« 2020年12月 | トップページ | 2021年2月 »

2021年1月29日 (金)

続・生物学茶話 127: 活動電位

すべての細胞はある意味電池であるとも言えますが、図127-1に示されるような活動電位を発生する細胞は、神経細胞や筋細胞などの限られた細胞です。これは通常は細胞外が高濃度で細胞内が低濃度に保たれているナトリウムイオンが、なんらかの刺激で細胞外から細胞内に流入するために起こります。

1271

図127-1 活動電位(一過性膜電位変化)


アラン・ホジキンはケンブリッジ大学のトリニティーカレッジ出身ですが、米国に留学してイカの巨大軸索の利用法などを学んで1938年に帰国し、アンドリュー・ハクスレイと共に活動電位の研究に取り組みました。しかし運悪く第二次世界大戦が勃発し、5年間も海軍でレーダーの研究に従事することになりました(1)。ハクスレイは開戦時医学生でしたが爆撃で学業を続けられなくなり、防空部隊や海軍で砲撃技術の研究をやっていたようです(2)。1946年になってようやくホジキンとハクスレイはトリニティーカレッジで共同研究を行うことになりました。

彼らはイカの巨大軸索の活動電位を測定し、図127-1のような電位の変動を数式で表現することに成功しました(3)。彼らが成功した要因として、ケネス・コールらが開発したボルテージクランプ法(4)を用いてコンダクタンスの測定を正確に行ったことがあげられています。またホジキンとハクスレイはナトリウムやカリウムの細胞への出入りに関してイオンチャネル仮説を提唱し、後にそれが正しいことがわかりました。彼らの肖像写真を図127-2として示しておきます。ホジキンとハクスレイは1963年のノーベル生理学医学賞を受賞しました。

1272

図127-2 活動電位研究のパイオニア達

 

活動電位について考察する前に、浸透圧・選択的半透膜とイオンの移動などについての基本的な知識を整理しておきたいと思います。まず塩素イオンは通過できないが、カリウムイオンは通過できる選択的半透膜を仮定しましょう。細胞には塩素イオンやカリウムイオンが通過する開閉可能な穴(チャネル)があり、このような状態を実現することは可能です。

図127-3の膜より左側にはカリウムイオンがあり、右側にはないわけですから拡散(浸透圧)によってカリウムイオンは右側に流入します。そうすると左側に単独の塩素イオンが発生し、そのマイナスチャージによって膜の右側に流入したカリウムイオンは膜の右側表層に引きつけられます。膜の左側には塩素イオンが整列します。これはまさしくセクション126で示した電池の一種であり、導線で左右をつなぐと電流が発生します。導線がない場合、カリウムイオンを膜の右側に流入させようとする浸透圧と、カリウムイオンを膜の左側に引き込もうとする電圧がつりあったところで平衡状態となります(図127-3)。

1273

図127-3 選択的半透膜の近傍で発生する電池のような現象

 

では私たちの細胞の外と内はどのようなイオン組成になっているのでしょうか? 日本緩和医療学会などの資料によると図127-4のようになっています(5、6)。mEq の単位は mmol に直してあります。それぞれのイオンによって、著しく細胞内外の濃度に差があることがわかります。細胞膜がただの半透膜ならこのようなことは起こりません。まさしく細胞膜を通過するイオンは図127-3で仮定した選択的半透膜のように選別されています。

カリウムイオンとナトリウムイオンに関して言えば、細胞膜にATP分解酵素活性を持つナトリウム・カリウムポンプが存在し、ATP分解のエネルギーを利用してナトリウムイオンを細胞外に排出し、カリウムイオンを細胞内にとりこむ作業を行っていることが、この濃度差の大きな要因になっています。他のイオンも生体内で重要な役割を果たしていますが、活動電位に関して言えば主役はナトリウムイオンとカリウムイオンです(7)。

1274

図127-4 細胞内外のイオン濃度

 

ナトリウム・カリウムポンプ(Na+・K+ポンプ)はエネルギーを消費してイオンを輸送する、いわゆる能動的イオン輸送を行っていますが、これとは別にナトリウムとカリウムはそれぞれ濃度差によってイオンを透過するチャネル(開閉可能な穴)を細胞膜に持っています。

Na+・K+ポンプは Na+/K+-ATPase の酵素活性を持ち、次式のような反応を行います。

3 N a + (細胞内) + 2 K + (細胞外) + A T P + H 2 O ⇄ 3 N a + (細胞外) + 2 K + (細胞内) + A D P + P i

したがって通常は細胞内ナトリウムイオンの濃度が低く(Na+・K+ポンプによって細胞外に排出されている)、カリウムイオンの濃度は高く(Na+・K+ポンプによって細胞内にとりこまれている)なっています。したがって細胞膜の外側はナトリウムイオンで覆われ、細胞内の塩素などのマイナスイオンは細胞膜のすぐ内側に引き寄せられて整列します(図127-5平常時)。このとき細胞膜の内外で電位差が発生します。細胞外の電位を0とすると細胞内の電位はマイナス70~80mVで、これがいわゆる静止電位です(図127-1)。注意すべきは、この電位は細胞内と細胞外のトータルなイオン濃度の差によって発生するのではなく、細胞膜内外の局部的なイオンの集積によって発生するということです。

細胞が刺激を受けるとナトリウムチャネルおよびカリウムチャネルが開き、細胞内外の濃度差に応じて、細胞外からナトリウムイオンが流入し、細胞内からカリウムイオンが流出します。流入と流出が同じになったところが図127-1の閾値 (threshold) です。これより少しでもナトリウムの流入が勝ると正のフィードバック機構が働いて一気に脱分極が進みます(4、図127-1)。

ナトリウムイオンが大量に流入すると、細胞膜の内壁にトラップされていたマイナスイオンはナトリウムイオンにひかれて散らばり、細胞膜の外側ではナトリウムイオンを失った塩素イオンにひかれてプラスイオンの集積も解消されます。この結果活動電位が発生します(図127-4)。これは細胞膜の近傍で形成されていた電池が一気に放電したとも解釈できます。活動電位は一過性のもので、ピークに達すると電位依存性のカリウムチャネルが開いてカリウムイオンを放出し、電位は静止電位にもどります(8)。とりこまれたナトリウムはNa+・K+ポンプによって細胞外に放出され、カリウムもとりこまれてもとの濃度に戻ります。

1275

図127-5 活動電位発生にともなうイオンの動向


参照

1)The Nobel Prize in Physiology or Medicine 1963  Alan Hodgikin Biographical
https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/1963/hodgkin/biographical/

2)The Nobel Prize in Physiology or Medicine 1963 Andrew Huxley
https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/1963/huxley/facts/

3)脳科学辞典: Hodgkin-Huxley方程式
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/Hodgkin-Huxley%E6%96%B9%E7%A8%8B%E5%BC%8F

4)A Biographical Memoir by Sir Andrew Huxley. Kenneth Stewart Cole., Biographical Memoir, National Academy of Sciences., National Academies Press (1996)
http://www.nasonline.org/publications/biographical-memoirs/memoir-pdfs/cole-kenneth-s.pdf

5)日本緩和医療学会 輸液の生理作用
https://www.jspm.ne.jp/guidelines/glhyd/2013/pdf/02_03.pdf

6)大塚製薬 輸液の基礎知識
https://www.otsukakj.jp/healthcare/iv/knowledge/

7)ウィキペディア: 活動電位
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B4%BB%E5%8B%95%E9%9B%BB%E4%BD%8D

8)酒井正樹 講義実況中継 その2:細胞はいかにして興奮するか
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hikakuseiriseika/29/2/29_76/_article/-char/ja/

| | コメント (0)

2021年1月27日 (水)

新型コロナウイルス感染症の抗体治療薬がいよいよ登場

Vaccine_20210127105701

ワクチンは人間に抗体を作らせるために抗原またはツールを投与するわけですが、手っ取り早く抗体を直接投与するという手もあります。イーライリリーとリジェネロン(どちらも米国の製薬会社)はそれぞれモノクローナル抗体のカクテルによる新型コロナウイルス感染症予防治療薬を開発し、現在審査中です。

https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-lilly-idJPKBN29V23D

通常の抗体と違って、モノクローナル抗体は常に同じモノを製造できるので再現性があるというアドバンテージがあります。ただ抗原分子のごく一部しか認識できないので、カクテルで使うとより有効です。

