならアゴニストは通常より強く作用するとか、長時間作用するとか、一部の受容体にだけ作用するとかさまざまな条件変更ができるので、生体分子だけを用いる実験よりも多くの情報を得ることができるからです。アセチルコリンの研究で用いられる代表的なアゴニストはムスカリンとニコチンです。

ムスカリン(英語ではマスカラン)はベニテングタケなどある種のキノコに含まれる有毒アルカロイドで、食べると副交感神経を過剰に刺激し死に至る場合もあります。構造式はアセチルコリンに類似していて、アセチルコリンの作用を模倣するアゴニストです(1、図135-1)。19世紀の半ばから抽出され性質が調べられてきましたが(2)、構造が最終的に確定されたのは1957年です(3)。ムスカリンはアセチルコリンと違って、アセチルコリンエステラーゼによって代謝されないので、効果が長引きます。

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図135-1 ムスカリン

アセチルコリンの受容体の中には、ムスカリンには反応せず、ニコチンと結合するグループもあります。ムスカリンに反応するグループをムスカリン性アセチルコリン受容体、ニコチンに反応するグループをニコチン性アセチルコリン受容体といいます。ニコチンは主にたばこの葉に含まれ、昆虫に対して強い毒性を持ち、昆虫による食害を嫌う植物によって発明された化合物と考えられています(4)。ニコチンは一見それほどアセチルコリンと構造が似ているようにはみえませんが、アゴニストとして作用します。ニコチンの構造は19世紀末には報告されていたようです(5)。ニコチンはムスカリンと違って脳血管関門を突破して脳に作用するので、依存性など様々なリスクを発生させます。

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図135-2 ニコチン

さてシナプス間隙に放出されたアセチルコリンを、シナプス後細胞や組織の細胞表層にある受容体が受け取らなければなりません。シナプス間隙はわずか20~40nmというリボソーム一つ分くらいの距離なので、分子の拡散によって短時間で受け取ることができると考えられます。アセチルコリンを受け取るための受容体には、上記のようにムスカリン性受容体グループとニコチン性受容体グループがあります(6)。

ムスカリン性アセチルコチン受容体には5つのサブタイプがあり、それぞれM1~M5と命名されています。組織によって主に存在するサブタイプに違いがあり作用が異なります(7)。図135-3に一覧を示しました。

ムスカリン性アセチルコチン受容体は、7回膜貫通型のGタンパク質共役受容体(GPCR=G protein-coupled receptor)であり(8)、主に副交感神経の活動に関与しています。リガンドを受け取ると、細胞内ドメインに結合している3量体Gタンパク質(αβγ)が解離することによってその役割を果たします。結合している3量体Gタンパク質のαサブユニットには2つのタイプがあり、その違いによってM1、M3、M5が持つG蛋白質はGq型、M2、M4が持つG蛋白質はGi型とよばれます(7、図135-3)。

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図135-3 ムスカリン性アセチルコリン受容体

アセチルコリンまたはムスカリンが受容体に結合すると、Gq型の場合受容体に結合していた3量体G蛋白質がα と β+γ に解離し、GDPと結合していた α はGDPと解離してGTPと結合します。GTPと結合したα (Gq型α-GTP)はフォスフォリパーゼCを活性化します。この酵素の作用によって、フォスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸がジアシルグリセロール(DAG)とイノシトール3リン酸(IP3)に分解され、DAGはプロテインキナーゼCを活性化し、各種のタンパク質のリン酸化が促進されます。またIP3は小胞体のIP3受容体に結合して、細胞質にカルシウムを放出させます(9、図135-4)。

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図135-4 Gq型の作用機構

Gi型の場合、αサブユニットがGTPと結合するところまでは同じですが、Gi型α-GTPはアデニルシクラーゼ活性を阻害し、ATPからサイクリックAMP(cAMP)が合成される反応を抑制します。この結果cAMPプロテインキナーゼの活性が抑制され、様々なタンパク質のリン酸化が抑制されます(9、10、図135-5)。ですから図135-3のM2、M4の場合など、筋収縮やさまざまな異化的代謝を抑制するなど、生物が休養・食事・睡眠などをとるのに適した働きをします。

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図135-5 Gi型の作用機構

ニコチン性アセチルコリン受容体はGタンパク質共役受容体(GPCR)ではなく、受容体そのものがイオンチャネルです。ですからムスカリン性アセチルコリン受容体とは全く異なる構造とメカニズムで動作するグループです。ニコチン性アセチルコリン受容体にも3つのサブグループがあります。それらは筋肉型(NM型) : 神経筋接合部に分布、末梢神経型(NN型):自律神経節、副腎髄質に分布、中枢神経型(CNS型):シナプスに分布です(6)。これらの3つの型は、Gq型とGi型のようにメカニズムが異なるわけではなく、すべてリガンドの結合によってチャネルが開くというメカニズムで動作します。脳科学辞典では骨格筋型(Nm型)と神経型(Nn型)の2種類に分類しています(11)。

ニコチン性アセチルコリン受容体の構造は、宮澤らによる極低温高分解能電子顕微鏡を用いた研究によって解明されました(12、13、図135-6)。この分子は(α、α、β、γ or ε、δ)の5つのサブユニットからなり、それらが環状に配置されてイオンチャネルを形成しています。それぞれのサブユニットは細胞膜を4回貫通しています。5つのサブユニットからなるといっても、中には5つともαであるとかのホモメリックな分子も存在しています(14)。

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図135-6 ニコチン性アセチルコリン受容体の立体構造

アセチルコリンまたはニコチンが受容体に結合すると、受容体のサブユニットがアロステリックな構造変化を起こしてイオンチャネルが開放されます(12、13、図135-7)。このチャネルは、カチオンでありサイズが大きすぎなければ非選択的にイオンを通過させます。したがってリガンドが結合するとチャネルが開放され、ナトリウムなどが細胞内に流入し、ただちに活動電位が発生します。

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図135-7 ニコチン性アセチルコリン受容体の開閉

ニコチン性アセチルコリン受容体は神経細胞だけではなく、グリア細胞・内皮細胞・免疫細胞・肺上皮細胞などにも存在することが知られており、細胞を脱分極させること以外にもさまざまな細胞の機能に関与していることが示唆されています(14)。

重症筋無力症はニコチン性アセチルコリン受容体に対する抗体ができる自己免疫疾患で、この病気にかかると筋収縮が起こりにくくなるなどの深刻な症状がみられます(15)。

参照

1)ウィキペディア:ムスカリン
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A0%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%83%AA%E3%83%B3

