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2016年12月29日 (木)

やぶにらみ生物論54: mRNAへの道1

細菌では転写が行われると、通常できたばかりのRNAにリボソームがくっついて翻訳(RNAからタンパク質へ)が開始されます。ですから鋳型DNAと転写されたRNAと翻訳工場のリボソームが一体化した状況の電子顕微鏡写真が撮影されています。

しかし真核生物ではそうはいきません。転写は核内で行なわれますが、リボソームは核の外の細胞質内にあります。従ってRNAを核膜を通過させて核の外に出し、そのRNAをリボソームまで導かなければなりません。

このようなプロセスを裸のRNAにやらせようとすると、リボソームにたどり着く前にヌクレアーゼで分解されて影も形もなくなってしまうでしょう。そこで転写されたRNAには直ちに5’側にはキャップ、3’側にはポリAテイルが付加されて、端からRNA分解酵素にかじられるのを防いだり、自らがmRNAであることのシグナルとして機能させたりという役割を与えられています(図1)。

キャップとテイルは翻訳領域に直接つけられるのではなく、それぞれ翻訳されない領域 (5'-UTR=5' untranslated region, and 3'-UTR=3' untranslated region) で隔てられた部分につけられます。つまりmRNAはその全域がタンパク質の情報として翻訳されるのではなく、翻訳領域の両側(上流・下流)に余裕を持って非翻訳領域を配置し、さらにその両端にキャップとテイルを配置するような構造になっています(図1)。

A

キャップの存在を発見したのは古市泰宏 (1940~)で、当時の事情は彼自身が詳しいレビューを出版していますし(1)、日本語での自慢話も読めます(2)。

図2に示したように、転写されたRNAの5’末端ではリボース2つの2’の位置がメチル化されていて、さらに末端に7-メチルグアノシン3リン酸が5’-5’という奇妙な配位で結合しています。通常ヌクレオチドは5’-3’結合しかしないので、生化学的にこれは特殊な例と言えます。この構造のために通常のエクソヌクレアーゼはアクセスできなくなっています。

A_2

ポリAポリメラーゼはすでに1960年にメアリー・エドモンズ (1922-2005) らによって発見されていましたが(図3、参照3)、ながらく何のためにあるのかわかりませんでした。転写されたRNAのテイルにポリAを付加するためだとわかったのは10年以上後になります(4,5)。転写されたRNAにキャップがかぶせられるのは数秒以内。テイルが付加されるのは30秒以内だとされています(6)。

EdmondsaポリAテイルがどのような役割を担っているかは現在でもホットな研究課題です。ポリAテイルに親和性をもつタンパク質は数多く、例えばPABP1というタンパク質ひとつとってみても、翻訳の開始、翻訳の促進、翻訳の抑制、mRNAの安定化、mRNAのターンオーバーなど驚くほど多彩なプロセスに関わっているようです(7)。

キャップとテイルでmRNAの加工は終わりかと思われていたのですが、1977年になって予想外の事態になりました。当時DNAとDNA、DNAとRNAを試験管の中で対面させて、相補的な塩基配列を持つ部分を結合させる(ハイブリダイゼーション)という技術が開発され、また電子顕微鏡で核酸分子を検鏡する技術も開発されました。

そこでアデノウィルスの完成された殻タンパク質をコードするmRNAと遺伝子DNAをハイブリダイズさせてみると、ぴったりとは符合せず、DNAに余ってループをつくる部分ができることがわかりました(8)。これは転写されたRNAの一部が切り離されたために、DNAの一部がハイブリッドを形成できなかったことを示唆します。

このような実験結果は、図4のような模式図によって説明できます。切り離される部分をイントロンといいます。イントロンの塩基配列は当然タンパク質の構造には反映されず、mRNAは残されたエクソンとキャップとポリAテイルによって構成されます(図4)。イントロンが切り離され、エクソンが結合されるプロセスをスプライシングとよびます。イントロンが切り離される前のRNAをプレmRNAとよびます。核に存在するmRNA、rRNA、tRNA以外のRNAをまとめてhnRNA(heterogenous nuclear RNA) とよぶこともあります。hnRNA がプレmRNAを意味する場合もあります。

A_3

レダーらのグループはより明確にスプライシングの存在を証明しました。彼らはマウスのβグロビン遺伝子の塩基配列を完全解明し、どこからどこまでがエクソン、どこからどこまでがイントロンなどの詳しい研究結果を示しました(図5、参照9)。これによって遺伝子が内部のふたつのイントロンによって分断されていることがわかりました。福岡大学のサイトにβグロビン遺伝子の全塩基配列やエクソン・イントロンの位置などが示されています(10)。

A_4

細菌や古細菌にも遺伝子の分断はみられますが、一般的ではありません。真核生物でも酵母やカビにはごく少数しかみられませんが、ヒトやマウスでは遺伝子ひとつあたり平均7~8ヶ所の分断がみられます(11)。

!今年の更新はこれが最後となります。皆様良いお年をお迎えくださいませ!

参照:

1) Yasuhiro Furuichi,  discovery of m7G-cap in eukaryotic mRNAs. Proceedings of the Japan Academy, Series B
Vol. 91 (2015)  No. 8  p. 394-409
https://www.jstage.jst.go.jp/article/pjab/91/8/91_PJA9108B-01/_article

2)古市 泰宏  走馬灯の逆廻し:RNA研究、発見エピソードの数々|はじめに キャップ構造の発見
https://www.rnaj.org/component/k2/item/383-furuichi-1

3)Edmonds M, Abrams R., Polynucleotide biosynthesis: Formation of a sequence of adenylate units from adenosine triphosphate by an enzyme from thymus nuclei. J Biol Chem 235: 1142–1149. (1960)

4)Edmonds M, Vaughan MR, Nakazato H. 1971. Polyadenylic acid sequences in the heterogeneous nuclear RNA and rapidly-labeled polyribosomal RNA of HeLa cells: Possible evidence for a precursor relationship. Proc Natl Acad Sci 68: 1336–1340. (1971)

5)Darnell JE, Philipson L, Wall R, Adesnik M. Polyadenylic acid sequences: Role in conversion of nuclear RNA into messenger RNA. Science 174: 507–510. (1971)

6)JE. Darnell, Jr., Reflections on the history of pre-mRNA processing and highlights of current knowledge: A unified picture. RNA vol.19, pp. 443-460 (2013)
http://rnajournal.cshlp.org/content/19/4/443.full

7)Richard W.P. Smith, Tajekesa K.P. Blee and Nicola K. Gray, Poly(A)-binding proteins are required for diversebiological processes in metazoans. Biochem. Soc. Trans. vol. 42, pp. 1229–1237 (2014) doi:10.1042/BST20140111

8)Berget S.M., Moore C., Sharp P.A., Spliced segments at the 5' terminus of adenovirus 2 late mRNA. Proc. Nati. Acad. Sci. USA, Vol. 74, pp. 3171-3175, (1977)

9)Konkel DA, Tilghman SM, Leder P. The sequence of the chromosomal mouse β-globin major gene: Homologies in capping, splicing and poly(A) sites. Cell vol.15, pp.1125–1132. (1978)
http://www.cell.com/cell/fulltext/0092-8674(78)90040-5

10)http://www.sc.fukuoka-u.ac.jp/~bc1/Biochem/transcrp.htm

11)J.D. Watson et al. Molecular Biology of the Gene 6th edn p.416 (2008)

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2016年12月27日 (火)

フルシャ-都響 ベートーヴェン交響曲第9番@サントリーホール

Imgaフルシャ-都響の第9を聴きにサントリーホールに行ってきました。フルシャ-都響の第9は芸術劇場・文化会館・サントリーホールと3回目ですが、すべてチケット完売で今回も満席でした。都響のメンバーも張り切っていて、マキロンもメイクバッチリですし、古川さん(Vc)が一番後ろで弾いたのは、ひょっとしてノーギャラ? 