イーライリリーの方は「バムラニビマブ」と「エテセビマブ」という舌をかみそうな名前のカクテルだそうです。リジェネロンも2種のモノクローナル抗体の組み合わせです。これらはおそらくウィルスが臓器を侵食した後に投与したのでは手遅れで、濃厚接触者にあらかじめ投与するとか、まだ症状が軽いうちに投与するとかするときわめて有効なのではないかと思われます。クラスターが発生している地域の住民に投与するのもいいでしょう。

ですから日本の保健所がクラスター・濃厚接触者の調査を縮小したというのは非常にまずいです。もう流行がはじまってから1年経つのですから、政府は保健所の機能を強化する手立てを講じなくてはいけないのに、なぜ後退を続けるのかわけわかりません。新規感染者数の正確さが失われ、国際的な信用も失墜します。

日本の製薬会社も動きが遅くて失望させられます。おそらく研究部門をリストラしてしまって機能不全に陥っているのではないでしょうか。

 

| | コメント (0)

2021年1月26日 (火)

続・生物学茶話 126: 電池の起源 

皆さんは海綿という動物をご覧になったことがあるでしょうか? 海底に固着し臓器らしい臓器もなくてまるで植物のようですが、実は立派な従属栄養の動物です。あらゆる多細胞生物のなかで最も「下等」なグループと思われていますが、カンブリア紀より前から現在に至るまで大繁栄している生物です。

2014年に、 Danielle Ludeman らがその海綿が化学物質や物理刺激に反応してくしゃみをするメカニズムについて報告したときには、ちょっとしたセンセーションを巻き起こしました。海綿には神経細胞がないのに、まるでそれが存在するかのような電気信号による情報伝達が起こったからです(1)。でもそれは驚くべきことではなく、細菌も電気信号によって連絡を取り合っていることが知られています(2)。単細胞の真核生物も電気信号を利用して行動することが報告されています(3)。ここで引用した文献はごく一部にすぎません。すなわち神経細胞が出現する以前から、生物は電気信号を利用して生きていたわけです。私たちの脳は電気信号を伝達する回路の巨大な集積体であり、電気信号について考察することは生物を理解する上で避けては通れません。

元素の水溶液中におけるイオン化しやすさ(イオン化傾向)は、元素の酸化されやすさの指標でもあり(4)、化学の一丁目一番地です。私は「金借るな、間借りあてにすな、水餡食い過ぎ銀ブラ禁」とおぼえましたが、最近では「リッチに貸そうかな まああてにすんな ひどすぎる借金」という語呂合わせが流布しているようです(5)。後者の方が正確かもしれません(図126-1)。最も酸化されやすい元素の一つであるリチウムは、海水中だけでも2300億トンあるそうですが(6)、人間が製造した物を除いてはすべて化合物となっており、単体では地球上に存在しません。意外なことに金も海水中に50億トンも存在するそうです(7)。金はほとんど単体で存在します。ともあれ私達生物も化学の法則に則って生きているので、このイオン化傾向のリスト(図126-1)は重要な意味を持っています。

1261

図126-1 元素のイオン化傾向

ここで少し電池の話に寄り道してみましょう。後述するように、私達の体を構成するひとつひとつの細胞もある種の電池です。電池は金属によってイオン化傾向が異なるということがその原理と深く関わっています。電池の発明によって、私達は電気を人工的に製造し使用することが可能になったのですが、ではその電池を発明したのは誰なのでしょうか? 一般的にはアレッサンドロ・ボルタが1800年に発表したボルタ電堆が最初と言われていますが、それはおそらく違います。

1936年にイラクの首都バグダッドの近郊で、鉄道の敷設を行なっていた作業員が奇妙な容器を発見しました(8)。調べてみるとそれは図126-2のような電池で、パルティア国またはサーサーン朝ペルシャで製造された物であることがわかりました(8、9)。パルティア国とは紀元前約250年から紀元後224年まで現在のイラン・イラクおよび周辺を支配していた国家で(10、図126-2)、サーサーン王朝はその領地を引き継ぎ、紀元後650年位まで続きました(11)。

この電池は1~2ボルトくらいのパワーがあり、おそらく金または銀メッキを行なうために使われたのではないかといわれています(8、9)。さらにもっと以前の時代の古代エジプトでも金メッキは行なわれており、おそらく電池が使われたのではないかと考えられています(12、13)。

1262

図126-2 古代イランの版図とそこで使用されていた電池

近代になってからは、ボルタの電堆(voltaic pile)が最初に発明された電池として有名です(14、図126-3)。これは[銅板-電解液(希硫酸または食塩水)に浸した紙-亜鉛板]のセットを1ユニットとして、多数このユニットを積み上げた物です。希硫酸電解液の中では、Zn → Zn2+ plus 2e- および 2H+ plus 2e- → H2 という反応が起きて、亜鉛イオン(Zn2+)は隣接する上方の銅板の方に、電子(2e-)は隣接する下方の電解液の方に流れるので、電流は下から上に流れることになります。

1263

図126ー3 アレッサンドロ・ボルタと彼が発明したボルタ電堆

ボルタが電堆を発表したのは1800年頃ですが、江戸時代の蘭学者宇田川榕菴は、1830年代から40年代にかけて出版されたその著書「舎密開宗(せいみかいそう」の中で、ボルタ電堆を紹介しています(図126-4)。これは電気分解を行なっているところの図のようです。

宇田川榕菴は岡山県最北部の津山藩に所属していましたが、そのような辺境の地にありながら、世界でも先進的な研究の勉強や実験をよくやっていたものだと驚かされます。このウィキペディアに掲載されていた肖像画に記してある名前は榕菴とはなっていないので、信じていいのかどうか私にはわかりません。

1264

図126-4 宇田川榕菴と彼が江戸時代に制作したと思われる電堆

希硫酸の中に銅板と亜鉛板を入れると、銅には何の変化もありませんが、亜鉛はイオン化してZn++の形で溶解し、亜鉛板には電子が取り残されます。両者は静電気で引きつけ合うので、亜鉛イオンは板の外側、電子は板の内側に集合して自由に動けない状態となります(図126-5)。これを電気的二重層といいます。

この状態は細胞と似ています。細胞は表層のイオンポンプで常にナトリウムをくみ出しているので、外側にNa+が集合し、内側に電子が集合するという状況になっています(図126-5)。このような状況では電流は流れませんが、電池の場合は導線などで銅板と亜鉛板をつなぐ、細胞の場合はイオンチャンネルの穴を開放するなどの操作によって、電気的二重層は崩壊し電流が発生します。

1265

図126-5 銅板・亜鉛板で形成される電気的二重層と細胞膜

ボルタ電池の銅板と亜鉛板を導線でつなぐと、亜鉛板の電子は陽極(銅板)に移動し、亜鉛イオンは電解質溶液中に解放されて、そこで硫酸と反応して硫酸亜鉛と水素イオンを生成します(図126-6)。水素イオンは陽極に集積した電子と反応して水素分子を形成し、泡となって空中に放出されます。これがボルタ電池の原理です。なのですが、ボルタ電池で起こっていることを科学的に正確に説明するのはなかなか困難なことらしく、歴史的に重要ではあっても、あまり教科書に使うのにはふさわしくないという考え方もあります(15)。

1266

図126-6 ボルタ電池の原理

確かにダニエル電池の場合、時間による反応の変動が少ないので実用的であるだけでなく、説明も容易でしょう(図126-7)。図の陽極・陰極で起こっている反応を足し合わせると Zn+Cu(2+)→Zn(2+)+Cuとなります。これは陽極では銅が析出し、陰極では亜鉛イオンが溶出するということを意味しています。図126-1に示したように、亜鉛はイオン化しやすい金属、銅はイオン化しにくい金属という性質を利用して電池がつくられているということがわかります。この電池を発明したジョン・フレデリック・ダニエルの本職は気象学者で、湿度計や温度計の開発にも大きな業績を残しました(16)。

1267

図126ー7 ジョン・ダニエルと彼が発明した電池(ダニエル電池)

 

参照

1)Danielle A Ludeman, Nathan Farrar, Ana Riesgo, Jordi Paps and Sally P Leys, Evolutionary origins of sensation in metazoans:functional evidence for a new
senosory organ in sponges., BMC Evol. Biol., vol.14(3), (2014)
http://www.biomedcentral.com/1471-2148/14/3
https://bmcecolevol.biomedcentral.com/articles/10.1186/1471-2148-14-3

2)細菌も電気通信で“会話” ~日経サイエンス2016年5月号より
https://www.nikkei-science.com/?p=49662

3)P Brehm, R Eckert., An electrophysiological study of the regulation of ciliary beating frequency in Paramecium., J Physiol, vol.283, pp.557-68, (1978)
doi: 10.1113/jphysiol.1978.sp012519.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/102769/