2)Schmiedeberg, O., und Koppe, R., Das Muscarin, das giftige Alkaloid des Fliegenpilzes (Agaricus muscarius L.), seine Darstellung, chemischen Eigenschaften, physiologischen Wirkungen, toxicologische Bedeutung und sein Verhältniss zur Pilzvergiftung im allgemeinen., Leipzig: Verlag von F.C.W. Vogel., (1869)
https://books.google.co.jp/books?id=_FZVYpYGrUkC&pg=PP3&redir_esc=y#v=onepage&q&f=false

3)Jellinek, F., "The structure of muscarine". Acta Crystallographica. vol.10 (4): pp.277–280. (1957) doi:10.1107/S0365110X57000845.
http://scripts.iucr.org/cgi-bin/paper?S0365110X57000845

4)ウィキペディア:ニコチン
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%82%B3%E3%83%81%E3%83%B3

5)Pinner, A., and Wolffenstein, Ueber Nicotin., Berichte der deutschen chemischen Gesellschaft., (1891)
https://chemistry-europe.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/cber.189102401242

6)ウィキペディア:アセチルコリン受容体
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%BB%E3%83%81%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%AA%E3%83%B3%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93

7)Brian Piper, Muscarinic agonists and antagonists. Health and Medicine, Oct 1, 2012
https://www.slideshare.net/bpiper74/muscarinic-agonists-andantagonists

8)Kubo T. et al., Cloning, sequencing and expression of complementary DNA encoding the muscarinic acetylcholine receptor. Nature vol. 323: pp. 411-416. (1986)
https://www.nature.com/articles/323411a0

9)ウィキペディア:Gタンパク質
https://ja.wikipedia.org/wiki/G%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%91%E3%82%AF%E8%B3%AA

10)徳江辰一 Gタンパク質共役型受容体 (GPCR)シグナルの細胞内因子による活性調節機構の解明
東北大学機関リポジトリ
http://hdl.handle.net/10097/40179
file:///C:/Users/morph/AppData/Local/Temp/Tokue-Shinichi-02-09-0079.pdf

11)脳科学辞典:アセチルコリン
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%82%A2%E3%82%BB%E3%83%81%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%AA%E3%83%B3#.E5.8F.97.E5.AE.B9.E4.BD.93

12)Miyazawa A, Fujiyoshi Y, Unwin N., Structure and gating mechanism of the acetylcholine receptor pore. Nature. 2003 Jun 26;423(6943):949-55.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12827192

13)宮澤淳夫、藤吉好則: ニコチン性アセチルコリン受容体の構造と機能 蛋白質 核酸 酵素 col.49 no.1 pp. 1-10 (2004)
http://lifesciencedb.jp/dbsearch/Literature/get_pne_cgpdf.phpyear=2004&number=4901&file=mndiLGM3FM1ZjMmfEFUUKA==

14)Michele Zoli1, Susanna Pucci, Antonietta Vilella1 and Cecilia Gotti, Neuronal and Extraneuronal Nicotinic Acetylcholine Receptors., Current Neuropharmacology, vol.16, pp.338-349 (2018)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6018187/

15)重症筋無力症 薬学用語解説
https://www.pharm.or.jp/dictionary/wiki.cgi?%E9%87%8D%E7%97%87%E7%AD%8B%E7%84%A1%E5%8A%9B%E7%97%87

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2021年3月22日 (月)

今シーズン(2020~2021)のバルサ

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選手は全力で戦っていますが、無観客で物寂しいスタジアム(カンプノウ)です。

私が今シーズンのバルサで一番心配していたのは、使えるCBがラングレしかいないという場面が必ず来るに違いないということでした。それはすぐにやってきましたが、なんとファームにアラウホとミンゲサというそこそこ使える選手がいたことでなんとかまかなうことができていました。それがアラウホも故障ということで、なんとデ・ヨングを3バックのセンターで使うという、シーズン前には誰も(おそらくクーマンも)頭の片隅にもなかったような布陣でなんとか戦っています。

問題は前にもあって、ゴールに近づくとみんなメッシを探すという忖度サッカーは今でもときどきあります。メッシもそれはよくわかっていてなるべく2列目でゲームメイキングをしようとしていますが、そうなるとペドリの影が薄くなるということもありますが、じゃあアンスーが長期離脱する中で、トップは誰が務めるんだということが一番の問題でした。

グリーズマンはオフサイドラインで構えて待つタイプじゃなく、ウロウロするスタイルですし、ブライスウェイトはカウンターが得意なタイプだし、デンベレはエストレーモタイプでサイドを突破してクロスという役割でしか使われてないし、ということでずっと答えがみつかりませんでした。それがサン・ジェルマンにボロ負けしてやけくそのアウェイで、デンベレをワントップで使ってみたらそこそこ良い感じで、ようやく答えがみつかったんですね。みつかってみたら、どうしてもっと早くこうしなかったんだろう・・・まあそんなもんです。

デンベレをワントップにすると、みんながメッシを探すというのではなく、メッシがシュートを打てる選手を探すという形になって、そうなるとDFが散らばるので自分でもシュートを打ちやすくなりました。しかしここまでたどり着くのが遅すぎて、アトレチコが取りこぼさないと逆転は不可能な状況です。今日もアトレチコはオブラクのスーパーセーヴで勝ったようですし、優勝はなかなか難しい状況です。

無人のスタジアムに浮かび上がる Mes que un club は「クラブ以上」という意味です。つまりFCバルセロナはカタルーニャ人のアイデンティティだという意味だと思います。

私家版イムノ

1.

声を あげよう

われら ブラウグラナ

地の涯からも 集いし友よ

掲げる旗のもと 拳(こぶし)を合わせよう

ブラウグラナは 嵐を呼ぶ

叫べ われらの名

バルサ バルサ バルサ

2.