カラヤン広場はクリスマスデコレーションの後片付けで、分解したパーツを大勢の人がぞうきんで拭いて収納作業をやっていました。世の中いろいろな仕事があるものです。

年末の第9は10年くらい個人的にとりやめていたのですが、ここ3年くらいはまた通っています。どうしてやめていたかというと、習慣で音楽を聴くのはどうかなと思ったこと、歌詞の内容に一部共感できなかったこと、ベートーヴェンがシラーの詩のうち、毒にも薬にもならないような部分を選んで歌詞にしていたことに疑問を感じていたこと、などが原因でしたが・・・。

ただベートーヴェンもウィーンはメッテルニヒ体制で、物言えば唇寒しの時代だったので妥協せざるを得なかったのでしょう。それにどうしても演奏会を成功させないと生活に困るという状況だったのかもしれません。そんななかでも自分の作詞で「ニヒト・ディーゼ・テーネ」とバリトンに叫ばせたのは本当は「ニヒト・メッテルニヒ」と言いたかったのでしょう。同情ばかりはしてはいられません。現在の日本も厳しいテレビの言論統制、無理矢理の軍事基地建設、ネットや警察のレイシズム容認、天皇の発言封じ、治安維持法復活の危機など暗雲がただよう時代となってきました。

とりあえずフルシャは若々しく躍動感があって迫力満点の指揮で、都響(コンマス矢部ちゃん、サイドゆづき)・二期会の演奏もすばらしく、特にソリストの4人はコンディションもよく堂々たる歌唱で感服しました。ただ合唱のバランスはやや男性の声に偏っていたような印象がありました。

12月にフルシャ-都響の演奏を3回聴きましたが、私的にランクをつけるとすると、

1位 マーラー交響曲第1番@東京芸術劇場
2位 ショスタコーヴィチ交響曲第10番@東京文化会館
ちょっと差があって↓
3位 ベートーヴェン交響曲第9番@サントリーホール

となります。マーラーの第1交響曲は若きマーラーとフルシャとの一体感が感じられました。ベートーヴェンの第9交響曲は50代半ばの作品で、果たして今回のような若さと熱血で押し切るような演奏でいいのかという気がしました。第1楽章などもっともやもやした感じかと思っていたら、非常にすっきりとまとまった演奏でしたし、第3楽章は落ち着きに欠ける感じがしました。とはいいつつも、このような第9の演奏が嫌だというわけではありません。人は状況や気分によって聴きたいタイプの音楽は違います。

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2016年12月26日 (月)

ミツバチの災難

A0002_006068みつばちは皆さんご存じのように1妻多夫制であり、このシステムの利点は、働き蜂が出産で休業しなくていいということ以外にも、女王蜂さえ健康であれば、いくら働き蜂が殺されてもすぐにコロニーを再建できるというところにあります。

ですからネオニコチノイド系殺虫剤によってミツバチが激減するという現象は、女王蜂の健康被害というところに関心がいくのは当然です。

しかし最近ベルン大学のラルス・シュトラウプらは、女王蜂に精子を提供するオス蜂への影響が大きいことを示しました(1)。

彼らは通常の散布によって空気中に残留する程度の濃度の薬剤存在下でオスを飼育し、生きている精子が40%も減少することを証明しました。またオスは働き蜂より薬剤に弱くて、薬剤存在下約2週間の飼育で働き蜂には無効なのに、オスは薬剤がないときとくらべて半分くらいの生存率になってしまうこともわかりました。これではコロニーが維持できません。

使用した薬剤の種類と濃度:
thiamethoxam 4.5 ppb, clothianidin 1.5 ppb
ppb は ppm の千分の1の濃度です (ppm は 0.0001% = 1mg/liter)

被子植物は花のある植物で昆虫によって受粉を媒介されるので、ミツバチなどの昆虫とともに進化してきており(2)、かつ私たちの主食を提供してくれています。受粉を媒介してくれる昆虫がいなくなると、人間の手で人工授粉させてあげない限り、被子植物は子孫をつくることができません。日本の厚生労働省は特にネオニコチノイド系殺虫剤の規制に消極的ですが、政策を転換してもらわないといけません。ひょっとすると少子化と関係があるかもしれませんよ。

特に団地の植物なんて枯れてもどうということはないし、病虫害に強い植物を植えれば良いだけのことですから、殺虫剤なんて撒く必要がありません。蚊が出てくればナイス蚊っち(3)で退治するのは結構楽しいですし、スズメバチは業者を呼んで巣をつぶしましょう。彼らはいくら殺虫剤撒いても出てきますし。

1)Straub L et al. 2016 Neonicotinoid insecticides can serve as inadvertent
insect contraceptives. Proc. R. Soc. B 283: 20160506.
http://dx.doi.org/10.1098/rspb.2016.0506

2)http://www.bee-lab.jp/hobeey/hobeeydb/db01/hobeey01_31.html

3)こちら

国際環境NGOグリーンピースの声明
http://www.greenpeace.org/japan/ja/news/press/2016/pr20160607/

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2016年12月25日 (日)

愕然 もんじゅを廃炉にする方法がない 

>テレビ朝日

http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000089584.html

福井県の高速増殖炉「もんじゅ」について、政府は今月中に廃炉を正式決定しますが、その一方で、技術的にもんじゅを廃炉にするめどは全く立っていないことが分かりました。

高速増殖原型炉もんじゅ

(ウィキペディアより)

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放射性物質を含む1次ナトリウム冷却液をどうやって取り出すのか? 水と入れ替えたいのですが、ナトリウムとまざると爆発するのでできません。冷却液といっても200℃以上なので、空気と触れただけでも火災になります。

うまく取り出せたとしてもどうやってどこに保管するのか? こんな危険なものを誰もひきとってくれるわけありません。

だいたい高速増殖炉の内部で普段何が起こっているかもよくわかっていないので、事故時に何が起こるのなんか全く未知との遭遇です。こんなものをやろうとした政府・政党にまず鉄槌をくださないと、これからどうするかなんて考えようがないじゃありませんか。

http://toyokeizai.net/articles/-/119466

http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n197245

http://blog.shibayu36.org/entry/20110329/1301399251

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2016年12月24日 (土)

BS1 文化大革命

「12月23日(金) 午後9時00分 NHK-BS1スペシャル▽文化大革命50年知られざる“負の連鎖”~語り始めた在米中国人」をみました。

まず驚いたのは、米国でウォルダー教授を中心に20年かけて詳細な文化大革命のデータベースを作ったということで、大量の資料も収集しているということです。NHKが彼らを選択したと言うことからみても、おそらく日本の文革研究は遅れをとっているのでしょう。現政府は大学での社会人文科学の縮小を標榜していますが、差はますます広がっていくのでしょう。

