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2020年9月29日 (火)

続・生物学茶話 112: 光を感じるタンパク質

私たちの目の網膜にあるロドプシンは19世紀からその存在が知られていましたが、細菌にもロドプシンが存在することが分かったのは20世紀も後半になってからです(1)。ただ色素を持つ微生物が存在することはずっと昔から知られてきました。この項目を執筆するためにいくつかの文献に当たりましたが、複数の文献に聖書の「出エジプト記」からの引用がありました。エジプトに移住して迫害されていたユダヤ人の指導者モーゼは、ファラオやエジプト人に罰を与えるため蛇の杖でナイル川の水面をたたくと、水面はたちまち赤く変わり水は飲めなくなったというお話です。

また遙か昔から塩田で塩を製造していた人々はいるわけで、彼らは飽和に近い塩溶液が赤くなることは知っていました。たとえば1596年に出版された李時珍の「本草綱目」にも記載があるそうです(2)。塩漬けした魚に赤い斑点(ピンクアイ)が現れることも漁業関係者にはよくしられていました。このピンクアイの原因が微生物であることは1922年にハリソンとケネディーによって解明されましたが、彼らはこの微生物が古細菌だとは認識していませんでした。20世紀の中頃にこれが古細菌に属する高度好塩菌であることがわかり、Elazari-Volcaniによって Halobacterium salinarum という学名が与えられました(3)。図112-1はサンフランシスコ湾近傍の赤く着色した塩湖です(写真は参照文献4より)。

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図112-1 高度好塩古細菌によって赤く着色したサンフランシスコ湾の塩湖

ワルサー・ステケニウス(Walther Stoeckenius)は哺乳類の細胞を使って、電子顕微鏡などの手法で細胞膜の構造を調べていたのですが、なかなか仕事が進まないのに業を煮やして、研究材料をこの赤い細胞膜を持った高度好塩菌 Halobacterium halobium に変更し、化学者のディーター・エスターヘルト(Dieter Oesterhelt)と共に仕事を進めることにしました(図112-2)。この決断はめざましい成果をもたらしました。

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図112-2 ステケニウスとエスターヘルト

哺乳類の細胞から純度の高い細胞膜画分を得ることは当時なかなか困難な作業でしたが、高度好塩菌は塩濃度を下げると簡単に崩壊し、なにしろ細胞膜に色が付いているというわけですから、ショ糖密度勾配法などで分画することによって紫色の膜分画が容易に精製されます(図112-3)。この膜分画に含まれるタンパク質は、その大部分が私たちの目の網膜にあるロドプシンと類似した1種類のタンパク質でした(5)。

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図112-3 高度好塩菌の細胞膜画分の精製 

(s://ars.els-cdn.com/content/image/1-s2.0-S0076687915003493-f07-01-9780128030486.jpg)

このタンパク質は真核生物のロドプシンと同様、オプシン様タンパク質と補因子(発色団)であるレチナールからなっていますが、それはロドプシンに含まれる11-シス-レチナールではなく、オールトランスレチナールでした(図112-4)。エスターヘルトとステケニウスはこのタンパク質をバクテリオロドプシンと名付けました(6)。ロドプシンとバクテリオロドプシンは進化的に無関係とされていますが、バクテリオロドプシンは古細菌以外に系統的に遠く離れた細菌や真核生物にもみられており、水平伝播した可能性もあるのでそう簡単には結論できないともいわれています(7)。特に数千種類におよぶ海洋性真正細菌がプロテオロドプシンとよばれる類似タンパク質を持っていることから(8)、おそらく真正細菌から分岐してから間もない当時の多くの古細菌もロドプシン系のタンパク質を持っており、分子の大部分を構成する7本のα-ヘリックスが膜を貫通するという共通の構造が存在していたはずで、両者が進化的に無関係であるとは信じがたいことです。

おそらく真核生物の祖先の古細菌や高度好塩菌は海洋性真正細菌のなかから特殊に分化したグループなのでしょう(9)。真核生物と近い古細菌を調べれば、より私たちのロドプシンに近いものが見つかるのではないでしょうか? なにしろバクテリオロドプシンは分子量が26,000くらいしかなくて、その中で7本も膜を貫通するα-ヘリックスがあるわけですから、その他の部分はごくわずかしかありません。α-ヘリックスを構成するアミノ酸はどのアミノ酸でも良いわけではなく偏りがありますが、逆にα-ヘリックスさえできればどんなアミノ酸の並びでも良い部位が多いとも考えられます。

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図112-4 光照射によるレチナールの分子構造の変化

細菌や古細菌には神経も脳もありません。従って視覚によって周辺にある物の形を認識しているわけではありません。ではバクテリオロドプシンはどのような役割を果たしているのでしょうか? エスターヘルトとステケニウスは早くも1973年の論文で、光照射によってこのタンパク質が構造変化を起こし、プロトンを細胞内から細胞外へ排出するプロトンポンプの役割を果たしていることを示唆するデータを発表しています(6、図112-5)。この構造変化のきっかけとなるのは、光照射によってタンパク質内のオールトランスレチナールが13-シス-レチナールに変化することです(8、図112-4)。ちなみに視物質のロドプシンでは光照射によって11-シス-レチナールがオールトランスレチナールに変化します(図112-4)。細胞内のプロトン濃度が低下すると、細胞内外のプロトン濃度差を利用して、細胞膜のATP合成酵素がATPを合成することができます(図112-5)。すなわちバクテリオロドプシンを持つ細菌・古細菌は光照射によって化学エネルギーを生成することができるわけです。ただシアノバクテリアなどの場合のように二酸化炭素の固定とはカップリングしていないので、光合成細菌とは呼ばれません。光栄養細菌というジャンルにはいるようです。

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図112-5 バクテリオロドプシンはプロトンポンプとして機能する

その後の研究で細菌や古細菌のロドプシン系タンパク質には非常に多くの種類があり、プロトンポンプ以外にもナトリウムポンプや塩素ポンプをはじめその機能は驚くほど多岐にわたっていることが明らかになりました(10)。このことからお気づきのように、ある種の細菌のロドプシンを真核生物の細胞膜に発現させると、光照射によって電気信号を発生させ、神経を制御できるかもしれません。この方面を含めて細菌のロドプシンは現在も活発に研究されています(10、11)。しかしこの種の研究は使いようによっては極めて危険であると考えられます。光によって外部から人の行動をコントロールできるわけですから、科学を使った催眠術・マインドコントロールのようなもので、研究は慎重に進められなければなりません。

