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2020年5月18日 (月)

抗体とワクチン

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抗体にはモノクローナル抗体とポリクローナル抗体があります。モノクローナル抗体とは抗体産生細胞とがん細胞のハイブリッド細胞を培養して作成します。ポリクローナル抗体は動物に作らせます。

モノクローナル抗体は良い結果の細胞を培養で増やせばいいので特異性は高いですし、ハイブリッド細胞は不死身なので製品が枯渇することはありません。ただ感度が低いとか、自分で作るにはお金と手間がかかるという難点があります。

ですから一人で実験している場合などは、自分で抗原をウサギに注射して血清を採取し、ポリクローナル抗体を作成するという作業を行う場合もあります。昔は自分の家でウサギを飼育して抗体を作るビジネスをやっている人もいて、これって一発当たると結構儲かるんですね。抗血清0.5mlを10万円で売れば、ウサギ一匹分でも巨万の富です。ひともうけしたら会社をたたんでしばらく遊んで暮らします。

会社が存続していてもそのウサギの分がなくなればおしまいです。他のウサギで作った抗体が同様に素晴らしいとは限りません。購入した場合、それで素晴らしい研究結果が出ても、他の研究者が追試しようとするともう抗体が販売終了している場合もままあります。それでも研究者にしてみれば当たればいいのですが、はずれだと10万円まるまるすってしまいます。はずれの場合の方が結構多くて、抗体を使う実験は結構ギャンブルとなります。私も何度も痛い目に遭いました。

では高価でもモノクローナル抗体がいいかというと、これがまたポリなら0.5ml買えるところ50μlくらいしか買えなくて、しかも感度は低い場合が多いので、抗原が検出できなかったり、実験を失敗した場合のダメージは計り知れません。それで研究費を使い切って終わりの可能性もありです。つまり抗体を使った実験ビジネスは研究者にとって神頼みということになります。

ただし新型コロナウィルスの抗体検査試薬や抗原検査試薬の場合など、国家レベルで吟味して良い物を選んで使えると思うので時間をかければそれなりに信頼できる製品を選んで使えると思います。ただしそれでも感度が低かったり特異性が低かったりする失敗例の製品もあるので注意は必要です。

ワクチンとは人間をこのウサギにしてポリクローナル抗体を作らせるための抗原ということになります。どういう抗原を使うかというのが製薬会社の腕の見せ所で、当たればお客は数十億人ということですが、前記のウサギの話でもわかるように、個人の体内によい抗体ができるかどうかは人によりますし、また製品は世界100社以上で競っているらしいので、競争で負けたら大損害とはいえ、本当にダメな製品なのかどうかわかるまで時間がかかるという意味ではモンキービジネスです。巨額のお金が動くので、何でもありの危険なビジネスでもあるのでしょう。

Photograph by Bruce Blaus (Wikipedia)

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