番組の内容では、紅衛兵の暴行は有名ですが実は造反派の内紛と軍による造反派の選別が多くの死者を生み出したというお話には驚きました。文化大革命の被害者の多くが米国に住んでいるというのも残念なことで、本来は日本に招き入れるべき人々だったのではないでしょうか。

最近私は「やぶにらみ生物論」というのをやっていますが、そのためによくウィキペディアをみるのですが、その英語版と日本語版の差は衝撃的です。日本の研究者の無力に愕然とします。子供が減っているのも、研究者の生活に大きな影響を与えます。大学や研究施設に仕事がなければ、自然科学は社会人文科学より急速に崩壊します。

米国という国家は甘く見るべきではありません。基礎科学にも莫大な予算を投入してきちんとやっています。グローバリズムから撤退しても、極端な話鎖国しても、1国だけでやっていけるだけの偉大な国家です。ウォルダーが20年もかけてコツコツと他国の事件の膨大なデータベースを作成できるような、学問研究をやる雰囲気があるのはうらやましく思います。

このあとの番組でエマニュエル・トッドが語ったことはほとんど同意できます。彼は「EUは監獄で看守はドイツである。EUは崩壊に向かっている」と発言しました。また「日本は中国と敵対してはならない。むしろ中国が内部崩壊しないように手助けするべきだ」とも発言しました。全くその通りだと思います。

彼が20年前に日本に来たときから少子化が大変だと話題になっていましたが、現在でもその問題がさっぱり解決されていないことに彼は驚いていました。この責任はもちろん官僚ではなく自民党にあります。自民党は20年間なんら有効な対策を行いませんでした。ですから官僚は年寄りを働かせたり、年金を下げたりというようなことしかできないのです。

ちなみに私の大叔父は20人近い子供がいて(再婚あり)、名前を忘れてしまったため同じ名前をつけてしまった子がいた(冗談ではない)ということを聞いています。ですから、なぜ子供が減るかというのはトッドが言うような家族観が原因でないことは明らかで、この点だけはトッドに同意できません。戦前の家父長制の時代でも数人以上子供がいるのは当たり前だったわけですからね。

A0070_000013そうそう今日はクリスマスイヴの日でした。

by ササニシカ with friends
https://www.youtube.com/watch?v=H-3vJX0KjGU

では メリー・クリスマス

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2016年12月23日 (金)

やぶにらみ生物論53: 転写2

転写1では細菌の転写について述べましたが、転写2では真核生物について述べます。細菌でも真核生物でもDNAの情報をRNAにコピーして、それを設計図としてリボソームでタンパク質を合成するという方式にかわりはありません。

まず細菌のRNAポリメラーゼと真核生物のRNAポリメラーゼ II を比較してみると(図1、参照1)、真核生物のRNAポリメラーゼ II は細菌の酵素の構成要素である5つのサブユニットと相同のサブユニットを保持していて(α2:RPB3&RPB11、β:RPB2、β’:RPB1、ω:RPB6)、さらに7つのサブユニットが追加されたような構造になっています。

A

これはゲノムのサイズが大きくなり、多種多様なタンパク質を適切な時期に発現させるという複雑なニーズに対応したものと考えたくなりますが、実は細菌よりゲノムサイズが小さめの古細菌(アーケア)のRNAポリメラーゼの構造は、細菌の酵素より真核生物のRNAポリメラーゼに圧倒的に近いということから(1,2)、この考え方は否定されます。古細菌は見た目は細菌と同じなのですが、生命現象の基幹的な部分が真核生物に近いという意味で、進化の最大の謎といっても過言ではありません。真核生物はこのグループから進化したと考えられていますが、その詳細は不明です。

古細菌も真核生物も構造は異なりますがクロマチンというDNAを保護する重層的な3次元構造を持っているため(3)、そのような障害を乗り越えて転写を行うためにサブユニットが増加したという考え方は可能でしょう。また真核生物は細菌より古細菌と近縁な関係にあることのひとつの強力な証拠でもあります。真核生物のRNAポリメラーゼ I および III は II よりもさらにサブユニットが増えており(1)、II を基本としてそこから派生したものと考えられます。

古細菌や真核生物においても転写に際しては細菌と同様なプロモーターが存在し、細菌の-10領域の配列を進化の中で引き継いだと思われるTATAボックスといわれる配列が存在します。この配列は厳密に指定されいるわけではありませんが、5'-TATA(A or T)A(A or T)G-3' のようにTATAという配列を含むものが多く、TATAボックスとかTATAエレメントなどと呼ばれています。

この配列は細菌ではシグマ因子が認識するわけですが、古細菌や真核生物ではTBP(TATA binding protein)という転写因子が認識します。TBPはRNAポリメラーゼのサブユニットではなく、真核生物の場合、TFIIDという巨大な転写因子のサブユニットとして機能します(図2)。図2にみられるように、真核生物の場合細菌よりも多数のプロモーターが存在し、転写開始点をまたいでいるものや、転写開始点より下流にあるものもあります。実は真核生物の場合、転写開始点からすぐ mRNA が読み取られるのではなく、mRNAの塩基配列はかなり下流からはじまるので、このようなことが起こりうるわけです。

A_2

図2に示したように、それぞれのプロモーターにはその配列に結合する転写因子が存在し、GCボックス-Sp1、CAATボックス-NF-Y、BRE(B recognition element)-TFIIB、TATAボックス-TBP、Inr(initiator element)・DCE(downstream core element )I~III・DPE(downstream promoter element)-TFIID などという組み合わせになっています。

当初すべての生物に普遍的に存在するTATAボックス-TBPが特に重要と考えられていましたが、真核生物ではすべての遺伝子のうちTATAボックスを持っているのは20%以下という調査結果が報告されており(4~6)、さらに同じ生物の同じ遺伝子でも組織によって使用するプロモーターが異なるというデータもあります(7)。したがって古い教科書を書き換える必要性がでてきました。

TFIIDはTAF1~15とAF4B・AF9B、そしてTBPという多数のサブユニット(全部そろっているとは限らない)で構成される巨大な転写因子複合体で、転写開始に直接的にかかわっていると考えられます(8)。TATAボックスがなくTBPを欠いている場合は、転写開始の位置が正確ではなくなり、複数の位置から開始される場合があることが知られています。実際に転写が開始される場合、TFIIDだけでなく、TFIIA・TFIIB・TFIIFなども加わって、さらに巨大な転写因子複合体を形成し、RNAポリメラーゼを所定の位置に配置した後、RNAポリメラーゼの一部をリン酸化することによって複合体から解離させて転写を開始させることになります(図3)。

A_3

真核生物の場合、DNAはヌクレオソームにまきつき(後の稿で述べます)、クロマチンという3次元構造をとっているので、それらをほぐさないと転写ができませんし、外部からの指令もさまざまな形できますので、TFIIグループの転写因子複合体だけでは遺伝子発現の調節に対応できません。したがってDNAが3次元的に折れ曲がっていることを利用して、遺伝子から離れた位置にあるプロモーターやエンハンサー配列に結合する因子なども遺伝子発現に影響を与えることができるようなシステムになっています。

このため遺伝子発現を調節するためのタンパク質複合体は数メガダルトンという巨大なサイズになることもあります(図4)。このようなシステムは細菌や古細菌にはありません。

A_4

このようにして転写は進みますが、どこかで終結させなければなりません。古細菌ではすでに細菌が行っているρ因子やヘアピン構造を用いる転写終結をやめていて(9)、真核生物も別のメカニズムで転写を終結させています(10)。

