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2020年6月19日 (金)

色即是空

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ベランダのトマトが赤くなってきました。でもまだ緑のものも多くみられます。多くの哺乳類はこれを識別できません。なぜなら青と赤を感知する錐体細胞しか持っていないからです。哺乳類以外の脊椎動物はたいてい4種類の錐体細胞を持っていて、赤色から紫外領域まで広範に色を識別できるのですが、恐竜と同じ時代に同じ場所で生きていた哺乳類は夜行性にならざるを得ず、夜の生活を続けているうちに錐体細胞を失って色彩感覚がプアになってしまったのです。

ところがサルだけは樹上というニッチをみつけて、昼間に動き、植物の実を食べるという生活をしていたため、3種類の錐体細胞を維持できて、実の熟成度をみつもることができました。ちなみにプルガトリウスというサルは、はやくも恐竜が跋扈していた白亜紀に生きていました。おなじ実を食べるライバルとしては恐竜の仲間である鳥類などがいましたが、空を飛ぶ動物はだいたい軽量で歯も手も退化していたのですから、サルでも勝負できたのでしょう。一度色彩感覚がプアになったという進化の過程は、現在のヒトにも残っていて、男性の5~10%は2種類の錐体細胞しか持っていません。犬や猫もみんな2種類の錐体細胞しか持っていません。

般若心経に「色即是空」という言葉があります。釈迦尊はある意味科学者で、これはひとつの科学的洞察であり、上記のように見るヒトや動物によっても色彩は様々だという意味でもそれは当たっていました。物質の色というのは、見る角度や天気や時刻や、また見るヒトや動物の種類によって異なるものであり、単なる幻に過ぎないという考えは正しいわけです。ただだからそんなものにたいした意味はないという考え方には、私は同意できません。なぜならサルが3種類の錐体細胞を確保できたのは、生と死をかけた生物進化の重みというものがあって、私たちはそんな1度だけの歴史の中で生きているからです。

ですから私は仏教徒ではありません。しかしご先祖様には敬意を持っているので、墓参りには行きますし、墓地の管理費も支払っています。

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