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2020年11月29日 (日)

続・生物学茶話 120: 体節形成のメカニズム

「ミミズやエビと同様私たちの体にも体節がある」ということを記述した最初の人物は17世紀の解剖学者マルピーギとされています(1、図120-1)。様々な動物の体節形成について詳しい記載が行われたのは19世紀になってからで、フランシス・バルファウアー(図120-1)は30才のときに詳細で膨大なレビューを出版しており、それはフリーで閲覧できます(2)。彼は卓越した発生学者でしたが、わずか31才で夭逝しています。モンブラン登山の途中でガイドと共に遭難して落命したという、悲劇的で残念な人生でした。

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図120-1 体節形成研究の先駆者たち

ではバルファウアーによって記載された体節形成はどのようなメカニズムで行われるのでしょうか? このことについては1976年に J. Cookeと E.C. Zeeman があるエレガントなモデルを提案していて(3)、その実験的検証が半世紀近く進められてきました。彼らのモデルは「A clock and wavefront model」というもので、その具体的説明はまだ十分にできているとは言えませんが、現在でも基本的には正しいと考えられています。

彼らの理論を inspiringscience.net にアップされていた図(4、図120-2)を使って説明します。まず体の前方から後方にかけて上昇していく分節化を阻害するシグナルがあることを仮定します。このシグナルは現在ではFGFシグナルなどであることがわかっています(5)。体の後方にある未分節中胚葉(PSM= presomitic mesoderm)は、このシグナルがある程度弱くなったところで分節します。シグナルが一番弱いのはPSMのなかでは最前端(頭部に近い方)なので、その位置に新しい体節が形成されることになります。PSMは体の成長にともなって後方(尾部の方向)に伸びていくので、それに伴ってFGFシグナルの閾値(ウェイブフロント)の位置(縦の破線)も後方に移動し、移動した位置で次の体節がつくられます。

ただしすぐに体節が造られると非常に狭い体節になってしまうので、一定の時間待機して、ウェイブフロントがある程度後方に移動したタイミングを見計らって体節形成が行われないといけません。待機している間PSM(白塗り)はシグナルに反応しません。これはPSMの組織に時計があり、一定の時間がたつと反応できるようになる(黄色)と説明します。つまり体節形成はウェイブフロントの後方への移動とPSMがもつクロックによって遂行されるというわけです。

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図120-2 A clock and wavefront theory

体節の幅は生物の前後方向への(身長の)成長のスピードと、PSMのクロック(体節形成オン・オフの間隔)に依存することになります。成長の速度が遅く、オン・オフのサイクルが早いと幅の狭い体節が数多くできることになります。セリーヌ・ゴメスらは様々な生物を使って、体節形成とオン・オフのタイミングと成長速度の関係を調べました(6、図120-3)。たとえば成長速度がほぼ同じ315の体節を持つヘビと90の体節を持つトカゲを比較すると、ヘビのオン・オフサイクルが100分だったのに対して、トカゲのサイクルは4時間でした。当然サイクルが長い方が体節は少なくなります。ニワトリのサイクルはヘビと近い90分ですが、体節は55しかありません。これはニワトリ胎仔の成長がヘビと比べて圧倒的に早いことを意味します。

図120-3のヘビはゴメスの研究で用いられたアカダイショウ(コーンスネーク Elaphe guttata)です。下の図はゴメスらによるすべての体節の表示です。アカダイショウはマムシと似ていますが毒は持っていません。ネズミを絞め殺して食べます。獲物を絞め殺すには、確かに短い体節がたくさんあると有利なのでしょう。

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図120-3 セリーヌ・ゴメスとアカダイショウ

私たちと同じ哺乳類であるマウスの体節形成についても、相賀研などの努力でそのメカニズムが明らかになりつつあります(7、8、図120-4)。FGFシグナリングが閾値より減少すると、Notchシグナリングが有効となり、転写因子Mesp2からのカスケードによって体節形成が行われることになります。クロックはNotchシグナリングが内包するネガティブフィードバックによって実現されているというスキームです。このクロックにはイントロンを切り離すために必要な時間も含まれているため、イントロンをなくすとクロックが早すぎて体節形成が異常になるそうで(9)、こんなところでイントロンの生理的意義がみつかるとは驚きです。実際には図120-4に示した因子以外にも多くの因子がかかわっているので、この図は核心部分のみを示しています。

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図120-4 マウスにおける体節形成の核心部分

遺伝研のホームページにMesp2遺伝子に発光因子遺伝子を接続してノックインすることによって、遺伝子発現を可視化した美しいビデオ画像があります(8)。静止画像を1枚コピペして図120-5に貼っておきました。Notchシグナルには複雑な制御の問題があるので、まだ解明すべき問題は多いと思いますし、ひとつの細胞でクロックが成立しても組織全体でシンクロナイズしないと意味のあるクロックにはなりません。これらの点について、さらに掘り下げが必要になります。興味深いことに、生物によってかなり違った因子を使って体節形成が行われていることがわかっています(10)。どうしてこのようにバラエティーが著しいのかはわかりませんが、ひょっとすると体節形成関連遺伝子の変異や転換が生物多様性の肝なのかもしれません。

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図120-5 可視化された Mesp2 の発現

相賀先生が出自・研究・思想などについて詳細に語られているサイトがありましたので、文献11として紹介しておきます。先生のお言葉です:「ディスカッションするということがすごく大事ですね。いつも言うんですけど、今の子たちってあまり話さないんです。うちのラボでも、ちょっとわからないことがあったら聞けばいいじゃないと思うのになかなか聞きに来ない。私なんかわからないとすぐ聞いていました。」

「人に訊くなら、自分でたっぷり勉強してから来い」などと言われる陰湿な研究室と比べると、住みやすい良い研究室だと思います。


参照

1)Marcelli Malphghii, Philosophi & medici Bononiensis dissertatio epistolica de formatione pulli in ovo., Londini : Apud Joannem Martyn, 1673
https://shinku.nichibun.ac.jp/NOMA/new/books/11/suema000000003qu.html

2)Francis M. Balfour, A treatise on comparative embryology. volume 1. London,Macmillan and Co, 1881, Forms v. 2-3 of the “Memorial ed.” ofthe author’s works, published London, 1885.
https://www.biodiversitylibrary.org/item/17053#page/7/mode/1up
https://archive.org/details/treatiseoncompar02balfuoft/page/n7/mode/2up

3)J. Cooke, E.C. Zeeman, A clock and wavefront model for control of the number of repeated structures during animal morphogenesis., J. Theoret. Biol., Vol.58, Issue 2, pp.455-476 (1976)
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0022519376801312?via%3Dihub

4)Head to tail: segmenting the body
https://inspiringscience.net/2012/02/12/head-to-tail-segmenting-the-body/

5)Julien Dubrulle, Michael J. McGrew, and Olivier Pourquie, FGF Signaling Controls Somite Boundary Position
and Regulates Segmentation Clock Controlof Spatiotemporal Hox Gene Activation., Cell, Vol.106, pp.219–232, (2001)
https://doi.org/10.1016/S0092-8674(01)00437-8
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0092867401004378

6)Gomez C, Ozbudak EM, Wunderlich J, Baumann D, Lewis J and Pourquié O, Control of segment number in vertebrate embryos., Nature, vol.454, no.7202, pp.335-339 (2008)
https://www.nature.com/articles/nature07020