真核生物の場合、例としてβ-グロビンの場合を図5に示してありますが、転写開始がmRNAの先頭からはじまるわけではないように、転写終結も終止コドンの位置で終わらず、さらに下流まで転写は継続します。そしてAATAAAというポリA付加シグナルという塩基配列があると、その少し下流の転写終結シグナルTTTT、TTGCのところで転写は終結します。このあたりは厳密には指定されてはおらず、例えばポリA付加シグナルの何塩基下流でとか、終結シグナルがひとつでもあれば必ず止まるとかというわけではありません。実際TTTTはスルーされています。転写されたRNA3'末端には、ポリAポリメラーゼという特殊なRNAポリメラーゼによって、鋳型なしにAが連続的に付加されます(図5)。

A

転写されたRNAをmRNAに加工するメカニズムは次稿で述べます。

参照:

1) Guy Drouin and Robert Carter, Evolution of Eukaryotic RNA Polymerases. eLS, DOI: 10.1002/9780470015902.a0022872
(2010).
http://www.els.net/WileyCDA/ElsArticle/refId-a0022872.html

2) 平田章, 古細菌の転写装置. 生化学 vol. 81, pp. 377-381 (2009)
こちら1

3) Tanaka T1, Padavattan S, Kumarevel T., Crystal structure of archaeal chromatin protein Alba2-dsDNA complex from Aeropyrum pernix K1. Jornal of Biological Chemistry, vol. 287, pp. 10394-10402 (2012), doi: 10.1074/JBC.M112.343210
http://www.riken.jp/pr/press/2012/20120224_3/

4) https://ja.wikipedia.org/wiki/TATA%E3%83%9C%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9

5) Civán P1, Svec M., Genome-wide analysis of rice (Oryza sativa L. subsp. japonica) TATA box and Y Patch promoter

elements. Genome. vol. 52, pp. 294-297. doi: 10.1139/G09-001. (2009)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19234558

6) http://www.osc.riken.jp/english/activity/cage/achievements/

7) Paul Gagniuc1 and Constantin Ionescu-Tirgoviste, Eukaryotic genomes may exhibit up to 10 genericclasses of gene promoters. BMC Genomics , vol.13, pp.512-527 (2012), DOI: 10.1186/1471-2164-13-512
こちら2

8) Robert K. Louder,  Yuan He, José Ramón López-Blanco, Jie Fang, Pablo Chacón & Eva Nogales , Structure of promoter-bound TFIID and model of human pre-initiation complex assembly. Nature  vol. 531, pp. 604–609 (2016)
http://www.nature.com/nature/journal/v531/n7596/abs/nature17394_ja.html

9) 房富 絵美子 他 古細菌型転写終結因子NusAの結晶構造解析及びRNA結合解析
こちら3

10)杉本崇 真核生物mRNA3′末端プロセシング研究の新展開  生化学第86巻第1号,pp. 77~80(2014)
こちら4

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2016年12月21日 (水)

2016~2017リーガエスパニョーラ第16節: メッシ ドリブルでぶち抜く

Braugrana今年のリーガ最終戦はカンプ・ノウでバルセロナ・ダービーです。最近は平和的な対戦です。バルサはFW:ネイマール・Lスアレス・メッシ、MF:イニエスタ・Dスアレス・ブスケツ、DF:アルバ・マスチェラーノ・ピケ・セルジ、GK:テア=シュテーゲン。エスパニョールはカイセド・モレノの2トップ。カイセドは格闘技の選手のような体格で衝突すると壊されそうです。MF:フラード・ディオプ・ハビ=フエゴ・ピアッティ、DF:アーロン・ディエゴ=レジェス・ダビド=ロペス・ハビ=ロペス、GK:ディエゴ・ロペス。なんとロペスが3人の442です。

意外にもエスパニョールは球を持つと押し上げてくる作戦だったので、バルサはカウンターを狙います。18分にはマスチェラーノが守備で球を奪い、イニエスタからロングパス一発をLスアレスに。Lスアレスが絶妙のトラップでエスパニョールのCBを置き去りにしてゴール。バルサとしてはめずらしい瞬殺のカウンターです。

後半5分スアレスのシュートを止めたときに、GKディエゴ・ロペスが故障発生でロベルト・ヒメネスに交代。これはエスパニョールにとっては痛い交代でした。22分にはメッシが中央の非常に狭いところをドリブルで抜けてシュート。GKがはじいたところにLスアレスが突入してゴール。2:0です。24分にはまたメッシが中央突破を試みて、こぼれたところをアルバがゴール。3:0となりました。

エスパニョールの反撃は34分、カウンターからモレノがロンググロスをダイレクトに中央に返すと、なんとそこにCBダビド・ロペスがいてゴール。すごいロングランでした。しかし最後はメッシ→Lスアレス→メッシのワンツーでとどめのゴール。4:1でバルサ快勝でした。これでとりあえずよいクリスマス休暇を迎えられそうです。ただベイルが帰ってきたときのマドリーを倒すのは骨で、しかも次はサンチャゴ・ベルナベウですから、引き分けもきつい感じです。取りこぼしを絶対にしないで僥倖を待つしかありません。

それではリーガファンの皆様 良いお正月をお過ごし下さい。

https://www.youtube.com/watch?v=iYaP0jknlS0
https://www.youtube.com/watch?v=CdW3BjVWyDU
https://www.youtube.com/watch?v=yrCjGWcCB0U


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2016年12月20日 (火)

フルシャ-都響 ショスタコーヴィチ交響曲第10番@東京文化会館

Imga東京文化会館でのフルシャ指揮都響A定期。コンマス(コンミス)は四方さん、サイドは山本さん。フルシャの演奏会は前回が平日昼、今回が月曜夜という不利な条件ながら大盛況です。前回のマーラーがすごかったので、今回のショスタコ-ヴィチにも期待大です。

フルシャはマルティヌー協会の会長なので、マルティヌーの交響曲を全部やるというプロジェクト進行中。つきあわされる都響も多分迷惑ですが仕方ありません。交響曲第5番も凡作で、さっぱり心に残るところがありません。

後半のショスタコーヴィチは最初の1音から心の琴線に触れるものがあります。この違いは何なのでしょうか? クラリネットが暗い風を吹かせる重厚な第1楽章の後、あの狂乱の第2楽章がやってきます。ショスタコーヴィチはこの曲を「可愛いものだ」と言ったそうですが、この楽章ほど敵意と怨念に満ちた音楽はありません。自分を否定したスターリンをダガーでグサグサ刺し続けるというイメージの楽章です。実際に大勢の人々を処刑したスターリンに比べれば、音楽で殺人などというのは遊びで可愛いものだと言いたかったのでしょう。

第2楽章はオケとしても限界の演奏で、死にものぐるいの楽章。都響は究極のアンサンブルで疾走しました。山本さんが異様な張り切りで連れていかれます。拍手。

第3楽章からは突然曲想が変わって、恋人との絡みが描かれているようです。最後にピッコロが中途半端に終わるところが、悲劇を予感させます。第4楽章は個人的にすごくよく理解できる音楽です。第3楽章もそうですが一見楽しげなパートも暗いバックグラウンドが感じられて味わい深い音楽です。オケの見せ所も満載で、ショスタコーヴィチらしいエンターテインメントも感じられます。

今回の演奏を聴いて、フルシャ-都響のコンビはことマーラーやショスタコーヴィチの演奏に関しては、世界のトップクラスだと確信しました。フルシャ自身について心配なのは、まだ30台半ばにしてプラハ・フィルとバンベルクSOというマイオーケストラを2つも手に入れてしまったので、慢心したり多忙で倒れたりしないかということくらいですが、ウィーン歌劇場の件といい、マルティヌーの件といい、やり手だけれどえぐいマネージメントなのか?