嬉しい日 悲しい日

どんなときも

心ひとつに 合わせし友よ

掲げる旗のもと 勝利を信じよう

ブラウグラナは 嵐を呼ぶ

叫べ われらの名

バルサ バルサ バルサ

Beth Rodergas - Cant del Barça al Camp Nou
https://www.youtube.com/watch?v=nThOokeS4AY

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2021年3月20日 (土)

レイキャヴィック近郊の火山が噴火

アイスランドの首都レイキャヴィック近郊の火山が噴火したようです。

https://www.bbc.com/news/world-europe-56465393

https://www.volcanodiscovery.com/fagradalsfjall.html

YouTube の映像

https://www.youtube.com/watch?v=rwOYdWwZTbM

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(YouTube の映像より)


アイスランド交響楽団とマエストロ・オリカイネンは無事なのでしょうか?
心配です。

https://en.karstenwitt.com/artist/eva-ollikainen

https://www.facebook.com/evaollikai/

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2021年3月18日 (木)

続・生物学茶話134: 高親和性コリントランスポーター

前のセクションでも述べましたが、アセチルコリンはコリンとアセチルCoAからコリンアセチルトランスフェラーゼという酵素の作用で合成されます(図134-1)。この酵素とアセチルCoAは通常細胞内に必要量がありますが、コリンは大部分を栄養として摂取する必要があるので不足しがちです。特に神経細胞はコリンを合成する能力が低いので、図134-1の反応を進行させるためにはコリンを外界から取り入れる必要があります。つまりこの反応はコリンの濃度が律速しています(1)。

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図134-1 アセチルコリンの合成

アセチルコリンは最初に発見された神経伝達物質で、発見者であるレーヴィとデイルは、昔々の1936年にノーベル賞を受賞しているわけですが(2)、神経細胞におけるコリンの供給に関する研究は非常に難航して現在に至っています。コリンを外界から取り込むためのトランスポーターの全貌が明らかになったのは最近のことです(3)。

1990年頃に後述する様々な神経伝達物物質のトランスポーター遺伝子が次々とクローニングされる中で、コリントランスポーターの研究は屍累々の有様でした(4)。その突破口は思わぬところにありました。1998年にC.エレガンス(線虫)の全ゲノムが解明され、C.エレガンスもコリントランスポーターを持つことから、奥田等は線虫のゲノム塩基配列情報を利用してcDNAの発現クローニングを行なうことにしました。彼らは候補のcDNAをひとつづつアフリカツメガエルの卵母細胞にいれて発現させ、ついに高親和性コリントランスポーター(CHT1)の遺伝子をつきとめました(5)。

奥田らは当初高親和性コリントランスポーターは膜12回貫通蛋白質だと考えていたようですが(4)、後に13回膜貫通蛋白質として確定されました(6)。この結果、N末は細胞外にあり、C末はかなり長いペプチド鎖が細胞内に突出していることになります(図134-2)。

コリントランスポーターの構造解明が遅れたのは、これが他の神経伝達物質のトランスポーターとの類似性がなく、意外なことにグルコーストランスポーターと類似していたことに、構造が解明されるまで誰も気が付かなかったことが大きな要因でした(4)。コリンはもともと栄養物質であり、進化の過程で神経伝達物質として流用されたからこのようなことになったのでしょう。実際コリントランスポーターはグルコーストランスポーターと同様ナトリウムイオンに依存して活動し(7)、アミノ酸配列のホモロジーも20-26%認められました(8)。他の神経伝達因子とのホモロジーは認められませんでした。ラットのCHT1は580個のアミノ酸からなるタンパク質で、マウスとは98%、ヒトとは93%のホモロジーが認められました(9)。

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図134-2 高親和性コリントランスポーターの構造

ここまで述べてきた神経伝達に関与するコリントランスポーターは高親和性トランスポーター(CHT1)のことですが、コリンはフォスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、S-アデノシルメチオニンの合成などにも寄与しており、中親和性トランスポーター(CTL1~CTL5)、低親和性トランスポーター(OCT1~OCT2)が知られています(10)。これらのトランスポーターは血液脳関門においても重要な役割を果たしていると思われますが、神経伝達に直接関与してはいないようなので、ここでは文章の脈絡上触れないでおきます。

さてようやくCHT1の遺伝子やタンパク質の構造がわかってきたところで、ひとつ難解な問題が発生しました。それはこのトランスポーターが細胞膜には少なく、なんと多くはシナプス小胞に局在することが判明したのです(11、12)。トランスポーターが細胞膜にあって、その開閉が化学物質で制御されているという普通のメカニズムならアプローチは簡単だったのですが、生物はこのトランスポーターについてはそのような方式はマイナーであり、メジャーにはもっとややこしい方式を採用したことになります。細胞膜にあるCHT1はクラスリン依存性または非依存性のエンドサイトーシスによって小胞にとりこまれ、同時に外界のコリンも取り込まれます。細胞内小胞膜のCHT1は向きが逆になり、小胞内のコリンを細胞質に輸送します。エンドサイトーシスによる小胞内のナトリウムイオン濃度は細胞質より高いので輸送は可能です(図134-3)。

細胞質にはアセチルCoAとコリンアセチルトランスフェラーゼが常に存在するので、コリンはアセチルコリンに代謝されます。アセチルコリンはシナプス小胞膜の小胞アセチルコリントランスポーター(VAchT)によりシナプス小胞に取り込まれ蓄積されます。脱分極が発生すると、シナプス小胞はエキソサイトーシスによってアセチルコリンをシナプス小胞に放出し、小胞膜にあったCHT1は細胞膜に引き取られて局在を変えます。シナプス間隙に放出されたアセチルコリンはアセチルコリンエステラーゼによってコリンと酢酸になります。コリンの一部は細胞膜に局在を変えたCHT1によって細胞に取り込まれますが、CHT1の局在から考えると、エンドサイトーシスによって取り込まれる方式がメジャーだと思われます。細胞膜のCHT1もエンドサイトーシスの結果、小胞の膜に取り込まれます(9、図134-3)。

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図134-3 コリンとアセチルコリンの往来

図134-3に描いてあるなかにも謎があります。たとえばエンドサイトーシスによって発生した小胞とアーリーエンドソームとの関係です。小胞内が酸性になるとCHT1の機能が失われるという報告もあります(13)。またCHT1がどのようなメカニズムでシナプス小胞に集められるかがわかりません。エンドサイトーシスで発生した小胞とシナプス小胞に直接の関係があるのか、すべてアーリーエンドソームを介して吸収と発生を繰り返しているのかも謎です。

参照

1)脳科学辞典: アセチルコリン
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%82%A2%E3%82%BB%E3%83%81%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%AA%E3%83%B3

2)続・生物学茶話132: 化学シナプスの実在とカルシウムチャネル
http://morph.way-nifty.com/grey/2021/03/post-bb9eed.html

3)Takashi Okuda et al., Transmembrane Topology and Oligomeric Structure of the High-affinity Choline Transporter., J. Biol. Chem., vol.287, no.51., pp. 42826-42834 (2012)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3522279/

4)奥田隆志、芳賀達也: 高親和性コリントランスポーター -ゲノム情報を利用したクローニング-
蛋白質 核酸 酵素 45巻 10号 pp 1722-1727 (2000)

5)Takashi Okuda et al.,  Identification and characterization of the high-affinity choline transporter., Nature Neuroscience, vol. 3, pp. 120-125 (2000)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10649566/