7)Zhao W, Ajima R, Ninomiya Y, Saga Y., Segmental border is defined by Ripply2-mediated Tbx6 repression independent of Mesp2.
Dev Biol. vol.400(1), pp.105-117, (2015) doi: 10.1016/j.ydbio.2015.01.020. Epub 2015 Jan 30.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25641698/

8)国立遺伝学研究所 発生工学研究室 HP 2.体節形成に関する研究
https://www.mmd-lab.net/research/research02.html

9)影山龍一郎 戦略的創造研究推進事業 CREST 研究領域「生命システムの動作原理と基盤技術」 研究課題「短周期遺伝子発現リズムの動作原理」 研究終了報告書
https://www.jst.go.jp/kisoken/crest/research/s-houkoku/09_02.pdf

10)Olivier F. Venzin, Andrew C. Oates., What are you synching about? Emerging complexity of Notch signaling in the segmentation clock., Develop. Biol., Vol.460, Issue 1, pp.40-54 (2020)
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0012160618304445
https://doi.org/10.1016/j.ydbio.2019.06.024

11)生命科学DOKIDOKI研究室
https://www.terumozaidan.or.jp/labo/interview/53/index.html

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2020年11月28日 (土)

大阪はかなりまずいことになってきました

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何か打つ手はあるのでしょうか?

北九州市のように、無症状者を含めた濃厚接触者のPCR検査をしてコロナを撃退するというやり方は、大阪ではもはやできないと思われます。こうなったら武漢のような徹底したロックダウンしかなくなってしまう可能性があります。できれば外出自粛で納まってほしいと思いますが。

東京でこうなったら、東京はロックダウンは不可能だと思われるので、詰んでしまうおそれがあります。米国はすでに詰んでいると思いきや、なにしろコロナ患者を16000人収容するICU数があるのがすごいところで、日本は医療先進国だなどとマスコミは言っていますが、実は米国の数十分の一の患者で病院がパニックという医療衰退国です。

 

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2020年11月25日 (水)

サラとミーナ 238: ちょっと休憩

私たちは午後11時頃に、野良猫がよくやっているような猫会議を開くことにしています。会議と言っても何か話すわけではなく、集合してまったりとしているだけです。

サラは私の鞄にもたれるのが最近のお気に入り。

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キャリーで休むのはサラが始めたのですが、付和雷同好きなミーナも最近はこの通り。

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最近印西牧の原のガソリンスタンドで、ガソリンが混入した灯油を売ったらしく、警察の広報車やパトカーが走り回って騒然としたここ数日でした。猫たちも落ち着かなかったでしょう。火事の様子もないので回収できたのかな?

 

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2020年11月23日 (月)

加藤陽子 東京大学文学部教授

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学術会議任命を拒否された6人の中に加藤陽子さんという方がいます。彼女の著書「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」(新潮文庫 2009年刊)を読んでみました。

まず気がつくのは、著者はなにがしかのイデオロギーを元に歴史を解釈しようとする人ではなく、純粋に科学者としてフラットな立場から、歴史の中で動いてきた様々な人物や団体の考え方をえぐり出していこうという姿勢に貫かれているということです。

ですから安倍・菅政権がやってきたことはレッドパージよりもひどいもので、自らの政策に反対する者はすべて、たとえ保守派の論客であっても、政治からは独立しているはずの学術会議からもパージしようという、おそるべきものです。彼らは自分たちを支持する周囲の人々には特にやさしいオキシトシン人種なので、羊の皮を被った狼には注意が必要です。

この本を読んで、ひとつ驚いたことがあります。それはあの昭和天皇が「松岡まで靖国神社に合祀されている」ことに不満を述べられたという、その松岡洋右についてです。彼は国際連盟の席を蹴って脱退する映像があまりにも有名で、私も日本を太平洋戦争に導いた責任者のひとりだと思っていて、実際A級戦犯となって病死しているのですが、実は内田外務大臣が彼の進言を尊重していたら、戦争は回避されたかもしれないというこの本のエピソード記述には衝撃をうけました。

松岡洋右はリットン報告書が国際連盟で議論されているときに、これを腹八分目で我慢して受け入れるべきだとの立場から、内田大臣に「ついに脱退のやむなきにいたるがごときは、遺憾ながらあえてこれをとらず。国家の前途を思い、この際、率直に意見具申す」と電報を打っているのです。内田大臣はこの意見をとらず、結局日本は連盟を脱退して戦争への道を歩み始めることになります。

しかし外務大臣になってからの松岡は、結局陸軍の圧力に屈して3国同盟を結んで戦争を推進する立場に転じてしまいました。ウィキペディアによると彼は・・・(外務大臣解任後)日米開戦のニュースを聞いて「こんなことになってしまって、三国同盟は僕一生の不覚であった」、「死んでも死にきれない。陛下に対し奉り、大和民族八千万同胞に対し、何ともお詫びの仕様がない」と無念の思いを周囲に漏らし号泣した・・・という記載があります。

安倍・菅政権は人文科学は不要な科学という立場ですが、では歴代の政府がとってきた政策を誰が評価するのでしょうか? 人文科学は自然科学とは全く異なる学問ですが、表面に見えていることだけでなく、その内側の真理・真実を知ろうとする努力に変わりはありません。

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2020年11月20日 (金)

続・生物学茶話 119: ショウジョウバエの体節形成

体節形成は生物にとって本当に重要なのでしょうか。現にタコやイカに体節はありませんし、私達の体には背骨の構造や肋骨をみればわかるように体節が存在しますが、外見上はっきりとはわからない状態になっているので、ひょっとすると退化途上にあるのかもしれません。しかし環形動物や節足動物などカンブリア紀あるいはそれ以前から数億年の間、体節を基本としたボディープランを引き継いでいる生物が永続し繁栄していることは事実です。なかでも基本型をそのままに近い形で引き継いでいると思われる代表的生物がゴカイやムカデなどです(1、図109-1)。

図109-1のオオムカデは毒腺をもっていて刺されると痛いですし、怖いとか気持ち悪いとかの印象を刷り込まれている方が多いと思います。私もそのひとりですが、一方で生物学者としてみると、実にすっきりとしたボディプランの生物だと思います。胴体は一つの体節に2本の足というユニットの繰り返しで、あとは口と肛門。アクセサリーとして触覚と顎があるというわかりやすい構造です。頭の方の2つの体節と尾の方のひとつの体節は形が違っていて、触角・顎・毒腺・アナルバルブなどの特殊な構造が存在します。つまり、やや込み入った分化の情報は前方2節と後方1節にほぼ限定され、あとは生殖器を分化させれば良いだけということになります。

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図119-1 体節を持つ生物の典型例 オオムカデ(節足動物門ムカデ綱)

ムカデに比べるとかなり特殊化している生物と思われますが、体節形成が圧倒的に詳しく研究されているのはショウジョウバエです。ショウジョウバエでは突然変異体を得やすいので、関与する多数の遺伝子の役割りがかなり判明しています。ショウジョウバエでは体節形成やその後の発生に関与する遺伝子が多数知られており、それらのヒエラルキーもかなり明らかになっています。参照文献2などを参考に整理してリストアップしてみました(図109-2)。

一般に昆虫の卵は母親が残したmRNAが不均一に分布していて、その情報にしたがって初期発生が行われます。その最初の情報の分子的実体が、図109-2の最上段の4種のmRNA、bicoid, nanos, hunchback, caudal (maternal effect genes 由来) です。ただし種によって違いがあるので、網羅しているわけではありません。このうち bicoid, hunchback, caudal はそれぞれ転写因子をコードしていて、残る一つの nanos は翻訳阻害因子をコードしています。bicoid は翻訳阻害因子としても作用します。これらの因子の最も重要な役割は卵の前後軸を決定することです(2)。