フルシャ インタビュー

https://www.youtube.com/watch?v=GjF02x7AoHI
https://www.youtube.com/watch?v=9g25LvUnN4Y

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2016年12月19日 (月)

鹿島アントラーズ 金星を逸す

1セルヒオ・ラモスにカードを出そうとして思いとどまった主審にはびっくりしました。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161219-00010013-footballc-socc

これがなければ鹿島はマドリーに勝ってたと思いますね。

ただ4点取られたのはラインの統率がうまくいっていなかったせいで、昌子などえらく褒められているようですが、ちゃんとオフサイドがとれる守備をやらないと、マドリーには簡単に失点しますよ。

鹿島が素晴らしかったのは中盤の守備で、疲労するまでのプレスは効いてました。監督が言っているように10cm・1cmの重要さがわかっている守備でした。攻撃では、柴崎は来シーズンには日本にいないでしょうが、彼の冷静沈着なプレイは熱くなるチームほど役に立つと思います。トップ下・セントロカンピスタ向きの技術とメンタルを兼ね備えていると思いました。彼をボランチで使うのは宝の持ち腐れですよ。

http://news.livedoor.com/article/detail/12434371/

クリロナも30越えて少し衰えました。ベイルのいないマドリーはさして強い感じはしませんが、そんなマドリーに勝てなかったバルサ。終了直前のセルヒオ・ラモスのヘディングをケアできなかった悔しさがまた沸き上がってきました。

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2016年12月18日 (日)

サラとミーナ182: 私の毛布の上が常宿となる

Img_1629こんなに寝具のど真ん中を2匹で占拠されては、私が眠る場所がありません。

明け方になるといつもの居場所が寒くなるので、2匹とも私のベッドに越してきます。2匹で14kgくらいになるので、体の上にくると厳しすぎるので、脇にどけてもらいたいのですが、それはそれで、こちらは壁にはりつくか、ベッドから落ちそうになるかの選択になります。

今年の冬は長くなりそうなので、この光景も長引きそうです。サラは閉所恐怖症なのでわかるのですが、どうしてミーナは私の脇の下あたりで眠ってくれないのか不思議です。股の間にもぐり込むことはままあるのですが、それはそれで、また別の意味でやめてほしいです。

Img_1632


巨大動物ミーナのねぐらのひとつである、ソファーとこたつの間のスペース。私が足を置くスペースがなくなっています。

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2016年12月16日 (金)

やぶにらみ生物論52: 転写1

No.46:リボソームですでに述べたように、1960年頃にはすでにリボソームがタンパク質の製造工場であることはコンセンサスになっていました。トランスファーRNA(tRNA)の役割もわかってきていました。すなわちリボソームに存在するRNAの情報に基づいて、アンチコドンを持ちアミノ酸を運ぶ tRNAが、順次リボソームにアクセスすることによって、タンパク質が合成されることになります。

しかし当初リボソームが持つRNAは、それぞれのリボソームに特異的であり、そのリボソームがそれぞれ別々のタンパク質を合成するという考え方が一般的でした。ですからこの頃にはまだメッセンジャーRNA(mRNA)という概念はありませんでした。44:メッセンジャーRNAで、ブレナー・ジャコブ・メセルソンがDNAからリボソームに情報を運ぶ不安定なRNAが存在することを示唆する研究を行ったことを述べましたが、この1961年の研究を出発点としてDNAからmRNAを合成するメカニズムの研究が進展しました。DNAを鋳型としてmRNAが合成されるプロセスを転写(transcription) といいます。

ただ彼らの実験でmRNAの構造と機能が明らかになったわけではなく、あくまでもこれは端緒にすぎません。マシュー・コブ は「誰がmRNAを発見したのか?」という科学エッセイを発表していますが(1)、どうも明快な結論はないようです。ニレンバーグとレダーは大腸菌の無細胞系(大腸菌をすりつぶした抽出液)に、ポリUを入れるとフェニルアラニンがタンパク質にとりこまれることを証明しましたが、このポリUはまさしくmRNAなわけで、ニレンバーグとレダーが発見者という見方もできます。

また後にニレンバーグとマタイは大腸菌の無細胞系にさまざまなポリリボヌクレオチドを投入して、タンパク質合成がこれらのポリリボヌクレオチドに依存していることをみています(2)。コブはブレナーらの実験と共にこの仕事を重視しています。

Aleder_phil_3アヴィヴとレダーの実験も完成品の美しさがあります。彼らはうさぎのグロビン(ヘモグロビンを構成するタンパク質)のmRNAをオリゴdTセルロース法という方法を使って精製し、がん細胞をすりつぶした抽出液の無細胞系で、うさぎのグロビンを合成することに成功しています(3)。

大腸菌の無細胞系とファージを使った実験というのはユニバーサリティに欠けると思います。ファージは生物ではありませんしね。グロビンmRNAの実験を行ったフィリップ・レダー(図1、1934~)は、ニレンバーグと共にコドンの最初の解読者であり、mRNAの機能を確定し、グロビンの遺伝子が分断されていることをも発見した(4)という卓越した業績の研究者であるにもかかわらず、ノーベル賞は授与されていません。遺伝子の分断の件でも。ファージのグループが受賞して彼ははずされました。全く理不尽なことだと思います。

リボソームRNA(rRNA)やトランスファーRNA(tRNA)が安定な物質であるのに対して、メッセンジャーRNA(mRNA)は壊れやすい不安定な物質です。rRNA・tRNAはハウスキーピングないつも必要なものであるのに対して、mRNAは必要なときだけにあればよいものだという意味で、この違いは合理的です。たとえばラクトースが周りに豊富にあるときには、大腸菌はラクトース分解系のタンパク質をコードするmRNAが必要ですが、ラクトースがなくなれば必要ありません。ジャコブとモノーは、リプレッサーが通常はオペレーター領域に結合していて、ラクトースの存在によってリプレッサーとDNAの結合が解かれ、RNA合成がはじまることを示しましたが、これは最も単純な例であって、実際のRNA合成の制御機構ははるかに複雑を極めるものです。

DNAを複製するのはDNAポリメラーゼであるのに対して、DNAを鋳型としてRNAを合成するのがRNAポリメラーゼです。DNAポリメラーゼが dATP, dTTP, dGTP, dCTP を基質とするのに対して、RNAポリメラーゼは ATP, UTP, GTP, CTP を基質とします。DNAポリメラーゼが 3'OH を起点として必要とするのに対して、RNAポリメラーゼは必要としません。ですからRNAポリメラーゼはRNA合成をはじめる基点を他の因子に決めてもらう必要があります。DNAポリメラーゼには多くの種類がありますが、RNAポリメラーゼは特殊なものを除いて細菌では1種類、真核生物では3種類しかありません。真核生物の3種類とそれぞれの役割は、RNAポリメラーゼ I:rRNAの合成、RNAポリメラーゼII:mRNAの合成、RNAポリメラーゼIII:tRNAと一部のrRNAの合成となっていて、さまざまなRNAを分業で合成しています。