4)ウィキペディア: イオン化傾向
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%B3%E5%8C%96%E5%82%BE%E5%90%91

5)受験の味方 イオン化傾向とは?
https://juken-mikata.net/how-to/chemistry/ionization-tendency.html

6)ウィキペディア: リチウム
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%81%E3%82%A6%E3%83%A0

7)金のこれまでの採掘量と地球に残された埋蔵量
https://nanboya.com/gold-kaitori/post/amountof-gold-extraction/

8)Battery University: When Was the Battery Invented?
https://batteryuniversity.com/learn/article/when_was_the_battery_invented

9)バグダッド電池
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%82%B0%E3%83%80%E3%83%83%E3%83%89%E9%9B%BB%E6%B1%A0

10)ウィキペディア: パルティア国
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%AB%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%A2

11)ウィキペディア: サーサーン朝
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%B3%E6%9C%9D

12)Xanado: オーパーツ!?電気はエジプトに存在した!?ハトホル神殿の電球レリーフ!バグダッドで発見されたパルティア壺電池・避雷針?画像付
http://xanadu.xyz/850/

13)金属加工の歴史
https://shizuokatekko.jp/metalworking-history/

14)Giuliano Pancaldi: Volta, Science and culture in the age of enlightment. Princeton Univ. Press. ISBN 978-0-691-12226-7 (2003)
https://books.google.co.jp/books?id=hGoYB1Twx4sC&pg=PA73&redir_esc=y&hl=ja#v=onepage&q&f=false

15)坪村宏: ボルタ電池はもうやめよう 一 問題の多い電気化学分野の記述 化学と教育 vol.46, no.10, pp. 632-635 (1998)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/46/10/46_KJ00003520589/_pdf

16)ブリタニカ百科事典: John Frederic Daniell
https://www.britannica.com/biography/John-Frederic-Daniell

| | コメント (0)

2021年1月24日 (日)

サラとミーナ 241: 籐椅子

Img_3744a

こう普通に使ってくれればいいのですが


Img_3736b

ミーナはもぐるのが好きなので大抵こうなってしまう


Img_3747c

思い切りのびをするミーナ


Img_3735d

サラは決して籐椅子を使いません。理由は不明です。

でも新しい場所をみつけて満足 🎵

| | コメント (0)

2021年1月23日 (土)

ご結婚おめでとうございます

Photo_20210123163801

 

 

| | コメント (0)

2021年1月22日 (金)

続・生物学茶話 125: 背と腹 よみがえったジョフロワの亡霊

左右相称動物のなかで、私達もその一員である脊椎動物などの後口動物(deuterostome)では中枢神経系が背側にあるのに対して、昆虫などの前口動物(protostome)では中枢神経系が腹側にあります(図125-1)。始原的左右相称動物であるウルバイラテリアが生まれる前から地球上に存在した、たとえばクラゲ型の刺胞動物にも口はあったと思われるので、口のある方を腹側とすれば始原的左右相称動物であるウルバイラテリアにも背と腹は存在したはずです。当時の刺胞動物の神経系については、主なものは口を動かすための口周囲のリング状のものと、そこから放射状に伸びる触手(テンタクル)を動かすためのものがあったことが現在のクラゲなどから推測されます。

ウルバイラテリアは基本的に海底を前に進んで餌を探すという生物ですから、ここで前後という概念が生まれました。海綿動物や刺胞動物には前後の概念はありません。ウルバイラテリアでは後方より前方の情報(触覚・視覚・嗅覚)が圧倒的に重要であるというアンバランスが発生しました。ですから神経の中心が腹の中心付近にあった口の周辺から前方に移動し、脳は前方に誕生しました。もうひとつウルバイラテリアにとって重要なことは、腹側の筋肉を動かして前方に進むということです。このためには神経系は腹側にあるべきでしょう。実際、前口動物の神経は腹側にあります(図125-1)。

ところが後口動物では神経は背側にあります。前口動物の場合主要な神経索が消化管とクロスしているのが不自然な感じなので、後口動物のように消化管と主要神経索が平衡な生物が始原的な左右相称動物であり、前口動物はその基本形から派生的に生まれたと考えられがちで、図125-1の上段図で黒で描いた主要神経索が背側に描いてあります。しかし私は青で描いた腹側の主要神経索がもともとの形態だったと思います。口が下方にある上に、腹側の左右の筋肉を協調して動かし前進するというのは、ウルバイラテリアにとって本質的に重要なことであり、まず腹側の神経系が発達することは自然の理と考えます(図125-1上段図の青い神経索)。

口が下にある段階で腹背が逆転したら、ウルバイラテリアは生きていけません。消化管が貫通してからもしばらくはこの形態(図125-1上段図の青い神経索を持つ生物)は引き継がれたと思われます。ただ口が下方から前方に移動し、泳いで生活するようになったならば、主要な神経系が腹側にあるというメリットがなくなり、背側にある生物が出現するのも自然な感じではあります。前後の逆転については、より難しい問題で、また勉強不足のためここではコメントを控えます。

1251

図125-1 中枢神経が背側にあるか腹側にあるか

主要神経索が背側にあるか腹側にあるかという生物を2分する相違については、早くも19世紀からフランスでジョルジュ・キュヴィエとエティェンヌ・ジョフロワ・サンティレール(図125-2)の大論争があったそうです。キュヴィエは前口動物と後口動物のボディプランが根本的に異なると考えましたが、ジョフロワは裏返っただけで両者は同じボディープランだと主張しました。この論争は西欧ではかなり有名らしく、私は未読ですが本まで出版されています(1)。キュヴィエが優勢だったようですが、ゲーテは持論の「Urform=原型」からすべての動物が生まれたという思想からジョフロワを支持したそうです(2)。図125-1の上段の図はある種のUrformです。

1252

図125-2 キュビエとジョフロワ

長い空白期間の後に、キュビエ・ジョフロワ論争にとりあえずの決着をつけたのは、あのSTAP細胞の件で自殺した理研の笹井芳樹らでした(3)。デ・ロバーティスと笹井(図125-3)はマウスとショウジョウバエという系統的にかけ離れた種において、ボディープランを決定する遺伝子、特に前後軸を決定するHox遺伝子クラスターや背腹軸を決定するSog/Dpp遺伝子に共通点が多いことから、これらは進化的に保存されたものであるとし、後口動物と前口動物の共通祖先としてウルバイラテリア(urbilateria)を想定しました(3-5、図125-1上段図-左右相称動物の基本型)。キュヴィエ-ジョフロワ論争から言えば、彼らはジョフロワの亡霊をよみがえらせたというわけです。

1253

図125-3 背腹問題の手がかりをみつけた研究者たち

Hox遺伝子クラスターは左右相称動物の最も基本的なボディープランを規定する遺伝子群と思われ、マウス(後口動物)とショウジョウバエ(前口動物)という系統的にかけはなれた生物同士でも共通点が多く、ジョフロアの正しさを示しています。ゴーンの総説(5)から図125-4を引用しておきます。

1254

図125-4 前口動物(Drosophila)と後口動物(Mouse)におけるHox遺伝子クラスター とそこから類推されるウルバイラテリアの場合

Sog/Dppについてはショウジョウバエ(前口動物)とアフリカツメガエル(後口動物)のmRNAに互換性があることが証明されています(6)。動物が初期発生の頃、基本的な形態形成を行なうための場を形成する分子群は数百以上あるでしょうが、なかでも重要な役割を果たしているのはBMPとその関連因子です。Sog、chordin、Dpp、BMP4などもその中に含まれています。

BMPを最初に見つけたのはカリフォルニア大学の整形外科医だった Marshall R. Urist (7、図125-3)で1965年のことでした。もともとは骨の増殖促進因子として発見されたので、bone morphogenetic protein などという名前がつけられましたが、実はこの因子は生理的には骨形成と直接の関係はなく、もっと広汎な作用を持つ因子だということが後に判明しました(8)。

節足動物のSOGと脊椎動物の chordin はホモログであり、いずれも中枢神経を誘導する機能に互換性があることが証明されています(6)。ただ初期発生の頃に、節足動物のSOGは腹部に発現し、脊椎動物の chordin は背部に発現するという違いがあります。この発現位置を決める遺伝子の変異によって、位置が逆転したと思われます。このほかに腹背の特徴を制御するDPPとそのホモログBMP4の発現位置も節足動物と脊椎動物では逆転しています(図125-5)。