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図119-2 ショウジョウバエの発生に関与する遺伝子のヒエラルキー

最上段の4つの因子の指令を受けて、前後軸と体節形成の準備をすすめるのがギャップ遺伝子群、実際に体節構造を製作していくのがペアルール遺伝子群、体節ごとの特徴を決めて、その位置に形成されるべき組織・器官を制作していくのがホメオティック遺伝子群とその指示を受けて発現するリアライゼーター遺伝子群ということになります(図109-2)。

図109-3の上段の2枚のパネルのように、未受精卵では bicoid mRNA は頭部に局在し、nanos mRNA は尾部に局在しています。それぞれ細胞膜や細胞骨格と結合して全体に広がらないように係留されています。一方 caudal と hunchback は局在することなく卵全体の細胞質にひろがって存在します。これが受精によって一気に活動を始めるわけです。ここで余談になりますが、ショウジョウバエは奇妙な受精システムを持っています。体長がたった3mmくらいの小さな生物なのに、メスはなぜか長さ8cmの折りたたまれた受精囊をもっていて、オスはここにフィットする長さ5cmの精子を作ります(3)。自分の身長の十数倍のサイズの精子を作る生物は他にはいないようです。非常に洗練されたボディープランを持つこの小さな生物が、なぜこのような無駄とも思える巨大な精子をつくるために多大なエネルギーを費やすのか理解できません。とはいってもヒトだってピラミッドを造ったりするわけですから、それが生物なのかもしれません。

受精すると多くの生物では細胞分裂が開始されますが、昆虫やクモはまず細胞核だけが分裂します。これは母親が残してくれた設計図(mRNAの局在)を生かすためにはベストな方法です。その理由はmRNAによって造られるタンパク質が転写因子だった場合、直接核に侵入して転写を制御できるという点にあります。これによって細胞膜の受容体などを介さず、シンプルでスピーディーな情報発現が行なわれ、発生の期間が短縮されるというメリットがあります。昆虫のようなサイズの小さい生物の場合、短期間に多くの子孫をつくるというシステムは極めて有用です。

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図119-3 受精前の母親由来mRNAと受精後に翻訳されたタンパク質の分布

hunchback と caudal mRNA は bicoid や nanos のように局在はなく、当初満遍なく分布していますが、bicoid mRNA が転写されて bicoid タンパク質が合成されると、このタンパク質は転写因子としてギャップ遺伝子の転写を促進すると共に、翻訳阻害因子として caudal mRNA の翻訳を阻害します。したがって卵の前部では caudal タンパク質の濃度は低く、後半で高いということになります(図109-4)。一方 nanos mRNA が転写されて nanos タンパク質が合成されると、これは hunchback mRNA の翻訳を阻害するため、hunchback タンパク質の濃度は前部で高く、後部で低いということになります。未受精卵にあるこれら4種のmRNAは昆虫ではすべて同じではなく、別種のmRNAで代替されることもあるようです(4)。

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図119-4 発生初期胚における情報の勾配

前後軸が形成されると、hunchback や caudal に加えて図109-5のようなギャップ遺伝子群が転写・翻訳されて前部・中央部・尾部などおおまかに各領域をわけるためのタンパク質が合成されます(5、6)。それらが図109-2の上から2段目のグループです。それぞれが発現する位置は図109-5に示してあります。ここでわかるようにひとつのギャップ遺伝子は特定の1ヵ所で発現しているわけではないので、ひとつのギャップ遺伝子が頭、別のが胸という形で1:1に形態形成を指定しているわけではありません。例えばある遺伝子を欠損するとどの体節が欠けるというような遺伝学的解析の結果があっても、その遺伝子と体節が1:1で対応しているという証明にはなりません。なぜなら複数の遺伝子産物の濃度の組み合わせによって、適切な情報がペアルール遺伝子群やホメオティック遺伝子群の発現を制御しているからです(7)。

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図119-5 ギャップ遺伝子の発現

ペアルール遺伝子群は、その発現様式が体節形成のアルゴリズムを決定するタンパク質をコードするという重要な遺伝子群です(8、9)。この遺伝子群は体節形成に直接関わっていて、厳密に体節(体の各部位を形成するための足場のような役割を持つ仮の体節)が形成される場所に発現します(図109-6)。たとえば fushi tarazu (ftz) や even-skipped (eve) 遺伝子の突然変異によって、体節の数が半分になるというような事態になります(5)。その意味ではペアルール遺伝子の発現は、体節の形成に1:1で対応しています。

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図119-6 ペアルール遺伝子の発現

Nüsslein-Volhard と Wieschaus(図109-7)は突然変異を引きおこす化学物質を用いて、約1万8千種類の劣勢致死遺伝子(ホモになったときだけ致死)を持つショウジョウバエの系統を作成し、体節形成に異常をきたすなどの発生異常が原因で胚性致死となる580の変異系統を同定し、それを分析することによって胚発生にかかわる139の遺伝子を探り出しました。この研究法を飽和遺伝子スクリーニングと言うそうです(9、10)。驚くべきことに彼らが報告した139の遺伝子のほとんどのホモログが脊椎動物でも見つかりました(10)。

Lewis (図109-7)らは彼らより前からホメオティック遺伝子の研究を行っており(11、図109-1)、Nüsslein-Volhard 、Wieschaus、Lewis は共に1995年のノーベル生理学医学賞を受賞しました。ホメオティック遺伝子はその変異によって触覚の代わりに肢が生えるというようなわかりやすいものなので、上流の遺伝子群より先にいろいろなことが知られていました。

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図119-7 1995年のノーベル生理学医学賞受賞者たち

ホメオティック遺伝子群はアンテナペディア複合遺伝子のグループ(ANT-C=アンテナペディアコンプレックス)とバイソラックス複合遺伝子(BX-C=バイソラックスコンプレックス)のグループに2分され、それぞれゲノム上にクラスターを形成しています。図109-8をみるとアンテナペディアは胸、羽、第1肢、頭部の形成を担当し、バイソラックスは第2・3肢、腹部を担当しているようです。ホメオティック遺伝子はホメオドメインという部位を持つ転写因子をコードしていて、これらの転写因子はホメオドメインでDNAの特定部位に結合し、リアライゼーター遺伝子などの発現を制御しています。ですからホメオティック遺伝子がどこで発現するかは、その場所に所定の組織や器官がつくられるかどうかを決めることになります(12)。

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図119-8 ショウジョウバエのホメオティック遺伝子と発現する体の部位

ホメオティック遺伝子はさまざまな動物でよく保存されており、例えばハエの遺伝子をニワトリの対応遺伝子と入れ替えても完全に機能するという報告があります(13)。ショウジョウバエとヒトは進化上非常に離れた位置にありますが、ショウジョウバエの主要なホメオティック遺伝子には、ヒトにもホモログが存在し、形態形成に寄与していることが判明しています(14、図109-9)。

すなわち前口動物と後口動物の共通の祖先が(もちろんエディアカラ紀より以前に)、ホメオティック遺伝子を保有していたことが示唆されます。興味深いことに、つくられる組織・器官の形態が全く異なっているにもかかわらず(ヒトには触覚はありません)、これらの遺伝子が発現する位置・前後関係が全く同じで入れ替わりがありません。つまり左右相称動物の場合、ホメオティック遺伝子の発現までには発生プランに大きな差はなく、形態の違いはリアライゼーター遺伝子より下流に発現する遺伝子の変異によって生まれたものと考えられます。