高度好塩菌の膜タンパク質の研究などというのは、奇妙な趣味を持った科学者達の遊戯だと思われるかもしれませんが、実はこの研究が細胞膜機能研究の革命的進展に直接つながることになりました。このようなことは科学の世界ではよくあることです。ヘンダーソンとアンウィン(図112-6)はバクテリオロドプシンが細胞膜の中にどのような形で組み込まれているかを解明しました(12)。7本のα-ヘリックスがそれぞれのつなぎ目で折れ曲がり、7回細胞膜を貫通する形のこのタンパク質がトライマーの形で存在していることがわかったのですが(図112-7)、このことがこの種の膜貫通タンパク質が外界の刺激をうけてコンフォーメーションを変え、細胞内にシグナルを送るというユニバーサルなメカニズムを解明する端緒となり、その後の生物学の発展に及ぼした功績は計り知れません。リチャード・ヘンダーソンは今年(2020年)亡くなりましたが、2017年にノーベル化学賞を受賞しています。ナイジェル・アンウィンはスクリプス研究所の名誉教授で存命です。

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図112-6 ヘンダーソンとアンウィン


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図112-7 バクテリオロドプシンの立体構造と細胞膜における配置

 

参照

1)ウィキペディア: 細菌ロドプシン
https://en.wikipedia.org/wiki/Microbial_rhodopsin

2)ウィキペディア: 高度好塩菌
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E5%BA%A6%E5%A5%BD%E5%A1%A9%E8%8F%8C

3)NCBI Taxonomy Browser txid2242, Halobacterium salinarum
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/Taxonomy/Browser/wwwtax.cgi?mode=info&id=2242

4)Wikipedia: Microbial rhodopsin
https://en.wikipedia.org/wiki/Microbial_rhodopsin#/media/File:Salt_ponds_SF_Bay_(dro!d).jpg

5)Oesterhelt D. and Stoeckenius W., Rhodopsin-like protein from the purple membrane of Halobacterium halobium., Nature New Biology, vol.233, pp:149-152 (1971)

6)Oesterhelt D. and Stoeckenius W., Functions of a new photoreceptor membrane., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.70, No.10, pp.2853-2857 (1973)

7)Grote M., and O'Malley M. A., Enlightening the life sciences: the history of halobacterial and microbial rhodopsin research., FEMS Microbiol Rev vol.35, 1082-1099 (2011)

8)神取秀樹 ロドプシンの分子科学 Molecular Science of Rhodopsins
MOLECULAR SCIENCE 5, A0043 (2011)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/molsci/5/1/5_1_A0043/_pdf

9)好塩古細菌型ハロロドプシンを持つ海洋細菌の発見
東京大学大気海洋研究所 News
https://genedynamics.aori.u-tokyo.ac.jp/%E5%A5%BD%E5%A1%A9%E5%8F%A4%E7%B4%B0%E8%8F%8C%E5%9E%8B%E3%83%8F%E3%83%AD%E3%83%AD%E3%83%89%E3%83%97%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%92%E6%8C%81%E3%81%A4%E6%B5%B7%E6%B4%8B/

10)東京大学物性研究所 井上研究室HP
https://inoue.issp.u-tokyo.ac.jp/research.html

11)脳科学辞典: 光遺伝学
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E5%85%89%E9%81%BA%E4%BC%9D%E5%AD%A6#.E3.83.8F.E3.83.AD.E3.83.AD.E3.83.89.E3.83.97.E3.82.B7.

12)R. Henderson & P. N. T. Unwin, Three-dimensional model of purple membrane obtained by electron microscopy.,
Nature vol.257, pp.28–32 (1975)
https://www.nature.com/articles/257028a0

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2020年9月28日 (月)

バルサ 新シーズン開幕

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リーガ・エスパニョーラは今シーズンも無観客ではじまりました。日本の約10倍の感染者が日々でているので、これはやむを得ないでしょう。その代わり異常に華やかな花火が打ち上げられました。

バルサの緒戦相手はビジャレアル。久保は先発ならずベンチで観戦。

新生バルサの戦術やいかにと見ていたら、コウチーニョがコントロールするチームになりました。メッシをダミーにして、左サイドのアルバ&アンスーにパスを出すという作戦がはまってあっという間に3点とってしまい、オウンゴールのおまけまでつきました。

前半右サイドのセルジ、グリーズマン、メッシはほとんど機能せず。ほぼ片肺飛行でした。
フレンキーがビルドアップと守備の仕事に専念していたので、守備は安定しました。これは今シーズンの肝でしょう。ブスケツはちょっとパフォーマンスが落ちていて、シーズンが進むと問題が出てきそうです。

後半は多分指示が出て右からも攻めていましたが、ダメでした。やはりデンベレかトリンカオを使ってみたい。右SBも新戦力を使いたいところです。後半はアルバがバテてしまって、左サイドも不発でした。

前シーズンの終盤からみると、見違えるようにレベルアップしたバルサでとりあえず安心しました。

久保は終盤に出場しましたが、特に見せ場もなく終了しました。

1.

声を あげよう

われら ブラウグラナ

地の涯からも 集いし友よ

掲げる旗のもと 拳(こぶし)を合わせよう

ブラウグラナは 嵐を呼ぶ

叫べ われらの名

バルサ バルサ バルサ

2.

嬉しい日 悲しい日

どんなときも

心ひとつに 合わせし友よ

掲げる旗のもと 勝利を信じよう

ブラウグラナは 嵐を呼ぶ

叫べ われらの名

バルサ バルサ バルサ

 

プロが歌うイムノ(バルサアンセム) ベトかっこいい

https://www.youtube.com/watch?v=Vm_CP7L1UxY

https://www.youtube.com/watch?v=istGQ0xTCms

https://www.youtube.com/watch?v=QS3Um8Zekw4

 

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2020年9月26日 (土)

バルサ 遅ればせながらシーズン開幕 行く人来る人

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いよいよバルサの新シーズンが日曜日にはじまります。コロナ禍もさることながら、プレシーズンは事務能力に欠けたバルメトウ会長の失態が続いて大混乱に陥ったバルサです。直前までドタバタ劇はつづきましたが、どうにか開幕までこぎつけました。

バルサ行く人来る人

行く人:

ネルソン・セメド
→プレミアリーグ・ウルヴァーハンプトン・ワンダラーズ

ルイス・スアレス
→アトレチコ・マドリー

アルトゥーロ・ビダル
→セリエA・インテル・ミラノ

イヴァン・ラキティッチ
→セヴィージャ

アルトゥール・メロ
→セリエA・ユベントス


来る人:

フランシスコ・トリンコン(トリンカオ)
←ポルトガルリーグ・SCブラガ
今シーズン獲得した選手の中で最も期待されている選手でしょう。6000万ユーロオファーのプレミア入りを断って、3100万ユーロのバルサにきてくれました。

ミラレム・ピャニッチ
←セリエA・ユベントス
若くて有能なアルトゥールを放出して、もう峠を越えたベテランを獲得するとは誰もが不可解だと思うわけですが、どうも会計帳簿上の理由でこんな理不尽なトレードが行われたようです。

ペドリ
←ラス・パルマス
まだ17才の攻撃的MF。海のものとも山のものとも判断がつきません。

フィリペ・コウチーニョ
←FCバイエルン(レンタルから復帰)
メッシがいたために実力を発揮できなかった選手。メッシがあと1年いることになったバルサでどうか?