1255

図125-5 中枢神経系の配置逆転

Chordin はシュペーマンとマンゴルトのオーガナイザーの分子的実体だと注目されましたが(9)、それが本当かどうかは微妙です。初期発生における3軸(前後・腹背・左右)の決定には3次元的に多数の因子が関わっており、人間の知能ではごくおおざっぱにしか把握できなのではないかと思われます。おそらくスーパーコンピュータに数値を入れると、答えが返ってくるというような課題ではないでしょうか。 それはそれとして、chordin の作用機構についてはかなり解明されているようです。Chordin は分子量約12万ダルトンのかなり大きめのタンパク質で、分子内に4つのシステインリッチドメインを持っていることが特徴です(10、図125-6)。

Chordin はTsgというタンパク質と結合しているBMPをトラップし、本来細胞膜のBMP受容体に結合すべきBMPを隔離するという作用を持っています。つまり chordin 自体が背側誘導のカスケードを起動するのではなく、BMPが起動する腹側誘導カスケードを阻害することによって、結果的に背側を誘導するということです(11)。

1256

図125-6 コーディンと関連タンパク質

BMPは様々な形態形成過程で重要な役割を果たすので、いつまでもトラップされたままでは困ります。BMPを Chordin から解放するために、tolloid というメタロプロテアーゼが用意されています。このタンパク質分解酵素は chordin を切断してBMPを解放します(図125-6、図125-7)。

ここで crossveinless 2 というタンパク質が興味深い役割を果たします。これがないとショウジョウバエの翅脈がうまくできないというのが名前の由来です。このタンパク質は細胞膜から突き出した糖鎖に結合しており、システインリッチドメインを介して chordin-BMP-Tsg複合体に結合します(12、図125-7 のピンクで記してある cystein rich domein と CR1)。したがってCrossveinless2を特定領域に密集させておけば、Chordinが分解されたときに高濃度のBMPが放出されて、効率よくBMPカスケード(BMP→BMP受容体→Smad複合体→転写)を起動できることになります(12)。

1257

図125-7 Crossveinless 2 の役割

前にも述べたように、腹背軸の決定などの初期発生における3軸決定には多くの因子がからんでいるので、上記のような単純な理論はひとつの切り口に過ぎず、他の側面からも見る必要があります。たとえば三品はBMPシグナルとFGFシグナルが競合的に働くことで中胚葉誘導時の中胚葉の背腹パターンを制御しているというモデルを提唱しています(8)。

参照

1)Tobey A. Appel, The Cuvier-Geoffroy Debate. French Biology in the Decades Before Darwin., Oxford University Press (1987)
https://global.oup.com/academic/product/the-cuvier-geoffroy-debate-9780195041385?cc=jp&lang=en&

2)倉谷滋 「形づくりにみる動物進化のシナリオ」 丸善(2015)

3)De Robertis EM, Sasai Y., A common plan for dorsoventral patterning in Bilateria. Nature 380: 37–40. (1996)
https://www.nature.com/articles/380037a0

4)秋山(小田)康子、小田広樹: なぜ今、クモなのか?胚発生が描く進化の道すじ、生命誌ジャーナル 2004年秋号
http://www.brh.co.jp/seimeishi/journal/042/research_21.html

5)Stephen J. Gaunt, The significance of Hox gene collinearity. Int. J. Dev. Biol. 59: 159-170 (2015) doi: 10.1387/ijdb.150223sg
http://www.ijdb.ehu.es/web/paper/150223sg/the-significance-of-hox-gene-collinearity

6)Scott A. Holley, P. David Jackson, Yoshiki Sasai, Bin Lu, Eddy M. De Robertis, F. Michael Hoffman, Edwin L. Ferguson., A conserved system for dorsal-ventral patterning in insects and vertebrates involving sog and chordin. Nature volume 376, pages 249–253 (1995)
http://www.nature.com/articles/376249a0

7)Marshall R. Urist, Bone: Formation by Autoinduction., Science, Vol. 150, Issue 3698, pp. 893-899 (1965) DOI: 10.1126/science.150.3698.893
http://science.sciencemag.org/content/150/3698/893

8)三品 裕司 BMPシグナルの多彩な機能——初期発生から骨格形成まで Journal of Japanese Biochemical Society vol. 89(3): pp. 400-413 (2017) doi:10.14952/SEIKAGAKU.2017.890400
https://seikagaku.jbsoc.or.jp/10.14952/SEIKAGAKU.2017.890400/data/index.html

9)Edward M. De Robertis, Spemann's organizer and self-regulation in amphibian embryos., Nat Rev Mol Cell Biol., vol.7(4), pp.296–302. (2006)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2464568/

10)Juan Larraín, Daniel Bachiller, Bin Lu, Eric Agius, Stefano Piccolo, and E. M. De Robertis., BMP-binding modules in chordin: a model for signalling regulation in the extracellular space., Development. vol. 127(4): pp. 821–830 (2000)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2280033/

11)The chordin page.
http://www.hhmi.ucla.edu/derobertis/EDR_MS/chd_page/chordin.html

12)Catharine A. Conley, Ross Silburn, Matthew A. Singer, Amy Ralston, Dan Rohwer-Nutter, David J. Olson, William Gelbart and Seth S. Blair1, Crossveinless 2 contains cysteine-rich domains and is required for high levels of BMP-like activity during the formation of the cross veins in Drosophila., Development, vol. 127, pp. 3947-3959 (2000)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10952893

| | コメント (0)

2021年1月21日 (木)

自民党の5大失政

1024pxliberal_democratic_party_japan_emb

1.年齢人口構成比の異常を放置し修正できなかった: 時間はたっぷりあって、移民導入によって徐々にでも解決すべきでしたが、自民党コア支持者の国粋主義のため実現できませんでした。このために農業は労働力不足で壊滅の危機に瀕しています。年金・医療は財政を圧迫しています。コロナで医療崩壊しているのも、公的病院や保健所の充実を怠り、むしろリストラしたのが最大の要因です。

2.グローバル貿易主義のために、国内産業の没落を招いた: コロナで明らかになったように一般用マスクはもちろん、N95や防護服も作れないという情けない国になりました。私の下着からオーバーコートまでほとんど外国製です。工業部品メーカーもどんどん消滅し、中国が生産の中心になりました。

3.エネルギーを原発に頼ったために、危うく関東に人が住めないような事態: あの時、使用済み核燃料プールに偶然水が流入してなかったら、関東には人が住めなくなっていました。これは当時の民主党も原発を推進していたので同罪です。ただ自民党はまだ原発に頼ろうとしています。日本はもっと地熱発電に真剣に取り組むべきです。発電所が景観を損ねるなどという考えは、原発の危険にくらべれば無視すべきです。

4.国会の無意味化: 野党の質問にまじめに答えず、ロボットのような答弁を繰り返して国会を無意味化し、ついには忖度のために役人が議事録改ざんや重要な公文書を瞬時に廃棄という末期的な状況を生み出しました。これは民主主義の危機です。

5.反知性主義: 大学に人文科学など不要という驚くべき思想で、科学アカデミーからも歴史をきちんと検証しようという人々をパージしました。自然科学もすっかり衰退し、日本はどんどん科学後進国に転落しつつあります。だいたい国家の最高指導者が官僚の作文を読んでいるだけというのは情けないにもほどがあります。これじゃ頭悪いから知性が嫌いだと思われても仕方ありません。

 

| | コメント (0)

2021年1月19日 (火)

都響 2021年度楽季プログラム

Photo_20210119191101

都響が2021年度楽季プログラムを発表しました(都響HP)。コロナの折から4~7月の演奏会については、会員券を発売せず単発になるそうです。臨時の措置のようですが、それにしてはアラン・ギルバートやダニエル・ハーディングらの大物の来日を前提としているのがやや不安です。

そのアランが7月に持ってくるプログラムをみて仰天しました。なんとアラン・ペッテションの交響曲第7番というのです。私はいままで数多くの音楽評論に接してきましたが、ある方がウェブにアップしているこのペッテションに関する文章↓が一番印象に残っています。

http://kukikei.sakura.ne.jp/sym-eastnoth-pettersson.htm

あまりに面白いので交響曲第7番についての記述を引用させてもらいます。

「(引用はじめ)それが5分ほどもすると……また戻る……吹雪に戻る。まさに雪の女王登場。ここは泣き節全開で、きゅーっとくる。不安と前へ向かわんとする意志とのせめぎ合い。希望が少しずつではあるが、見えてくる。弦楽の伴奏による、スネアドラムのソロ……。(←どんな現代奏法でもふつうは逆である。)

そしてまたも静謐で、純粋なる祈りが聴こえてくる。このまま安息の中に消えて行くのなら、彼は1流半のちょい叙情系ブラック作曲家として、一般マニア受けしていただろう。

帰ってくる。
 
暗黒が返って来る。

お帰りなさい死の河。

彼は行くべき道を見いだしたと書いたが、そんな道は本当にあるのだろうか?
彼は我々には見えない世界の、黒色の遥かな道へ行こうとしているのではないのか?