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図119-9 ショウジョウバエとヒトのホメオティック遺伝子とその発現位置の比較


参照

1)ウィキペディア: ムカデ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A0%E3%82%AB%E3%83%87

2)Wikipedia: Drosophila embryogenesis
https://en.wikipedia.org/wiki/Drosophila_embryogenesis

3)Stefan Lüpold et al., How sexual selection can drive the evolution of costly sperm ornamentation., Nature vol.533, pp.535–538, (2016)
https://www.nature.com/articles/nature18005
(日本語解説:http://www.natureasia.com/ja-jp/nature/highlights/75322)

4)Reinhard Schröder, The genes orthodenticle and hunchback substitute for bicoid in the beetle Tribolium., Nature vol.422, pp.621–625 (2003)
https://www.nature.com/articles/nature01536

5)東京医科歯科大学講義資料 個体の発生と分化Ⅱ- 発生と分化のしくみ
http://www.tmd.ac.jp/artsci/biol/textlife/develop2.htm

6)Wikipedia: Gap genes
https://en.wikipedia.org/wiki/Gap_gene

7)Ingham, P. W.; Ish-Horowicz, D. & Howard, KR., Correlative changes in homoeotic and segmentation gene expression in Krüppel mutant embryos of Drosophila., EMBO J vol.5, pp.1659-1665, (1986)
https://www.embopress.org/doi/abs/10.1002/j.1460-2075.1986.tb04409.x

8)Wikipedia: Pair-rule genes
https://en.wikipedia.org/wiki/Pair-rule_gene

9)Christiane Nüsslein-Volhard & Eric Wieschaus, Mutations affecting segment number and polarity in Drosophila., Nature vol.287, pp.795–801 (1980)
https://www.nature.com/articles/287795a0

10)林茂生 ショウジョウバエが教える驚きの発生メカニズム
https://www.chart.co.jp/subject/rika/scnet/59/Snet59-3.pdf

11)Lewis, E.B. A gene complex controlling segmentation in Drosophila. Nature vol.276, pp.565–570 (1978)
https://www.nature.com/articles/276565a0

12)遺伝子博物館 発生における遺伝子作用 ~ ホメオティック遺伝子
https://www.nig.ac.jp/museum/OLD-MS/history-x/09_b.html

13)Lutz, B.; H.C. Lu, G. Eichele, D. Miller, and T.C. Kaufman, Rescue of Drosophila labial null mutant by the chicken ortholog Hoxb-1 demonstrates that the function of Hox genes is phylogenetically conserved., Genes & Development vol.10., pp.176-184, (1996)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8566751/

14)Manuel Mark, Filippo M Rijli & Pierre Chambon, Homeobox Genes in Embryogenesis and Pathogenesis., Pediatric Research vol.42, pp.421–429, (1997)
https://www.nature.com/articles/pr19972506

 

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2020年11月18日 (水)

突然東京がとんでもないことに

どうして突然こんなとんでもないことになったのでしょう??
特に陽性率が・・・・・・・・・

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2020年11月17日 (火)

スウェーデン コロナ制圧に失敗

スウェーデンは新型コロナに対しては、実質集団免疫獲得に向けて非常に緩い規制でやってきて、9月頃までは一見成功したかに見えました。しかしそれが一転、10月頃から急激に感染者が増加して(図)、方針の転換をせざるを得なくなったようです。

こちら

政府が国家の方針としてやっていることは、なかなかすぐには転換できず手遅れになりがちですが、スウェーデンの場合まさしく手遅れのようです。日本も規制は緩いので、いつスウェーデンのような急増フェーズに突入するかわかりません。増え始めたら(多分今)すぐに規制に舵を切らないと手遅れになります。

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図のソース 

https://twitter.com/Knjshiraishi/status/1328051490192232449/photo/1

それにしても9月までは抑えられていたのに、どうして突然10月から爆発的増加に転じたのかが問題です。ウィルスが人間に適応してしまったように思えますがどうでしょう。ともかく感染爆発地域からの人の入国に対しては非常に厳しく対応すべきなのは当然です。

フィンランドのウィルスとスウェーデンのウィルスの塩基配列を比較することが喫緊の課題でしょう。

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2020年11月16日 (月)

都響スペシャル ドボルザーク「新世界より」@東京芸術劇場 2020/11/15

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コロナ第3波がひたひたと押し寄せる中、池袋の芸劇にでかけました。都響の演奏会は客席にディスタンスを入れて、遠隔体温測定を実施し、マスク・手指消毒を徹底し、売店も廃止で、まあできることはすべてやっている感じで、ここで感染するとは思えません。池袋駅は最短距離で通り抜けました。電車は思いのほか空いていました。

早めに入場すると広田さんが入念に調整していましたが、この楽器は新しいもののようです。彼はオーボエの名手であるだけではなく、楽器の改良にも関心があるようで自ら制作にも携わっていると聞いています。ひときわ柔らかく素晴らしい音で、こう言っちゃ何ですがとてもオーボエとは思えません。

最前列で聴きましたが、モーツァルトからしてアンサンブルの異様な精緻さには圧倒されます。これが都響なんですね。Vnの高い音のフォルテは相変わらず脳にダメージを与えるような音ですが、これも都響なんですね。

本日のマエストロは小泉さん。コンマスは四方さん、サイドは山本さん。プラハはほの暗く、ゾクッとするような感じでした。こんな曲だったっけ?

メインの「新世界より」はすごい筋肉質でエネルギーが充満した爆演でした。アランのような祈りの世界ではなく、輪郭明快な楷書体の音楽でした。この小泉流に団員の意思が集中し、ひとつの生き物のような整然たる拍動となっているのが素晴らしい。

そんな中でも南方のイングリッシュホルンはいつもながら、さりげなくそれでいて痺れるようなノスタルジックなメロディーを聴かせてくれました。篠原さんは体調が悪かったのか、ひとりマスクでしたが、この爆演をマスク装着で弾くのは大変だったと思います。お疲れ様。横山さんはコロナ休みのうちにプレイスタイルを大幅に変更したようで、あの特異な「かかとをつけない」弾き方をやめたようです。それとも今日だけ?

マエストロ小泉と都響メンバーの奮闘に拍手✨✨✨





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2020年11月14日 (土)

来年の日記帳

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自分のこれまでの人生のなかで、日記を書こうと思ったことは何度かありますが、すべて途中で挫折しました。しかし今年はコロナ禍の中で、自分がいつどの店に行ったとか、誰と会ったとかは記録しておいた方がいいと思って、なんとか1年間継続して日記を書くことに成功しそうです。成功したらもちろん人生初の快挙です。

今年は普通の高橋書店の日記帳を使いましたが、来年はちょっと気分を変えたいと思って“NOROJOURNEY” の日記帳を買いました。作者の平松さんは本当にNOROという黒猫を連れてヨーロッパを旅する写真家のようです。動物の検疫は大変なので、おそらくヨーロッパ在住の方だと思います。NOROはもう高齢猫になってしまったので心配ですが、なんとか今年もお役目を果たしたようです。

NOROがすごいのは、リードを離してもどこかに行ってしまわないことで、私はミーナでさえも、団地の中でさえも、フリーにすることは怖くてできません。

猫はもちろん旅行は好きじゃありませんが(自然にはあり得ません)、それが習慣になってしまうと、それなりに順応する能力はあるようです。来年はコロナが沈静化して、このノートが棚で埃をかぶるような状況になることを願っています。