セルジーニョ・デスト
←アヤックス
左右どちらのSBも可

フアン・ミランダ
←ブンデス・シャルケ04
シャルケとは2年レンタル契約でしたが、急遽1年に短縮することで合意しました


予定外でメッシがあと1年バルサでプレイすることになり、メッシなき攻撃陣をどう立て直すかというミッションがグダグダになりました。さてどうまとめるかというところがクーマン最大の課題となりましたが、もっと直接的な危機はCBにあります。攻撃陣は余るくらい選手がいるのですが、CBとボランチは経験豊富な選手が不足しています。ピケもウムティティも峠を越えて故障がちで、ラングレしかいないという状況が発生する可能性が高いと思われ、そうなったらどうするのでしょう。ブスケツをCBで使うのでしょうか? そうするとボランチが不安になります。トディボはレンタルで出したので、あとはトップチームでの経験が少ないアラウホくらいしかいません。徹底したポゼッションサッカーをやっていた頃はCBは暇でしたが、クーマンはそのような作戦はとらないと思います。

バルサ公式サイト
https://www.fcbarcelona.jp/ja/



 

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2020年9月25日 (金)

どうして日本で新型コロナワクチンが製造できないのか?

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世界各国が新型コロナワクチンの製造にしのぎを削っています。そんな中で日本はどこからいくつ買うとかの話ばかりで、国内の製薬会社が開発しているという話はとんと聞きません。どうしてでしょうか?

一昔前なら、日本にはミドリ十字とか化血研とかいうワクチン製造を行う大手企業があり、このような会社が現存していれば、当然新型コロナワクチンの製造に着手していたはずです。ミドリ十字がどうなったか調べてみると、この会社は「薬害エイズ事件」を引き起こして多数のエイズ患者をつくったことでボロボロになり、複雑な経緯を経て現在は従業員を日本血液製剤機構に移転して消滅しています(1)。日本血液製剤機構はどんなことをやっているかというと、日本赤十字が集めた血液を受け取って血液製剤(アルブミン、グロブリン、アンチトロンビンなど)を製造しています。とてもコロナワクチンを製造するような余力はなさそうです。

一方化血研(化学及血清療法研究所)は2015年に法令違反の製造を行ったとして摘発されて、やはりボロボロになった上に熊本大地震で大きな損害を被り、現在はKMバイオロジクスという別会社に仕事を譲渡したそうです(2)。

この様な状況になってしまったので、ワクチン製造の空白状況が発生していたのです。こんな医療危機の状態だったので、政府はワクチン製造のためのなんらかの手(たとえば日本血液製剤機構にてこ入れするとか)を打っておくべきだったのです。日本の大手製薬企業はワクチン製造という「やばい」商売には手をつけたくない会社ばかりで役に立ちません。結局新型コロナワクチンに関心を持っているのは大学の研究所や公的研究機関、ベンチャー企業ばかりで、たとえ研究がうまくいっても、とても大量供給できるような算段ができません(3、4)。

だから結局外国頼みという情けない状況を招きました。無能な政治家が政治をやっているとこんなことになってしまうのです。ワクチンだけじゃありませんよ。食料は3割しかできませんし、衣料も中国やバングラ頼み、コロナであきらかになったのはトイレやキッチンが輸入なので国産では家もできないことです。日本人の多数が支持している政府というのはこのような惨状を放置して平然としている人々なのです。

1)ミドリ十字
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%89%E3%83%AA%E5%8D%81%E5%AD%97

2)化血研
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%96%E5%AD%A6%E5%8F%8A%E8%A1%80%E6%B8%85%E7%99%82%E6%B3%95%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%89%80

3)「コロナワクチン」日本が圧倒的に出遅れる事情
https://toyokeizai.net/articles/-/346439

4)日本のワクチン事情をご存じですか?
https://kofu.hosp.go.jp/news/cnt0_000091.html

(Photo by D. Henrioud)






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2020年9月24日 (木)

野党がやるべきこと

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管理貿易や企業増税は聞こえがわるいので、れいわ新撰組が言っている消費税減税で野党が結集するべしというのはよいセンスだと思います。しかし管理貿易と企業増税をやらないで、消費税減税だけで国家を再建できるというのは夢物語だと思います。企業増税して自由貿易を続ければ、日本企業は外国企業に敗北して壊滅するので、企業増税と管理貿易はセットです。

自民党国会議員の松川るいがツイートで大坂なおみのマスクメッセージを賞賛したら、警察を支持するという批判が殺到して謝罪したという話で、私もこれは確認しました。「右」の人々の頭の中がよくわかる話です。これは米国でも同じで、black lives matter 運動は白人に恐怖感を与え、トランプ支持が復活して政権継続の可能性が高くなったと思います。松川るいは謝罪してもツイートを削除してはいません。なかなか骨のある人物とみました。

自民党は内部に大きな矛盾があります。グローバル自由貿易を支持していながら、国粋主義的な勢力がベースにあります。わけがわからないと思っているうちに、食料や水までグローバル企業に支配される政策を進める自民党は不思議な政党です。

 

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2020年9月21日 (月)

サラとミーナ234: 衣替えの季節

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どこでも爆睡するようになったサラ
昔は人にかくれて寝ていたのですが・・・


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サラは体をさわっても年取ったという感触がありません
まだまだ若い15才


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ミーナは皮膚をさわると明らかに年齢を感じますが、メンタルはまったく子供のままです。

最近ミーナがベッドシーツに潜って眠るようになったので、秋を感じます。
今日ちょっと早いですが私は半袖・短パンを一着づつ残して衣替えを決行しました。

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2020年9月19日 (土)

まきちゃんぐ生誕祭2020

まきちゃんぐ生誕祭『だって、女に生まれたの。2020』
9月19日生まれだそうですが、ライブ(配信)は9月18日
(ちなみに私と同じ乙女座)
33才だそうで、おめでとうございます。

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場所は王子ミュージックラウンジ。
共演者は伊藤ハルトシさん。ギターとチェロの達人で、1年前にブッキングしてようやく共演が実現したそうです。

