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2017年4月29日 (土)

小泉都響-メンデルスゾーン交響曲第3番@オペラシティー2017年4月29日

Img昼間にサンクンガーデンに行った記憶が無いのですが、子供達が多くて大変賑っていました。サントリーホールが改装ということで、オペラシティー・コンサートホールでの代替開催です。本日のコンマスは矢部ちゃん、サイドはマキロン、指揮は小泉さんです。

このホールは非常に見にくいホールですが、音響は素晴らしい。うるさいくらいに音が響きます。いつもの都響の演奏も、ここでやるとグレードアップされた感じがします。ゴージャスな音響が実に心地よい。

それでも私はこのホールは好きになれません。ステージの半分も見えない席が結構あるというのは、聴衆をバカにしているとしか思えません。

マエストロ小泉は慌てず騒がずの堅実な演奏で、じっくりとベートーヴェンとメンデルスゾーンを聴かせてくれました。これだけ素晴らしい音響だと、オケも指揮者もソリストもぐぐっとテンションが上がって、アグレッシヴな演奏だったような印象を受けました。客席は満員ではありませんでしたが、非常にうまくいった演奏会だったと思います。私のテンションも上がりました。ライヴレコーディングの会場としては最高のホールだと思います。

ソリストのキム・ソヌクは、おそらくベートーヴェンが得意なのでしょう。完全に自分のスタイルでやりきっていたと思います。まだ20代ですが、もはや巨匠のような雰囲気です。ただできあがりすぎという感じもしました。演奏終了後、矢部ちゃんと握手して欲しかったと思いますが、ちょっと舞い上がっていたのかな。

終了後、マエストロがメンバーを立ち上がらせて拍手するわけですが、なんと南方は楽器にヒラヒラとワイパーをくっつけたまま立ち上がる。はなたれ小僧みたいでした(爆)。

こんな演奏家です↓↓

キム・ソヌク

https://www.youtube.com/watch?v=7MpLN8gjxaA

https://www.youtube.com/watch?v=_1vvBT9MnVE

小泉和裕-都響

https://www.youtube.com/watch?v=wJRZPxddOk4

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2017年4月28日 (金)

やぶにらみ生物論71: 解糖

17世紀の英国の化学者ジョン(ヨハネス)・メイヨー(1640~1679、図1)は、密閉容器にねずみとろうそくを入れ、ろうそくを燃やすと、まずろうそくが消えて、そのあとねずみが死ぬことを発見しました。ろうそくを燃やさないと、ねずみは燃やしたときと比べてもっと永く生きられました。

ボイルがすでに燃焼には空気が必要であることを主張していましたが、メイヨーは燃焼および生命現象には、空気の成分の1部だけが必要であるとし、その要素を酸素と命名しました。彼は肺が空気から酸素をより分けて血液に供給していると考え、さらに筋肉の活動も体温維持も酸素の燃焼によって行われていると考えていました(1)。メイヨーの慧眼には恐るべきものがあります。

メイヨーの学説はほぼ100年後に、ジョゼフ・プリーストリーとアントワーヌ・ラボアジェ(1743~1794、図1)によって再発見され、特にラボアジェは当時流布していたフロギストン説(「燃焼」はフロギストンという物質の放出の過程である)を否定し、物質と酸素が結合することが燃焼の本質であることを証明しました。彼はこのことを契機に質量保存の法則をみつけました。

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ラボアジェはメイヨーの考えを正しく引き継ぎ、生命の本質とは、呼吸によって体内に取り込まれた酸素によって、体内の物質を燃焼させることであると考えました。彼の著書 "Elements of Chemistry" は英文版もあり、無料でダウンロードして読むことができます(2)。業績をわかりやすくまとめたサイトもあります(3)。

彼は炭の燃焼を研究し、その本質が炭素と酸素の結合によって二酸化炭素が発生することであることを発見しました。さらに人間の呼吸もこれと類似した現象で、体内にとりこまれた酸素が、体内の炭素と結合して炭酸になることであるとしました。図2はラボアジェと共同研究者達が人の吐く息を集めて、成分を分析する実験を行っているところです。一番右でノートをとっているのが彼の妻マリー・アンヌで、彼女は実験ノートをとるだけでなく、実験器具や実験を実施している状況を正確に絵に描いたり、実験の手伝いや英語の論文の翻訳など八面六臂の大活躍で、世界最初の女性科学者とされています(4)。

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ラボアジェは徴税請負人の仕事で研究費を稼いでいました。この仕事は当然恨みを買う仕事であり、フランス革命において断罪され処刑される結果となりました。彼の名はもちろんエッフェル塔に刻まれています。

さて、ではラボアジェの酸素と結合して燃焼する生体物質とは何なのでしょうか? この答えを得るために大きな貢献をしたのがクロード・ベルナール(1813~1878、図3)でした。彼はエネルギー源となる物質はブドウ糖であること、ブドウ糖はグリコゲンという形で肝臓に貯蔵され、グリコゲンは必要時にブドウ糖に分解されることなどを証明しました。このほかにも膵液がタンパク質や多糖類を消化する、胆汁は脂質の消化を助ける、など栄養学の基盤となるような現象を次々と解明しました(5)。ただベルナールの時代には実験動物の取り扱いが悲惨なものだったので、彼の家族は動物実験に反対してみんな出て行ってしまいました(3)。国葬までされた偉大な科学者でしたが、プライベートは寂しい人生だったようです。

クロード・ベルナールは科学哲学者でもあり、松岡正剛がまとめた彼の言葉(6)から少し引用してみました。

● 実験は客観と主観のあいだの唯一の仲介者である。
● 実験的方法とは、精神と思想の自由を宣言する科学的方法である。
● われわれは疑念をおこすべきなのであって、懐疑的であってはならない。
● 実験的見解は完成した科学の最終仕上げである。

ベルナールの「実験医学序説」は私も学生時代に読んだ記憶があります。現在も岩波文庫で出版されているようです(7、図3)。

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エネルギー源がブドウ糖であることがわかったので、次はブドウ糖がどのように代謝されてエネルギーが生み出されるのかという問題でした。この問題を解明したのはグスタフ・エムデン(1874~1933、図4)とオットー・マイヤーホフ(1884~1951、図4)でした。

エムデンとマイヤーホフは共にユダヤ人だったので、ヒトラーが台頭してからは悲惨な人生でした。エムデンはヒトラー・ユーゲントの乱入で講義を妨害され、自宅に引きこもって失意のうちに病死、マイヤーホフはフランスからピレネー山脈を越えてスペインに逃れ、さらにアメリカに亡命しました。このあたりの事情は木村光が詳細を記述しています(8)。彼の文章を読むと、マイヤーホフがアメリカに亡命できたのはまさに奇跡であったことがわかります。

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エムデンとマイヤーホフと彼らの協力者達が解明したブドウ糖からピルビン酸への代謝経路を図5に示します。現代的知見では、この経路で1分子のブドウ糖の代謝によって4分子のATPが生成され、2分子のATPが消費されます。またNADHが2分子生成されます。図5で計算が合わないと思われる方もおられるかもしれませんが、グルコース1分子からグリセルアルデヒド-3-リン酸2分子が生成されるので計算は合っています。この代謝経路は解糖におけるエムデン-マイヤーホフ経路と呼ばれています。エムデンとマイヤーホフはまさしくライバルであり、非常に仲が悪かったようです。

エムデン-マイヤーホフ経路は、多少のバリエーションはありますが、細菌・古細菌・真核生物のドメインを問わない共通の代謝経路です。酸素がなくてもATPを産生できるので、地球の大気に酸素がなかった時代から完成していたと思われます。地球の生物がひとつのファミリーであることの証左でもあります。

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拡大図↓

800pxglycolysis

エムデン-マイヤーホフ経路の解明だけでは、もちろんラボアジェの「酸素と結合して燃焼する生体物質」は明らかになっていません。ラボアジェに答えるためには、ATP(アデノシン3リン酸)の発見と機能の解明、およびミトコンドリアにおけるクエン酸回路と電子伝達系の解明が必要でした。しかしそれもこれもエムデンとマイヤーホフが解明した解糖系でピルビン酸が生成されるということが出発点になっています。

ATPを誰が発見したのかということについては杉晴夫が詳しい調査を行っています(4)。彼の結論によると、「ATP (アデノシン3リン酸) の発見者はカール・ローマンということになっており、論文出版も1ヶ月早かったのですが、これはフィスケの研究室をマイヤーホフが訪問したときに聞いた話をローマンに漏らしたせいであり、本当の発見者はサイラス・フィスケ(1890-1978)とイェラプラガダ・サバロウ(1896-1948)」 だそうです(4,9)。理系の方の多くは学生時代にフィスケ・サバロウ法でリンを定量したと思います。丸山工作はフィスケとサバロウの実験ノートを調べて、彼らが1927年から1928年にかけて、ATPを発見していたことを確認したそうです(4)。

そして松田誠によると、ATP (アデノシン3リン酸) の分子構造を解明したのもローマンではなく、牧野堅(1907~1990、図6)だそうです(10,11)。これには私も全く知らなかった話で、仰天しました。牧野がどのような方法で解明したかも文献(11)に詳しく記載してあります。牧野堅は実験を行った場所こそ大連という辺境の街の病院でしたが、論文はドイツ語で書いてドイツの雑誌に受理されているわけですから(10)、もっと正当に評価されるべきだったと思います。

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すでに核酸のところでも出ましたが、ATPの構造を再揭します(図7)。ATPは図のように高エネルギー結合を2ヶ所に持っており、加水分解されてADPあるいはAMPに代謝されると、エネルギーを放出します。狭い場所に酸素原子が5個も存在して、電気的反発で非常に居心地が悪いのに、酸素を挟んで並ぶPとPが中間にある酸素のローンペアを綱引きしているので、いわゆる共鳴による安定化ができないため、非常に不安定な状態にあります。両側からバネで無理矢理圧縮されているような状態なので、加水分解で解放されると激しく振動し、温度を上昇させます(4)。