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2020年11月11日 (水)

新型コロナウィルスのmRNAワクチン

ファイザーとビオンテックが開発している SARS-CoV-2(新型コロナウィルス)ワクチンが優秀そうだということで話題になっています。実際に開発したビオンテックのサヒンCEOはトルコからケルンに移住してきた労働者の家族で、一方共同開発するファイザー側の開発責任者のヤンゼン氏は東ドイツからの脱出者だそうです。移民を推進してきたドイツ政府の勝利です(1)。

このワクチンについて説明する図をWangらの論文(2)から拝借しました。この論文はオープンアクセスです。

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このワクチンの実体はメッセンジャーRNA(mRNA)です。mRNAは分解されやすい不安定な物質である上に、細胞にはとりこまれません。そこでこれにキャップ構造をとりつけ、さらに細胞がRNAウィルスの侵入と誤解しないように修飾をほどこした上で、脂質の膜(図のLNP=lipid nano particle 脂質ナノ粒子)に包み込んで細胞に与えます。そうすると細胞は膜ごととりこんで、細胞内でmRNAは解放され、タンパク質を合成し始めます。ワクチンは筋肉注射で投与するので、合成の主力は筋肉細胞でしょう。

どんなタンパク質を合成させるのか? SARS-CoV-2 が多数のスパイクを持っていて、それを使って細胞にとりつくというのは皆さんご存じの通りです。RNAウィルスは非常に変異しやすいのですが、スパイクは私たちのタンパク質ACE2(ある種のタンパク質分解酵素)にとりつくので、そうは簡単に変異できません。変異するとACE2と結合できなくなるおそれがあるからです。ですからワクチンの実体であるmRNAはスパイクタンパク質(図のS protein)に対応するmRNAが選ばれました。

細胞内で合成されたS protein は細胞外に放出され、抗体として図のようにT細胞、樹状細胞(dendric cell)、B細胞などに認識され、細胞障害性T細胞や抗体の作用によってウィルスが攻撃されるようになります。ホルモンでもないのに細胞の外に出るわけですからエキソサイトーシスで出るのでしょうが、それで間に合うのかというのがちょっとひっかかるところです。

なぜ抗体を直接打たないで、こんな迂遠な方法でワクチンをつくるかというと、特定のタンパク質(抗体)を製造するより、特定のmRNAを製造する方が圧倒的に簡単だからです(3)。ですから抗体を製造するには動物(細胞)の力を借りて、抗原を投与して抗体を作ってもらうことになりますが、それは製品の均質を確保できないという問題がありますし、コストから見てもmRNAの方が安上がりです。無害抗原を投与するにしても、自動的にそれを細胞で作ってくれるmRNAの方が効率的でしょう。

ただこのmRNAを使ったワクチンは非常に新しい技術で作成されており、いままで一種類も認可されたことはなく、今回の新型コロナウィルスの場合がはじめてになりそうなので、まだ何が起こるか怖いところがあります。反知性主義者はどうやって物事を決めるかというと“フィーリング”でしょう。それはダメです。政府はメーカー・科学者・医師の話をよく聞いて、慎重に進めていただきたいと思います。

参照

1)ヤフーニュース:コロナ危機を終わらせるワクチンの開発者は自動車工場で働くトルコ移民労働者の息子夫婦だった
https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20201110-00207246/

2)Fuzhou Wang,  Richard M. Kream,  George B. Stefano., An Evidence Based Perspective on mRNA-SARS-CoV-2 Vaccine Development., Med Sci Monit, 2020; 26: e924700DOI: 10.12659/MSM.924700
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7218962/

3)化学者パライ mRNAワクチンの現状と課題
https://note.com/yopparai_chemist/n/ne31ee6ef1e83

 

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2020年11月10日 (火)

続・生物学茶話 118:体節形成の起源をめぐって

エビやムカデをみると明らかに体節をもつ生物とイメージできますが、ヒトも妊娠初期の胎児写真を見ると体節が見えます(1)。肋骨の存在はその名残りですし、パワートレーニングをすると筋肉が割れるというのもヒトが体節を持つ生物であることの証です。しかしタコ・イカ・貝・ヒトデ・ナマコ・イソギンチャクなどはどう見ても体節がありません。では動物は体節を持つ者と持たない者で2つのグループに分けられるのでしょうか?

まずカンブリア紀より前のエディアカラ紀(約6億2000万年前 - 約5億4千200万年前)を代表する生物にディッキンソニアというのがいます(2、図118-1)。最近この生物について大きな研究の進歩がありました。Ilya Bobrovskiy らによると、この生物の化石の多くからステロイド(C環がベンゼンリング)が検出されるということがわかり、彼らが植物(プランタ)ではなく動物(オピストコンタ)であることが証明されました(3)。彼らは長い間その土地の上を動物が徘徊していたかもしれないオーストラリアの丘陵ではなく、極寒ロシア白海の絶壁の上からロープで下垂し、汚染の可能性が少ない岸壁の地層から化石を掘り出して調査したそうです。ちょっと考えただけでも、とてつもなく困難な作業だったことが想像できます。

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図118-1 謎の多い生物 ディッキンソニア

ディッキンソニアはまるで葉脈のように体が褶曲しているのが特徴です(図118-1)。大きな個体では体長が1.2mもありますが、厚みは3mmくらいしかありません。これはおそらく体表から取り込んだ酸素や栄養物質を拡散によって摂取していたからだと考えられます。たとえば紅茶に砂糖を入れて混ぜないでおくと、全体に広がるのに時間がかかってしまうように、拡散には時間がかかります。これを改善するには体中に水管や血管を張り巡らすことが必要ですが、ディッキンソニアはそのような器官はもっていなかったようです。ですから体を分厚くすることは不可です。しかし表面積を広げるために絨毯のような広がった体を持つことには栄養吸収のためにメリットがあります。また体にヒダヒダがあることも表面積を広げるために大きな効果があります。

問題はこの生物が左右相称動物だったかどうかということですが、図118-1cをみてわかるように、左右のヒダヒダが中央で植物の互生のように互い違いに配置されています。このことはこの生物が左右相称ではないことを示唆していますが、さらに体節があったという説にも強い疑問をなげかけています。人も体の中央に脊椎がありますが、肋骨は植物で言えば対生であり、互い違いに生えるということは突然変異でもありません。まだまだディッキンソニアは謎だらけの生物です。

もうひとつ重要なエディアカラ紀の化石は Glaessner と Wade (4)によって記載されたキンベレラです(5、6、図118-2)。エディアカラ紀には捕食者はいなかったはずですが、この生物は貝のような殻を持っていました。とは言っても炭酸カルシウムのような堅い殻ではなくて、骨片の集合体のようなもののようです。とは言っても実際土砂に埋まったときに体が潰れずに良い保存状態で残っている場合があり、生存には役立っていたようですし、筋肉を接着させて力を発揮させる意味もあったようです(6)。