まず大腸菌のRNAポリメラーゼについてみていきましょう(図2)。RNAポリメラーゼのコア酵素は5つのサブユニット(α、α、β、β’、ω)からなり、転写を開始する際にはσ因子が結合してホロ酵素の状態になります。σ因子が転写を開始する位置を指定します。細菌の場合、転写を開始する位置から上流側(鋳型鎖の3’側)に10ヌクレオチドおよび35ヌクレオチドあたりにσ因子と親和性の高い塩基配列(プロモーター配列)があり、σ因子はこのふたつのサイト周辺の塩基配列を認識してDNAと結合し、RNAポリメラーゼが転写を始める位置を指定します。このふたつのプロモーターサイトは-35領域、-10領域と呼ばれます。

D



プロモーター配列は厳密に決まっているわけではなく、一例を挙げれば TGTTGACA(-35領域)、TATAAT(-10領域)などがあります。これらにσ因子が結合することによってRNAポリメラーゼと隣接DNAの立体構造が変化して、閉じられていたDNAの2重鎖が開いて、鋳型鎖の情報をRNAポリメラーゼが読み取ることができる状況になります。そしてRNAポリメラーゼは+1の位置から転写を開始します(図3)。もちろんこのときリプレッサーはDNAからはずれていなければなりません。

A_5

大腸菌は7種類のσ因子を持っていることが知られており、分子量に応じて分類されています(例えば分子量約7万のものはσ70)。
σ19、σ24、σ28、σ32,σ38、σ54、σ70のうち、通常はσ70が使われています。σ28は鞭毛専用。ヒートショックを受けた場合はσ24・σ32、飢餓の場合はσ38など用途や状況によって使い分けているようです(5)。それぞれのσ因子によって、当然親和性の高いDNA塩基配列も異なります。単細胞の細菌でも7種類の転写部位を指定する因子があるわけですが、真核生物の場合このような細菌のやり方を拡張し、非常に複雑な転写指定を行うことによって細胞の多彩なニーズに対応するように進化しました。これについては後程述べます。

σ因子のはららきで転写を開始したRNAポリメラーゼですが、では転写を終結する位置はどのように指定されているのでしょうか? これには2つの方法があって、ρ因子依存性と非依存性と呼ばれています(6)。ρ因子は図4Aのように6個のρタンパク質がドーナツのように集合した因子で、Cが多い rut site という配列を認識してDNAに結合し転写を終結させます。ただし詳しいメカニズムはわかっていないようです。ρ因子非依存性の終結メカニズムは、転写されたmRNAがヘアピンのような構造をとることがポイントです。このような部分的二重鎖をつくるために、DNAおよびmRNAの一部に回文構造(パリンドローム)が形成されています。回文とは「竹藪焼けた」のように前から読んでも後ろから読んでも同じと言う文章ですが、塩基配列でこのようになっている部分(図4B赤線)がなっていない部分を挟んで存在すると、図4B右側の図のようにヘアピン構造を形成します。

A_6

ヘアピン構造のあとにUUUUUUUUという配列がありますが、このような場合DNAとmRNAの親和性が弱いことがわかっており、転写終結後、mRNAがDNAから離れるために有効であると考えられています。ここで述べてきたのは細菌の転写機構のお話です。真核生物については次の稿で。

参照:

1) Matthew Cobb, Who discovered messenger RNA?,  Current Biology 25, R523-R532 (2015)

2) M.W. Nirenberg  and J.H. Matthaei, The dependence of cell-free protein synthesis in E. Coli upon naturally occurring or synthetic polyribonucleotides. Proc Natl Acad Sci USA vol.47, pp.1588-1602 (1961)

3) H. Aviv and P. Leder, Purification of biologically active globin messenger RNA by chromatography of oligothymidylic acid-cellulose. Proc Natl Acad Sci USA vol.69, pp.1408-1412 (1972)

4)Konkel DA, Tilghman SM, Leder P. The sequence of the chromosomal mouse β-globin major gene: Homologies in capping, splicingand poly(A) sites. Cell vol.15: pp. 1125–1132. (1978)

5) https://en.wikipedia.org/wiki/Sigma_factor

6) J.D. Watson et al. Molecular Biology of the Gene 6th edn. pp.394-395 (2008)

 

 

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2016年12月13日 (火)

フルシャ-都響 マーラー交響曲第1番@東京芸術劇場2016年12月13日

Imgfウィークデイの昼間ですが、思ったより寒くない気候で東京芸術劇場はほぼ満席の大盛況です。事件以来2年経過してのフルシャ再登場で期待は大です。コンマスは矢部ちゃん、サイドはゆづき。

前半のドヴォルザークのバイオリン協奏曲はいつも退屈する曲です。多分初稿は良い曲だったのに、ヨアヒムにあれこれ難癖をつけられて、直すたびにダメになっていったのではないかと思います。今日はシュパチュクの演奏が素晴らしかったので、ちょっとは楽しめたかな。アンコールはイザイの無伴奏バイオリンソナタ第2番第4楽章。

後半のマーラーは、私がイメージするマーラーの交響曲第1番そのものという感じで、大満足でした。Mr池松もMr広田もMr高橋も最高。さらに弦楽の素晴らしさは最近の都響の演奏の中でもベストだったのではないでしょうか。ポルタメントのアンサンブルも恐ろしいくらい決まっていて、ぞくぞくしました。

久しぶりで若々しくピチピチした音楽を聴いたなという感じでした。さすがにフルシャです。来年で都響首席客演は終了といううわさもありますが、できればずっとつきあってほしいと思います。日本に来るとリラックスすると言っているので、都響のお偉方も考えて欲しいですね。

ヨーゼフ・シュパチェク

(13分~)
https://www.youtube.com/watch?v=aEOKiJpr5u4

ラヴェル:ツィガーヌ
https://www.youtube.com/watch?v=kMbEJR3ny1o

ヤクブ・フルシャ
https://www.youtube.com/watch?v=ONCjdyZm8xM

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2016年12月12日 (月)

やぶにらみ生物論51: オペロン説

フランソワ・ジャコブ(1920~2013、図1)がパリ大学の医学部に入学してしばらくした頃、ドイツでナチが台頭し、フランスに攻め込んでくる状況になりました。20世紀における分子生物学の爆発的進展は、二重らせんのワトソン&クリックと、岡崎フラグメントの岡崎以外は、多くはユダヤ人の業績なのですが、ジャコブもご多分に漏れずユダヤ人だったので、生命の危機を感じてロンドンに脱出しました。

A


しかし彼はそこで医学生として勉強を続けるのではなく、自由フランス軍の兵士として参戦する道を選び、衛生兵としてアフリカを転戦しているうちに負傷して入院生活をおくることになりましたが、回復後再び参戦し、今度はノルマンディー上陸作戦に参加しました(1)。ノルマンディーでの戦闘がどんなにすさまじいものだったかは、スピルバーグの「プライベート・ライアン 原題:Saving private Ryan」という映画をご覧になった方ならご存じでしょう。
https://www.youtube.com/watch?v=82RTzi5Vt7w
https://www.youtube.com/watch?v=Chzhf7gQxIg
https://www.youtube.com/watch?v=5v45or8lFWg
https://www.youtube.com/watch?v=ji8fQUn0OQE