A_7

またATPは図8に示したように、共役反応によって、基質Aをより自由エネルギーの高い活性化状態に担ぎ上げることができます。この状態でBと反応が進行し、リン酸を放出して化合物A-Bが生成します。この場合AとBと酵素を単にまぜあわせても、ATPがなければA-Bという化合物はできません。ATPを使う共役反応で、生物は必要な物質を、高分子物質すら合成することができます。ATPはこのように生合成や発熱に使われるだけでなく、筋収縮や能動輸送など生物に特異な現象に幅広く関わっています。

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1937年ハンス・クレブス(1900~1981、図9)はハト胸筋のスライスにピルビン酸とオキザロ酢酸を加えるとクエン酸が生成されることを発見しました。その頃までにコハク酸からオキザロ酢酸への経路はセント・ジェルジによって、クエン酸からα-ケトグルタル酸への経路はカール・マルチウスとフランツ・クヌープによって明らかにされていたので、この両者をつなぐことができたことで、一気にクエン酸回路の完成に近づきました(4)。彼は天才的科学者でかつ医師でしたが、ユダヤ人であったためにドイツで働くことができず、英国に移住して研究を行いました。

クレブスの実験はあくまでも細胞にピルビン酸とオキザロ酢酸を加えると、途中の経路はブラックボックスで、結果的に細胞がクエン酸を生成するというもので、反応の実体は不明でした。このブラックボックスを解明したのがフリッツ・リップマン(1899~1986、図9)でした。リップマンもユダヤ人であり、ナチスの迫害を逃れて米国で研究を行いました。彼らに限らず、20世紀における科学の重要な進展の大部分は、ナチスに追われたユダヤ人によって成し遂げられたように思います。

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解糖によって生成されたピルビン酸が、どのようにしてクエン酸回路に投入されるかという問題はリップマンによって解明されました。キーとなる因子はリップマンが発見したコエンザイムA(CoA あるいは HSCoA などとも表記します)でした(図10)。まずピルビン酸はコエンザイムAと反応してコエンザイムをアセチル化し、アセチルCoAを生成します(図10、図11)。この反応で二酸化炭素とプロトンが発生し、二酸化炭素は肺から外界に排出されます。プロトンはミトコンドリアに蓄積されます。

次にアセチルCoAはオキザロ酢酸とアセチル基を連結させてクエン酸とHSCoAを生成します。クエン酸はクエン酸回路に投入され、HSCoAは再利用されるということになります。クレブスとリップマンはクエン酸回路の解明によって、1953年にノーベル医学・生理学賞を受賞しています(12-14)。

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なぜコエンザイムAのような非常に複雑な分子が、酸素存在下で生物が大発展するためのキーファクターになったのか、それは謎です。

参照

1)J.J.Beringer,  John Mayow: Chemist and Physician.,  Journal of the Royal Institution of Cornwall. Royal Institution of Cornwall. vol.IX, pp.319-324
https://books.google.co.jp/books?id=10MBAAAAYAAJ&pg=PA319&redir_esc=y&hl=ja#v=onepage&q&f=false

2)https://archive.org/details/elementschemist00kerrgoog

3)近代化学の父:ラボアジェ
https://istudy.konan.ed.jp/renandi/materialcontents/107932/101920/2016PreLabo09.pdf

4)杉晴夫著 「栄養学を拓いた巨人たち」 講談社ブルーバックスB-1811 (2013)

5)F. G. Young, Claude Bernard And The Discovery Of Glycogen: A Century Of Retrospect., The British Medical Journal, Vol. 1, pp. 1431-1437  (1957)
https://www.jstor.org/stable/25382898?seq=1#page_scan_tab_contents

6)松岡正剛の千夜千冊
https://1000ya.isis.ne.jp/0175.html

7)クロード・ベルナール著、三浦岱栄訳 「実験医学序説」 岩波文庫 青916-1 (1970)

8)木村光、オットー・マイヤーホッフのヒトラーとナチスからの逃脱-ピレネー越えの真相 化学と生物 vol. 53 (11), pp.792-796 (2015)
https://katosei.jsbba.or.jp/view_html.php?aid=478

9)Fiske CH, Subbarow Y.,  Phosphorus compounds of muscle and liver. Science 1929, vo. 70, pp. 381-382 (1929)

10)Makino K., Ueber die Konstitution der Adenosin-Triphosphorsaeure. Biochem Z. vol. 278, pp. 161-163 (1935)

11)松田誠 牧野堅によるATP構造解明 慈恵医大誌 vol. 125, pp. 239-248 (2010)
http://ir.jikei.ac.jp/bitstream/10328/6505/1/125-6-239.pdf

12)Award Ceremony Speech.
https://www.nobelprize.org/nobel_prizes/medicine/laureates/1953/press.html

13)Hans Krebs: Nobel lecture, The citric acid cycle.
https://www.nobelprize.org/nobel_prizes/medicine/laureates/1953/krebs-lecture.pdf

14)Marc A. Shampo and Robert A. Kyle., Fritz Lipmann—Nobel Prize in Discovery of Coenzyme A. Mayo Clinic Proceedings, Volume 75, Issue         1,  Page 30
http://www.mayoclinicproceedings.org/article/S0025-6196(11)64252-3/pdf

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2017年4月27日 (木)

JPOP名曲徒然草179: 「六甲おろし」 by 矢井田瞳

Summer Koshien 2009 Final.jpg

いろんなバージョンの六甲おろし(正式には阪神タイガースの歌)を聴いてきましたが、

矢井田瞳の歌が一番だと思います。

https://www.youtube.com/watch?v=NxxygB9WqC0

https://www.youtube.com/watch?v=iFeBjUQ0Jjs

https://www.youtube.com/watch?v=JNY-Guacfs8

https://www.youtube.com/watch?v=7RD9hbFKV48

今まで聴いた中でもっともひどい六甲おろし(by トーマス・オマリー 昔阪神タイガースの4番バッターだった人です)

https://www.youtube.com/watch?v=6uio6ayqpOk

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2017年4月26日 (水)

リーガ・エスパニョーラ第33節: バルサ首の皮一枚で踏みとどまる

Braugranaサンチャゴ・ベルナベウでのクラシコは、新生バルサの幕開けを予感させるものでした。

アディショナルタイムでの怒濤のカウンターは、自陣深くからのセルジのドリブルではじまりました。最も長い距離をすでに走っていた彼は、マドリーの選手を次々交わして突進。これに触発されたバルサメンバーの7人が全力疾走でマドリーゴールに殺到します。最後のメッシの決勝ゴールも、数的優位の結果です。

カゼミーロの意図したラフプレーは許せませんが、まあ新たにマドリーの中心選手に抜擢されたという気負いがなせるものとしましょう。マルセロのひじ打ちは彼の本質があらわれたものです。バルサにとってせめて幸いだったのは、悪童コンビの片割れぺぺが出場していなかったことです。

ベイルが故障明けで絶不調だったのも幸いしました。とはいえバルサも、ネイマールが誰もケガさせてないのに3試合出場停止という、あまりにも理不尽なペナルティーで出られず。スアレスは1年の疲労がどっと出た感じで絶不調。メッシはマルセロにやられて、出血をタオルで止めながらのプレイということで(4針縫うことになったそうです)、バルサのチーム力は昨年秋頃に比べるとがっくり落ちています。

その中でGKテア=シュテーゲンが頑張りました。長身とジャンプ力を生かしてシュートを止めまくり、特にクロースのミドルを止めたプレイは鳥肌ものでした。

決勝ゴールの後、メッシがカード覚悟でユニホームを脱いでアピールしたのは、やはり数々のマドリーのラフプレーに対する抗議だと思います。

これで首の皮一枚で優勝争いに生き残りましたが、休養十分のネイマールのこれからの大活躍を期待したいと思います。

https://www.youtube.com/watch?v=FTPxORAlT0Y
https://www.youtube.com/watch?v=kcQU8PGlHu8
https://www.youtube.com/watch?v=eBiFZWXUWjw

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2017年4月23日 (日)

やぶにらみ生物論70: ステロイド

ステロイドというと一般的には炎症を抑えるために処方されるコルチゾール系の薬品を意味しますが、学術的にはもっと幅広く、性ホルモン・胆汁酸・コレステロールなども含みます。

ステロイドという生体物質は、脂肪酸や油脂とは全く異なり、図1に示されるような風変わりな基本構造(ステロイド骨格)を持っています。この基本構造はA,B,Cという3つの6員環とDというひとつの5員環からなり、通常3の位置がヒドロキシル化(-OH)またはカルボニル化(=O)されています。また10と13の位置はメチル化、17の位置はアルキル化されています。アルキル化というのはCH3、CH2CH3、CH2CH2CH3、・・・ などCnH2n+1が結合するという意味です。

ステロイド骨格そのものは脂溶性で水に不溶ですが、ヒドロキシル化されていると多少水に溶ける場合があります。17位に結合しているアルキル基がヒドロキシル化されることもあります。

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ステロイドはほとんどの真核生物の体内で生合成され、細胞膜の重要な構成成分となっているほか、胆汁に含まれる胆汁酸やホルモン類(性ホルモン・副腎皮質ホルモンや昆虫の変態ホルモンなど)として、幅広く利用されています。ただしステロイドは真核生物だけに合成能力があり、細菌や古細菌にはみられません。したがって例えば化石にステロイドが含まれていれば真核生物と示唆されます(もちろん現生生物による汚染の問題は常に考慮されなければなりません(1))。

話は変わりますが、多くの硬骨魚類は鰾(うきぶくろ)を持っていますが、サメなどの軟骨魚類はもっていません。従って泳がないと海底に沈んでしまいます。このような事態をさけるために、一部のサメは肝臓に多量のスクワレンという脂質を蓄えて浮力の足しにしています(2、3)。サプリメントの肝油というのはこの種のサメの肝臓の抽出物でです(4)。辻本満丸は1906年にサメの肝油からスクワレンを発見して記載しています(5、図2左)。後日書籍にもなっているようです(図2右)。

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スクワレンの構造は、1929年になってイアン(イシドール)・ヒールブロンによって明らかにされました(6)。よく化粧品に使われるスクワランは、スクワレンの-C(?)=C(?)-をすべて-CH(?)-CH(?)-に変換したものです(?はCH3またはH)。スクワレンはクエン酸回路やβ酸化にもかかわっている、いわば代謝の交差点のようなアセチルCoAから生合成されます(図3)。そしてスクワレンがステロイド合成の起点となります。