6)Haga, T., Molecular properties of the high-affinity choline transporter CHT1., J. Biochem. vol. 156(4): pp. 181–194 (2014) doi:10.1093/jb/mvu047
https://www.researchgate.net/publication/264390083_Molecular_properties_of_the_high-affinity_choline_transporter_CHT1

7)Okuda T. and Haga T., Functional characterization of the human high-affinity choline transporter. FEBS Lett. 484, 92–97 (2000)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11068039/

8)Apparsundaram S., Ferguson S. M. and Blakely R. D., Molecular cloning and characterization of a murine hemicholinium-3-sensitive choline transporter. Biochem. Soc. Trans. 29, 711–716 (2001)

9)Fabiola M. Ribeiro et al., The "ins" and "outs" of the high-affinity choline transporter CHT1., Journal of Neurochemistry, vol.97, pp.1–12 (2006) doi:10.1111/j.1471-4159.2006.03695.x
https://portlandpress.com/biochemsoctrans/article-abstract/29/6/711/63047/Molecular-cloning-and-characterization-of-a-murine?redirectedFrom=fulltext

10)岩尾 紅子、稲津 正人: 血液脳関門におけるコリントランスポーターの機能発現 Functional expression of choline transporters in blood-brain barrier., 東大医誌 vo.75 (1), pp. 74-77 (2017)
file:///C:/Users/morph/AppData/Local/Temp/toidaishi075010074.pdf

11)Ferguson S. M., Savchenko V., Apparsundaram S., Zwick M., Wright J., Heilman C. J., Yi H., Levey A. I. and Blakely R. D., Vesicular localization and activity-dependent trafficking of presynapticcholine transporters. J. Neurosci. vol.23, pp.9697–9709 (2003)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14585997/

12)Nakata K., Okuda T. and Misawa H., Ultrastructural localization of high-affinity choline transporter in the rat neuromuscular junction: enrichment on synaptic vesicles. Synapse vol.53, pp.53–56 (2004)
https://keio.pure.elsevier.com/ja/publications/ultrastructural-localization-of-high-affinity-choline-transporter

13)Hideki Iwamoto, Randy D Blakely, Louis J De Felice., Na+, Cl-, and pH dependence of the human choline transporter (hCHT) in Xenopus oocytes: the proton inactivation hypothesis of hCHT in synaptic vesicles., J Neurosci., vol.26(39), pp.9851-9859, (2006) doi: 10.1523/JNEUROSCI.1862-06.2006.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17005849/

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2021年3月14日 (日)

J-POP名曲徒然草211: いちご白書をもう一度 by 石川ひとみ

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「いちご白書をもう一度」というのはもともと学生運動をテーマにしたUSAの映画の題名です。これにちなんでユーミンが作詞/作曲し、バンバンが歌ったのがオリジナルです。ちょうど日本で学生運動の最盛期が終了した頃(1975年)に流行しました。今だけじゃなくて、昔にも大学で講義がストップした(もちろんリモートもない)時代があったのです。

石川ひとみ
https://www.youtube.com/watch?v=2O2ugYpEWxw

バンバン(オリジナル)
https://www.youtube.com/watch?v=Dq7kNt0DDs8

小野友葵子(ソプラノ)+ 東京大学コールアカデミー
https://www.youtube.com/watch?v=DWon3NOxq2U

中森明菜
https://www.youtube.com/watch?v=7pDmyae3NDw

森昌子
https://www.youtube.com/watch?v=zls_qNnvX-w

Someone
https://www.youtube.com/watch?v=zUOyoKWCDtw

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画像は sumally.com より

https://www.youtube.com/watch?v=FNEkO0Yu4AE

 

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2021年3月12日 (金)

欧州諸国でアストラゼネカの新型コロナワクチン接種停止

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欧州各国でアストラゼネカの新型コロナワクチンの接種を中止する動きがあります。現在中止しているのはオーストリア・イタリア・デンマーク・エストニア・ラトヴィア・リトアニア・ルクセンブルク・ノルウェーの8カ国のようです。原因は血栓塞栓症を発症するという副反応が発生したためです。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021031200249

日本はこのワクチンを大量に買い付けているようですが、ババを引いた可能性があります。

ファイザーの場合も、日本では異常に多いアナフィラキシーが発生していますが、一度でもUSAに行ったことがある人は、街ゆく人に日本では考えられないような異常な肥満者が多いことに驚いたはずです。>100kgの人にも効くようなワクチンを、同じ量小柄な女性に接種するというのは無茶です。薬の量は○○mg/体重1kgとか、体重あたりで増減するのが当たり前です。昔USAのスーパーの薬局で頭痛薬を買ったら、その1錠の巨大さにびっくりした記憶があります。薬の名前は同じなのですが、1錠のサイズが違うのです。

 

 

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続・生物学茶話133: 毒矢とアセチルコリン

16世紀になってヨーロッパ人が南米を植民地化しようとして侵入するようになり、現地住民と戦闘を行なうようになりました。その際に現地住民が使用する毒矢によって、ヨーロッパ人が麻痺をおこして死亡するということが起こりました。クラーレと呼ばれるその毒の製造法は長い間秘密で不明だったのですが、1800年にアレクサンダー・フォン・フンボルト(ペルー沿岸のフンボルト海流で知られている地理学者)が、つる植物 Chondrodendron tomentosum などの樹皮が原料であることを確認しました(1)。

19世紀の半ば、冒険家のチャールズ・ウォータートンは英国王立科学協会の助力を得て、クラーレでロバなどを麻痺させ、その後ふいごで息を吹き返させるという実験を行って、クラーレの作用が呼吸を阻害するものであることを示しました(2)。クロード・ベルナールはこれにヒントを得て、カエルにクラーレを与えると、筋肉が電気刺激に反応しなくなることを発見しました。ベルナールはさらに研究をおこなって、クラーレは神経と筋肉の接点に作用し、ここで情報伝達を遮断する毒であることを明らかにしました(3、4)。

1930年台にハロルド・キングはこの物質を抽出し、構造式(図133-1)を決定したということになっていますが(5)、最終的に決定されたのは1970年であることがウィキペディアに記載してあります(6、7)。20世紀の半ばから後半にかけては、クラーレを麻酔剤として用いた手術が世界で行われていました(6)。現在でも補助的に用いられる場合があるようです。天木の考察によると、クラーレは私たちの胃に入ると酸で無毒化されるためクラーレで倒した獲物を食べても私たちは大丈夫ですが、草食動物の場合胃が酸性でないため死んでしまうそうです。ですからクラーレを産生する植物は、自己防衛すなわち草食動物の餌にならないためにこのアルカロイドを産生しているようです(8)。