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図118-2 エディアカラ紀の先進的生物 キンベレラ

図118-2a の個体は長さ1cmくらいの小さいものですが、長さ15cmくらいのものも見つかっています。このような大きなものでは高さも3~4cmあります(5)。このことはキンベレラがディッキンソニアのように拡散によって酸素や栄養物質を体内に供給していたとは考えられず、なんらかの強制的な(エネルギーを消費する)供給システムを持っていたことを示唆しています。図118-2bでわかるように、中央隆起線から左右対称に線条がでていること、殻の片側に円丘がみられ前後があることなどからこの生物はクラゲやイソギンチャクのような放射相称ではなく、左右相称動物であったと思われます。殻には横紋筋が付着していたとみられる痕跡があり、筋肉を使って移動し、水底にくっついている細菌などを食べていたと思われます(6)。図118-2cをみると体節があるようにも見えますが、まだ確実とは言えません。dの想像図はまるでUFOのようです。

ディッキンソニアもキンベレラも化石の数が多いことから、エディアカラ紀にはありふれた生物だったと思われますが、その構造や生態は非常に異なっていることは確実なので、多細胞生物の分岐についてはさらに前の時代にさかのぼらなければ説明できないことが明らかになりました。キンベレラは軟体動物であるという説(7)は有力ですが、歯舌そのものの化石は出ていないのでまだ確実とは言えません。エディアカラ時代の生物の化石は限られているのでまだまだ謎の部分が多く、今後の研究の進展が待たれます。

ディッキンソニアやキンベレラに体節があったかなかったかはまだ未解明ですが、体節を持つかどうかは門レベルでその生物群の特徴を示しています。図118-3をみると、動物門によって体節を持つグループと持たないグループ(または放棄したグループ)にきれいにわけられることがわかります。体節を持つ典型的な生物は節足動物のムカデなどですが、体節を持つことがどれだけ生存に有利なのかよくわかりません。とは言ってもムカデはたいして形態を変えずにシルル紀から4億年以上も繁栄しているわけですから、それなりのメリットはあるに違いありません。私たちも体節を持つ動物なので、そのメリットを考えてみると背骨に切れ目(椎間板)があるために、体を屈曲できたり、脊椎の負担を減らしたりできるわけです。ムカデも体節があることを利用して、屈曲した岩陰の道を移動することができるというメリットはあります。あとは体節をコピー的に増やせば、体の前後のサイズをいくらでも長くできます。ヘビのようにエサ動物を絞め殺すには有利かもしれません。

体節によって別の遺伝子を発現させるというメカニズムがあれば、体節ごとに種類の異なる臓器を発生させたり足や羽を分化させたりできるので、発生のストラテジーとして有用であるのかもしれません。左右相称動物以外の生物の繰り返し構造は体節とは言いません。左右相称動物の体節形成を俯瞰した図118-3を示します。

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図118-3 体節形成というイベントはいつ発生したのか?

体節と進化を考える上で、図118-3のAポイントですでに体節は形成されていて、その後に生まれた体節を持たない生物はこれを放棄したと考えることは可能です。しかし軟体動物はもともと体節を持たない祖先から生まれ、そのまま現在に至っていると考えることも可能で、この場合体節はBポイントとCポイントで独立に形成されたということになります。いずれにしても線形動物は体節を放棄した門と考えられます。

体節と進化を考える上で、図118-3のAポイントですでに体節は形成されていて、その後に生まれた体節を持たない生物はこれを放棄したと考えることは可能です。しかし軟体動物はもともと体節を持たない祖先から生まれ、そのまま現在に至っていると考えることも可能で、この場合体節はBポイントとCポイントで独立に形成されたということになります。いずれにしても線形動物は体節を放棄した門と考えられます。

ピカイヤやミロクンミンギアなどの脊索動物、原始的なヒトデやウミユリなどの棘皮動物は共にカンブリア紀の化石があるので、新口動物(後口動物)における体節形成がCポイントかAポイントかいずれに行われたかにしても、そのタイミングはエディアカラ紀以前の話ということになります。ならばその頃すでに左右相称動物が居たはずということにもなります。

もう少しで体節が形成されそうな生物がいます。それはプラナリア(扁形動物)です(図118-4)。扁形動物は図118-3には示しませんでしたが、軟体動物や環形動物と同様、旧口動物(前口動物)の冠輪動物上門に所属する動物門です。

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図118-4 体節がある動物、ない動物、中間的な動物の神経系

刺胞動物は左右相称動物ではなく体節もありませんが、左右相称動物である扁形動物の神経系はまるで体節があるかのような規則的な構造を形成しています(事実上のはしご状神経系 図118-4)。しかしこれ以外に体節の存在を示す特徴がないので扁形動物は体節をもたないとされていますが、一定の間隔で繰り返し構造を形成するための遺伝子を持っていると考えられます。実際プラナリアは13個のHOX遺伝子を持っていることがわかっています(8)。環形動物や節足動物にはもちろん体節が存在します。軟体動物と環形動物は前者に体節がなく後者に体節があるにもかかわらず、図118-3のようにかなり分類学的には近縁の生物とされています。したがって扁形動物の分岐位置はBポイントより左側の昔にあります。

脊索動物は体節を持っていますが、最も近縁な門である棘皮動物門の生物は体節を持っていません。棘皮動物は発生の途中まで左右相称なのですが、ある時点から5放射相称という独特のボディープランに乗り換える種が多いのが特徴です。しかもこれはHOX遺伝子の変異に起因するものではないようです(9)。棘皮動物もウミユリなどはカンブリア時代から生きていましたし、ミロクンミンギアなどの脊索動物も同時代に存在したので、Cポイントがあったとしてもエディアカラ紀以前ということになり、新口動物(後口動物)についても体節の起源は遙かな昔の出来事で謎です。

私達が所属する脊索動物門と、イカ・タコ・貝類が所属する軟体動物門は非常に離れた分類群で、どちらも5億年以上前のカンブリア紀から存在しています。脊椎動物にも匹敵するような高度な知能を持つ頭足類(イカ・タコなどの仲間)も、はやくもカンブリア紀に棲息していたとされています(10、11、図118-5)。この古代の頭足類はネクトカリスという生物で、何しろ名前が「泳ぐエビ」という意味ですから、当初節足動物だと誤認されていたくらい原始エビ的な風貌です。体節のある古代の軟体動物がみつかるかどうかはクリティカルです。この生物に体節がある(10)とすると、図118-3のBポイントではなく、それ以前に体節が形成されたことの証拠になります。もちろんその後軟体動物は体節を喪失したことになります。

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図118-5 ネクトカリスの化石と復元図

図118-5のネクトカリスは現在の頭足類と同様漏斗(ジェット水流を任意の方向に噴き出して推進力とする)をもち、頭に2本の足(?)が生えています。貝殻はもっていないようです。これは頭足類の研究者にとっては驚きでした。もともと原始的頭足類がもっていた貝殻が退化して現在のイカ・タコとなったと考えられていたからです。現在でも痕跡的な貝殻を持つイカがいます(12)。英語では貝殻を持つイカは cuttlefish、持たないイカは squid です。私的には、貝殻もさることながら、ネクトカリスに体節の痕跡があるかどうかに興味がわきます。

参照

1)ストックフォト: 胎児の成長
http://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/static.amanaimages.com/imgroom/cen3tzG4fTr7Gtw1PoeRer/01809/01809011202.jpg

2)ウィキペディア: ディッキンソニア
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%83%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%8B%E3%82%A2

3)Ilya Bobrovskiy et al., Ancient steroids establish the Ediacaran fossil Dickinsonia as one of the earliest animals., Science Vol. 361, Issue 6408, pp. 1246-1249 (2018) DOI: 10.1126/science.aat7228
https://science.sciencemag.org/content/361/6408/1246