自作曲を歌うソウルシンガー&ピアニストのまきちゃんぐです。
その圧倒的な歌唱とコンポーザーとしての天賦の才で日本の音楽史に名を刻む人だと信じています。

セットリスト

1.誕生
2.愛の雫
3.鋼の心
4.レディ・コイヌール
5.満海

6.(新曲)
何か新しい境地を開拓したような感じ。口笛で終わるのが印象的です。
素晴らしい曲ですよ ホント。

7.シャドウ
8.風が強い日の旗は美しい

9.(新曲 二〇二〇?)
めずらしくギターを手に取って歌う。

ここで送信が1分半ほどとぎれる。配信はまだ怖いところがあります。

10.光
この曲だけは楽器を持たずに歌う。やはりニュアンスが豊富で白眉。ハルトシのギターも最高。

11.ジンジャエールで乾杯

12.海月
私がとても好きな曲です。素晴らしい歌と演奏でした✨

13.花の種まき

人でも猫でも犬でも、生きていくための最低限の行為についで必要なのはイベントです。
音響はもちろん、6台のカメラを使って映像も美しく、テレビより精細なくらいでした。
いままでのライブのなかでもベストのひとつじゃないかな。
コロナ自粛の中でこのような素晴らしいイベントを開催してくれたまきちゃんぐとハルトシさんに感謝します。

まきちゃんぐオフィシャル

https://twitter.com/makichang_info

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2020年9月16日 (水)

続・生物学茶話111: クオラムセンシング

細菌は単独で行動する生物とされてきましたが、昔からそうではない場合もあることは知られてきました。たとえばいつもは歯ブラシがあたらないところに、たまたまあたったら赤みがかったフィルム状のシート(歯垢)がとれきたということは多くの人が経験のあることではないでしょうか? それはバイオフィルムと言われるものの一種で、歯周病菌が多糖類を分泌してその中で高密度に増殖している集合体です。バイオフィルムは病院で使われるカテーテルにも発生しますし(1、図111-1)、台所や自然界でも発生します。

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図111-1「カテーテルに生成した黄色ブドウ球菌のバイオフィルム」 走査電子顕微鏡による画像(ウィキペディアより)

バイオフィルムに細菌が住み着くと、自分が分泌した多糖類のシートにくっついて自由に泳げなくなるので(図111-1)、自分でエサを探しに行かなくても自動的に周囲に栄養物質が供給されるような場所でないといけません。このような場所にいったんバイオフィルムが形成されると、他種の細菌なども住み着いて一種の共同体が形成されます。それぞれの細菌が放出する化学物質がかなり濃厚な状態で他の細菌に受け取られる状況が生まれ、相互に物質代謝や行動に影響を与えるような状況が発生します(1、2)。

このような状況を発生させるメカニズムをクオラムセンシングといいます。クオラム(quorum)は議会用語で定足数という意味ですが、一定の領域に定足数以上の数の細菌が集合すると発生する現象という意味です。クオラムセンシングはバイオフィルムができなくても、細菌の密度が高まれば発動します(3、4)。このような現象は古細菌でも(5)、真核生物でも確認されていますし(6)、クオラムセンシングとはやや意味合いが異なりますが、誰でも知っているフェロモンは、クオラムセンシングを誘導する物質であるクオルモンの発展型とも言えます。

クオルモン(オートインデューサーとも言います)は走化性とは異なる細菌のケミカルセンシングの例であり、もうひとつの嗅覚の源泉とも言えるでしょう。クオラムセンシングが最初に注目されたのはある種の海洋性細菌(Vibrio fischeriなど)がコロニーを形成したときに発光するという現象です。刺身用のイカを買ってきて塩水に浸し一昼夜放置すると、表面にくっついていた細菌が増殖してコロニーを形成し発光します(7、図111-2)。このような細菌は深海の魚類などにとってはエサを誘引する上で重宝な存在であり、細菌が住みやすい場所を提供するべく一部の深海魚類が進化した可能性があります。

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図111-2 いか・うに・いくら丼の発光(光っているのはいか、ウィキペディアより)

発光細菌が合成するクオルモンは種によって異なりますが、アシルホモセリンラクトン系の物質がよく使われるようです。たとえば Vibrio fischeri では N-(3-oxohexanoyl-L-homoserine lactone または autoinducer(AI)-1(8、図111-3)が使われます。このクオルモンは細胞膜を拡散によって通過し、受容体を介することなく、他の細胞の細胞質に侵入してルシフェラーゼの合成を促進します。しかし近縁の Vibrio harveyi では4,5-dihydroxy-2,3-pentanedione(DPD)にホウ素分子が取り込まれたフラン系分子である autoinducer(AI)-2 がクオルモンとして使われており(9)、この場合放出された分子は細胞膜のLuxP/LuxQという受容体で認識され、細胞質内情報伝達系を介してルシフェラーゼの合成を促進することになります(10)。このようなクオルモンは異種の細菌によっても放出されることがあり(10)、細菌がヘテロな集合体を形成し、そこで異種による共同作業が行われると考えてもよいと思われます。クオルモンはこの2種(図111-3)に限らず多くの種類があり、様々な細菌が放出し、受容し、遺伝子発現を転換することが知られています。

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図111-3 クオルモンの分子構造の例

菌が高密度になりクオルモンが認識されると、情報伝達系によって LuxO という因子が脱リン酸化され、この結果転写因子 LuxR の発現量が増えてルシフェラーゼが誘導されます(10)。

クオラムセンシングは発光細菌のような特殊な細菌だけが持っているシステムではなく、細菌集団が別の細菌を寄せ付けないための毒素の合成であるとか、細胞増殖のポジティブフィードバックやバイオフィルム形成とか、胞子形成とかさまざまな場面で多くの種が普通に使っているシステムであることがわかってきています(4、5、10)。私が驚いたのは、フレデリック・グリフィスが発見した肺炎菌の形質転換(11)、すなわち菌から菌へのDNAの受け渡しという現象にクオラムセンシングのシステムが関与しているという報告です(10、12)。このクオルモンは細胞膜のヒスチジンキナーゼComDと細胞内レスポンスレギュレーターComEによって感知および情報伝達が行なわれ、最終的にDNAの取り込みに働く遺伝子群の発現を誘導します。

乳酸菌が体に良いというのも、クオルモンが悪玉大腸菌の遺伝子発現に干渉するためという報告もあります(13)。大毛淑恵・為我井秀行は面白い表現をしています(14)・・・「同種の細菌であっても受容できるホモセリンラクトンが異なる点だ。さまざまな長さのアシル鎖を持つホモセリンラクトンを使い分けることで、同種間で“内緒話”が行われているかのようである。また、その内緒話を妨げる物質を出す細菌もいるため,細菌の世界にも何らかのコミュニティーが存在するようだ。」。そしてさらに植物の中にはこのホモセリンラクトンをGタンパク質系受容体で感知して、土の環境を制御している種があるようです(14)。結局のところ私たちが持っている情報伝達系、つまり情報伝達因子を細胞膜の受容体で感知し、受容体に結合している細胞質のタンパク質のリン酸化や脱リン酸化を介して転写因子を制御し、目的の遺伝子発現の制御を行うというシステムとさして変わらないシステムはすでに細菌が発明していて、古細菌や真核生物はそれを受け継いだということは明らかです。

参照

1)ウィキペディア: バイオフィルム
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%83%A0

2)ウィキペディア: クオラムセンシング
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%82%AA%E3%83%A9%E3%83%A0%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%B0

3)Fuqua WC, Winans SC, Greenberg EP., Quorumsensing in bacteria: the LuxR-LuxI family of cell densityresponsive
transcriptional regulators. J Bacteriol vol.176, pp.269-275 (1994)

4)Kai Papenfort, and Bonnie Bassler., Quorum-Sensing Signal-Response Systems in Gram-Negative Bacteria., Nat Rev Microbiol., vol.14(9), pp.576-588 (2016)
doi:10.1038/nrmicro.2016.89.