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図133-1 クラーレの毒 d-tubocurarine

ここで当初はクラーレとは全く別の話であったアセチルコリンの話題に飛びます。昔から真菌がつくる麦角の抽出液が血圧を下げる効果を持つことは知られていましたが、麦角は複数のアルカロイドを含んでいるため、その他にも様々な効果をもたらします。毒薬でもあります。1914年にユーインズは麦角に含まれる血圧降下作用を持つ化合物がアセチルコリンであることをつきとめました(図133-2)。デイルはこの物質がナノグラム単位の皮下注射でネコの血圧を下げることなどを確認し、アセチルコリンが神経伝達物質であることを示唆しました(9、図133-2)。その後のデイルやオットー・レーヴィの研究の展開は前セクションに記した通り、アセチルコリンが神経伝達物質であることを証明するものでした(10)。

デイルはクラーレ(tubocurarine)がアセチルコリンの筋肉刺激作用を抑制し、この作用はアセチルコリンが神経から分泌されるのを阻害するのではなく、アセチルコリンが筋肉に作用するのを阻害していることを証明しました(11)。図133-1と133-2を見比べると、アセチルコリンが2分子からみ合ったものがクラーレの分子構造のような感じです。これから想像される通り、クラーレはアセチルコリンが作用すべき構造に先に結合してアセチルコリンが作用できないようにしている、すなわちアンタゴニストとして機能しているわけです(12)。

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図133-2 麦角に含まれるアセチルコリン

アセチルコリンはコリンとアセチルCoAを材料として、コリンアセチルトランスフェラーゼという酵素によって合成されます(図133-3)。アセチルCoAは生物が呼吸を行なっている限りミトコンドリアが産生する物質で、通常細胞質に存在します。コリンはアセチルコリン合成の材料だけではなく、細胞膜の成分でもあり生合成も可能ですが、それでは足りないので栄養として摂取することが必要です。レバー・卵黄・大豆・赤飯用のササゲなどに豊富に含まれています(13)。

図133-3を見るとわかるように、アセチルコリンエステラーゼの活性を阻害すると、アセチルコリンは代謝されないため濃度が上昇します。オウム真理教事件で名前を知られたサリンは不可逆的にアセチルコリンエステラーゼを不活化するので、神経と筋肉の接点シナプスが機能を失い極めて危険な毒物です(14)。

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図133-3 アセチルコリンの合成と分解

神経細胞も必要な量のコリンを産生できないので、細胞膜に高親和性トランスポーターという装置を設置して、コリンを外界から取り込んでいます。コリンの取り込みに成功すれば、コリンアセチルトランスフェラーゼは常に十分な活性が存在するので、直ちにアセチルコリンを供給することが可能です(15、図133-4)。アセチルコリンは小胞アセチルコリントランスポーターによって、シナプス小胞に取り込まれます(図133-4)。驚くべき事に小胞アセチルコリントランスポーターの遺伝子は、コリンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子のイントロンの中に存在しており、エンハンサーやプロモーターを共有していることが報告されています(16)。

興奮が軸索末端に伝わるとカルシウムが取り込まれ、前セクションに記載したようなプロセス(17)を経て、シナプス小胞が細胞膜と融合して中身がシナプス間隙に放出されます。シナプス小胞ひとつにつき1000~50000分子のアセチルコリンが放出されるようです(15)。シナプス後細胞におけるアセチルコリンの受容体などについては次のセクションで述べます。

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図133-4 シナプスにおけるアセチルコリンの受け渡し

参照

1)ウィキペディア: クラーレ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%AC

2)Wikipedia: Charles Waterton
https://en.wikipedia.org/wiki/Charles_Waterton

3)Bernard, C. Lecons Sur Les Eets des Substances Toxiques et Medicamenteuses; Bailliere: Paris, France, (1857)

4)梶本哲也 矢毒から開発され たアセチルコリンのアンタゴニスト-執刀外 科 手術 に必須の筋弛緩薬-
化学と教育 vol.56, no.9, pp.512-513
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/54/9/54_KJ00007744805/_pdf

5)Charles R. Harington, Harold King. 1887-1956, Biographical Memoirs of Fellows of the Royal Society, vol.2, pp.157-171 (1956)
https://www.jstor.org/stable/769483?seq=1#metadata_info_tab_contents

6)Wikipedia: Tubocurarine chloride
https://en.wikipedia.org/wiki/Tubocurarine_chloride

7)Everett AJ, Lowe LA, Wilkinson S (1970). "Revision of the structures of (+)-tubocurarine chloride and (+)-chondrocurine". J. Chem. Soc. Chem. Commun. (16): 1020., pp.1020-1021 (1970) doi:10.1039/c29700001020
https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/1970/C2/c29700001020#!divAbstract

8)天木嘉清 矢毒(クラーレ)のアマゾンより手術室への遥かなる旅
慈恵医大誌 vol.119, pp.221-228 (2004)
file:///C:/Users/morph/AppData/Local/Temp/119-3-221.pdf

9)Wikipedia: Acethylcholine
https://en.wikipedia.org/wiki/Acetylcholine

10)続・生物学茶話132: 化学シナプスの実在とカルシウムチャネル
http://morph.way-nifty.com/grey/2021/03/post-bb9eed.html

11)Dale,H.H.,Feldberg,W. & Vogt,M.. Release ofacetylcholine at voluntary nerve endings., J. Physiol., vol.86, pp.353–380 (1936)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1394683/

12) Wenningmann I, Dilger JP., The kinetics of inhibition of nicotinic acetylcholine receptors by (+)-tubocurarine and pancuronium., Molecular Pharmacology., vol.60 (4): pp.790–796. (2001) PMID 11562442
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11562442/

13)健康長寿ネット レシチン・コリンの効果と摂取量
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/shokuhin-seibun/lecithin.html

14)ウィキペディア:サリン
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%AA%E3%83%B3

15)脳科学辞典:アセチルコリン
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%82%A2%E3%82%BB%E3%83%81%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%AA%E3%83%B3

16)Lee E. Eiden.,The Cholinergic Gene Locus., Journal of Neurochemistry., vo.70, no.6, pp. 2227-2240 (1998)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9603187

17)続・生物学茶話132: 化学シナプスの実在とカルシウムチャネル
http://morph.way-nifty.com/grey/2021/03/post-bb9eed.html

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2021年3月10日 (水)

サラとミーナ244: サラが籐椅子に進出

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今までミーナが独占していた籐椅子に、ついにサラが進出しました。せっかく敷いてあげたクッションを排除し、枕にしました。

追い出されたミーナは私の膝に。

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しかしそこは眠るには不都合です。

というわけで、次善の策で床に直置きのクッションに

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2021年3月 8日 (月)