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スクワレンはスクワレンエポキシデース(7)とラノステロールシンテース(8)という2種の酵素のはたらきで、ラノステロールというステロイド骨格をもつ化合物に変化します。

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ラノステロールはあらゆるステロイド化合物の前駆体ですが、自身もラノリンの成分として動物の皮脂腺から分泌されており、毛皮に水分が浸透しないように保護する役割があるとされています(10)。

実は毛根は表皮を経由せず直接外界と接しているので、もし皮脂がなければ容易にウィルスや細菌が侵入してきます。したがって毛穴を皮脂で埋めておくことは大事なことです。ですから、毛根鞘の死細胞を取り除くというメリットがあるとしても、毎日髪をシャンプーで洗うことは健康には良くないと言えます。どうしてヒトは髪を洗うと気分が良くなるのか、生物学的には不思議な現象です。もちろん毎日シャンプーで毛を洗う生物なんて、ヒト以外にあり得ません。

ラノステロールからコレステロールが合成される経路をウィキペディアからコピペしました(図5)。

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これらの複雑なステロイド生合成経路を解明した業績で、コンラート・ブロッホ(1912-2000)とフェオドル・リュネン(1911-1979)(図6)が1964年のノーベル生理学・医学賞を受賞しています。ブロッホはユダヤ人で、ナチスから逃れて米国にたどりついた人です。リュネンはミュンヘンで生まれ育ち、ミュンヘン大学教授からミュンヘンのマックス・プランク細胞化学研究所の研究所長になりました。伝説の 故沼正作先生(http://scienceandtechnology.jp/archives/9655)はこの方のお弟子さんだそうです。

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代表的なステロイド系化合物の構造を図7に示しました。コレステロールは細胞膜の構成要素、コール酸は胆汁の成分、テストステロンは男性ホルモン、エストラディオールは女性ホルモン、コルチゾールは副腎皮質ホルモンです。

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図8にみられるように、コレステロールは細胞膜の構成要素です。細胞膜の基本構造はリン脂質が「親水部位」を細胞外および細胞内の外側向け、「疎水部位」を膜内部にむけて整列した2重膜構造になっていますが、コレステロールも親水側を細胞外または細胞内に向け、疎水部をリン脂質の疎水部位に埋め込んだ形で存在します。

コレステロールが膜構造に加わることによって、膜の流動性(しなやかさ)が高くなり、温度が下がることによって発生する相転移(硬くなる)が阻止されます。細胞膜は単なる壁ではなくて、その中で化学反応や分子構造の変化、物質の出し入れなどが行われているので、それなりの可塑性の高さが必要だと思われます。

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コレステロールが特に集積している組織として、ミエリン鞘が知られています。ミエリン鞘は神経細胞の軸索を被うカバーのような組織です。その実体は図9に示すように、シュワン細胞はが「ふとん」で軸索が「人」だとすると、「ふとん」でぐるぐる巻きにしたような構造になっています。すなわち細胞膜が何重にもなっているような構造なので、細胞膜の脂質は当然大量に含まれることになります。脳の白質はミエリン鞘が集積している組織なので、特に脂質が豊富です。

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コレステロールというと、すぐに健康診断でのHDL・LDLの値が頭に浮かぶわけで、ここを避けては通れません。コレステロールは水への溶解度が低く(95マイクログラム/リットル)、体の中を移動するにはタンパク質と結合して、リポタンパク質の形をとらなければなりません。

コレステロールは主としてLDL(low density lipoprotein)またはHDL(high density lipoprotein)というリポタンパク質として移動します。LDLはコレステロールを肝臓から末梢組織へ供給し、HDLは過剰なコレステロールを末梢組織から肝臓に戻す役割があると言われています。HDLでもLDLでもコレステロール自体の分子構造に変わりはなくて、結合するタンパク質の方が異なっています。

LDLは悪玉コレステロール、HDLは善玉コレステロールと呼ばれていますが、これは害虫と益虫のような自然科学とは乖離した命名で、私たちは使いたくないのですが、LDLが動脈硬化の一因であることは確かなようです(12)。LDLが細胞内で発生する活性酸素によって酸化されると、マクロファージに貪食され、大量にLDLを取り込んだそのマクロファージが死ぬと、死んだ場所にコレステロールの塊(胆石はコレステロールの塊です)が残されます。これによって動脈硬化が促進され、最悪心筋梗塞や脳梗塞に至ります。

HDLが少なすぎると、余分なコレステロールを肝臓にもどせなくなるわけですが、かといってどんどんもどすと脂肪細胞が巨大になって、脂肪細胞が分泌するホルモンなどが過剰になり、生理活性物質のバランスがくずれると思うのですが、そのあたりのことはよくわかりません。

肥満になると脂肪細胞から分泌される物質(アディポサイトカイン)が異常となり、生活習慣病を誘発すると指摘している書物はあります(13)。ただHDLの wikipedhia をのぞいてみると、HDLのないマウスも生きているみたいなので、コレステロールを運搬する別経路もあるようです(14)。ならば健康診断の結果を見て、指導員がHDLが少ないからどうしろこうしろというのも、本当に妥当な指示かどうかは疑わしいと思います。すくなくともまだ医学的な根拠には乏しいようです。

コール酸は肝臓でコレステロールから合成されてたあと、グリシンやタウリンと結合してグリココール酸やタウロコール酸となります(図10)。これらは抱合胆汁酸と呼ばれますが、胆嚢に蓄積された後、胆汁の成分として腸内に放出され、脂肪をミセル化して腸に吸収されやすくします。脂肪をミセル化した代表的食品として図10のマヨネーズがあります。

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性ホルモンについてはあらためて述べる機会もあると思います。最後に糖質コルチコイド(=グルココルチコイド)についてすこし述べておきます。コルチコステロン・コルチゾール・コルチゾンなどがこれに相当します。デキサメタゾンなどは自然に存在するものではなく、人工的に合成された薬剤であり、主として炎症をおさえるため、または免疫反応を抑制するために使用されます。

生体に存在する糖質コルチコイドは副腎皮質で作られ、抗炎症作用や免疫抑制作用のほか、図11のようにインスリンと逆の役割で、血糖値を上昇させる作用があります。主に生体がストレスを感じたときに分泌されます。糖質コルチコイドなどのステロイドホルモンは一般的に細胞膜を通過することができ、細胞質にある転写調節因子と結合して核内に侵入し、転写を調節することによって機能が発揮されます(15)。

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参照

1)http://blog.livedoor.jp/science_q/archives/1861037.html

2)http://markpine.blog95.fc2.com/blog-entry-69.html

3)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%83%B3

4)http://www.241241.jp/products/supplement/same/

5)辻本満丸  “黒子鮫油に就て”. 工業化学雑誌 vol. 9 (10): pp. 953-958. doi:10.1246/nikkashi1898.9.953 (1906)

6)Heilbron, I. M.; Thompson, A. ,  "CXV.—The unsaponifiable matter from the oils of elasmobranch fish. Part VI. The constitution of squalene as deduced from

a study of the decahydrosqualenes."  J. Chem. Soc. pp. 883–892. (1929)  doi:10.1039/JR9290000883.

7)榊原順、小野輝夫、スクアレンエポキシダーゼ -もうひとつのコレステロール合成律速酵素 蛋白質 核酸 酵素 vol. 39 (9), pp. 1508-1517 (1994)
http://lifesciencedb.jp/dbsearch/Literature/get_pne_cgpdf.php?year=1994&number=3909&file=j9768PH3xxMJB18tkcGRUQ==

8)阿部郁朗、スクワレン閉環酵素の生物有機化学 蛋白質 核酸 酵素 vol. 39 (10),  pp. 1613-1624 (1994)
http://lifesciencedb.jp/dbsearch/Literature/get_pne_cgpdf.php?year=1994&number=3910&file=c/RbruPLUSYUeEJB18tkcGRUQ==

10)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%8E%E3%83%AA%E3%83%B3

11)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%AB

12)http://fmd-kensa.jp/pg2.html

13)近藤和雄 「人のアブラはなぜ嫌われるのか」 ~脂質「コレステロール・中性脂肪など」の正しい科学 技術評論社 (2015)

14)https://en.wikipedia.org/wiki/High-density_lipoprotein

15)http://kanri.nkdesk.com/hifuka/ste2.php

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2017年4月22日 (土)

アラン・ギルバート&都響 エロイカ by ベートーヴェン など@東京芸術劇場2017年4月22日

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今日は池袋芸劇で都響のC定期です。雨の予報でしたがコンマス矢部ちゃんの行いがやや良かったのでしょうか、終演時にも降っていませんでした。サイドは四方さん。指揮アラン・ギルバート。

出かける前にミューザ川崎のサイトにアクセスして、フルシャの「わが祖国」のチケットを予約。開始時間まで待機してアクセスしたのですが、ブロックごと全部売り切れの場所もあって、かなり慌てました。

エキチカを歩いて行くと、芸劇入り口のパティオ・ドゥ・メトロが改装中でお休みとはがっかりです。ここの焼きカレーが好きなもので。

前回は男性奏者が全員白の蝶ネクタイだったのですが、今回は通常モードにもどりました。美里もロングドレスからいつものボディコンパンツに復帰。

アラン・ギルバートはしなやかで強靱な音楽をやりたいようです。風貌に反して彼なりのエレガンスがゆきとどき、特に弦の音がやせたり、硬くなるのを避ける音作りをしています。都響のためには非常に良いことではないでしょうか。ただどんな曲でも同じコンセプトで金太郎飴という感じがしないでもありません。とはいえ、最初の「エグモント序曲」からヴィヴィッドな演奏でテンション上げてくれます。

2曲目のラフマニノフ「パガニーニの主題による狂詩曲」で、ソリストのイノン・バルナタンが登場。この人は非常に繊細なピアノ演奏をしますが、かなり小柄で、腕力と体重が足りないような感じがします。ロシア風でも米国風でもない、彼独特の繊細なラフマニノフですが、私はこの人はコンチェルトよりも独奏や室内楽の方が向いているように思いました。その証拠に、ソリストアンコールの J.S.バッハ:『わが楽しみは、元気な狩のみ』BWV208より「羊は安らかに草を食み」の素晴らしかったこと。いや参りました。