5)Amandeep Kaur1, Neena Capalash and Prince Sharma., Quorum sensing in thermophiles:prevalence of autoinducer-2 system., BMC Microbiology vol.18, pp.62-79 (2018)
https://doi.org/10.1186/s12866-018-1204-x

6)Sajad Ahmad Paddera, Rajendra Prasadb, Abdul Haseeb Shaha., Quorum sensing: A less known mode of communication among fungi., Microbiological Research vol.210, pp.51-58 (2018)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0944501318300363?via%3Dihub

7)ウィキペディア: 発光バクテリア
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%99%BA%E5%85%89%E3%83%90%E3%82%AF%E3%83%86%E3%83%AA%E3%82%A2

8)Eberhard A. et al., Structural identification of autoinducer of Photobacterium fischeri luciferase., Biochemistry vol.20, pp.2444-2449 (1981) doi: 10.1021/bi00512a013.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7236614/

9)Chen X et al., Structural identificationof a bacterial quorum-sensing signal containing boron. Nature vol.415, pp.545–549. (2002)

10)中山二郎 細菌の世界における細胞間ケミカルコミュニケーションとその分子メカニズム 腸内細菌学雑誌 vol.25, pp.221-234 (2011)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jim/25/4/25_4_221/_pdf/-char/ja

11)生物学茶話@渋めのダージリンはいかが41: 遺伝情報を担う物質は何か?
http://morph.way-nifty.com/lecture/2016/10/post-0804.html

12)Cheng Q, Campbell EA, Naughton AM, Johnson S, Masure HR. The com locus controls genetic transformation
in Streptococcus pneumoniae. Mol Microbiol vol.23, pp.683–692. (1997)

13)Jelcic I, Hufner E, Schmidt H, Hertel C., Repressionof the locus of the enterocyte effacement-encoded regulator of gene transcription of Escherichia coli O157:H7 by Lactobacillus reuteri culture supernatants is LuxS and strain dependent. Appl Environ Microbiol vol.74, pp.3310–3314. (2008)

14)大毛淑恵、為我井秀行., 日常にシンデレラ 生物工学 vol.90, p.136 (2020)
https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9003/9003_biomedia_5.pdf

 

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2020年9月14日 (月)

福山雅治のジェットストリーム

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私は寝る前にFM東京のジェットストリームを聴く習慣があるのですが、今春からは福山雅治さんが案内役になっています。この番組は50年以上続いているという超長寿番組です。

福山雅治さんはシンガーソングライターとしても、俳優としても超一流の人で、リスペクトしていますが、この番組だけはどうしても違和感があります。もう半年以上も聴いていますが、全くフィット感がありません。別に選曲に文句があるわけじゃなくて、彼の語り口に不自然さが感じられるのがねえ、うーん。私生活でも仕事でもこういうしゃべり方は決してしない方だからだと思います。もう聴くのやめようかと思うのですが、かわりの番組もないし困りました。

PS なんでジェッッットストリームなの?

 

 

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2020年9月12日 (土)

大野-都響: シューマン交響曲第3番「ライン」

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土砂降りの中を駅まで行って、延々と電車に乗りなんとか溜池山王駅にたどり着きました。エスカレーターを上がると小降りになっていました。ゆっくりと歩いてサントリーホールに。今日は都響とあって、かなり厳しくコロナ対策をやっていました。消毒・検温はもちろん、チケットもぎりは自分でやる、パンフレットは配らない、一人おきの着席はもちろん、前3列は客を入れない、ブロックごとの退出などの対策をとっていました。普段の定期演奏会と違って、お客の出席率も非常によかったと思います。

都響スペシャル2020(9/12)です。外国の指揮者やソリストはまだまだ来れないので、大野が指揮、定年退職の三界と現役鈴木(学)がソリストです。コンマスは四方さん、サイドはマキロン・・・およよ~ 暇だったとはいえこれはまずいんじゃない。鷹栖はショートヘアにして大幅なイメチェン。相変わらず惚れ惚れする演奏です。その他皆さん元気そうでなによりでした。

半年以上都響の演奏会には行ってなかったので、とても懐かしいサウンドです。リンツはちょっと優雅さがない演奏でしたが、まあ元気があっていいか。ブルッフはおそらく入念にリハをやったせいか、ニュアンスも豊富でソリストもオケも文句なしの演奏でした。演奏会で頻繁にはとりあげられませんが、あまりドイツを感じさせないタイプの親しみやすいメロディーの曲です。

シューマンはリキの入った素晴らしい演奏でした。こういうロマン派の香りが吹き上がるような曲は都響に向いていると思いますね。ミューザ川崎のタコ5以来の会心の演奏じゃないかな? エキストラの方のおかげかもしれませんが今日の金管、特にホルンの音には感動しました。

この幸せが続けばいいのですが、なんと新型コロナが第3波の兆しがあって、非常にがっかりしています。これでは都響もどう対処すれば良いのか困ると思います。

9/09(水) 東京+149 (先週水曜+141)+8
9/10(木) 東京+276 (先週木曜+211)+65
9/11(金) 東京+187 (先週金曜+136)+51
9/12(土) 東京+226 (先週土曜+181)+45

ブルッフ クラリネットとヴィオラのための二重協奏曲
https://www.youtube.com/watch?v=ciaSeohiZ28

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2020年9月11日 (金)

菅義偉

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菅義偉の天敵=望月衣塑子という人はあまり接して気分の良い人ではないと思ったのですが、「新聞記者」という映画が大変面白かったのでこの本も読んでみました。読者をひきこむような筆力には不満がありますが、安倍政権-特にそのなかでも菅義偉についてはどういう人なのかよくわかりました。

お金を出してまでの関心はないという人も、なにしろ次期総理といわれる人ですから、菅義偉がどんな人物かというのは知っておいて損はないと思います。下の記事をみればよくわかります。週刊朝日が全文をオープンにしています。

「菅官房長官に意見して“左遷”された元総務官僚が実名告発・・・」

https://dot.asahi.com/wa/2020091000004.html?page=1

 

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2020年9月 9日 (水)