ジャコブはこの戦闘で爆弾の破片が100個以上も体に突き刺さるという重傷を負い、九死に一生を得て野戦病院に収容され、戦争が終結してからパリに送られました。大学にもどるまでに治療とリハビリで4年もかかったそうです(2)。結局その後の研究も、体の中に摘出できなかった破片をかかえこんだままで行なわれました。

しかし長いブランクの影響は大きく、ようやく医師の資格は得たものの、臨床医としてやっていくモチベーションもなくしてしまい、軍隊時代の伝手でペニシリンセンターに就職して研究者としての道を歩み始めました。ところがそのセンターもまもなく倒産して路頭に迷ってしまいました。そしてまたなんとか伝手をたどってパスツール研究所にもぐりこみました。

ジャコブはルウォフの研究室に所属し、そこでモノーと出会うことになります。モノーも戦争中はレジスタンス軍の参謀としてパリで地下活動を行っていました。しかしジャコブの最初の重要な共同研究者はエリー・ウォルマンでした。エリーの両親ユージンとエリザベスは溶原性ファージ(細菌のDNAに組み込まれるファージ=プロファージ)を発見した研究者でしたが、実験室でゲシュタポに捕らえられ、アウシュビッツに送られてしまいました。エリーはそんな両親の衣鉢を継ぐために微生物の研究者になりました(3)。

エリーと共にジャコブは大腸菌に性因子が存在すること。それはオスの大腸菌の中で別荘のような小さな独立のDNAとして存在し(現在はプラスミドと呼ばれている)、接合の際に本家のDNAと共にメスに送り込まれるということを発見しました。このことが遺伝子の制御という生物学上の大問題を解決する糸口になろうとは、当初誰も考えていなかったのでしょう。

ジャコブと同じルウォフの研究室に所属していたジャック・モノー(1910~1976、図1)は、以前から大腸菌がラクトースを消化して栄養源とする過程を分析していましたが、大腸菌は普段はこのために必要な酵素をつくっていなくて、周りにラクトースが出現したときだけに合成するということを見いだしていました。ジャコブらの実験をみていたモノーは、ジャコブらと協力して、ラクトース分解酵素を合成できないメス株と合成できるオス株とを接合させ、オスのDNAがメスに取り込まれる過程を追って酵素活性を測定しました。

そうするとメスに遺伝子が移転された途端に酵素活性が上がりますが、30分後には活性が失なわれたのです。これはラクトース分解酵素とは別の因子がメスに存在し、この因子(リプレッサー)が酵素の発現を抑制したと想像されました。彼らはさらに研究を続けてオペロン説という遺伝子制御の基本となる理論を打ち立てました(4,5)。

オペロン説というのは図2Aのように、ラクトースが無い状態ではDNAにリプレッサーが結合していて、RNAポリメラーゼはプロモーターの位置にとどまり、DNAの情報を読み取れない状況にありますが、ラクトースが存在するとリプレッサーはラクトースと結合してDNAから離れ(図2B)、RNAポリメラーゼは情報を読み取り始めるという機構です。しかもラクトースの代謝に必要な酵素やタンパク質の遺伝子はオペレーター部位を先頭に並んでいて、まとめて制御されています(6)。

A


DNA上に並ぶ遺伝子6、7、8(図2)がコードするタンパク質はそれぞれ、β-galactosidase (遺伝子名LacZ)、β-galactoside permease(遺伝子名LacY)、β-galactoside transacetylase (遺伝子名LacA)です。β-ガラクトシダーゼはラクトースをガラクトースとグルコースに分解する酵素(図3)。β-ガラクトシドパーミエースはラクトースなどを細胞に取り込むための細胞膜のタンパク質、β-ガラクトシドトランスアセチラーゼはラクトースなどにアセチル基を転移する酵素です。

A_3


リプレッサーを精製し、それがオペレーター領域に結合することはローゼンバーグらによって後に確認されました(7)。オペロン説はもうひとつ重要な課題を提起しました。それはリプレッサーがラクトースを結合することにより構造変化をおこして、DNAとの親和性に変化をきたすという考え方で、これはアロステリック効果と呼ばれるタンパク質化学において重要なテーマであり、その後もこのラクトースオペロンにおけるリプレッサーを材料としても、現代に至るまで詳しく研究されています(8,9)。

オペロン説は複数の遺伝子がひとつのオペレーター領域で制御されていることが注目されたため、そのようなことがほとんどない真核生物を含めると意義が薄れた感もありますが、むしろ遺伝子はタンパク質をコードする領域だけでできているのではなく、「プロモーターやオペレーターなどの制御領域とセットとなって一人前」という概念を提供したことに意義があると思われます。ジャコブ・モノー・ルウォフは1965年度のノーベル医学生理学賞を受賞しました。

参照:

1)Francois Jacob - Biographical.
https://www.nobelprize.org/nobel_prizes/medicine/laureates/1965/jacob-bio.html

2)分子生物学の軌跡 野島博著 化学同人社刊 (2007)

3)Rudolf Hausmann, To grasp the essence of life -A history of molecular biology. Kluwer Academic Publishers (2002)

4)Francois Jacob and Jacques Monod, Genetic regulatory mechanisms in the synthesis of proteins., J. Mol. Biol. vol.3, pp.318-356 (1961)

5)http://libgallery.cshl.edu/items/show/74013

6)https://en.wikipedia.org/wiki/Lac_operon

7)J M Rosenberg, O B Khallai, M L Kopka, R E Dickerson, and A D Riggs, Lac repressor purification without inactivation of DNA binding activity. Nucleic Acids Res. vol.4, pp. 567–572. (1977)

8)Robert Daber, Steven Stayrook, Allison Rosenberg, Mitchell Lewis, Structural Analysis of Lac Repressor Bound to Allosteric Effectors. Journal of Molecular Biology, Volume 370,  Pages 609-619 (2007)

9)松下祐貴,島村香菜子,大石叡人,大山達也,栗田典之, ラクトースリプレッサーとDNA複合体へのアロステリック効果の解析:古典MD及びab initioフラグメントMO計算, 第37回情報化学討論会, P12, (2014)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ciqs/2014/0/2014_P12/_pdf

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2016年12月11日 (日)

2016~2017 リーガ第15節: 切り込み隊長ジョルディ・アルバが大活躍

Braugranaパンプローナのエル・サダルに遠征して最下位オサスナとの対戦です。マドリーが負けるのを期待するしかないバルサになってしまいましたが、自滅だけは許されません。

バルサはFW:アルダ・スアレス・メッシ、MF:イニエスタ・Aゴメス・ブスケツ、DF:アルバ・ウムティティ・ピケ・セルジ、GK:テア=シュテーゲン。アルダとウムティティが復帰したのは非常に心強い。アルダはミッドウィークのボルシア・メンヒェングラードバッハ戦でハットトリックの大活躍でした。彼は動きが機敏で、メッシやスアレスのリズムと合っています。ネイマールは自分のリズムでやっていますが、メッシやスアレスが合わせてくれます(いいパスをもらいたいからね)。しかしパコは使われる側ですから難しいです。

ただバルサもいつも自分たちのリズムで試合ができるわけではなく、マラガ戦のようにゴール前にどんどん放り込むしかないというような場合もあるので、苦しい時には彼が救ってくれるかもしれません。腐らないでチャンスを待って欲しい。