彼の部屋に私たちオーディエンスが招き入れられて、聴かせていただいた感じです。「私の音楽を聴きたければ、私の中にはいっておいで。外にこれ見よがしに発散するのはあまり好きじゃないんだよ」というイメージでしょうか。

休憩後の「エロイカ」はじっくりと聞かせてもらいました。特に弦の音とまとまりと躍動感が気持ち良い演奏でした。広田氏のオーボエをはじめとして、いつものことながら管楽器(ホルンを除く)・打楽器も素晴らしいと思いました。

アラン・都響の演奏が公開されています。↓のサイトにアクセスし、少し下にスクロールしてクリック。

ベートーヴェン交響曲第7番第4楽章
http://www.tmso.or.jp/j/concert_ticket/detail/detail.php?id=3029&year=2017&month=4

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2017年4月20日 (木)

猫アレルギーの話

A1130_000532_2猫アレルギーの原因のほとんどは Fel d1 というタンパク質であることが明らかになっています。このタンパク質は猫の唾液、汗腺、皮膚から分泌されます(1)。分子構造も明らかになっています(2)。

2006年にアレルカ社(現ライフスタイル・ペッツ社)は低アレルギー猫を発売しました(3)。しかしこれがどのような方法で製造されたのかが企業秘密でわからないのです。Fel d1 の遺伝子をノックアウトして製造したと考えたくなりますが、会社はそうは言っていません。遺伝子組み換え生物に関する法律の網の目をくぐるために、グレーゾーンでビジネスを展開しようと考えているのかもしれません(4)。Allerca GD という名で約70万円だそうです。ちょっと高価で飼育するのも大変ですが、Ashera GD というのもいます(5)。これも低アレルギー猫です。

私はこの種の遺伝子組み換え生物については、モンサント社の農薬+遺伝子組み換え植物のセットなどとは全然次元の違う問題で、遺伝子組み換え生物であることが明らかになったとしても、政府は輸入許可を出すべきだと思います。高濃度の農薬の影響などは考えなくてもいいですし、口に入るわけでもありません。猫アレルギーの人も猫を飼育できるという大きなメリットがあり、近隣に猫アレルギーの人がいる場合でも大丈夫というメリットもあります。

アレルギー軽減猫は将来の話として、いまとれる有効な対策としてはプラズマクラスターがあります。学術論文もあるので、プラズマクラスター付きの空気清浄機が有効なことは確かでしょう(6,7)。もちろん医師にアレルギー反応をおさえる薬を処方してもらうのは有効でしょうし、医師の指導のもとに免疫寛容を狙うことも可能かもしれません。

猫アレルギーなのに、自宅で17匹の猫を飼っている方がいらっしゃるようです(8)。また私の知人で、ネズミアレルギーなのに、ネズミを飼育して研究している方もいます。

(写真はフリー写真サイト「足なり」より)

1)A. J. Dabrowski et al., Cat skin as an important source of Fel d I allergen. The journal of allelgy and clinical immunology. vol.86(4), pp. 462-465 (1990)
http://www.jacionline.org/article/S0091-6749(05)80200-3/pdf

2)L. Kaiser et al., "The crystal structure of the major cat allergen Fel d 1, a member of the secretoglobin family". J. Biol. Chem. vol.278(39) pp. 37730-37735 (2003)
http://www.jbc.org/content/278/39/37730.full.pdf

3)"Hypoallergenic" Cats
http://news.nationalgeographic.com/news/2006/06/060609-allergies-cats.html

http://abcnews.go.com/Business/worlds-hypoallergenic-cat-scientific-breakthrough-hype/story?id=19692501

4)NHKクローズアップ現代紹介の「遺伝子組み換え猫」について
http://hideyukihirakawa.com/blog/archives/201011/252325.php

5)http://www.ne.jp/asahi/box/kuro/report/geneticpet.htm

6)プラズマクラスターは猫アレルギーを軽減するか?
http://www.konekono-heya.com/news/2016/september/29.html

7)Kazuo Nishikawa, Exposure to positively- and negatively-charged plasma cluster ions impairs IgE-binding capacity of indoor cat and fungal allergens. World Allergy Organ J. vol.9(1): pp.27-33 (2016)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5011831/pdf/40413_2016_Article_118.pdf

8)http://news.mynavi.jp/articles/2014/06/25/catallergy/





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2017年4月18日 (火)

アラン・ギルバート&都響:「シェヘラザード.2」 by ジョン・アダムズ @東京文化会館2017年4月17日

Imgaまた雨ですか~。矢部~。といっても今日は矢部ちゃんはサイドで、コンマスは四方さん。指揮はマエストロ=アラン・ギルバートです。ついに新年度の都響定期演奏会開幕です。男性奏者は全員白の蝶ネクタイで、これは楽団が配布したんでしょう。ただエキストラさんが目立ちます。これはどうしたわけですかねえ。私にはわかりません。

月刊都響にはひとつ大きな変更がありました。楽曲解説に英文版がついたのです。最近は外国人のお客さんも多いので、このようなサービスはあった方がいいですね。ただ集客を狙うなら、中国語版・韓国語版で中国・台湾・韓国のお客さんをターゲットにした方が有効だと思います。

開幕演奏会の集客はいつものウィークデイ夜の定期レベルで70%くらいの入り。空席が目立ちました。まあ現代音楽の本邦初演では致し方ないかも。確かに本邦初演ということになれば、楽団の業績として認められるわけですが、それで集客がうまくいかないのでは本末転倒です。

前半はラヴェルの「マ・メール・ロワ」。バレエ用の拡大版で、非常に楽しめました。やはりラヴェルは音響の天才です。アラン・ギルバートは無骨な感じですけど、この曲は都響には向いている音楽で、演奏は夢のように美しい。前半だけでも来た甲斐はありました。

休憩後の後半はソリスト、リーラ・ジョセフォヴィッツの登場。細いパンツなのですが、なんと膝くらいまでスリットが入っているという風変わりなコスチュームです。演奏は若い頃のようなエグさが軽減して、彼女も円熟してきたのかなと思いました。舞台を見渡すと、3分の1くらいの幅を占めるゴングが壮観でした。普段はティンパニ担当の久一さんが演奏。

ジョン・アダムズの曲「シェヘラザード.2」は、ラヴェルの「マ・メール・ロア」とかなり似ているところがあります。ただツィンバロン・タムタム・ゴング・大太鼓などを多用して、より派手な効果をねらっています。残念ながらラヴェルには遠く及びません。学者が頭で作った音楽という感じが払拭できないのです。聴き所は結構あったように思うのですが、個人的にこの音楽には全くのめりこめませんでした。もちろんリムスキー・コルサコフのシェへラザードとは比べる意味もないくらいの作品でしょう。シェヘラザード.2というネーミングも納得できかねますね。

というわけでそこそこ楽しめましたが、CDを買って帰ろうという気にはなれませんでした。それにしても四方さんのヴァイオリンは、いつもながら心がリフレッシュされるような素晴らしい音です。退任される前に、何でもいいから都響とコンチェルトを演奏して欲しいと思います。

リーラの演奏

ブルッフ バイオリン協奏曲 第1楽章
https://www.youtube.com/watch?v=e6S-XWlGmjw

カフェ・コンサート
https://www.youtube.com/watch?v=-s4K_nVhYYk

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2017年4月17日 (月)

ジェットストリーム

A1820_000007FM東京の番組ジェットストリーム(1)は、今年で50周年だそうです。良く続いたものだと思います。最近また聴く機会が多くなって、というのは夜のネコ会議の時間なので、やることがなく、小さな音でFM東京を聴くことになりました。

猫たちは音楽を聴いているわけではありませんが、トランペットが高周波を発したりすると、「あれ、何だろう」という感じで耳をそばだてます。サラはリズミカルに指圧をすると気持ちが良いようで、そういう意味ではリズムは理解できるようです。

会議は毎日の習慣なので土日も深夜FM東京を聴いているのですが、土曜日はゆきりん(2)、日曜日はナベサダ(3)が別番組をやっています。ゆきりんは非常に頭が良いという印象です。何事も的確にてきぱきこなしていくような人物で、フェミニンな雰囲気はほとんどありません。女子力もゼロに近いと想像します。むしろ会社の上司や部下がこんな人だったらいいのにという感じです。

ナベサダは自身の40年以上前のライブ録音をかけたりしています。ものすごいのですが、深夜の放送にふさわしいかどうかは疑問です。最近引っ越しで疲労困憊しているようです。どの本、どのレコード・CD、どの石(石収集が趣味)、どのゴルフクラブを棄てるかで悩ましいと語っていました。

ナベサダの後、横山幸雄(4)が登場してクラシック番組になります。横山幸雄は超人ピアニストで、ショパンのピアノ曲は166曲あるそうですが、それを暗譜で18時間かけて全部演奏したそうです。昨年「上野学園大学の経営に不正の疑いがある」として経営陣を刑事告発し、それに対し「業務妨害」として2017年3月13日付で大学を解雇されたとのことです(5,6)。

ジェットストリームはいつも、DJ大沢たかおの語りはなるべく少なくして、音楽を垂れ流すという印象なのですが、直近の金曜日に2回続けてユーミンが登場してびっくりしました。そこでユーミンのデビュー曲「出さない手紙」(7)がかかったのですが、私には全く記憶がなくてもう一度驚きました。非常に地味な曲で、ご本人の話だと300枚しか売れなかったそうです。

ユーミンの twitter (8)をみていると、頻繁に更新しつつ、ファンの質問にもきちんとウィットをもって答えているようで、結構マメな人だと思いました。

1) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A8%AA%E5%B1%B1%E5%B9%B8%E9%9B%84
2) http://yukiring.jp/
3) http://www.sadao.com/
4) http://yokoyamayukio.net/
5) https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/201944
6) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A8%AA%E5%B1%B1%E5%B9%B8%E9%9B%84
7) https://www.youtube.com/watch?v=zx-0FP_ZN6k
8) https://twitter.com/yuming_official