続・生物学茶話 110: 匂いを嗅ぐことの源流・・・大腸菌の場合

おそらく地球に登場した最初期の生物は環境からの刺激を何も感じないで、まったく孤独に生きていたと思います。次の世代の生物はなんらかの環境センサーを獲得したと思われますが、その代表的なものはケミカルセンサーだったでしょう。これはヒトでも味覚と嗅覚という形で受け継がれています。味覚は甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の5種類のセンサーに基づくとされていますが、私は信じません。もっと多くのセンサーは間違いなくあると思います。たとえば白いご飯を美味しいと思う感覚はどう説明するのでしょう。しかも妊婦の話では白いご飯の匂いをかぐと吐きそうになる人もいるそうです(忌避行動なのか?)。それはさておき、桜チップでスモークした鮭の味とか、ハモン・セラーノの味とか、メロンの味とか、生ネギの味とか、脂肪の味とか、もっと様々なセンサーがあると思います。同じケミカルセンサーでも嗅覚は数百種類のセンサーの存在が認められています。私たちはバラの香りと菊の香りを嗅ぎ分けることができます。ラットは1000種類以上の匂いを嗅ぎ分けられるそうです。

では大腸菌は環境の何かを感じることができるのかと言えば、それはイエスです。彼らは少なくとも数種類の環境センサーをもっており、 Tar:アスパラギン酸とマルトース、Tsr:セリン、Trg:リボースとガラクトース、Tap:ジペプチドなど様々な栄養物質を感知して、それらに接近することができます。また酸化還元電位を感知して酸素に接近することもできます(1、3、11)。これらの研究に先鞭をつけたのがジュリアス・アドラーです。ジュリアス・アドラー(図110-1)は1930年に南ドイツに生まれましたが、8才の時に渡米し後に帰化して米国人となりました。ウィスコンシン大学で学位を得た後、ポストドクをDNAポリメラーゼでノーベル賞を受賞したアーサー・コーンバーグのもとで経験し、その後ウィスコンシン大学に戻ってずっと同大学で研究を行いました。

アドラーは子供の頃、蝶が特定の植物に卵を産んで幼虫の時期を過ごすのは、その植物が発出する化学物質を検知することによると考え、そのまま人生をケミカルセンサーの研究に捧げました。ただし実験動物は蝶ではなく、コーンバーグの研究室でキャリアを積んだせいか、大腸菌を使って研究を進めました。細菌の走化性(ケモタキシス)の測定法はドイツの植物学者ペッファーによって19世紀に確立されていました。それはキャピラリーの先に少量の溶液を吸い込ませて、それを細菌のいるシャーレに浸して細菌が集まってくるのを見るという方法です(2、図110-1)。アドラーらはさまざまな突然変異体を使うことができる大腸菌を用いて、研究を飛躍的に進めることができました。初期の研究全般についてはヘイゼルバウアーによってレビューされています(3)。すべての出発点となる研究は1969年にサイエンスに出版された論文で、ここでガラクトースあるいはそのアナログ分子に大腸菌は走化性を示すこと、その行動はそれらの分子が代謝されたり細胞にとりこまれるという経過を経ないで行われることが示されました(4)。

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図110-1 ペッファーとアドラー 下図は誘引物質に集まる細菌

アドラー研では当時学部学生だった Mel DePamphilis がひとつの重要な発見をしました。彼は鞭毛の電子顕微鏡観察を行ない、その基部に4つのリングがあることをみつけました(5)。これは鞭毛を動かすモーターの実体であることが後に明らかとなりました(6、7、図110-2)。これが最初にみつかった生物モーターで、細菌やミトコンドリアの細胞膜に埋め込まれたATP合成酵素は2番目に見つかった生物モーターです。後者はすでに生物学茶話72でとりあげました。興味のある方はご覧下さい(8)。鞭毛モーターの模式図は、ウィキペディアの図(6)を図110-2に示しました。

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図110-2 細菌鞭毛の模式図 (a) 全体像 (b) 基部の3次元模型

細菌はこの鞭毛を動かして移動するわけですが、その動かし方には2つの方法があって、ひとつはモーターを細胞の外側から見て反時計回りに動かす場合で、このとき数本の鞭毛はなぜか一方向にまとまるので細菌は直線的に進むことができます。これで数秒から数分間は進行可能です。これをスムーススイミングといいます。いまひとつはモーターを時計回りに動かす場合で、このときは鞭毛はランダムな形をとるので動きの方向は定まりません。この動きはタンブリングと言って、数秒くらいしかできません(9、図110-3)。

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図110-3 スムーススイミングとタンブリング

細菌はエサ(例えばセリン)を受容体で感知しますが、ある時点での濃度を記憶して、しばらくスイミングしてその時の濃度が濃くなったか薄くなったか判断し、濃くなっていればスイミング、薄くなっていればタンブリングするという方法でエサに接近します。忌避すべき物質がある場合は、その逆になります(9-11、図110-4)。細菌は小さいので体の部域による濃度差は検知できないということになっているようですが、それはどうでしょうか? 急激な濃度差があればわかるかもしれません。いずれにしてもスイミングしかできないミュータントは走化性を持つことができませんが、それは彼らがタンブリングによって方向転換できず直線的にしか進行できないからでしょう。もちろんタンブリングしかできないミュータントも接近行動ができないので走化性は持てません。

このような行動は極めて非効率のように思われますが、たとえば私たちが目隠しされて匂いでカレーライスに近づこうとしたとします。匂いのある方に進むわけですが、それは目的のカレーライスに0度の角度でまっすぐに進んでいるとは限りません。30度の角度で進むといつか近くを通り過ぎて匂いが薄くなってきます。そうすると立ち止まって方向転換するでしょう。どちらに進めば良いか正確には分かりません。ともかくそれらしき方向に進んで匂いが強くなってくればよし、さらに弱くなってくればまた方向転換ということになるでしょう。細菌はそれと同じ事をやっているわけです。

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図110-4 細菌の走化性

大腸菌の主要なケミカルセンサーは methyl-accepting chemotaxis protein (MCP)と呼ばれており、これらは2回膜貫通型タンパク質で、図110-5に示すような形で細胞膜に埋め込まれています(12)。N末とC末は両者とも細胞質にあります。分子全体の構造としては、細胞外にエサ物質を検知するセンサー領域(LBD)があり、続いて細胞膜に埋め込まれたαヘリックスの領域(TM1とTM2)、それに接続するHAMPドメイン、細胞質に突出するシグナリングドメインで構成されています(12、図110-5)。シグナリングドメインのヘアピンチップは非常に重要な領域で、ここを介してセンサー分子は CheW、CheAという二つの分子と結合していて、この二つの分子が鞭毛の回転に間接的にかかわっていると考えられています。CheAはヒスチジンオートキナーゼ、CheWはCheAとMCPのリンカーあるいは制御因子になっているようです(13)。