続・生物学茶話132: 化学シナプスの実在とカルシウムチャネル

シナプスといえば、通常は図132-1(1)のような化学シナプスを意味しますが、広義ではひとつ前のセクションで述べたようなギャップ結合も含まれます。この場合、ギャップ結合は電気シナプス、通常のシナプスは化学シナプスと呼ばれることになります。ギャップ結合ではイオンや電子は細胞間のトンネルを自由に往来しますが、化学シナプスでは細胞と細胞で神経伝達物質を受け渡しするという非常に複雑なプロセスを経て情報が伝わります。

どうしてこんな面倒なシステムになっているのでしょうか? 多くの細胞がまとまって同じ作業をする場合電気シナプスは効率的です。しかし細胞ごとに別の作業をやる場合や、それぞれについて制御が必要な場合などは、電気シナプスでは単純すぎて役に立ちません。複雑な作業を行なう神経系では、伝達速度を犠牲にしてでも、細かい分業や個別の制御が可能な化学シナプスが必要になります。

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図132-1 化学シナプス A:模式図 B:電子顕微鏡写真

化学シナプスの存在を予言したのはカハールで、その後数十年を経てデ・ロバーティスやパラーデの電子顕微鏡を用いた研究によって、その実在がようやく証明されました(2、3)。形態学的にシナプスが同定されたので、次はそこで用いられている情報伝達物質の化学的な同定です。その物質は細胞間を移動するのですから、水溶性でなければなりません。このことについて最初に重要な実験を行ったのはオットー・レーヴィです(図132-2)。レーヴィはストラスブルク大学の医学部を卒業後いったん臨床医になりましたが、あまりに多くの患者の死を見て自分が無力であることを思い知らされ、臨床医をやめて基礎医学を志しました(4)。

彼はユダヤ系のドイツ人ですが、1902年にオーストリアのグラーツ大学に職を得て、そこで図132-2に示した重要な実験を行ない、1921年に発表しました。彼は2匹のカエルから心臓を取り出し、片方には迷走神経をつけたまま、片方は迷走神経を取り除いた状態にしました。両者ともリンゲル液(ナトリウム、カリウム、カルシウムを含む生理食塩水)に浸し、迷走神経に電気刺激を与えると心臓の拍動が低下しました。そしてそのときに心臓をひたしていた液を吸い取り、別のリンゲル液に浸しておいた迷走神経を除去した心臓に滴下するとやはり心臓の拍動が低下することを発見しました。

レーヴィの実験結果は、迷走神経の刺激によってリンゲル液に溶け出した水溶性の化学物質に、心臓の拍動を低下させる活性があることを意味します。後にこの物質はヘンリー・デイルによってアセチルコリンであることが証明されました。神経伝達物質の発見です。これらの業績によってレーヴィとデイル(図132-2)は1936年のノーベル生理学医学賞を受賞しました(5)。

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図132-2 神経伝達物質の発見

レーヴィは運の良い人で、彼の実験は迷走神経の働きが活発な冬のカエルを用いた場合だけ再現できることがあとで分かりました(6)。夏に実験していたらこの発見はなかったことでしょう。その運の良いはずのレーヴィでしたが、その後とんでもない不運に遭遇します。ノーベル賞受賞の2年後にドイツ軍がオーストリアに侵攻し、レーヴィは逮捕されてポストや財産をすべて剥奪されることになりました。しかしなんとか収容所送りは免れ、米国に亡命して1961年に亡くなるまでニューヨークで暮らしました。

レーヴィとデイルの業績によって、アセチルコリンという水溶性物質が情報を伝達することはわかりましたが、シナプスがどのように関わっているかはまだ不明でした。これを解明したのがバーナード・カッツでした。バーナード・カッツ(図132-3)もユダヤ系のドイツ人でしたが、彼はライプチッヒ大学の医学部を1934年に卒業するといちはやく英国に実質亡命し、ロンドン大学で研究を行ないました(7)。その後オーストラリアに移住し、シドニーでエクレスとカフラーという共同研究者を得ました。カッツは彼らと共に、アセチルコリンエステラーゼの阻害剤であるエゼリンを用いた実験で、筋収縮が神経筋接合部からの電気刺激によって直接おこるのではなく、神経筋接合部(シナプス)でのアセチルコリンの作用によって間接的に活動電位が発生することを示し、レーヴィとデイルの理論を実証しました(8、9)。

エゼリンの投与によってアセチルコリンの代謝が阻害され、シナプス間隙におけるアセチルコリンの濃度が高まり、筋肉の受容体を刺激することによって筋細胞のイオンチャネルが開き、ナトリウムイオンが流入、カリウムイオンが流出することになり、このような一連の反応によって活動電位が発生し、筋収縮がおこります(8、9)。

カッツはその後オーストラリア国籍を獲得し、第二次世界大戦中はオーストラリア空軍に入隊しました。ニューギニアで航空管制部隊の将校として、日本航空部隊によるポートモレスビーやダーウィン攻撃をレーダーで監視していたようです。戦後ロンドンに戻って研究に復帰しました(9)。当時ニューギニアの日本軍は山越えの無理な移動を命じ、銃火を交えることなく10000名以上の将兵が死亡(病死・餓死)した所謂「イドレ死の行軍」を行ないました(10)。カッツはそのウィットネスのひとりだったかもしれません。

カッツの最大の業績はシナプス前細胞において、神経伝達物質が袋に包まれて保管されており、それが袋単位で膜から放出されてシナプス後細胞を興奮させる役割を持っていることを示したことです(11、12)。文献12にはシナプス前細胞に多数のシナプス小胞が存在することを示す電子顕微鏡写真が掲載されています。カッツのアイデアはその後多くの研究者によって実証され、図132-3のようなシナプスの模式図が描かれるようになりました。カッツは1970年にノーベル生理学医学賞を受賞しています。

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図132-3 シナプスのスキーム

ニューロン軸索での電気的情報移動、すなわち活動電位が発生する位置の移動は主としてナトリウムチャネルの働きによるものですが、ニューロン末端での化学的情報移動においては主役がカルシウムチャネルに変わります。このメカニズムはウィキペディアで簡潔にまとめてあるので、コピペしておきます(13)。ただし若干の文章変更を行いました。