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2017年4月14日 (金)

やぶにらみ生物論69: 糖脂質

前回68で、スフィンゴシンやセラミドの発見者としてヨハン・トゥーディヒョウムの名前を出しましたが、彼は臨床医で科学実験は自宅でやっていたこともあって、当時の学会からは嘲笑・圧殺されるような存在だったそうです。しかし彼はスフィンゴシンやセラミドのみならず、糖脂質の研究も創始しました。トゥーディヒョウムは1901年に死亡しましたが、死後1910年代になって再評価が進み1913年以降、1870年代に彼が脳から抽出精製した糖脂質(セレブロシド)の構造が解明されて、埋もれていた研究が日の目を見ることになりました(1)。

セレブロシドの構造を解明したのはオットー・ローゼンハイムやハンス・ティーレフェルダーらで、トゥーディヒョウムが脳から抽出して精製した物質はガラクトース-スフィンゴシン-リグノセリン酸およびガラクトース-スフィンゴシン-セレブロン酸の2種であることがわかりました(図1)。いずれもスフィンゴシンに糖と脂肪酸が結合した化合物であり、これが糖脂質(スフィンゴ糖脂質)の基本構造になります。

光合成細菌や植物はスフィンゴ糖脂質とは異なるグリセロ糖脂質(図1右下)を持っており、これはグリセリンの3つのOHのうち、2つに脂肪酸、1つにガラクトースが結合している構造になります(2)。機能も研究されています(3)。私たち動物の体にも多少見つかるようですがその機能はよくわかっていないようです。

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その後エルンスト・クレンクやアルバート・キンバルらによって、セレブロシドの脂肪酸の部分が、リグノセリン酸とセレブロン酸以外にネルボン酸やα-オキシネルボン酸の場合もあることが示されました(4、5、図2)。

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セレブロシドに含まれる糖はガラクトースだけでなく、グルコースの場合もあります(図3)。ガラクトセレブロシドが脳に多いのに対して、グルコセレブロシドは全身に存在します。グルコセレブロシドをグルコースとセラミドに分解する酵素(グルコセレブロシダーゼ)に遺伝的欠陥または欠損があった場合ゴーシェ病となり、肝臓・脾臓・骨髄・脳などにグルコセレブロシドが蓄積して様々な症状を発症します。

グルコースを含むセレブロシドの存在は、ゴーシェ病の患者に蓄積されたセレブロシドの解析から明らかになりました(1)。このように、病気の解析が基礎科学の進歩に寄与することはよくあることです。

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実はクレンクらが提出していたセレブロシドの構造式には間違ってい点があって、ハーバート・E・カーターらはそれまでの間違いを正し最終的にスフィンゴシンの構造を確定ました(6)。もしろん図1に示した構造は確定されたものです。第二次世界大戦後の糖脂質の研究は、ハーバート・E・カーター(図4)を中心に進められました。彼の人となりなどは「参照」に示したメモアールに記載されていますが、学会の前日でも雨のゴルフコースに出て行くほどゴルフ好きだったようです(7)。

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さてスフィンゴ糖脂質にはセレブロシド以外にもうひとつ大きなグループがあり、それはウィキペディアの定義によれば、糖がセレブロシドでは単糖であるのに対してオリゴ糖のものということで、ガングリオシドと呼ばれています。

ガングリオシドの名の由来はガングリオン(神経節)で、脳の灰白質に多いことからクレンクが命名しました(8)。図5に代表的なガングリオシドであるGM1の構造式を示しましたが、セレブロシドとの違いは糖が単糖ではなく、オリゴ糖であることです。

ノイラミン酸という新顔も登場します。これらで構成されるオリゴ糖には多様性があり、図6に示されるように、外からひとつづつ糖を削っていくとGM2、GM3となりますし、追加や枝分かれもあるので、非常に多様な構造になり得ます。

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図6にはGM1、GM2、GM3の関係を示します。

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ノイラミン酸は糖脂質だけでなく、糖タンパク質においても頻出しますが、ノイラミン酸そのものは生体には存在せず、アミノ基や水酸基の水素が置換されてできた化合物が重要な役割を果たしているようです。N-アセチルノイラミン酸やN-グリコリルノイラミン酸はその例で、これらをまとめてシアル酸とよびます(図7)。

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細胞膜は脂質でできているので、ガングリオシドはそのスフィンゴシンやステアリン酸の疎水性の部分を細胞膜に埋め込み、オリゴ糖部分を細胞外に突き出すことができます。まさしく樹木の地下部分と地上部分のようなイメージです。そうすると地上部分のオリゴ糖の構造によって、細胞を識別することが可能です。つまり接着しやすい構造の細胞が集まって組織をつくることができるわけです。また細胞外からの情報を、あるグループの細胞だけが受けとることもできます。

第二次世界大戦前後の頃は、そんな糖脂質の機能など想像もされていなかったのですが、突破口を開いたのは戦後間もない日本の山川民夫(図8)でした。彼が目を付けたのは、ウマの赤血球をウサギに注射すると、ウマの赤血球を凝集する抗体がウサギの血清中に産生されますが、その血清は、ウシやヒツジなどの赤血球を凝集することはできないという、いわゆる種特異性凝集反応でした。彼は赤血球膜には種特異性を示す何かがあるかもしれないと考えました。

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まずウシの赤血球を水に投入して溶血させ、細胞膜を遠心分離によって沈殿させます。その沈殿(ゴーストという)を多量に集めて脂質を抽出すると、セレブロシドではなくガングリオシドに似た物質が抽出されました。これを山川はヘマトシドと名付け、ブタの脳のガングリオシドと比較研究をはじめました。ヘマトシドにはブタのサンプルと異なりノイラミン酸が含まれていることがわかりました。

その後ヒトの赤血球の糖脂質とも比較しましたが、それはウマの糖脂質とはかなり成分が異なっており、グロボシドと名付けられました。グロボシドには脂肪酸・スフィンゴシン・グルコース・ガラクトース・アセチルガラクトサミンが含まれていました。

いろいろな動物で調べてみると、ノイラミン酸がなくてガラクトサミンがあるタイプ(グロボシド型、ヒト・ブタ・モルモット・ヒツジ・ヤギ)と、ノイラミン酸があってガラクトサミンがないタイプ(ヘマトシド型、ウマ・イヌ・ネコ)に分かれていることがわかりました(1)。

カール・ラントシュタイナー(1868-1943、図7)がABO血液型を発見したのは1901年のことでした。1960年になって、山川らはグロボシドと抗A抗体の沈殿から糖脂質を抽出し、血液型物質が糖脂質であることを示唆しました。このことは多くの研究者によって追試され、赤血球表層にある血液型物質が糖脂質であることは確定しました(1)。

図9をみるとわかるように、ガングリオシド(グロボシド)のオリゴ糖部分はO型が基本となっており根元がフコースで、ガラクトース・Nアセチルグルコサミン・ガラクトースとつながっています、A型ではフコースの次に位置するガラクトースにN-アセチルガラクトサミンの側鎖があり、B型では同じガラクトースにガラクトースの側鎖がついています。AB型ではA型の側鎖があるガングリオシドとB型の側鎖があるガングリオシドの両者があります。

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血液型についての説明は下にウィキペディアをコピペしておきます。内容はちょっと難しいかもしれません。H抗原というのは図9ですべての型の人が持っているフコース+ガラクトース+Nアセチルグルコサミン+ガラクトースのチェインのことだと思います。このチェインにNアセチルガラクトサミンまたはガラクトースを結合させる際に、それぞれ別の酵素が必要で、それがA型、B型の人は1種づつ、AB型の人は2種もっていて、O型の人は両方とも持っていないということでしょう。

ただそのH抗原の糖鎖をつくるのにも酵素が必要なので、この土台をつくる酵素が欠損している場合、Nアセチルガラクトサミンまたはガラクトースを結合させる酵素が存在しても、実際にはA抗原もB抗原も形成されず、見かけ上O型と同じになってしまうので注意が必要です。

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A型はA抗原を発現する遺伝子(A型転移酵素をコードする遺伝子)を持っており、B型はB抗原を発現する遺伝子(B型転移酵素をコードする遺伝子)を、AB型は両方の抗原を発現する遺伝子を持っている。A抗原、B抗原はH抗原からそれぞれA型転移酵素、B型転移酵素によって化学的に変換される。

3種の遺伝子の組み合わせによる表現型、ABO式血液型を決定する遺伝子は第9染色体に存在する。H物質発現をコードする遺伝子は第19染色体に位置し、H前駆物質をH物質へ変換させる。この遺伝子が発現しない場合はボンベイ型となる(後述)。

  • A型 - A遺伝子をすくなくとも一つ持ち、B遺伝子は持たない(AA型、AO型)→A抗原を持つ。B抗原に対する抗体βが形成
  • B型 - B遺伝子をすくなくとも一つ持ち、A遺伝子は持たない(BB型、BO型)→B抗原を持つ。A抗原に対する抗体αが形成
  • O型 - A遺伝子・B遺伝子ともに無い(OO型)→H抗原のみ持つ。A,B抗原それぞれに対する抗体α、抗体βが形成
  • AB型 - A遺伝子・B遺伝子を一つずつ持つ(AB型)→A抗原、B抗原両方を持つ。抗体形成なし

A抗原とB抗原は、持っていないとそれに対する自然抗体が形成されることが多く、この場合、型違い輸血により即時拒絶が起こる。自然抗体がなくとも型違い輸血により1週間程度で新しいIgM抗体が生産されこれが拒絶反応をおこす。そのため、基本的には型違い輸血は行われない。輸血される血液は受血者の血液より少量のため、血漿によって希釈されて抗原抗体反応が起こらなくなる。そのため、かつてはO型は全能供血者、AB型は全能受血者と呼ばれていたが、ABO以外の型物質(Rh因子やMN式血液型など)が存在することもあり現在では緊急時を除いては通常行われない。2010年4月には大阪大学医学部附属病院で治療を受けた60代の患者が同型の赤血球製剤とO型の新鮮凍結血漿の輸血後に死亡する事故が発生している(但し、この患者は搬送当時すでに意識がなかったことから輸血が原因でない可能性もある)。