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図110-5 大腸菌MCPの模式図

ユタ大学のサンディー・パーキンソン研究室のHPには図110-6のようなモデルがアップされていました(14)。誘引物質がMCPに結合するとCheA(図ではA)のキナーゼ活性がOFFとなり、MCPのメチル化が解除されて、この結果鞭毛モーターは反時計回りに回転する。したがってスムーススイミングが誘起される。誘引物質のない通常の状態だとCheキナーゼはONの状態で、MCPはメチル化されており、この状態だと鞭毛モーターは時計回りとなり、タンブリングが誘起されるということです。MCPのメチル化状態が細菌の記憶の実態とされています。モーターの回転とMCP-CheA&CheW(図ではCheWはWと記載されています)の状態とをつないでいるのはCheYという因子のリン酸化らしいですが、詳細はまだわかっていないようです(1、13)。

忌避物質がMCPに結合すると、CheAキナーゼはONになり誘引物質の場合とは全く逆の行動、すなわちタンブリングが誘起されます。その後スイミングで逃げるということになります(図110-4)。ただ忌避行動にはそれなりの特徴があり、詳しいメカニズムはまだよくわかっていないようです。一部の細菌は秒速200μmで逃げるそうで、そうするとヒトに例えると身長の数十倍の距離を1秒で移動するということになり、これは超絶の運動能力です(15)。

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図110-6 大腸菌ケミカルセンサーの情報伝達における2状態モデル

このようなメカニズムは基本的にあらゆる細菌に存在するとされていますが、大腸菌の場合知られているケミカルセンサーは5~6種類であり、これは細菌の中でも最も少ない部類です。それはおそらく彼らが半寄生生物であることと関係があると思われます。このメカニズムは古細菌や真核生物にも制限された形ではあれ、引き継がれているようです(16)。すなわちケミカルセンサーとそれによる行動決定のメカニズムは、細菌と古細菌の共通祖先の時代から存在し、細胞外の物質情報を細胞内に伝えて、それなりの反応を起こすという生物が一般に行っている情報伝達の基盤となるメカニズムと言えるのかもしれません。

 

参照

1)Huang Z., Pan X., Xu, N., Guo, M., Bacterial chemotaxis coupling protein: Structure, function and diversity., Microbiological Res., voi.219 pp.40-48 (2019)

2)Pfeffer W. Locomotorische Richtungsbewegungen durch chemische Reise. Untersuch. Bot. Inst.Tübingen., vol.1, pp.363–482, (1884)

3)Gerald L. Hazelbauer., Bacterial Chemotaxis: The Early Years of Molecular Studies., Annu Rev Microbiol., vol.66, pp.285–303, (2012) doi:10.1146/annurev-micro-092611-150120.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3989901/pdf/nihms-564209.pdf

4)Adler J., Chemotaxis in bacteria. Science vo.166, pp.1588-1597 (1969)

5)DePamphilis ML, Adler J. Fine structure and isolation of the hook-basal body complex of flagellafrom Escherichia coli and Bacillus subtilis. J. Bacteriol., vol.105, pp.384–395, (1971)

6)Wikipedia: Flagellum
https://en.wikipedia.org/wiki/Flagellum

7)Silverman M, and Simon, M. Flagellar rotation and the mechanism of bacterial motility. Nature vol.249, pp.73-74 (1974)

8)生物学茶話72.呼吸
http://morph.way-nifty.com/lecture/2020/01/post-fbb3a4.html

9)Webre, D. J., Wolanin, P. M., Stock, J.B., Bacterial chemotaxis., Curr. Biol., Vol.13, R47-R49 (2003)

10)Noreen R. Francis, Cell signaling cascades that regulate aldosterone production., COE外国人研究者等セミナー レポート(荻野淳)
http://www.fbs.osaka-u.ac.jp/coe/events/seminars/report_040308.htm

11)ウィキペディア: 走化性
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B5%B0%E5%8C%96%E6%80%A7

12)Abu Iftiaf, Salah Ud-Din, Anna Roujeinikova., Methyl-accepting chemotaxis proteins: a core sensing element in prokaryotes and archaea., Cell Mol Life Sci vol.74, pp.3293-3303 (2017) doi: 10.1007/s00018-017-2514-0. Epub 2017 Apr 13.

13)Parkinson J.S., Haselbauer G.L., Falke, J.J., Signaling and sensory adaptation in Escherichia Coli chemoreceptors: 2015 update., Trends Microbiol. Vol.23, pp.257-266 (2015)

14)Parkinson's Labo at Univ of Utah
http://chemotaxis.biology.utah.edu/Parkinson_Lab/projects/ecolichemotaxis/ecolichemotaxis.html

15)奥正太 「意外と知られていない? 細菌が逃げるメカニズム」
生物工学会誌 第94巻 第2号 81ページ(2016)
https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9402/9402_biomedia_1.pdf

16)Nicolas Papon, Ann M Stock., What do archaeal and eukaryotic histidine kinases sense? F1000 Research Rev2145 (2019) doi: 10.12688/f1000research.20094.1
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6944256/

 

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2020年9月 7日 (月)

根本が間違っていると思う

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日本政府はダメになりそうな企業や産業を助けるために様々な対策を考えて猿知恵を働かせてきましたが、ほとんどは失敗に終わっています。政府も関与してゴーンを追い出し、日産がルノーの傘下にはいるのを阻止しようとしたのをみて、またヤバイことをやっていると思っていましたが、それが現実化してきました。

ゴーンなき日産は今年度6700億円の赤字になる予測で、これを助けるために日本政策投資銀行が1800億(うち政府保障1300億)円を融資することになりました。
https://johosokuhou.com/2020/09/07/36691/

日産なんてさっさとルノーに取り込ませておけば良かったんですよ。この融資はおそらく焦げ付いて、政府が面倒見ることになりますよ。日銀出身議員の大塚耕平によると、一部上場企業のうち50社以上の筆頭株主が日銀になっているということで、これは国家社会主義です。これは公金を株式に投入した安倍政権の政策です。それがアベノミクスの本質で、結構人気があるのです。そりゃ株を持っている個人・法人にとっては神のめぐみですからね。

私は自由貿易には反対で、貿易はすべて管理貿易にすべきだとずっと前から主張してきました。この点はトランプと同じ考えです。自由貿易をやっていると先進国だった国の産業はガタガタになって崩れ落ちるのは目に見えているわけで、それを放置してきたのが安倍政権です。いや放置してきたと言うより崩壊する産業を税金でささえてきたケースも多いのです。たとえば政府肝いりで設立したジャパンディスプレイは結局中国に身売りしました。いったい何やってるんですかねえ。