危ない! 彼に着いて逝ってはいかん!!(引用おわり)」

とは言っても、私は2番から聴いていって6番まではすべて最後までもちませんでした。なんというかホラー映画のBGMみたいな感じで延々と続くので耐えがたいのです。はじめて全部聴けたのが7番でした。これは6番までと違って聴きやすいです。

まだ聴いていない曲もありますが、私的に一番感動したのは12番のオラトリオのような合唱付きのシンフォニーでした。アランの曲は非常に内省的で、彼の感情や心象風景を楽譜にした場合が多いのですが、12番は叙事的な詩があって、それに曲をつけたので普通の音楽(20世紀の人ですがいわゆる現代音楽ではありません)として聴けます。交響曲第7番もやや聴衆を意識して仕上げたようなところがあり、これは自分の中でだけ循環していた音楽を外に連れ出したような感じもします。驚くほど独特な音楽ですが、名曲だと思います。

これ以外ではマエストロ小泉の「オネゲル交響曲第3番」もいいですね。マデトヤとアイヴズの交響曲は聴いたことがありません。

まあほかにもいろいろありますが、すべてはコロナ次第とはなさけないご時世です。夏以降のプログラムについてはまた後に。

アラン・ペッテション 交響曲第7番
https://www.youtube.com/watch?v=mNSQTgZq87A
https://www.youtube.com/watch?v=KMG-QHu5QFs

 

| | コメント (0)

都響スペシャル2021 インバル-都響@東京芸術劇場 2021/01/19

Photo_20210119191101

しばらくコロナで自粛していましたが、インバル-都響でベートーヴェンの6&7交響曲をやるというので、芸劇にでかけました。コンマスの雨男=ボス矢部も雨雲を呼べないくらいの雲一つ無い快晴で、寒さ格別の日です。サイドは山本さん。わりとレアなコンビです(昔は皆無でした)。楽団員の入場を聴衆が拍手で迎えます。

田園交響曲は素っ気なく始める指揮者が多い中で、マエストロ・インバルは絶妙なテンポで丁寧にスタートして聴衆を曲に引き込みます。第2楽章は特にニュアンス豊かで、弦の各パートがささやき合うような、繊細かつ和やかな進行がなんとも言えず素晴らしい。嵐は久一さんのティンパニが強烈で、コントラバスのうなりとも相まって怖いくらいの演奏でした。

そして最高に素晴らしかったのが終楽章。これだけ楽しそうな乗り乗りの演奏もなかなか無いのでは! インバル-都響ならではの解放感がホールを満たしました。大野さんや小泉さんがこれをやるとわざとらしくなるんだよね。まあやらないし。

7番もCD録音時のような軍隊的規律のアンサンブルではなく、リラックスしてみんな思い切り演奏していたと思います。インバル-都響もインバル80台半ばにしてさらに進化していますね。

楽団員が退出した後も、マエストロ・インバルのソロカーテンコールにスタンディングオベーションでした。

| | コメント (0)

2021年1月16日 (土)

アンチ新型コロナ ワクチンのいろいろ

Vaccine_20210116165001

シノヴァク・バイオテク(中国)
伝統的手法による不活化ワクチン 製品名コロナヴァク
冷蔵保存でよい
治験の結果(有効性): トルコ91.25%、インドネシア65.3%、ブラジル:50.4%
重篤な副作用は報告されていません。

中国生物技術(中国 シノファームの子会社)
伝統的手法による不活化ワクチン 製品名BBIBP-CorV
冷蔵保存でよい
治験の結果(有効性): 会社発表79.34%、UAE86%
非常に多彩な副作用があるが、重篤なものではないようです。

ファイザー・ビオンテック(米・独)
mRNA 製品名:BNT162b2
要冷凍保存 -70℃で保管・輸送する必要あり 2回接種
治験の結果(有効性): 会社発表95%
安全性:下の続報欄を参照

モデルナ(米)
mRNA 
要冷凍保存 -20℃で保管・輸送する必要あり 2回接種
治験の結果(有効性): 学術誌:94.1%
重篤な副作用は報告されていません。
日本では武田薬品が請け負って製造する予定

アストラゼネカ(英)
DNA(ベクター経由) 製品名:AZD1222
冷蔵保存でよい
治験の結果(有効性): 会社発表90%、学術誌:70%
重篤な副作用は報告されていません。
日本ではKMバイオロジクスが製剤化予定

ノババックス(米)
組み替えタンパク質 製品名:NVX-CoV2373
冷蔵保存でよい
治験:まだ第3相の結果が出ていない
日本では武田薬品が請け負って製造する予定


ワクチン開発競争は、勝てば億本単位で売れるので熾烈をきわめています。ファイザーとモデルナ(特にファイザーは-70℃)は冷凍保存なので、よほど有効性・安全性でアドバンテージがないと勝つのは困難でしょう・・・・・と言いたいところですが、mRNAやDNAは変株が発生してもすぐに塩基配列の変更で対応できるので、毎年新ワクチンが販売できて笑いが止まらなくなる可能性があります。

ノババックスの製品には注目しています。中国の製品も成績が良ければ当然導入すべきだと思いますが、政府の姿勢が問われるところでしょう。私的にはDNAだけは体に入れたくないですね。アストラゼネカのはワクチンというより、遺伝子治療に近いと思います。

ワクチンは100%有効ではありませんし、突然変異に対応できるかどうかは時の運。致命的な副反応が出るかどうかも時の運です。いずれにしてもアビガンを各家庭の常備薬として保管し、風邪ひいたと思ったら妊産婦・幼児以外はすぐ服用するようにすれば、ワクチンに頼らなくても新型コロナの蔓延を防げると思うのですが。

============

続報:ブルームバーグによると「ノルウェーでは ファイザーとビオンテックが開発した新型コロナウイルスワクチン接種を受けた後に死亡した高齢者の数が推計29人に増え、基礎疾患のある高齢者にとっての安全性について懸念が高まっている。」とのことです。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-01-17/QN1V23T1UM0W01?srnd=cojp-v2

 

参照サイト

https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-55657280
https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-vaccine-race/
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%8E%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%BC%E3%83%A0
https://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2020/2020_12_11.html
https://www.chemicaldaily.co.jp/%E6%AD%A6%E7%94%B0%E8%96%AC%E5%93%81%E3%80%81%E6%96%B0%E5%9E%8B%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E3%83%AF%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%B3%EF%BC%92%E5%89%A4%E3%82%92%E5%90%8C%E6%99%82%E9%96%8B%E7%99%BA%E3%80%81/
https://crisp-bio.blog.jp/archives/22059084.html
https://www.afpbb.com/articles/-/3320308
https://www.kmbiologics.com/sustainability/covid-19/

| | コメント (0)

2021年1月14日 (木)

続・生物学茶話 124: ウルバイラテリアをめぐって

扁形動物(プラナリアなど)は体腔・呼吸器・循環器・骨格・貫通する消化管などは持っていませんが、かなり立派な神経系を持っていて脳もあります。20世紀までは扁形動物は左右相称動物 (バイラテリアン Bilaterian) の最古の祖先(ウルバイラテリアン Urbilaterian) と最も近縁な生物と考えられていました(1、図124-1 伝統的分類)。しかし遺伝子の研究などの進歩によって、扁形動物は現在ではその生きた化石としての地位を剥奪され、前口(旧口)動物群に属する冠輪動物の1グループとみなされるようになりました(2、図124-1新分類)。

そして最近になって、扁形動物に含まれるか極めて近縁とされていた無腸動物は、なんと後口(新口)動物群の根元から分岐したと考えられている珍渦虫と同じグループに移動しました。両者をあわせて珍無腸動物門(xenacoelomorpha)を新設するべきだという考え方も有力なようです(3、図124-1)。これは非常にまずいネーミングだと思いますが、渦無腸動物とすると扁形動物みたいな感じになるので致し方ありません。

筑波大学のグループは無腸動物は棘皮動物に近い生物で、進化の過程で形態が単純化されたと主張しています(4)。この考え方には私は違和感があります。どうしてプロトタイプ的生物がいったん棘皮動物に進化した後、またプロトタイプ的生物にもどったのでしょうか?