なお、自然抗体を持っている理由は、細菌やウイルスが唾液や性的接触などにより人間間で感染するように、人間の細胞や細胞の断片も人間間を移動するからであり、移動した断片はマクロファージによりファゴサイトーシスされ、これがT細胞に提示され抗体が作られる。主にIgMが作られるが、IgG抗体も作られることもある。

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糖脂質についてもっと詳しく知りたい方には総説(9、10)などがあります。

参照

1)山川民夫著 「糖脂質物語」講談社学術文庫 (1981)

2)日本光合成学会:http://photosyn.jp/pwiki/index.php?%E3%83%A2%E3%83%8E%E3%82%AC%E3%83%A9%E3%82%AF%E3%83%88%E3%82%B7%E3%83%AB%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%82%B7%E3%83%AB%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%82%BB%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%AB

3)下嶋美恵・小林康一・太田啓之 葉緑体チラコイド膜を構成するグリセロ糖脂質の生合成と機能 化学と生物 vol.46, pp.330-337 (2008)

4)H.Thierfelder and E.Klenk., Die Chemie der Cerebroside und Phosphatide. (1930)

5)A.C.Chimball, S.H.Piper, and E.F.Williams.,  XVIII.THE FATTY ACIDS OF PHRENOSIN AND KERASIN. Biochem.XXX pp.100-114 (1936)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1263366/pdf/biochemj01065-0112.pdf#search=%27Thierfelder+and+Klenk+1930%27

6)Herbert E. Carter et al., Biochemistry of the sphingolipides. III. Structure of sphingosine.  J. Biol. Chem. vol.170, pp.285-294 (1947)
http://www.jbc.org/content/170/1/285.full.pdf

7)N a t i o n a l  Ac a d e m y  o f  S c i e n c e s,  H e r b e r t  E d m u n d  C a r t e r 1 9 1 0 — 2 0 0 7
A Biographical Memoir by Robert K. Yu and John H. Law (2009)
http://www.nasonline.org/publications/biographical-memoirs/memoir-pdfs/carter-herbert-e.pdf

8)William W. Christie., GANGLIOSIDES STRUCTURE, OCCURRENCE, BIOLOGY AND ANALYSIS (2012)
https://web.archive.org/web/20120328213709/http://lipidlibrary.aocs.org/lipids/gang/file.pdf
https://web.archive.org/web/20091217095434/http://lipidlibrary.aocs.org:80/Lipids/gang/index.htm

9)Sen-itiroh Hakomori., Structure and function of glycosphingolipids and sphingolipids: Recollections and future trends. Biochim Biophys Acta. vol. 1780(3) pp. 325–346. (2008)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2312460/

10)Zhou and Blom. Trafficking and Functions of Bioactive Sphingolipids: Lessons from Cells and Model Membranes. Lipid Insights vol. 8 (S1) pp. 11–20 (2015) doi:10.4137/LPI .S31615.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4685176/pdf/lpi-suppl.1-2015-011.pdf

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2017年4月13日 (木)

勝利を呼ぶ猫

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勝利を呼ぶ猫

そう 猫は虎の仲間でした!

https://www.youtube.com/watch?v=fIi35-F9H-M

https://www.youtube.com/watch?v=0C8-A5Vefiw

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2017年4月11日 (火)

PCディスプレイ with 北総の桜満開

Imga雨天の隙間をぬって、今年も北総の桜並木を撮影しました。

パソコンのディスプレイがリタイヤしてしまってたのですが、北総ではもはやPCディスプレイなど売っているお店が稀少で困りました。ようやく牧ノ原の量販店に置いてあったので、購入することができました。メーカーはI・ODATA・フィリップス・BenQ・Acerくらいしかなく、こんなところにも日本の製造業の敗北を感じさせられました。

ソニー、富士通、パナソニック、NECなどのPCメーカーはもはや単品ディスプレイなど製造していないようです。自由貿易を貫徹すると、ほとんどの製品がこういうことになるんですよ、池上さん。ただI・Oデータだけは頑張っていて、昔PCメモリー専業の会社だったころ、金沢の本社前を通りかかったことがあるのですが、秋葉原裏路地のパーツ屋さんみたいな感じでした。今でも本社は金沢にあるみたいで、多くのメーカーが倒産したり手を引いたりするなかで、よく生き残ったと思います。

というわけで、ウェブ上ではあまり評判が良くなくても、私はI・ODATAの23インチの製品を選択しました。なんだかんだ言って、メモリー、ハードディスク、ディスプレイなどいろいろな製品で長い間お世話になっています。今度もセットアップしてみると、非常に見やすい感じでOKでした。ただデフォルトの色調はやや黄色っぽくて納得できませんでした。リセットしても大して変わらなかったので調整用のソフトをダウンロードして、あれこれやってみましたが、まだ満足できる色調ではなく、さらに調整が必要です。

本日東芝の決算が発表されましたが、なんと監査法人は会社の事業継続に疑義を呈しているとのことでお墨付き無しとは驚きました。東芝というのは日本でも最も優秀な学生が集まる会社のひとつで、それでこのていたらくですから、いかに日本のトップビジネスが脆弱かということでしょう。日産・三洋・三菱自動車・シャープときて東芝です。マリアナ沖海戦あたりまで来たかな。なにしろ日本のトップが晋三ですから(おそらく大本営以下)、またろくでもない延命政策をやって税金をドブに棄てることになるのでしょう。エルピーダの2の舞ですね。しかも規模は数十倍(@_@)。

I・ODATAはまだメモリーを製造して販売しているのに、東芝は売却やむなしまで追いやられているというのは、いくら有能な技術者がいても、マネージメントがダメだったり、政府がどうしても原発をやれ(爆発した後になっても)などと茶々を入れたりすると、どうしようもなくなるという好例です。

もうひとつ心配なのは、東大法学部などの有能な学生の就職先である官僚が、晋三政権によって書類自動消去など漫画チックな集団になっていることです。やれやれ。

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2017年4月10日 (月)

2016~2017リーガ・エスパニョーラ第31節: バルサ リーガ制覇は風前の灯火

Braugranaマラガに2:0で敗戦です。これで今シーズンのリーガ制覇はほぼ絶望となりました。4月のマドリーとバルサのスケジュールは超多忙です。そんな中でレアル・マドリーは、レガネス戦でBBCとモドリッチ・イスコ、すなわち主力ほとんどを休ませるという布陣で勝利したのに対し、中2日のバルサは絶不調のマラガに、ネイマール・スアレス・メッシを使って敗戦。しかも彼らを休ませたときに出場させるべきサンドロにやられるという皮肉。この差は何なのでしょうか?

確かに、マスチェラーノをSBで使うのは無理筋ですし(多分セルジを温存したかったのだと思いますが)、デニス・ゴメス・メッシの中盤は慣れない連携に難がありました。しかし決定的なのは、体が重くてプレイの精度が低下、特に守備の時に俊敏に動けない選手が多いのではどうしようもありません。サンドロへのロングパスの時のマチューの反応などは、頭脳の反応がおかしくなっているとしか思えませんでした。敵陣深くからのロングパスに、サンドロのケアとは逆方向に走っていくのには呆然です。

それにしても、どうしてビダルが負傷したときにすぐにSBを補強しなかったのでしょうか? 週に2回づつセルジを右SBで使うとつぶれることは明らかで、じゃあ経験が乏しいマスチェラーノの右SB起用もやむなきに至ることは明らかだったはずです。

セヴィージャの5バックにはがっかりしましたが、マラガの5バックは納得できます。瞬殺カウンターにかける作戦がうまくいきました。しかも今回のバルサは、最終ラインが2人になる場合が多く、ブスケツのポジションが前すぎたことも彼らに味方しました。

そうこうしているうちに、ネイマールが昔のネイマールとなって2枚もらってしまい退場とはあきれました。あえてカードをもらいに行ったような行為の意味がわかりません。なきっつらにハチで、私のモニターがかげろうのように揺れ始めて、これはオカルト? なんとかしなくっちゃ・・・。

これからは、ともかく次のユヴェントス戦に全力を尽くして、何とかUEFAチャンピオンズリーグの勝ち残りにかけるほかありません。

https://www.youtube.com/watch?v=nWFLLk8HE20

https://www.youtube.com/watch?v=aW-uju24JDY

https://www.youtube.com/watch?v=wSgRxNeQFEY


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2017年4月 8日 (土)

JPOP名曲徒然草178: 「いくたびの櫻」 by ふくい舞

Imga_2今年は3月が寒かったですが、桜は昨今の暖かさでいつも通りの北総スケジュールで、4月第2週に満開になりそうです。現在8分咲きくらいか。ただ現在の天気は悪くて雨模様。良い写真がとれるかどうか心配です。

ふくい舞さんはシンガーソングライターですが、この「いくたびの櫻」は作詞:山上路夫、作曲・編曲 佐藤博の作品です。この曲は佐藤博さんの飼い犬への追悼曲だそうです。

めったにシングルは買わない私ですが、曲の良さに惹かれてつい買ってしまいました。

ふくい舞さんはネバリッ気の多い重厚な歌唱ですが、この曲にはマッチしていると思います。いろいろ他の曲も聴いていくと、この人は洋楽の造詣が深い方だということがわかります。ちょっと宇多田ヒカル的な曲もあるかな?

https://www.youtube.com/watch?v=9vwVMyKuZxw
https://www.youtube.com/watch?v=abi05nEjbD0
https://www.youtube.com/watch?v=IHJMmaz8gxc

アコースティックバージョン
https://www.youtube.com/watch?v=iiHTS4JCo9c

「アイのうた」
https://www.youtube.com/watch?v=gsmDdmrkxD0
https://www.youtube.com/watch?v=6TT4qu9irTw 
(in English)
https://www.youtube.com/watch?v=5FBKV5lB0lU
https://www.youtube.com/watch?v=nXZmhG9pnj0

「Rain-bow」
https://www.youtube.com/watch?v=6VP1gnd36og

「Believe」
https://www.youtube.com/watch?v=aBHxqGa8m4g

「Beautiful Days」
https://www.youtube.com/watch?v=c4NmoTD9qdc

「約束の場所」
https://www.youtube.com/watch?v=RFY5oq-gVuk
https://www.youtube.com/watch?v=72ZpPROoUic