4)Glaessner, M.F.; Wade, M., The late Precambrian fossils from Ediacara, South Australia., Palaeontology vol.9, part 4, pp.599-628 (1966)
https://www.palass.org/sites/default/files/media/publications/palaeontology/volume_9/vol9_part4_pp599-628.pdf

5)Fossil Wiki: Kimberella
https://fossil.fandom.com/wiki/Kimberella

6)ウィキペディア: キンベレラ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%83%99%E3%83%AC%E3%83%A9

7)A. Yu. Ivantsov., Paleontological evidence for the supposed precambrian occurrence of mollusks., Paleontological Journal, vol.44, pp.1552–1559 (2010)
https://link.springer.com/article/10.1134/S0031030110120105

8)Ko W. Currie et al., HOX gene complement and expression in the planarian Schmidtea mediterranea., EvoDevo vol. 7, Article number: 7 (2016)
https://evodevojournal.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13227-016-0044-8

9)Yongxin Li et al., Genomic insights of body plan transitions from bilateral to pentameric symmetry in Echinoderms., Communications Biology volume 3, Article number: 371 (2020)
https://www.nature.com/articles/%20s42003-020-1091-1

10)ウィキペディア: ネクトカリス
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8D%E3%82%AF%E3%83%88%E3%82%AB%E3%83%AA%E3%82%B9

11)Smith, M. R. and Caron, J. B., Primitive soft-bodied cephalopods from the Cambrian., Nature vol. 465 (7297): pp. 469–472. (2010)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20505727?dopt=Abstract

12)ウィキペディア: 甲(頭足類)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%B2_(%E9%A0%AD%E8%B6%B3%E9%A1%9E)

 

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2020年11月 6日 (金)

マイクロソフト・エッジの自動立ち上がりを拒否したい

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慣れ親しんでいたこともありますが、インターネット・エクスプローラーは使いやすいブラウザーでした。それがウィンドウズ10に切り替わって、マイクロソフトはどうしてもEdgeにブラウザーを替えて欲しいらしく、ウィンドウズを立ち上げると自動的にEdgeが立ち上がるような仕様になっていて、ウザいことウザいこと。

Edge はどうもスマホを意識しすぎで、PCで作業をする者にとっては使いづらいソフトです。Firefox の方がまだ使いやすいブラウザーです。なんとかしたいと思っていましたが、次のような方法で設定するとEdgeとお別れできました。といってもマイクロソフトの基本アプリなので削除はリスクがあるかもしれず、ただ自動立ち上がりを遠慮してもらうというだけの意図です。

左下のスタートボタン→設定→個人用設定→ロック画面→背景→「画像」を選択(デフォルトでは「ウィンドウズスポットライト」になっていた) 

ウィンドウズスポットライトが悪の元凶でした。これでEdgeの自動立ち上がりをお断りすることができました🎵

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2020年11月 4日 (水)

サラとミーナ 237: プリンターは私の場所

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プリンターの上はミーナのお気に入りの場所です。外を眺めることと、私を監視することの両方が可能です。

猫を飼って何が楽しいのかと思う人もいるかもしれませんが、まあステディな友人が数人いて、仕事の後はいつもみんなで飲んだり楽しく遊んでいるような人々にとってはあまりわからないかもしれません。しかし孤独な人々にとっては、ペットといろいろやりとりすることが楽しみになります。今はなき ZARD に「Just believe in love」という歌があって、その冒頭の歌詞が「すり切れるほど聴いたアルバムが、あの頃たったひとりの友達だった」ですが、猫だけが心を許せる友達っていう人もいるに違いありません。

猫にも人と同じくらいさまざまなキャラがあって、それぞれのキャラに合わせた付き合い方が必要ですが、一つ言えることは犬や猿と違って猫は野生では単独行動なので、ボスとしての飼い主を求めないということです。ボスになるといろいろ指示を出さなければなりませんが、猫に指示を出す飼い方は不適切で、せいぜい示唆くらいがいいと思います。たいていの人は毎日ボスや部下と接して生活しているわけですが、そのようなわずらわしい世界から離れたいという気持ちは多くの人が持っているかもしれません。

猫は飼い主を上司や部下とは認識しませんが、友達としてみてくれるかどうかはそれぞれの猫のキャラや飼い主の飼い方によります。飼い主を親、配偶者、兄弟、隣人、ライバル、敵、などと認識することがあります。きっちり飼い主と認識している頭の良い猫もいるかもしれません。ミーナはずっと私を母親と思っているようです。サラは最初は隣人くらいの認識だったのですが、10年くらいたってから私はボーイフレンドに昇格したような気がします。サラはいつもいろいろ考えて生きている感じがします。たとえばおやつがほしいときは、私をじっとみつめて眼が合うと私を食器のところに連れて行き、じっと空の食器をみつめてから私の方を振り向くのです。すばらしいコミュニケーションのとり方だと思いませんか?

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2020年11月 2日 (月)

続・生物学茶話 117: 水晶体とクリスタリン

光は角膜→前眼房→水晶体→硝子体の順に体内に入射し、網膜によって感知されます(1、図117-1)。光が通過する組織は透明である必要があります。角膜・前眼房・水晶体には血管が配置されていません。このうち前眼房の中身は頻繁に入れ替わっている液体であり、涙とともに角膜や水晶体に酸素や栄養を供給する役割を持っています。水晶体を保持している組織は図117-1では提靱体となっていますが(1)、チン小帯の方がポピュラーな名称でしょう。普通に考えれば、水晶体を周りの筋肉で引っ張れば薄くなって遠くにピントが合い、弛緩すれば分厚くなって近くにピントが合うというメカニズムでよいと思いますが、実際には毛様体筋が収縮すると水晶体が分厚くなり、弛緩すると薄くなります。このメカニズムは毛様体筋とチン小帯の巧妙な配置と連携によって実現されています(2、3)。

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図117-1 ヒト眼球の断面図

硝子体 (vitreous body) 内部は、99%が水分からなる柔らかいゲルのなかにまばらに細胞が浮いているような組織です。血管が配置されていて酸素や栄養分は常時供給されています。タンパク質成分としてはコラーゲン、他に多糖類であるヒアルロン酸(ヒアルロナン)が水分以外の主成分です。コラーゲンは強大な線維を構成する性質があり、硝子体がこれだけ水分の多い組織であるにもかかわらず、ある程度弾力のあるゲルとして形を保持するのに役立っています(4)。水晶体(lens)は硝子体と違って水分は66%程度で、多量のタンパク質を含んでいます。図117-2は アルファtips のサイト(5)の図をもとにした水晶体の断面図です。水晶体はカプセル(前囊と後囊)、上皮細胞、線維細胞からなり、細胞で隙間無く埋められた組織です。

水晶体には血管が配置されていないため、特に線維細胞は周辺の上皮細胞などから栄養の供給を受けなければならず、実質的に普通に生きている細胞のような活動はできません。この細胞は細胞核・ミトコンドリアなどの細胞内構造をほとんど持たず、従ってDNA合成、RNA合成、タンパク質合成などは行わない単なる袋のような細胞です。したがって胎児の頃から死ぬまで、線維細胞は「生かさず殺さず」の状態で何十年も水晶体に蓄積されています。胎児の頃にできた細胞集団が図117-2の核(胎児核)を形成し、生まれた後は皮質(成人核)が形成されます。これらの線維細胞は年月の経過にともなって水分を失い収縮する傾向にあるので、水晶体のサイズをたもつために、上皮細胞が赤道あたりで線維細胞に分化しながら核の一部になることがあります(図117-2)。走査電子顕微鏡による写真がウェブにアップされています(6)。