1.シナプス前細胞の軸索を活動電位が伝わり、軸索の末端にシナプスに到達する。
2.活動電位によりシナプス前細胞の膜上に位置する電位依存性カルシウムイオンチャネルが開く。
3.カルシウムイオンがシナプス内に流入し、化学反応のカスケードが起動され、最終的にシナプス小胞が細胞膜に接して神経伝達物質が細胞外に開口放出される。
4.神経伝達物質はシナプス間隙を拡散し、シナプス後細胞の細胞膜上に分布する神経伝達物質受容体に結合する。
5.シナプス後細胞のイオンチャネルが開き、シナプス後細胞は興奮する(脱分極する)。ただしシナプスが抑制性シナプスであった場合、シナプス後細胞の興奮は抑制される。

図132-3で興味深いのは、シナプス間隙に放出された神経伝達物質のうち、シナプス後細胞にトラップされなかった余剰分子は、シナプス前細胞の自己受容体や能動的再吸収で回収されるという機構の存在です。これは単にもったいないから再利用しようというだけでなく、拡散によって周囲のニューロンに影響を与えるとノイズになってしまうからだと思われます。

カルシウムは、昔から筋収縮に必要であることは知られていました。このあたりの話は江橋節郎の自伝にいろんなエピソードが書かれてあり、楽しく読ませていただきました(12)。そのなかでリンゲル液で有名なリンゲルが、早くも1883年に筋収縮にカルシウムが必要であることを示す実験をやっていたことが書いてあります。またポツラーがカルシウムキレート剤によって筋肉が弛緩することを発見したとも記されてあります。

細胞内のカルシウムイオン濃度は通常10の-8乗から-7乗モルという非常に低い濃度ですが、血清中の濃度は10の-3乗モルという高濃度であり、この著しい濃度差をカルシウムチャネルが維持しているわけです(15)。活動電位が神経末端に到達すると、カルシウムチャネルが開いて一気にカルシウムが細胞内に流入するわけです。この電位依存性カルシウムチャネル(voltage-dependent calcium channel=VDCC)の構造は、ウィリアム・キャテラルらが中心となって解明されました(16、図132-4、図132-5)。

骨格筋のカルシウムチャネル(L型)はα1、α2、β、γ、δ の5つのサブユニットからなり、α2とδはSS結合で共有結合しています(α2δサブユニット)。カルシウムの通り道となるチャネル自体は膜貫通α1サブユニットにより形成され、δ は細胞外、β は細胞内にあります。このほか膜を貫通するα2とγ がα1に隣接しています(図132-4)。複雑な構造のチャネルですが、このようなカルシウムチャネルの原型は細菌にもあるようです(17)。したがってもともとはホメオスタシスに用いられていたものがシナプスに流用されたものと思われます。

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図132-4 キャテラルらによって解明されたカルシウムチャネルの構造

α1サブユニットは6回づつ膜を貫通するドメインを4つ持つ24回膜貫通分子で、アミノ酸の数約2000で分子量190キロダルトンの巨大なサブユニットです(18、図132-5)。α1サブユニットのN末・C末はともに細胞の内側にあります。β サブユニットとγ サブユニットはどちらも4つのαヘリックス部位を持っていますが、γ が膜を4回貫通しているのに対して、β は一度も貫通せず、細胞内に存在します(図132-5)。脳神経系におけるカルシウムチャネルの構造もこれに類似していますが、γ サブユニットについてはチャネルに含まれるかどうかまだ議論があるようです(16)。

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図132-5 カルシウムチャネルタンパク質のドメイン構造

β サブユニットやα1サブユニットの細胞内領域は神経伝達物質の放出制御、シナプス小胞の移動、遺伝子発現の調節などに関与しているとされています。ここでは詳しくは述べませんが、例えばβサブユニットはRIM1という足場タンパク質と結合し、RIM1がシナプス小胞のタンパク質Rab3に結合することが報告されています(19)。このことはカルシウムチャネル複合体が、シナプス小胞を膜近傍に引き寄せる働きを持っていることを示唆しています。シナプス小胞が膜に接近すれば、エキソサイトーシス機構によって神経伝達物質がシナプス間隙に放出されます(図132-6、図132-1B)。放出されている瞬間の電子顕微鏡写真を前セクションで示しました(20)。

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図132-6 カルシウムチャネルとシナプス小胞からの神経伝達物質放出

参照

1)Wikipedia: Synapse
https://en.wikipedia.org/wiki/Synapse

2)De Robertis, E.D.P., and H.S. Bennett., Some features of the submicroscopic morphology of synapses in frog and earthworm., J. Biophys. Biochem. Cytol. vol.1, pp. 47?58 (1955)
http://jcb.rupress.org/content/1/1/47?ijkey=606ed65709e41ffb73559e700fc15f6bfac2c752&keytype2=tf_ipsecsha

3)Palade, G.E., and S.L. Palay. 1954. Anat. Rec. 118:335. (1954)

4)ウィキペディア:オットー・レーヴィ
https://en.wikipedia.org/wiki/Otto_Loewi

5)Otto Loewi, Novel lecture: The Chemical Transmission of Nerve Action.
https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/1936/loewi/lecture/

6)Elliot S. Valenstein, The Discovery of Chemical Neurotransmitters., Brain and Cognition vol. 49, pp. 73–95 (2002)
doi:10.1006/brcg.2001.1487
https://pdfs.semanticscholar.org/f7ba/4a5c744019d8e93347a9a04991d8d729a2f7.pdf#search=%27Walter+Dixon+neurotransmitter%27

7)Sir Bernard Katz, Biographical
https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/1970/katz/biographical/

8)JC Eccles, B Katz, and SW Kuffler., Effect of eserine on neuromuscular transmission. J. Neurophys., vol.5, no.3, pp. 211-230 (1942)
https://www.physiology.org/doi/abs/10.1152/jn.1942.5.3.211?journalCode=jn

9)Bert Sakmann, Sir Bernard Katz: 26 March 1911 - 20 April 2003., Biogr Mem Fellows R Soc. vol. 53., pp. 185-202. (2007)
https://royalsocietypublishing.org/doi/pdf/10.1098/rsbm.2007.0013

10)ニューギニア戦線の「イドレ死の行軍」について 読書放浪記録
http://yryk.seesaa.net/article/446698846.html

11)J del Castillo and B Katz., La base ‘quantale’ de la transmission neuromusculaire. Colloques Int. C.N.R.S. vol. 67, pp. 245–256. (1957)

12)R. Birks, H. E. Huxley, and B. Katz., The fine structure of the neuromuscular junction of the frog., J Physiol., vol. 150(1), pp. 134–144. (1960)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1363152/pdf/jphysiol01288-0154.pdf

13)ウィキペディア:シナプス
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%8A%E3%83%97%E3%82%B9