1241a

図124-1 左右相称動物の系統樹

Peterson らは扁形動物の祖先と無腸動物の祖先が分離したのは遅くてもエディアカラ紀だとしています(5)。すなわちウルバイラテリアン(始原的左右相称動物)が存在したのはエディアカラ紀以前ということです。無腸動物は寄生によって生き延びた生物ではなく、エディアカラ紀から今日まで、それぞれの時代の環境に適応して進化し、生き延びた結果を示していると考えられます。ですから一見単純な生物のように見えますが、その遺伝子や形態・生活史には5億年のさまざまな生存の知恵が隠されているかもしれません。私は棘皮動物が退化してできた生物とは考えたくありません。多くの扁形動物の仲間が寄生生活によって生き延びた中で、独自の自由な生き方を選んだプラナリアも同様です。すなわち無腸動物と自由生活型の扁形動物はそれぞれ後口動物と前口動物を代表するプロトタイプ的生物であるとの見方(1)を支持したいと思います。

実際扁形動物と無腸動物のボディプランにはかなり共通性があり、ウルバイラテリアンの特徴を両者とも時代を超えて保存してきた可能性があります。彼らは最初に記したようなさまざまな臓器は持っていませんが、餌を吸い込む口は持っていて、細胞や合胞体(細胞のシンシチウム)に取り込んで消化します。肛門はありません。口は体の下側にないと効率的に餌をとれないので、体を定位させる必要があり、そのために平衡胞という臓器を持っています。平衡胞の内壁には感覚毛があり、これで平衡石を感知して姿勢を定位させます(6、7)。ウィキペディアをはじめとして、いくつかのサイトに無腸動物は脳を持たないという記述がありますが、体を定位させるためには平衡胞の複数の感覚毛から得た情報を処理し、体の各所にある筋細胞に指示を出さなければならないので、かなり高度な神経系の働きが必要です。実際 Bery らは電子顕微鏡による詳細な研究から、脳・神経索・交連神経・ニューロパイルが存在するとしています(1、8、図124-2~図124-4)。

1242a

図124-2 無腸動物の神経系

図124-3は扁形動物の神経系ですが、多岐腸目(ヒラムシなど)と三岐腸目(プラナリアなど)で少し違いがあります。前者は網目状で脳から放射状に神経が伸びていますが、後者ははしご状の構造です。ただし扁形動物では体節が明確でないので、専門用語としてのはしご状神経系という言葉は使わないことになっています。ただウィキペディアの「はしご状神経系」の項目を見ると「扁形動物の神経系はかご状神経系といわれるが、これをもはしご状という場合がある」という記載があり、使ってもいいのかもしれません(9)。多岐腸目と三岐腸目の神経系を比較すると似ている点もあります。まず脳が左右の葉(ローブ)にわかれていること、脳が体の前方にあること、概ね左右相称であることなどです(図124-3)。これはおそらく始原的左右相称動物であるウルバイラテリアンの特徴を引き継いでいるのではないかと思われます。

1243a

図124-3 扁形動物の脳と神経系

つい最近まで無腸動物には脳はないと言われてきましたが、近年の電子顕微鏡による研究によって(1、8)次第に脳の存在が認められてきました。図124-4をみると、平衡胞の外側・表皮の内側にニューロパイル(np)と呼ばれる樹状突起・軸索・シナプスなどが集合した領域が観察されます。これは無腸動物が脳を持つことを強く示唆しています。扁形動物ではさらに広大な領域のニューロパイルがみられます。

1244a

図124-4 無腸動物・扁形動物に見られるニューロパイルの電子顕微鏡写真

左右相称であることは生物の進化においては重要な意味があります。非相称あるいは放射相称の生物は、ある場所に体を固定して生きるか、水の流れのままに漂って生きるかです。左右相称であるということは、自分の意思で移動するということと深い関連があります。左右相称生物は餌を嗅覚・視覚・触覚などで感知し、そちらの“方向”に移動することに特徴があります。それによって進行方向が前であるという「前後という方向の概念」が生じ、その場所に正しく到達するために左右にハンドルを切る必要があるので、体の左右の筋肉を別々に制御する必要が生まれ。また「左右という概念」が生じます。

ウルバイラテリアンの2つのモデルがウィキペディアにあります(10、図124-5)。無腸動物や扁形動物の研究から想像できるのはそのどちらでもなく、右側のプラヌロイドモデルに中枢神経系を与えたような形が正解なのではないかと思われます。

1245a

図124-5 ウルバイラテリアンの2つのモデル

参照

1)Xavier Bailly, Heinrich Reichert, and Volker Hartenstein., THE URBILATERIAN BRAIN REVISITED: NOVEL INSIGHTS INTO OLD QUESTIONS FROM NEW FLATWORM CLADES., Dev Genes Evol., vol. 223(3), 149-157 (2013). doi:10.1007/s00427-012-0423-7.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23143292/

2)Adoutte A, Balavoine G, Lartillot N, Lespinet O, Prud’homme B, De Rosa R. The new animal
phylogeny: reliability and implications. Proc Natl Acad Sci USA. vol.97, pp.4453–4456, (2000)

3)Philippe H, Brinkmann H, Copley RR, Moroz LL, Nakano H, Poustka AJ, Wallberg A, Peterson KJ,
Telford MJ. Acoelomorph flatworms are deuterostomes related to Xenoturbella. Nature, vol.470, pp.255–258, (2011)

4)つくばサイエンスニュース 動物の左右対称の体はどこから? (2019)
http://www.tsukuba-sci.com/?p=6457

5)Peterson KJ, Cotton JA, Gehling JG, Pisani D. The Ediacaran emergence of bilaterians: congruencebetween the genetic and the geological fossil records. Phil Trans Soc. B., vol. 363, pp.1435–1443, (2008)

6)ウィキペディア:扁形動物
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%89%81%E5%BD%A2%E5%8B%95%E7%89%A9

7)ウィキペディア:無腸動物
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%84%A1%E8%85%B8%E5%8B%95%E7%89%A9

8)Amandine Bery & Albert Cardona & Pedro Martinez, Volker Hartenstein., Structure of the central nervous system of a juvenile acoel, Symsagittifera roscoffensis., Dev Genes Evol vol.220, pp.61–76 (2010), DOI 10.1007/s00427-010-0328-2
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2929339/pdf/427_2010_Article_328.pdf

9)ウィキペディア:はしご状神経系
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%AF%E3%81%97%E3%81%94%E5%BD%A2%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%B3%BB

10)Wikipedia: Urbilaterian
https://en.wikipedia.org/wiki/Urbilaterian

 

| | コメント (0)

2021年1月13日 (水)

サラとミーナ 240:16才になりました

16才といってもシェルターから譲渡してもらってから16年ということで、当時サラもミーナも成猫だったのでそれ以前にどうしていたのかはわかりません。ですからもっと永く生きているのかもしれません。

ミーナはすっかり体は老猫になって、視力・嗅覚・筋力はかなり落ちてきました。まあでもとりあえず元気ではあります。それに精神的には全く幼猫でほとんど進歩はありません。サラは触った感じとかでは全く年老いた感じがありません。実に若々しく、最近太ってきたくらいです。まだ洗濯機に飛び上がれます。20才くらいまでは余裕で生きそうです。

Img_3724a

ミーナ 何をにらんでいるの?

Img_3733a

作業している私の膝でくつろぐサラ。

Img_3728a

サラだって、たまにはボーッとしていることもあります

 

| | コメント (0)

2021年1月10日 (日)

政府は関西を見捨てるのか?

