資本主義社会から会員制社会へ
日本はここ20年くらい預金金利はほぼゼロで、これは銀行がどこにお金を貸しても利益が得られない状態に近いことを意味します。株価が上昇したのは政府の操作によるもので、トリックにすぎません。
EUや米国の金利もずっと低止まりで、すなわちほぼ資本主義は終了に近づいています。詳しくは写真の水野和夫氏の本に書いてあるので参照して下さい。
水野氏は資本主義終了後の社会を明確には示していませんが、とりあえず日本政府は 1)財政収支を均衡させること、2)税負担を高くしないこと、3)石油に依存しないエネルギー社会をつくることなどを提唱しています。
資本主義が終了するのは、地球はひとつしかなく土地も資源も有限ですから、いつかはやってくることです。
では資本主義が終了した社会はどんな社会になるのでしょうか?
私はそれは会員制社会だと思います。投資によって社会が膨張しなくなっても、人間は食事しなければなりませんし、食糧やエネルギーを生産することは必須ですし、家も建てたい、旅行もしたい、ゴルフもしたい、野球・サッカーも見たい、観劇や音楽会にも行きたい、病院も必要です、ということでいろいろな活動がなくなることはありません。
でもそれらを実現するには、投資がない以上別の仕組みが必要です。たとえばサッカースタジアムが老朽化して使えなくなったとします。スポンサーに頼って新スタジアムを建設することは無理ですし、銀行もリスクが大きいとみてお金を貸してくれません。ではどうしてもそのチームのサッカーを見たければ、ファンがお金を出すしかないでしょう。
安普請の小規模なスタジアムしかできないかもしれませんが、ファンがチームのスポンサー(会員)になって建設するわけですから、声援は熱狂し選手は頑張るでしょう。
旅館が施設老朽化で営業できなくなったとします。そうすると、どうしてもその旅館を廃業させたくなければ、その旅館の常連(会員)がお金を出し合って修理して、営業してもらうしかありません。そういう強い思いを抱かせる旅館だけが生き残るのが、ポスト資本主義社会です。
その兆候はすでにあります。たとえばイオンはカードを配布して、カード所有者(会員)のみに値引きをしています。カード所有者は通常の銀行に預金する代わりに、イオンにお金を預けます。つまり顧客が自社への投資のための資金を提供しているわけです。
アリアCDはこのCDが売れない時代に、会員(¥1,000/年)にしか売らないという商法で成功しています。企業が顧客を囲い込み、顧客はその企業をささえるというのが基本です。昔からお寺は檀家の喜捨によって成立していますが、それに近いかもしれません。
会員制社会の実体は会員用特典カード・会員のお金を預かる・ポイント・クーポン・優先予約・会員限定バーゲン・会員限定商品など以外に、会員の商品に対するアドバイスが採用されるとポイントをくれるとか、会員の推薦で社員を採用するとか、将来はもっと進んだ囲い込みが行われるでしょう。
私が会員である都響はすごいです。会員を7ランクにわけて、一般会員は会員券チケット値引きと先行予約のみですが、最高ランクになると下のような特典があります。
サポーターズパーティーに参加
ゲネプロに招待
チケットの最優先予約
リハーサル見学
オリジナルCD&DVDの贈呈
イベントへの招待
などなど
これは未来社会を暗示しているかもしれません。つまりどのクラスの会員であるかによってできることが異なる-ある種の身分制度のような仕組み-にならざるを得ないかもしれません。
資本主義の終了によって社会の発展は停滞しますが、悪いことばかりではないと思います。拡大しなければ成り立たない社会からの決別は、確実に戦争の確率を小さくします。
企業と顧客の距離は否応なく縮まるでしょう。またこのような社会の中でも、科学技術の発展や芸術の振興は政府の責任ではからなければなりません。それによって少しづつでも人類は進歩できるでしょう。
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