14)江橋 節郎: カルシウムと私
http://brh.co.jp/s_library/interview/12/

15)千勝典子、松本俊夫: カルシウム代謝とその調節
http://www.nara-gyunyuya.com/contents/ca/15.htm

16)William A. Catterall、Voltage-Gated Calcium Channels., Cold Spring Harb Perspect Biol 2011;3:a003947 (2011)
doi: 10.1101/cshperspect.a003947
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3140680/pdf/cshperspect-CAL-a003947.pdf

17)Stewart R. Durell and H. Robert Guy, A putative prokaryote voltage-gated Ca2+ channel with only one 6TM Motif per subunit., Biochemical and Biophysical Research Communications
Volume 281, Issue 3, pp.741-746 (2001)
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0006291X01944080

18)脳科学辞典:電位依存性カルシウムチャネル (このサイトからの引用ですが、α1サブユニットのN末が2つあるようなエラーがある図でしたので、管理人が若干の修正を行いました)
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E9%9B%BB%E4%BD%8D%E4%BE%9D%E5%AD%98%E6%80%A7%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A0%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%8D%E3%83%AB

19)清中茂樹,瓜生幸嗣,三木崇史,森泰生、神経伝達物質放出におけるCa2+チャネル複合体形成の生理的意義  生化学 第80巻 7号 pp.658-661 (2008) 
http://www.jbsoc.or.jp/seika/wp-content/uploads/2013/11/80-07-08.pdf

20)続・生物学茶話131: ギャップ結合が召喚したゴルジの亡霊
http://morph.way-nifty.com/grey/2021/02/post-1e14bd.html

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2021年3月 6日 (土)

ミッドナイトブルー Music Bee 賛

私はもちろんLP時代を知っている世代ですが、いまでもLPはファンがいて売っているそうです。私も捨てられないLPを片手の幅くらいは所有していますが、もう2度と聴かないと思います。

だってLPを聴くには、まずニトムズのコロコロのようなクリーナーで表面のほこりを掃除して、カートリッジの針圧調整の1円玉をのせて、おもむろに針を下ろすんですよ。最初から聴くならまだいいのですが、途中の曲を聴くにはそこに命中させないといけません。

LPを光線でトレースする技術はあったにも関わらず、買い換えを期待したのかメジャーな企業は販売を放棄して、一気にCDになだれ込みました。そして最近はCDも買わないで、契約配信で音楽を楽しむ人が多くなったようです。

私はまだまだCD派ですがCDを回すのではなくて、いったんMP3かFLAC形式に落としてPCで聴くことが多くなりました。検索が簡単であることがその最大の理由ですが、ほかにも理由はあります。

私がPCで音楽を聴くときに愛用しているのは「MusicBee」というフリーソフトです。アップルの人は iTunes でいいと思いますが、ウィンドウズ派にはおすすめです。

まず 表示 → スキン → Blue → Midnight で画面のデザインを指定すると下のような画面になります。

Photo_20210306100901

この色調が落ち着いていて、さあ音楽を聴こうかなという気分になります。

ひとつ不満があるのは、ときどき曲順がいれかわってしまうことです。ここに出した画面にもそうなっている曲があります。これを手動でもどすことができません。なんとかしてほしいのですが、無料のソフトなので文句は言えません。

エミリー・シモン
http://morph.way-nifty.com/grey/2014/08/post-6dce.html

 

 

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2021年3月 4日 (木)

加藤陽子著 「戦争まで」

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それでも日本人は、「戦争」を選んだ という本が面白かったので、「戦争まで 歴史を決めた交渉と日本の失敗」という続編も読んでみました。
http://morph.way-nifty.com/grey/2020/11/post-3525d4.html

この本で一番印象的だったのは、日本に「ハル・ノート」という最後通牒を突きつけて、日本を戦争に追い込んだ元凶とされるコーデル・ハル国務長官が、実は米国政府の中でも代表的なハト派だったということです。

ローズベルト大統領も日本との戦争は避けたいと思っていましたが、モーゲンソー財務長官、スチムソン陸軍長官、アチソン国務次官などは主戦派で、さっさと日本をひねり潰そうとしていたというのが米国政府の勢力分布でした。

中国の日本軍は米国の教会・学校をはじめとする諸施設や軍事施設を再三誤爆してハルの顔をつぶしていたのですが、交渉しようとするハルにとって日本軍の仏印進駐は大打撃でした。さすがに日本に対して経済制裁を行いましたが、進駐が北部にとどまっていた頃には、かなり名目的な制裁であり、日本が実質的に窮地に陥らないように配慮されていたのです。

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当時の仏印の地図 現在のベトナム・ラオス・カンボジアなど

しかし1941年に南部仏印進駐がはじまってからは、これが英国や米国にとって致命的な脅威をもたらすものだったので、一気に事態は悪化していきました。もともと日本海軍は石油の備蓄が米国と開戦した場合には1年しかもたないことを知っていたので、米国とは戦争できないことを政府や国民に徹底すべきだったのですが、そんなことはメンツ上できなかったのが日本を壊滅に追いやることになりました。

それでも日本に対する1941年8月1日からの対日石油全面禁輸は、ハル長官やローズベルト大統領が用務や夏休みでワシントンに不在な時に、前記の主戦派が勝手にやってしまって、ハルやローズベルトが知ったのは1ヶ月後だったという話には驚きました。

ハルはその後もあの手この手で日米交渉によって戦争を回避しようとしましたが(*)、結局日米の主戦派によってぶち壊され、最後はハル・ノートの提示に至ったというわけで、この間の事情を知れば、開戦の本当の経緯を知ることができます。コーデル・ハルは1933年から1944年までの長きにわたって米国国務長官を務め、戦後は国連の創設に尽力して、1945にノーベル平和賞を受賞しています。

私はこの本の著者加藤陽子氏のように、政府がやってきたこと、国民が扇動されてきたことについて正確に検証することは大事なことだと思います。政府の重要な会議の議事録を廃棄したり改ざんしたりすることは許されません。

* 公文書に見る日米交渉
https://www.jacar.go.jp/nichibei/reference/index13.html

 

 

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2021年3月 1日 (月)

サラとミーナ243: ミーナが1日で一番緊張する瞬間

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春が近づき、そろそろジョージⅢ世君(ヒヨドリ)ともお別れする季節がやってきました。
今年はずっと配偶者を連れて来ていました。暖かくなると行動範囲を広げるせいか、食べ物が他で見つかるせいか、ベランダにはやってこなくなります。

ジョージⅢ世がベランダにやってくると、ミーナは最初の頃は興奮して窓ガラスに激突したりしていましたが、今はただ見つめるだけです。それでもミーナにとっては一番緊張する瞬間です。目がらんらんと輝いています。サラはたまにチラッと見るくらいです。

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