事件の涙-自殺した研究者
年末に見たテレビ番組で最も印象に残ったのはNHKの「事件の涙」です。番組第2回でとりあげたのは、九州大学箱崎キャンパスおこった、九大法学部出身の男が研究室で焼身自殺したという事件です。
自殺した男は貧困のため高校に進学できず、自衛隊に入隊し資格を取って22才でようやく九大法学部に入学。大学院に進学して修士号を取得し38才まで在学しましたが、ついに博士論文を書けずに退学。以後大学の非常勤講師やその他のアルバイトで生計を立て、夜研究室に来て研究を続けていましたが、非常勤講師を雇い止めになり、生活の目処がたたなくなって研究室に目張りをして放火し、焼け死んだという事件です。
博士論文というのはともかくまとまりそうなテーマを選んで、そこそこ要領よく書けばできるものなのですが、彼は超生真面目な人間だったらしく、難しいテーマにとりくんで結局結論を出せなかったという、ありがちな要領の悪い人間だったようです。
非常勤講師の雇い止めは事務員から通告されてそれであっさり終わりで、それまで講義のために準備した資料がゴミになってしまうので誠に残念なことなのですが、問題の本質はそれでも何とか生活を維持して、研究を続けることができなかったということです。これは日本の奨学金制度に原因があります。
下の図をみていただくと、世界には
1.授業料が高く、奨学金も充実していない
2.授業料が高いが、奨学金が充実している
3.授業料が安く、奨学金が充実していない
4.授業料が安く、奨学金も充実している
の4つのグループがありますが、OECD加盟国の中で1.のグループは日本だけです(○)。しかも日本の奨学金は原則全額返済です。
この自殺した男も700万円の奨学金を返済しなければならず、このことが生活困窮の最大の要因だったと思われます。
こんなに教育・学問が軽視されるというのは、日本という国家と日本人のメンタリティーに根本的に関わる問題です。反知性主義の安倍政権が独裁支配するのを国民が許容するのも、そのようなメンタリティーが根本にあります。その本質は「今だけ、金だけ、自分だけ」というポリシーです。
今回自殺した男の専門である法学の観点から言えば、政権の都合によって公文書も自在に書き換え、お仲間であれば犯罪を犯しても(どんなに動かぬ証拠があっても)、やはりお仲間の検察を動かして無罪・・・というご都合主義ですから、法律なんて都合によってどうにでもなるという彼らにとって、学問=法学というのは邪魔なだけです。
より詳しい情報は下記参照
http://blue-black-osaka.hatenablog.com/entry/20180916/1537106400
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