「悲しみよこんにちわ」
https://www.youtube.com/watch?v=5BYiJDo_PK0

「Cancan」
https://www.youtube.com/watch?v=c0YPEti5pvc

神戸ハーバーランドにてストリートライヴ
(思い切りエモーショナルに、でもナチュラルにやっています)
https://www.youtube.com/watch?v=Wc3PTMG5jP0

オフィシャルサイト:http://fukuimai.net/
Twitter: https://twitter.com/fukuimai



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2017年4月 7日 (金)

2016~2017リーガ・エスパニョーラ第30節: セビージャ消極作戦が裏目

BraugranaUEFAチャンピオンズリーグの関係でミッドウィークにもリーガの試合があります。レアル・マドリーはなんとBBCばかりか、モドリッチとイスコもベンチに置くという思い切った作戦で勝ってしまうという、恐ろしいばかりの選手層の厚さを誇示しました。

さてバルサはどうか? ラフィーニャは重傷で今季絶望です。セビージャとの対戦ですし、FWはネイマール・スアレス・セルジ、MF:イニエスタ・メッシ・ラキティッチ・ブスケツ、DF:ウムティティ・ピケ・マスチェラーノ、GK:テア=シュテーゲン。私はどうして3バックをやるのかよくわかりません。中盤の人数が足りないときはSBを上げれば済むことですし、守備の人数が足りなければブスケツを後退させればいいわけですから。

セビージャはホアキン・コレアというイケメンの若い選手をワントップで使ってきました。2列目にナスリ・エンゾンジ・イボーラ・ビト-ロ、DFはエスクデロ・ラングレ・パレハ・メルカド・マリアーノ、GK:セルヒオ・リコ。セビージャというリーガを代表するチームのひとつが5バックというのは感心しませんねえ。451の方が戦えると思うのですが、現場責任者の考えるシビアな采配には、何か重苦しいものを感じます。

バルサとしては5バック大歓迎です。前線・中盤のチャージが甘くなるので、とりあえず自由に球が回せます。ただセビージャの2列目はクセ者揃いなので、16分にはエンゾンジに右に割り込まれて1:1で打たれますが、テア=シュテーゲンが足ではじいて事なきを得ました(失敗した後のエンゾンジの顔がお茶目)。18分にはイニエスタからの球をラキがヘディングで狙いましたが、少し外れました。

25分にはラキが奪った球をメッシが受けて、右サイドを疾走。メッシからのパスを受けたスアレスの豪快なバイシクルでバルサ先制。これは5バックもなすすべがありません。28分にはカウンターからネイマール→スアレス→メッシとつないでゴール。スアレスのマイナスパスはプロの技で、うならせてくれました。2:0です。

さらにバルサはたたみかけ、33分にFKのこぼれ球をメッシが密集の隙間を突き抜けるシュートでダメ押し。勝負を決しました。後半は特に何事も無く時間をつぶして終了。レアル・マドリーがこけるのを待つだけのバルサですが、ここにきて元気な選手が増えてきたのは心強い。

https://www.youtube.com/watch?v=SV6HVlmgmKY

https://www.youtube.com/watch?v=rJ-mIAczJjU

https://www.youtube.com/watch?v=LgyYQJcymso


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2017年4月 6日 (木)

憲法第八九条

A1130_000078憲法を読んでいて一番露骨に守られていないのは第89条だと思います。

憲法第89条は特定の宗教団体、慈善団体、私立学校などに補助金を与えることで、特定の宗教や思想を意図して蔓延させることによって、国民を洗脳支配しようとする政党がでてこないようにすることを意図しています。

もともとのターゲットは「神道」と「臣民の道」だったのでしょう。

こちら

非常に納得できる条文だと思います。それだけに守られていないのは残念です。

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第八十九条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織もしくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。
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重要文化財などの維持管理のために神社仏閣に補助金を出すのは、この条文の趣旨に反するわけではないので容認できますが、私立の幼稚園から高校までの学校に補助金を出すのは明らかに条文の趣旨に反しています。

日本を独裁的に支配しようとする勢力が必ず考えるのは教育の支配です。自分たちの思想を徹底させた私立の教育機関どんどん作って、それらを補助金によって支配し、学徒を洗脳すれば、何度選挙をやっても自分たちが勝つような社会に変質させることができます。森友はその1例ですし、今の政府はその他にも政府関係者の息のかかった学校を増加させようとしているではありませんか。

http://saigaijyouhou.com/blog-entry-15874.html
http://saigaijyouhou.com/blog-entry-16208.html

そうでなくても高圧的な政府から経営に必須な補助金をもらえば、忖度した教育を行わざるを得なくなります。例えば教育勅語の採用はその一例でしょう。国民は臣民であることが刷り込まれるのです。現在のような官僚と政党が一体化している政治システムだと、ますます私学助成は危険です。学校を特定の政治勢力の支配下に置かないように、この89条が厳密に守られるようにすべきでしょう。

http://www.asahi.com/articles/ASK434JXWK43UTFK006.html

ただし中高の部活(スポーツ・音楽・文芸・学術)や先生の研究を助成することは可能でしょうし、私立大学における学術研究の助成はもちろん89条とは関係ありません。

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教育勅語
朕󠄁惟フニ我カ皇祖皇宗國ヲ肇󠄁ムルコト宏遠󠄁ニ德ヲ樹ツルコト深厚ナリ我カ臣民克ク忠ニ克ク孝ニ億兆心ヲ一ニシテ世世厥ノ美ヲ濟セルハ此レ我カ國體ノ精華ニシテ敎育ノ淵源亦實ニ此ニ存ス爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦󠄁相和シ朋友相信シ恭儉己レヲ持シ博󠄁愛衆ニ及󠄁ホシ學ヲ修メ業ヲ習󠄁ヒ以テ智能ヲ啓󠄁發シ德器ヲ成就シ進󠄁テ公󠄁益ヲ廣メ世務ヲ開キ常ニ國憲ヲ重シ國法ニ遵󠄁ヒ一旦緩󠄁急󠄁アレハ義勇󠄁公󠄁ニ奉シ以テ天壤無窮󠄁ノ皇運󠄁ヲ扶翼󠄂スヘシ是ノ如キハ獨リ朕󠄁カ忠良ノ臣民タルノミナラス又以テ爾祖先ノ遺󠄁風ヲ顯彰スルニ足ラン斯ノ道󠄁ハ實ニ我カ皇祖皇宗ノ遺󠄁訓ニシテ子孫臣民ノ俱ニ遵󠄁守スヘキ所󠄁之ヲ古今ニ通󠄁シテ謬ラス之ヲ中外ニ施シテ悖ラス朕󠄁爾臣民ト俱ニ拳󠄁々服󠄁膺シテ咸其德ヲ一ニセンコトヲ庶󠄂幾󠄁フ


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2017年4月 4日 (火)

2016~2017リーガ・エスパニョーラ第29節: スアレス ループで決める

Braugrana降格圏内のグラナダとのアウェイ戦です。グラナダはスペイン人選手がほとんどいないという、驚くべき選手構成。EUがあればこそのチームです。2トップでペレイラとクラヴェツ、MF:アングバン・ワカソ・アグボ、DF:エクトル・ガストン=シルバ・ロンバン・ソニエ・フルキエ、GK:オチョア。

バルサはメッシがカード累積で出場停止。スアレスの1トップで、2列目がネイマール・Aゴメス・ラキティッチ・ラフィーニャ、ボランチがブスケツ、DF:アルバ・マチュー・マスチェラーノ・セルジ、GK:テア=シュテーゲン。4バックに戻しました。これは歓迎します。

チケットが1万円からということで、早々と勝負が決しないようにレフェリーの忖度が著しく、グラナダはファウルのやり放題です。エリア内でスアレスが後ろから羽交い締めされてもおかまいなしなのにはあきれました。カードも出しません。後半はガチンコになったので、何か話が付いていたのではないかという疑いをもちました。

バルサは16分にラフィーニャが故障でパコと交代。ラフィーニャもよくよくツキのない男です。パコはまだバルサになじんでいなくて、遠慮がちのプレイ。27分にはフリーのシュートチャンスをスアレスにパスで譲り、スアレスがシュートしましたが、GKオチョアが今日は冴え渡っていてスーパーセーヴ。

このままハーフタイムかと思っていた前半終了直前、アルバが自陣深くからロングフィードをスアレスに一発通して、スアレスがループで決めました。見事な瞬殺カウンターでした。

ところが後半5分、後半から出ていたボガにスルーパスでDF裏に抜け出されて失点。オフサイドトラップの失敗でした。バルサも今年はDFラインがめまぐるしく変わるので、弱点を突かれた感じでした。しかしバルサも19分、スアレスのループパスでパコが抜け出してゴール。返礼に成功。パコもこの調子で、早くバルサになじんで欲しい。

後半はレフェリーの変身で、じゃんじゃんカードが出て、37分にはアグボ退場。中盤がスカスカとなり、38分にラキティッチがゴール。アルニャー初出場の余裕です。終了直前には、パコが右から豪快なクロスをネイマールにあわせてゴール。バルサ4:1の勝利でした。

メッシとイニエスタがいないと、バルサのサッカーは変わります。全員が起点となり、一発の瞬殺パスで決めるサッカーです。意思統一ができていれば、緊張感のある面白いサッカーになりそうです。

https://www.youtube.com/watch?v=v5d0NmOp3Uc
https://www.youtube.com/watch?v=I5VTNvClOwM
https://www.youtube.com/watch?v=VxgXY5hMFm8


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2017年4月 3日 (月)

やぶにらみ生物論68: 脂肪酸と油脂

脂肪というとすぐ中性脂肪とかセルライトが気になるわけですが、エネルギーを蓄えておくためのツールとして脂肪は重要です。動物にとって飢餓は日常的であり、いざというときに生き残れるかどうかは、どれだけ脂肪とグリコーゲンを体内に蓄えておけるかにかかっています。人間については、現在世界で9億2500万人が飢餓状態にあり(1)、日本でも2011年の厚生労働省の調査では年間1746人が餓死しています(2)。食べ物がないときに生き残るには冬眠・夏眠が有効ですが、残念ながらヒトにはその能力はありません。