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図117-2 水晶体の断面図

角膜と水晶体の水以外の主成分はクリスタリンというタンパク質です。英語のスペルは crystallin で、最後にeはつきません。これらの組織は透明ですが、本来発色団を持たないタンパク質の溶液は透明で、例えば卵白アルブミン溶液は透明ですが、加熱して変性すると卵焼きの白味のように不透明になります。しかし水晶体はレンズなので、毛様体筋の収縮に対応して迅速に形を変えなければいけません。したがって水晶体は液体と固体の中間的な弾力を持った組織でなくてはいけません(卵白アルブミンはこのような役割を果たせません)。この特殊な要求を満たすのがクリスタリンです。

クリスタリンを発見したのはウィリアム・ホルトとジン・キノシタです(7、図117-3)。ジン・キノシタは米国の National Eye Insutitute で研究を行なっていた方で、2010年に逝去されたとのことで研究所から弔辞もだされています(8)。しかしウィリアム・ホルトについては消息がわかりませんでした。またクリスタリンを精製して詳しく性質を調べたリチャード・J・アレクサンダーという人物(9)についても情報を得ることが出来ませんでした。彼は当時クリスタリンをBovine Corneal Protein (BCP) 54と命名していました。

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図117-3 クリスタリンの発見

哺乳類の主なクリスタリンはα、β、γ の3種類ですが、図117-4にそれぞれのアミノ酸配列のアラインメントを示しました。この結果からわかるように「α」と「β、γ」は一部分を除いては共通性に乏しく、別のグループのタンパク質と考えられています(10)。クリスタリンはもともと眼のレンズ(水晶体)や角膜のために出現したタンパク質ではなく、たとえばα クリスタリンは分子シャペロンという、他の分子の立体構造を保持したり修復したりする作用を持つ small heat shock protein family という分子群に所属します(11、12)。α クリスタリンはレンズにおいても、β、γ クリスタリンの構造修復に寄与していると考えられています(13)。水晶体の細胞はタンパク質合成の機能を放棄しているので、古いタンパク質を分解して新しいタンパク質で置き換える能力がありません。したがってこの修復機能は大変重要です。それでも80才くらいになると、ほとんどの人はクリスタリンの構造変化(変性)によって透明性が失われ白内障を発症します(14)。

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図117-4 α・β・γクリスタリンのアミノ酸配列のアラインメント

βおよびγクリスタリンはカルシウム結合蛋白質のスーパーファミリーに所属するタンパク質で、多くの細菌もこのタンパク質を持っており、機能は多岐にわたっていると思われますが十分には解明されていないようです(15)。レンズが機能を発揮するためには、高濃度になっても透明性や弾力が維持される必要があり(もちろん結晶化してはいけません)、光を散乱させないで、適度に光を屈折してすばやく網膜にフォーカシングしなければいけません。各クリスタリンの立体構造を図117-5に示しました(16)。αクリスタリンにはAタイプとBタイプが存在し、それぞれαA、αBとよばれています。

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図117-5 α・β・γクリスタリンの立体構造


脊椎動物はαタイプとβタイプのクリスタリンを共通で持っていますが、もうひとつのタイプ(哺乳類ではγ)は種によってさまざまなタイプがみられます(17、18)。一部を図117-6に示しました。ほとんどの生物は酵素など別の役割を果たしていたものを流用しているようです。例えば遺伝子重複が起こったような場合に、片方の遺伝子が眼で発現しやすくなってクリスタリンとして進化したというようなことがあるようです(18)。ヒトの眼について概観したい場合、文献19が発生から白内障までうまくコンパクトにまとめてあるのでお勧めします。

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図117-6 様々な動物におけるクリスタリン

ここでは述べませんでしたが、角膜には水晶体とは異なるクリスタリンが存在し、これも種によって様々なバラエティーがあることが知られています(20)。

参照

1)ウィキペディア 眼: 
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%AE

2)若山眼科 眼の構造とはたらき
https://www.wakayamaganka.jp/archive/3558/

3)ウィキペディア チン小帯:
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%83%B3%E5%B0%8F%E5%B8%AF

4)Toyoaki Matsuura, Shinji Maruoka, Kensuke Kawasaku and Yoshiaki Hara, The structure of Vitreous Body and Hyaluronan(硝子体の構造とピアルロナン)., 日本バイオレオロジー学会誌(B & R)第17巻 第4号 pp.1-10 (2003)

5)αtips 白内障とは:
http://inami.co.jp/inamaga/detail/?contents_type=465&id=1588

6)うしき・たつお 水晶体の構造
http://www.saitama-u.ac.jp/ohnishi/jikken/Lens.htm

7)William S. Holt, Jin H. Kinoshita., The soluble proteins of the bovine cornea., Investigative Ophthalmology & Visual Science., Vol. 12, pp. 114-126. (1973)
http://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&ved=0ahUKEwiQ-qCT3bTcAhUS9bwKHdkfDR8QFggtMAA&url=http%3A%2F%2Fiovs.arvojournals.org%2Fpdfaccess.ashx%3Furl%3D%2Fdata%2Fjournals%2Fiovs%2F932875%2F114.pdf&usg=AOvVaw2Z_aHRKYqdeaIVoEuTvHIm

8)NEI Mourns Jin H. Kinoshita.,
https://nei.nih.gov/news/briefs/kinoshita

9)Richard J. Alexander., Isolation and characterization of BCP 54, the major soluble protein of bovine cornea., Experimental Eye Research.,Vol. 32, Issue 2, pp. 205-216 (1981)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/0014483581900099

10)Wikipedia Crystallin:
https://en.wikipedia.org/wiki/Crystallin

11)Sharma KK1, Kumar RS, Kumar GS, Quinn PT., Synthesis and characterization of a peptide identified as a functional element in alphaA-crystallin. J Biol Chem., vol. 275(6): pp. 3767-3771. (2000)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10660525

12)田中直毅 シャペロンペプチドの開発と応用 -分子シャペロンのミニマル機構に基づくタンパク質凝集抑制ペプチドの設計-  高分子 vol. 56, pp. 178-181 (2007)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kobunshi1952/56/4/56_4_178/_pdf/-char/ja

13)https://en.wikipedia.org/wiki/Crystallin

14)日本白内障学会 水晶体の基礎研究
http://www.jscr.net/activity/page-002.html

15)Shanti Swaroop Srivastava, Amita Mishra, Bal Krishnan, and Yogendra Sharma., Ca2+-binding Motif of βγ-Crystallins., J Biol Chem. vol. 289 (16): pp. 10958–10966. (2014)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4036236/

16)Educational portal of protein data bank.
http://pdb101.rcsb.org/motm/127

17)Tomarev SI, Piatigorsky J., Lens crystallins of invertebrates--diversity and recruitment from detoxification enzymes and novel proteins., Eur J Biochem. vol. 235(3): pp. 449-465. (1996)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8654388

18)森正敬 クリスタリン遺伝子にみる眼の便宜主義
季刊誌「生命誌」通巻12号
https://www.brh.co.jp/publication/journal/012/ss_3.html

19)Joah F. Aliancy and Nick Mamalis, Crystalline Lens and Cataract., Webvision: The Organization of the Retina and Visual System (2017)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK476171/

20)James V. Jester, Corneal Crystallins and the Development of Cellular Transparency., Semin Cell Dev Biol., vo.19(2): pp.82–93. (2008)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2275913/

 

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