自由貿易をやっていると、コロナ禍で明らかになりましたが、医療用のマスクやウェアが日本では間に合わないなどということが発生しました。私の着物や履き物はほぼ外国製ですが、着るものならまだいいのですが、世界が食糧危機になったら今だって国内調達30%なんですから、外国から買えば良いということにならないんですよ。輸入はどうしても国内生産できないものだけにして、その分相手国に売れる製品を考えればいいのです。

労働力が不足なら、どんどん移民を入れればいいのです。難民大歓迎です。これは私はトランプと考えが違います。現在の政権のように中途半端な研修生のような形でなし崩しに増やすのでなく、日本国籍を持つ人を増やせばいいのです。条件は生きていくのに最低限の日本語ができて、日本国憲法を支持するという意思がある人です。日本国籍を持つ人は立派な日本人です。

(画像はウィキペディアより)

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2020年9月 4日 (金)

JPOP名曲徒然草207: 海月 by まきちゃんぐ

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波のように次々と転調しながら押し寄せるメロディー。最初は弱々しい音楽が、揺れているうちにどんどん盛り上がって強い音楽になっていくプロセスが素晴らしい。末光篤の傑作。そしてまきちゃんぐの歌詞も会心の作品。「当たらぬ光の色を教えて」というのはブラックホールを想起させる深遠な響きです。

「海月」はアルバム「誰が為に鐘は鳴る」(VAP VPCC81702)に収録されています。
https://www.youtube.com/watch?v=gD2ofjN0SEo

アルバムのタイトルになっている「誰が為に鐘は鳴る」も素晴らしい作品。
https://www.youtube.com/watch?v=BtuSpn1h9z4

ボーカリストとしての実力も圧倒的なまきちゃんぐですが、ご多分に漏れずコロナ禍で困った状況に陥りました。しかしFCを結成して配信するというシステムを自力で立ち上げて奮闘中です。毎月発行の会誌も執筆・編集するというバイタリティーにも驚きます。あまりに忙しすぎて作品をつくる時間がなくなるのが心配ですが。

オフィシャル:https://twitter.com/makichang_info

FC:https://fanclove.jp/club/makichang-official

FCのシルバーかゴールドに入会すると、毎月配信ライブが楽しめます。ゴールドは月2回。

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2020年9月 3日 (木)

信じられない珍プレー@阪神vsヤクルト

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7回表マウンドにはベテランの能見がリリーフで登板。ピッチャーゴロで3アウトチェンジ・・・だと思ったらボールを握り損なってマウンドに座り込む。で3塁ランナーホームインで2:3となる。もはやこれまでか?

しかし試合は終わっていなかった。7回裏ずっとインケツだったボーアがめずらしくシングルヒット。梅野が送りバントで2塁にピンチランナー植田を送る。さらに陽川がヒットで1&3塁。ここでヤクルトはピッチャー高橋をマクガフに替える。阪神も中谷を代打で送る。

マクガフの投球は目の覚めるような剛速球の連投で中谷はあえなく3球3振。2死となる。あまりにマクガフのできが良くて、ここまでかと思ったが、バッターボックスには近本がはいる。ここで陽川が盗塁。ランナー2&3塁となる。

ここで信じられないようなことが起こる。マクガフが誰もいない1塁に牽制球を投げて球は外野に転がり、2塁、3塁からランナーが次々とホームイン。きつねにつままれたような雰囲気の中で4:3の逆転。

なんと本当に球を投げてしまったために、ボークのはずがプレイ続行でホームインは有効になりました。はじめてみるあり得ないシーンです。こんなプレーは私たちの草野球でもみたことがありません。2塁ランナーの陽川はマクガフが1塁に投げたとき、あわてて2塁に帰塁しましたが、次の瞬間に何が起こったか気がついてリスタートし、どうにかホームインしました。

マクガフ君。君の球は素晴らしいのだから、今日は酒でも飲んで早く寝て、明日からは立ち直ってくれたまえ。

(写真はマクガフ選手、ウィキペディアより)

 

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2020年9月 2日 (水)

田部京子が弾く! ベートーヴェン2大コンチェルト

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ピアノ:田部京子
指揮:飯森範親
オケ:東京交響楽団

約半年ぶりにコンサートを解禁しました。とはいってもこのコンサートは本来なら5月2日に開催される予定だったのが、9月1日に延期になったものです。コロナもどのような状況になると感染するのかというのがだんだんわかってきたので、お店も会場もそれなりにきちんと対策して、感染する確率は非常に低くなったと思います。

開始1時間前にサントリーホールに設置された専用窓口に行って、元のチケットを新しい席割りのチケットと交換します。結果はもとと近い場所でした。時間があるので森ビルのスタバに行くと、ここでリモートワークをしている人が結構いてびっくりしました。画面のお客さんとしゃべっているので(延々とひとりごとを言っているように見える)、違和感あります。六本木って東京のど真ん中でしょう? ここでリモートワークするのなら会社に行けよって話ですが、まあそれぞれ事情があるのでしょう。いざホールに入場すると、なんとお客が20%くらいしかいません。日本人の自粛指向もすごいと思いました。そういえば道行く人も電車の中でもほぼ100%マスク装着なので、これじゃあ欧米のようにはならないというのもわかります。

今回の演奏会は田部さんがひとりでベートーヴェンの協奏曲を2曲演奏するという趣向です。ピアノ協奏曲ニ長調はもともとヴァイオリン協奏曲だった作品を、作曲者自身が編曲したものです。私は初めて聴く作品でした。CDも持っていません。ベートーヴェンはかなりリラックスして編曲したようで、彼がこんなにユーモアのある人だとは思いませんでした。カデンツァはなんとピアノとティンパニの掛け合いで、それにしてはティンパニの位置が絶対にピアニストとアイコンタクトができない場所だったので違和感がありましたが、飯森さんが、ピアノは自由に弾いてティンパニがピアノに合わせるように配慮したのかもしれません。とても新鮮でしたし、第2楽章のピアノと弦楽ピチカートの掛け合いも良かったですね。

東響の演奏はいまいちもやっとして解像度が低いような印象をうけましたが、最近は演奏機会が希で合わせる機会が少ないので仕方ないのかもしれません。それより半年ぶりに聴く生オケの素晴らしさに圧倒されました。特にオーボエのノリの良さにはびっくりしました(荒木さん?) あとファゴットの女性奏者も同様にノリの良さが素晴らしいと思いました(福士さん?)。

後半の皇帝協奏曲は田部さんの第2楽章の演奏が好きで、私の定番となっています。田部さんのCDが出版されるまでは、グルダ-スワロフスキー-ウィーン交響楽団の演奏を聴いていましたが、乗り換えました。文句なしの素晴らしい演奏。それにしてもこのお客の数では稼ぎにならなかったと思いますが、映像も収録していたみたいなので、後々DVD/BDなどが出版されるのかもしれません。

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