しかし生物にとってエネルギー蓄積が課題になるより進化上はるかに前の段階で、脂肪は細胞膜の最も主要な成分として、すなわち生命と外界を分かつパーティションとしての役割がはじまったはずです。これは生命誕生のひとつの条件であり、たとえ熱水噴出口近傍の金属片の上で核酸や酵素が生成されたとしても、それらが細胞膜で包み込まれるまでは生命体とは言えないでしょう。そして現在では、脂肪はホルモンや情報伝達物質としても重要な役割を果たしていることがわかっています。

脂肪の基本は脂肪酸です。最初に脂肪酸を発見したのは誰だか私にはわかりませんが、ステアリン酸やオレイン酸を発見して精製したのはミシェル=ウジェーヌ・シュヴルール(1786~1889)です(図1、参照3、4)。彼はフランス革命とエッフェル塔建設を目撃した数少ないフランス人だそうです。エッフェル塔の展望室の少し下の壁に、フランスの偉人の名前が刻まれていますが、シュヴルールの名も図2の赤の矢印の下にみつけることができます。図2をクリックして拡大すると、名前が読めます。

A

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脂質は脂肪酸関連物質、芳香族化合物の環構造を持つ物質、複合脂質の3つのグループにわけられると思いますが(図3)、量的に言えば脂肪酸関連物質が生体内には圧倒的に多量に存在します。カルボン酸をR-COOHと書くとすると、Rが水に溶けないCとHからなる場合脂肪酸といいます。ただしRがH、CH3、CH3CH2あたりまではカルボキシル基の影響が強く、脂肪らしくない性質なので、通常脂肪酸とは呼びません。CH3CH2CH2(酪酸)あたりからは脂肪酸と呼びます(図4)。これらの脂肪の性質を与える炭素+水素の鎖を、鎖の長さを問わずアシル基と呼ぶことがあります。

A_3

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常温で液体の脂肪酸は世の中で最も臭い物質の1グループだと思います。吉草酸やカプロン酸の臭さは半端じゃありません。私が学生実習などでかいだ臭いの中では、ピリジンとトップを争う悪臭と思います。屍体の臭いは多数の物質の混合臭なので比較することはできません。

これらの低分子量の脂肪酸は確かに飲むと健康を害しますが、特別にそのような脂肪酸を忌避する能力(臭いと感じる能力)が私たちに備わっていることには何らかの理由があるまたはあったのでしょう。炭素原子数が10くらいになると常温で固体なので、臭いは気にならなくなります(図5)。図5にはR-COOHのR部分にC=Cの二重結合がない、いわゆる飽和脂肪酸のリストを示しました。カプリル酸より分子量が大きい脂肪酸は食用に使えます。

A_5

カプリル酸はウィキペディアによると母乳に含まれているそうですが、カプリル酸には殺菌作用があるので、免疫機構が未発達の新生児には有益なのかもしれません。

脂肪酸は生合成されるときに炭素が2個単位で重合していくため(5、6)、生体内に存在する主要な脂肪酸の炭素の数は偶数になります(図5、参照5)。ただしメインであるアセチルCoAとマロニルCoAとの縮合ではなく、プロピオニルCoAとマロニルCoAの縮合を出発点とする経路もあるので、炭素が奇数の脂肪酸が全く存在しないわけではありません。

脂肪酸は数値表現されることがあり、図5の左端列に示してあります。コロンの左側が炭素分子の数。コロンの右側が二重結合(C=C)の数になります。飽和脂肪酸の場合二重結合がないのでコロンの右は0になります。数値表現はわかりやすくて便利です。

二重結合(C=C)が分子内に存在する脂肪酸を不飽和脂肪酸と呼びます。炭素数が18の例を図6に示しますが、例えば18:2(9、12)というのは炭素数=18、二重結合=2ヶ所、二重結合がカルボキシル基から数えて9番目と10番目および12番目と13番目の炭素によって形成されているという意味です。オレイン酸はステアリン酸から生合成されますが、ヒトの場合、生きていく上で必要なのにリノール酸、リノレン酸、EPA、DHAなどは生合成できないので、これらは必須脂肪酸とされています。

A_6

図6では炭素の鎖が途中で180度折れているように描いてありますが、慣用表記のひとつであり、実際にこのように折れているわけではありません。分子の屈曲は二重結合の性質(シスかトランスか)、数、位置によって異なります。図7に例を示します。αリノレン酸は大きく屈曲しています。

A_7

混乱して困る話しなのですが、脂肪酸の命名法のなかに、カルボキシル基と反対側のCH3から数える方法もあって、ω:オメガ法ではα-リノレン酸は3つめに最初の二重結合があるのでω3脂肪酸、γ-リノレン酸は6つめに最初の二重結合があるのでω6脂肪酸などと呼ばれます(図8)。n-数値という表現も逆から数えた表現法です。α と γ は習慣的に使用している表現法に過ぎません。

A_8

C=Cの二重結合にはシス型とトランス型があって、一般にシス型すなわち二重結合の片方にふたつのHが来る場合、図9のように分枝は屈曲します。自然界に存在するオレイン酸はほとんどシス型なので、通常オレイン酸と言った場合シス型を意味します。

シス型がの二重結合が二つあった場合、リノール酸のように屈曲が修正されることがあります。人工的に製造されたトランス脂肪酸は食べると健康に悪影響があることがわかっています(7)。アメリカの食品医薬品局(FDA)は、マーガリンなどに含まれる「トランス脂肪酸」の発生源となる油の食品への使用を、2018年以降原則禁止すると発表しました(8)。日本政府はこの規制には消極的なようです。

A_9

グリセリン+脂肪酸=油脂+水という公式は、中学の化学の時間に皆さん習ったはずですが、再掲しておきます(図10)。油脂は生体内では最もメジャーな脂質です。

油脂は図10のように、グリセリン(グリセロール)1分子に脂肪酸3分子がエステル結合(-OC[=O]-)したものです。これによってグリセリンのOH、脂肪酸のCOOHという親水性の部分が消滅するので、典型的な疎水性の物質ができます。

3分子の脂肪酸はそれぞれ種類が指定されないので、例えば10種類の脂肪酸が用いられるとすると、10x10x10で1000種類の油脂ができ得ることになります。実際には脂肪酸の種類はもっと多いので、油脂の種類は無数にあることになります。

A_10

グリセロリン脂質はグリセリンのOHのうち、R1・R2は油脂と同じ脂肪酸と結合し、R3のOHがリン酸エステル(-OP[=O、-O]-)結合したものです。グリセリン以外のリン酸に結合する物質によって、フォスファチジルコリン・フォスファチジルセリン・フォスファチジルエタノールアミンなどが知られています(図11)。これらは脂質であるにもかかわらず、親水的な部分が存在するという特異な性質を持っています。この性質は両側で水と接触する細胞膜にとって、あるいは脂肪を血液中で運搬する作業にとって重要です。これらについては別のセクションで述べます。

A_11

動植物の細胞膜中に最も多量にあるのはグリセロリン脂質ですが、次に多いのはスフィンゴ脂質です。哺乳類では特に中枢神経に多いとされています(9)。スフィンゴ脂質の基本骨格はスフィンゴシンです。アミノ基1個とOHを2つ持つ直鎖状の分子です(図12)。このアミノ基に1分子の脂肪酸がアミド結合したものがセラミドです。

セラミドの末端のOHにフォスフォコリンやフォスフォエタノールアミンが結合したものを、スフィンゴミエリンといいます。スフィンゴミエリンは神経のサヤである神経鞘の主成分です。セラミドは最近では保湿剤としてよく化粧品に配合されています(10)。「うるむセラミド」などというキャッチフレーズもありました。

A_12

スフィンゴシンやセラミドを発見したのはトゥーディヒョウム(図13 日本ではツディクムと発音される Johann Ludwig Wilhelm Thudichum 1829~1901)です。1884年に刊行された ”Chemische Konstitution des Gehirns des Menschen und die Tiere (Chemical constitution of the brain)” という本に記載されているようですが私は読んでおりません。

竹富保の「"神経化学の父"ツディクム」という文献が廃刊となった「自然」誌にあります(11)。 ドイツ生まれで、主にイングランドで仕事をしたトゥーディヒョウムは多才な人だったようで、ウィキペディアにはお料理の本を出版しているという記載があります。山川民夫によると、トゥーディヒョウムがスフィンゴシンという名前をつけたのは、旅人になぞかけをしたスフィンクスにちなんで、「謎物質」という意味だったそうです(12)。

A_16


アラキドン酸(5,8,11,14-Eicosatetraenoic acid)は図14のとおり何の変哲もない不飽和脂肪酸の1種なのですが、そこからプロスタグランディン、トロンボキサン、ロイコトリエン(すべて総称で特定の化学物質を指しているわけではありません)を生合成する経路が派生しています(アラキドン酸カスケード)。これらの物質は免疫反応と深い関わりがあり、薬学の分野では数十年間、間断なく注目を集めています。

A_14

参照

1)JIFH集計: https://www.jifh.org/joinus/know/population.html

2)厚労省: http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-11541237843.html

3)http://www.cyberlipid.org/chevreul/work0003.htm

4)Michel Eugène Chevreul, Recherches chimiques sur les corps gras d'origine animale. (1823)
https://books.google.co.jp/books?id=94_H7hfQfS0C&hl=fr&redir_esc=y

5)福岡大学 脂肪酸の生合成:
http://www.sc.fukuoka-u.ac.jp/~bc1/Biochem/fa-syn.htm

6)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%84%82%E8%82%AA%E9%85%B8

7)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E8%84%82%E8%82%AA%E9%85%B8

8)https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150619-00000009-wordleaf-soci

9)ホートン 生化学第3版 東京化学同人(2003)

10)https://www.youtube.com/watch?v=8RtDw0FKzPk

11)自然 / 中央公論社 vol. 29, 12号、pp.44-52

12)山川民夫 「糖脂質物語」 講談社(1881)

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