Publicdomainq0031650xqt

兵庫・京都・大阪の要請にもかかわらず、政府は関西に緊急事態宣言を発出するのは尚早という考えのようです。西村は発出したそうな雰囲気だったのですが、菅-二階ラインで潰されたと思われます。

西村は宣言解除のラインとして、東京の場合感染者数<500人/日 としていますが、大阪は何日も>500人となっているので、彼の基準としては当然緊急事態宣言を行うべき範囲になるはずです。しかも大阪は東京より小規模の都市なので、宣言を発出しないという根拠は全くありません。また人口あたりの死者は東京より多い位なので、病院事情にゆとりがあるわけでもありません。

私は吉村はベテン師だと思っていますが、今回の件については彼を支持したいです。まるで関西・名古屋を見捨てるような政府の姿勢には大きな疑問を感じます。菅-二階はつじつまさえ合わせられないような、気まぐれフィーリング政治であきれるほかありません。

次第に保健所で濃厚接触者をトレースできなくなってきてやり方を変えてきたので、感染者数を基準とした蔓延のものさしを変更しなければならない事態になりつつあります。重症者数もベッドが満床に近くなったらものさしとして役に立ちません。そうなると死者数だけが比較的信用できるものさしになるかもしれません。

続報: なんと関西は準緊急事態宣言を発出する方向だそうです。準ってなに? はて???

| | コメント (0)

2021年1月 9日 (土)

コロナとネアンデルタール人

800pxreconstruction_of_neanderthal_woman

ネアンデルタール人女性の復元図(ウィキペディアより)

Eテレでコロナとネアンデルタール人の関係についてやっていたので、ソースを調べてみました。それは Zeberg, H., Paabo, S. 著 The major genetic risk factor for severe COVID-19 is inherited from Neanderthals. Nature vol.587, pp.610-612 (2020). のようです。

https://doi.org/10.1038/s41586-020-2818-3

著者はCOVID-19に罹患し入院していた3199人の患者と相応する健常者を比較し、3番の染色体の一部の領域について重症化した患者がネアンデルタール人から受け継いでいることを示唆しました。この領域の存在が免疫暴発に関与しているようです。インドのこの病気による死亡者は15万人を超えています。

驚くべきことに、インドシナ半島を含めて東アジアのほとんどの人々はこの領域をネアンデルタール人から受け継いでおらず、インド・バングラ・パキスタン・ニューギニアの30%の人々は受け継いでいるそうです(下図、上記の Zeberg & Paabo の論文より)。これがいわゆるファクターXなのかもしれません。

A_20210109125201

赤がネアンデルタール人からリスクファクターを受け継いだ人々です。
Zeberg, H., Paabo, S. 著 The major genetic risk factor for severe COVID-19 is inherited from Neanderthals. Nature vol.587, pp.610-612 (2020). より

この地図はある疑問を呼び起こします。インドシナ半島にネアンデルタールと混血した人々がほとんどいないということは、いったいニューギニアをはじめとする太平洋の海洋民族はどこからきたのでしょうか? インドネシアやボルネオのデータを見たいですね。またネアンデルタール人絶滅の原因がSARS系ウィルスによるものではないかというようなことが話題になっています。

| | コメント (0)

2021年1月 8日 (金)

都響の1月公演

Photo_20210108101601

インバル指揮による都響1月公演(12、13、19日)が行われる予定ですが、直前になって緊急事態宣言が発出されて、てんやわんやです。HPみても現時点でも確定情報がありません。マエストロ・インバルは来日して2週間の待機も終了し、スタンバイしているようなのですが。

公演のガイドラインは音友のHPにでています。

https://ontomo-mag.com/article/column/state-of-emergency2021/

ただすでに販売しているチケットについてはまだどうなるかわからないみたいで、ドタバタは続いているようです。20時までという規制は通常21時終了のクラシック音楽会にとっては大変なことです。

私は19日(マチネ)のチケットは持っているのですが、このまま感染が拡大していくとまたゴミになってしまうのでしょうか(悲)。

============

続報

都響1月の演奏会は予定通り行われるそうです(都響HPより)

 

 

 

| | コメント (0)

2021年1月 6日 (水)

東京はニューヨークや武漢のようになってしまうのか?

Cov19

東京>1500人とはとんでもないことになってきました。ニューヨーク化しそうな雰囲気です。千葉もどんどん増えてきてひとごとではありません。

政府ができることは何でしょうか? 飲食店の時短などではこの蔓延を止めることはできないでしょう。食料・物流・医療などのエッセンシャルを除くすべてを規制しないと手遅れになりそうです。

他にできることは?

1.アビガン、イベルメクチンなどの副作用に関する知見があって効きそうな薬を臨時に市販薬として売り出す。病院が満杯なのですから、これ以外に方法ありますか?

2.東京ドームや横浜アリーナなどを野戦病院にして、中国・台湾から応援の看護師を招く。

3.電車・バスはスピードを落として、窓を全開にする。

4.中学・高校は部活を全面禁止。

5.劇場・映画館・コンサート-ホール・球技場などは1ヶ月閉鎖。

6.デリバリーオンリーにする飲食店には政府から補助金を出してはどうでしょうか。家賃については徳政令を出すべきだと思いますよ。

デパートやスーパーは営業して良いと思います。

===========

政府は学徒動員をやろうとしているようですが、太平洋戦争でも最初から学徒動員したわけではありません。むしろ教員や院生は兵役免除されていたくらいです。教育・研究を中止して別の仕事をやれとはとんでもない話です。管轄する官庁に頼まれたら、事実上断りにくい状況になる恐れがあります。こんなことをやるならまず内閣総辞職して、国民に失政を陳謝してからからやれってことよ。

| | コメント (0)

2021年1月 4日 (月)

続・生物学茶話 123: 軸索誘導

神経細胞の仕事は情報伝達ですから、スタンドアローンでは何の意味もありません。仕事をするためには他の細胞とつながらなければなりません。そしてただランダムにつながればいいわけではなく、ある程度ターゲットを定めてつながる必要があります。実際神経回路が正しくつながっていないと、知的障害、自閉症、統合失調症などを発病する可能性があることがわかっています。また神経回路の退行はアルツハイマー病やパーキンソン病を発病することがあります。

ターゲットをさがしている神経細胞は図123-1のように細胞体が軸索を伸ばし、その先端には growth cone (成長円錐)という構造があって、軸索伸長を先導しています。Growth cone は中心部にチューブリンの組織体である微小管が丘のような形で存在し、そこからアクチン線維が放射状に伸びています。アクチンによる構造体には2種類がありスライム状の葉状仮足と、そこから針のような形で外に伸びている糸状仮足に分けられます(1、図123-1)。前進する方向に糸状仮足が突き出して、それに葉状仮足が追随し、さらに微小管の丘が追随する形で軸索が伸長します。

1231a

図123-1 成長円錐(growth cone)

前々項・前項で述べてきたNGFファミリーは栄養因子としての役割が主たる機能なので、軸索誘導の方向を高精度で決めるというような芸当はできません。それにはアクチンの集散を制御して growth cone が進む方向を決める機能を持つ因子を探索する必要があります。Growth cone に突出する仮足の誘導因子が前方左側に存在すれば左側に仮足が出て、そちらの方向に軸索は進展します(2、図123-2)。右側に忌避因子(仮足退縮因子)が存在すればなおはっきりと growth cone は左にハンドルを切ります(図123-2)。

1232a

図123-2 軸索伸展方向のハンドリング

当初は図123-3のようなシンプルなモデルで説明できると考えられていました。軸索誘導の実験材料としてもっともよく使われるのは、脊髄内で軸索を決まった方向に進展させる交連ニューロンです。交連ニューロンは細胞体は背側にありますが、発生の途中で軸索を腹側に伸ばしてフロアプレートに到達し、そこから中央裂を乗り越えて最終的には左右反対側の領域に進出します(図123-3)。Tessier-Lavigne の研究室の Serafini らは脊髄中央腹側に高濃度で存在するネトリン1の濃度勾配による走化性(化学向性)によって、軸索が腹側に伸展させられていると考えました。実際ネトリン1のノックアウトマウスでは軸索はフロアプレートには到達せず、一部は途中で中央裂方向に曲がったりしました(3、図123-3)。 これとは別にルーフプレート周辺には負の走化性をもたらす忌避因子(仮足退縮因子)が存在し、軸索がルーフ方向へ向かわないように制御しています(2)。

1233a

図123-3 走化性による軸索誘導説

Samantha Butler は学生時代から Tessier-Lavigne 研究室の業績に感銘を受けていて、それでこの方面の研究にかかわろうとしていました。彼女の友人に Marya Postner という人がいて、その人がなんと Serafini と結婚することになって、Butler は直接 Sefafini から走化性の話を聞いたりしていました。しかし彼女が大学教師になって最初に研究室にやってきた学部学生の Joe Herrold と Anna Maglunog は走化性という考え方に疑念を持ちました。それはネトリン1がフロアプレート周辺だけでなく、VZ(Ventral zone、図123-4)という正中裂の両サイドにも発現していることに注目したからです(4)。実際 Serafini らのデータをよく見ると、VZにもそこそこネトリン1が発現しているように見えます(図123-3)。これを Serafini らは軽視していました。学生たちは軸索の一部はVZの方向に進まなければおかしいと考えました。しかし実際には軸索はすべてフロアプレート方向に進みます。それどころかネトリン1のミュータントマウスではVZ方向にも軸索が伸びていきます。

