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2019年8月 1日 (木)

井上-読響 ブルックナー交響曲第8番 @フェスタサマーミューザ川崎2019

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今年もフェスタサマーミューザに行くことにしました。さてどのコンサートを選ぼうかとパンフレットを見ると、井上道義-読響でブルックナーの8番をやるというので、これを聴き逃す手はないと思い、都響ファンの私ですが、アラン-都響をパスしてこちらに行くことにしました。ごめんなさい。

ミューザ川崎はいつきても音楽に集中できるようなホールの構造に感心します。今日はマエストロ井上のプレトークがあるというので、早めに着席しました。彼が話したのは、まず21才の頃に、ギュンター・ヴァントが日本に来て読響とブルックナーの8番を本邦初演したときのリハーサルに、こっそり忍び込んでティンパニの後ろに隠れて聴いたというお話で、この曲には相当な思い入れがあるようでした。

カラヤンやチェリビダッケの話をして、朝比奈隆からたくさんブルックナーの楽譜をもらったという自慢話になりました。こういう人間味ドロドロの人ですから神聖なブルックナー演奏は無理です。私も20才台の頃に東京カテドラルで朝比奈隆のブルックナーを聴いて、非常に感動したことを思いましました。

それにしても異常に客が少ないなと思っていると、赤羽駅の人身事故で京浜東北線が遅延しているというアナウンス。東海道線で来て良かったと胸をなでおろしました。開演が10分遅れて、これが功を奏してようやく客席が埋まってきました。本日のコンミスは日下紗矢子氏。よくまあこんな細い腕でというファッションモデルのような方ですが、オケ界有数の実力者です。

読響の弦パートは世界でもトップクラスで、素晴らしい音とアンサンブルです。井上さんによると、読響は練習場が田舎にあって昼食を外でとれないため、まかないさんを雇って同じ釜の飯を食っているのがコンビネーションの熟成に役立っているそうです。ブルックナーの音楽の美しさを満喫できました。

特に第3楽章の美しさには、ハープの好演もあって脱帽です。そして第4楽章。冒頭はまるでショスタコーヴィチのような戦闘的で強烈なスタートで驚かされました。アンサンブルの乱れもなく、マエストロの人間力爆発ですごい盛り上がりでした。井上-読響畢生の名演でしょう。このマエストロの異様に襲いかかってくる人間くささは、アランや大野がいくら頑張っても身につけられるものではありません。マエストロは若い頃バレリーノをめざしていたそうで、それもユニークな指揮に影響しているのかもしれません。

終演後マエストロは日下さんを強く抱きしめていましたが、嫌がられなかったのは良い関係性なのでしょう。楽団全員そして聴衆もブラボーが乱れ飛ぶ絶賛です。

こんな曲です:
都響が珍しくフルの演奏をアップしました。指揮者はインバルです。この演奏も素晴らしいですが、本日の井上-読響の破格の名演には負けたかな。
https://www.youtube.com/watch?v=5BL7QcKXIiA

(以下 8月4日記)

マエストロ井上が自分のブログに書いています↓

「やっと晴れて夏が来たミューザでのコンサート。プレトークではこの素晴らしい作品の
前に余計な事を付け加えないようお話をしましたが、やはり夏休みはしっかりとりたい。
そう!学校のように。冷房がどんなに整備されようと、夏はいつもと違う生活をする
もんだ!それは贅沢ではない。
僕は、ある時作曲するということが「指揮をする生活」という一面的な繰り返しを断ち切り
鏡を見るようにすべてを見直すことが出来ることに気が付き、
夏休み日曜大工的作曲をやってきた。今年、亡き父、正義を主人公としたオペラも脱稿した。
裸で泳いだいり潜ったり、バイクで死にそうに飛ばしたり、庭で植木の手入れをする時、
大けがをしたりするのが夏休み!
特にジジイになってきっともう何度も来ないだろう夏を邪魔されるには、それより
内容の濃いコンサートでないと!と、読売交響楽団(今黄金時代!素晴らしい!)が
サマーコンサートを振らないかとオファーしてくれた時、「ブルックナー8番なら」と
断られる事を目論んで答えたものだった。
......結果・・・・それで、昨日の8番は僕の人生の中で白眉の結果だった。
皆様、ありがとうございます。ミューザに感謝。
リバプールや、クルージュやニージーランドや、京響や,N響等ともやって来た大事な作品
だが、どうも昨日は21歳の時、朋友尾高忠明に影響されて、ギュンターヴァントの練習を
読売ランドの練習場でティンパニーの野口さんの後ろに隠れて聞いたという記憶が、
僕に火をつけたのだろう、
カラヤンやチェリビダケ、等の演奏より良いと言ってもいい結果になった。
自画自賛のようで恥ずかしいが、楽屋に飛び込んできてくれた立派な批評家達に
言われたのだから許して下さい。

時は過ぎゆく...時は過ぎて行った...時折このように何処かの壁に消せない記憶を刻んで。

今日から夏休みだ!」

(もんちゃんの感想: マエストロらしい! こうじゃなきゃ)

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