この難題にぶつかって Butler のプロジェクトは頓挫し、ポストドクも研究室を去って大ピンチに陥りました。そこに現れたのが Supraja Varadarajan という当時まだ学生だった救世主です(図123-4)。彼女は交連神経細胞の軸索はVZのネトリン発現細胞がつくる境界線の外側を正確にたどって伸びるということです。まるでツタは壁を伝って伸びるが決して壁の中には伸びないように(4)。

ここでネトリン1の受容体について述べましょう。ネトリン1の受容体にはDCC系とUNC-5系があって、DCC系の受容体でネトリンを受けると細胞は受け取った方向に軸索を伸ばし、UNC-5系で受け取るとその方向に反発するように軸索を伸ばすことが当時わかってきていました(5-7)。いかにもVZからのネトリン1を交連神経細胞はUNC-5で受け取り、反発する形で軸索を伸ばしているように見えました。この考えだと図123-4のようになります。すなわちネトリン1は忌避因子として機能し、ネトリン1の突然変異体ではネトリンが機能しないので軸索はVZの方向にも伸びます。

1234a

図123-4 忌避因子を想定した「壁を這うツタ」説

これで説明できれば良かったのですが、軸索の受容体を調べてみると多くはDCC系だったので、この説によってもうまく説明できそうにもありませんでした。それでもまあここまでやったのだからということで Butler は Varadarajan にとりあえず学位を授けようとしたのですが、審査会で Larry Zipursky がいちゃもんをつけてきました。ネトリン1の発現はmRNAレベルで詳しく調べられていましたが、タンパク質レベルでの詳細な分布が調べられていないと言うのです。mRNAは正確に相補的なプローブで特異性が保証された検出ができるのですが、タンパク質は抗体で検出しなければならないので、こちらは偶然に依存する抗体の特異性次第でデータの信頼性が大きく変わるという方法で、あまりやりたい方法ではないのです(もちろんタンパク質の分布を直接検出するというのは非常に重要な実験なのですが)。私も何度も使えない抗体をつかまされて、研究費を捨てるハメになったことがあります。

でもともかくやらないと審査が通らないので、Varadarajan は追加実験をやってみました。そうすると驚くべきことに、ネトリン1はVZ以外の部分に散らばって観察されました。あまりにもそれまでの結果とは違っていたので、Varadarajan は特異的な検出ができなかったと判断し、抗原の賦活化(電子レンジなどの処理で抗原を露出させる)を行って再実験をしてみました。そうすると図123-5Bの緑色で示した部分のように、脊髄の外壁(pia)と軸索伸展領域に主要な分布がみられました。あまりにもmRNAの分布とは異なる結果です(図123-5)。これはVZ領域の神経細胞が外側に軸索を伸ばしてネトリン1を輸送し、ドンづまりの外壁に多くが蓄積されたと考えられます。この軸索に発現した、あるいはそこから放出されたネトリン1に交連神経細胞軸索のDCCが結合して、進行方向に伸展が誘導されたと考えるとうまく説明できます(8)。彼らはこれを haptotaxis(走触性)と呼んでいます(図123-5)。Varadarajan がある賞の受賞記念講演会で、このモデルを説明している動画を視聴することができます(9)。

1235a

図123-5 走触性(ハプトタキシス)による軸索誘導説

走触性誘導というのは非常に魅力的な理論ですが、詰めるべき点は多々あります。普通受容体は細胞膜にあってリガンドが外から来て結合するわけですが、リガンドが細胞膜にあって受容体が外から細胞膜をまさぐってリガンドと結合するのでしょうか? それともネトリン1は軸索から外部に放出されてラミニンなどの細胞間線維にからまり、それをDCCがキャッチするのでしょうか? ネトリン1に濃度勾配がなくても、このモデルは成立するのでしょうか? ほかの神経誘導にもこの理論は適用できそうなのでしょうか?

交連神経細胞の軸索誘導についてはルーフプレート周辺に存在する仮足退縮因子をはじめとして、ネトリン1以外の因子も関わっていることは明らかで(10)、図123-6にそれらが列記されています。このなかには、正中裂を横断するための因子②や、横断した後少し上行するための因子③も含まれています。このほかエクソサイトーシスを調節するシンタキシンが深く関わっているという論文もあります(11)。

1236a

図123-6 軸索誘導にかかわることが示唆されている諸因子 赤矢印:仮足退縮因子が働く方向

参照

1)脳科学辞典 成長円錐
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E6%88%90%E9%95%B7%E5%86%86%E9%8C%90

2)Xiyue Ye, Yan Qiu, Yuqing Gao, Dong Wan, and Huifeng Zhu, A Subtle Network Mediating Axon Guidance: Intrinsic DynamicStructure of Growth Cone, Attractive and Repulsive MolecularCues, and the Intermediate Role of Signaling Pathways., Neural Plasticity, Article ID 1719829, 26 pages (2019)
https://doi.org/10.1155/2019/1719829

3)Tito Serafini, Sophia A. Colamarino, E. David Leonardo, Hao Wang, Rosa Beddington, William C. Skarnes and Marc Tessier-Lavigne., Netrin-1 Is Required for CommissuralAxon Guidance in the DevelopingVertebrate Nervous System., Cell, vol.87, pp.1001-1014 (1996)
https://www.cell.com/action/showPdf?pii=S0092-8674%2800%2981795-X

4)Samantha Butler, The evolution of an axon guidance model: from chemotaxis to haptotaxis., (2017)
https://thenode.biologists.com/evolution-axon-guidance-model-chemotaxis-haptotaxis/research/

5)Fazeli A, Dickinson SL, Hermiston ML, Tighe RV, Steen RG, Small CG, Stoeckli ET, Keino-Masu K, Masu M, Rayburn H, Simons J, Bronson RT, Gordon JI, Tessier-Lavigne M, Weinberg RA. Phenotype of mice lacking functional Deleted in colorectal cancer (Dcc) gene. Nature. vol.386, no.6627 pp.796-804,(1997)  PubMed PMID: 9126737.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9126737/

6)Leonardo ED, Hinck L, Masu M, Keino-Masu K, Ackerman SL, Tessier-Lavigne M. Vertebrate homologues of C. elegans UNC-5 are candidate netrin receptors. Nature. vol.386 no.6627, pp.833-838,(1997) PubMed PMID: 9126742.
https://www.nature.com/articles/386833a0

7)脳科学辞典 ネトリン
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%83%8D%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%B3

8)Supraja G. Varadarajan and Samantha J. Butler., Netrin1 establishes multiple boundaries for axon growth in the developing spinal cord., Dev Biol., vol.430(1) pp.177–187 (2017) doi:10.1016/j.ydbio.2017.08.001.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28780049/

9)Supraja Varadarajan, The 25th Annual Samuel Eiduson Student Lecture Award 2017
https://www.youtube.com/watch?v=E_aIi7tM2U4

10)Esther T. Stoeckli, Understanding axon guidance: are we nearly there yet? Development vol.145, pp.1-10, (2018) dev151415. doi:10.1242/dev.151415
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29759980/

11)Oriol Ros et al., A conserved role for Syntaxin-1 in pre- and post-commissural midline axonal guidance in fly, chick, and mouse., PLoS Genet vol.14(6), (2018) e1007432.
https://doi.org/10.1371/journal.pgen.1007432

 

| | コメント (0)

2021年1月 3日 (日)

初詣

Img22

これは近所の神社、昨年の初詣風景です。今年は3日に行ったせいか、コロナのせいか、これよりもっと閑散としていました。一度だけ元日に行ったことがあるのですが、元日の初詣はこんな田舎の神社でも大変で、そこに向かう道が参拝客で混んで車がすれ違えず、ケンカが始まったのを目撃したこともあります。

今年はテントも無く、おみくじも無く(入れ物をさわらないといけないのでやめたと思われます)、破魔矢もありませんでした。仕方がないと言っちゃいけませんが、宮司に家内安全を祈願してもらってお札をいただきました。

年末に大奮闘して次回の生物学茶話の準備をしていましたが、今回はとても難渋しました。もうすこし頑張って明日にはアップしたいと思っています。

コロナは何が何でも緊急事態宣言を出したくない菅政権と、国に頼るしかない自治体が子供じみた対立でいがみ合っているようです。いいかげんな対策では、コロナ終息など夢のまた夢でしょう。とりあえず破綻している医療をどうやって立て直すつもりなのかだけでも明示してほしいと思います。

 

 

| | コメント (0)

2021年1月 1日 (金)

新年あけましておめでとうございます

Photo_20210101000401

旧年中のご愛読を感謝し、新春のおよろこびを申し上げます。

本年もよろしくお願い申し上げます。

| | コメント (0)

« 2020年12月 | トップページ | 2021年2月 »