エル・サダルは小さなスタジアムですが超満員で、リーガではめずらしい12時30分キックオフです。これだと日本ではゴールデンタイムです。地元だけあってオサスナも守備的な442とは言え、すごい頑張りです。そのなかでもスアレスやメッシがシュートできる場面はありましたが、スアレスははずしたりポストに当てたり、メッシも何度もGKナウゼにうまく止められるなどで、前半はゴールできません。

オサスナも30分、右のレオネからゴール前のリエラにクロスが出て、肝をひやしましたが、リエラが一歩間に合わず助かりました。

後半もレオネに右からミドルを打たれてバーで命拾いの場面もあり、前途多難を思わせましたが、13分中央メッシ→左アルバ→右スアレスとリズム感のあるパスが決まって、スアレスがゴールをゲット。これでやっと落ち着きました。27分にはアルバが左に切り込み、マイナスパスをメッシに通してゴール。アディショナルタイムには、メッシが一人で中央突破してゴール。結果的には0:3で圧勝ですが、メッシとスアレスは失敗数知れずで反省が求められる試合でした。

https://www.youtube.com/watch?v=VyMvLn1eDqA
https://www.youtube.com/watch?v=s4jb8z-8pDc
https://www.youtube.com/watch?v=8OnYNAzZOmQ

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2016年12月 9日 (金)

サラとミーナ181: サラのナイスショット

Aサラは知的生命体です。なかなかすべてを把握することは難しい。

本気で喧嘩するとミーナより順位は上なのですが、ふだんはミーナにかなり遠慮しているようにもみえます。

たとえば自分のエサをミーナにとられても、特に怒ったりしません。

人間でもそうですが、猫もダラダラ1日すごすのではなく、決まった時間にイベントを設定してあげることが幸福につながるのではないかと思うこの頃です。

イベントと言ってもとくに変わったことをするのではなく、エサの時間、人間相手に遊ぶ時間、トイレ交換の時間、おやつの時間、指圧の時間、会議の時間などです。

彼女らも独自に喧嘩の時間(夜中)をつくっています。激しく噛みつき合ったりしますが、終わると何事もなかったかのようにべったりくっついたりしています。

猫の体内時計はかなり正確です。イベントの細かい手順を覚えるのもわりと得意です。たとえば背中を指圧して、ブラッシングして、最後にヒゲの手入れをするときには、「さあやって」とヒゲをこちらに近づけてきたりします。だけど爪切りは本当に嫌いで、1本切るとあとは必死で拒否します。

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2016年12月 7日 (水)

やぶにらみ生物論50: DNAの修復2

ジャン・ジャック・ワイグル(1901~1968)はもともとはスイスでX線解析などをやっていた物理学者だったのですが、なぜか米国に渡って微生物学者になりました。彼は1953年に不思議な現象を発見しました。彼が培養していたラムダファージを紫外線で不活化し(=殺し)、それを紫外線を照射した大腸菌にとりこませると、ファージは再活性化される(=生き返る)のです(1)。

ワイグルが発見した現象は、その後数十年かけて徐々にその全貌は解明されつつあります。驚くべきことに、この現象は細菌からヒトを含む真核生物に連綿と受け継がれた「DNA乗り越え修復 translesion DNA repair = TLS DNA repair」という機構に基づくものであることがわかりました。普段は隠れていたこの機構が、紫外線を照射されるという危機的な状況で表に現れ、生命を救うのです。ですからSOSリペアなどともよばれていました。

図1に示すように、DNA複製の際にDNAに損傷が発生し、DNAポリメラーゼがその位置で停止してしまうと、そこから先のDNAは複製されず、細胞はアンダー・コンストラクションの状態で死を待つことになります。通常2本鎖DNAの片側に損傷が発生した場合、その部分を切り取って、対面のDNA配列を利用して修復することができます(http://morph.way-nifty.com/grey/2016/11/post-4728.html)。しかしDNA複製の際には複製フォーク(レプリケーションフォーク)が形成されているため、損傷部位の対面配列は離れた位置にあり利用できません(図1)。

A


この問題を解決するために、細菌は「DNA損傷乗り越え修復」という技を編み出しました。道で事故車が止まっていたときに、それをレッカー車で移動してから通過するのではなく、いったん歩道に乗り上げて事故車を通過するというような強引なやり方です。損傷部位に乗り上げたDNAポリメラーゼIIIは離脱し、RecAというタンパク質がATPを使ってRecA複合体を形成すると共に、DNAポリメラーゼVと共同して損傷部位の対面のDNAを延長します。

なぜ延長できるかというと、DNAポリメラーゼVは厳密にワトソンクリック型の対面ヌクレオチドを合成するのではなく、かなり特異性が低いという特徴をもっているからです。別の言い方ではフィデリティー(忠実度)が低いとも言います。ですから図2ー2または3にみられるようにTに対してGをもってきたりするわけです。

ですがフィデリティーの低さは逆に壊れているTも壊れていないヌクレオチドと認識することができるという利点があります。このためDNAポリメラーゼIIIが読めなくて停止するような場合でも、涼しい顔で通り過ぎることができるわけです。損傷部位を通り過ぎた段階でDNAポリメラーゼVはお役御免で、DNAポリメラーゼIIIにバトンタッチします(図2-4)。この結果間違った塩基配列が形成されたとしても、とりあえず細胞は死を逃れることができます。

A_2


DNAポリメラーゼVは忠実度の低い酵素なので、通常は使われないよう厳しく管理されています。大腸菌に紫外線を照射して数十分後にようやくこの「DNA損傷乗り越え修復」という機能が発動します。つまり他の忠実性の高いシステムで修復を試みて、どうしても修復できない場合の最後の手段として使うという意味もあるようです。DNAポリメラーゼII や DNAポリメラーゼIV もDNA乗り越え修復の機能があるようですが、詳細は不明のようです(2)。

DNAポリメラーゼVなどのTLSポリメラーゼ(乗り越え修復DNAポリメラーゼ)は、細菌・古細菌で類似しているだけでなく、真核生物においてもその遺伝子構造が引き継がれており、ヒトも例外ではありません。このような祖先生物から複数の種に機能・構造が引き継がれている遺伝子をオルソログといいます。真核生物のTLSポリメラーゼにはイオタ、エータ、ゼータ、カッパがあります。大腸菌のPolIV・PolV、古細菌のDpo4、真核生物のPolイオタ・Polエータ・PolカッパはYファミリーとよばれるオルソログ、大腸菌のPolIIと真核生物のPolゼータはBファミリーというオルソログのグループを形成しています(2)。

このほかにも2本鎖がどちらも切断されたときとか、組み替え修復などの機構を生物は持っていますが、ここでは触れません。

いろいろなDNAポリメラーゼが話しの中に出てきて混乱するので、大腸菌と真核生物の各種DNAポリメラーゼをリストアップして、簡単な解説をつけることにしました。

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E.Coli(大腸菌)

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DNAポリメラーゼ I :

1956年に、アーサー・コーンバーグによって最初に発見されたDNAポリメラーゼ。この酵素が働かなくても大腸菌は生存可能なので、DNAの複製に必須ではありませんが、このような株は紫外線の感受性が高いことが知られています。またこの酵素はTSL型ではないため、主に各種除去修復の際のDNA合成に関与していると考えらています。この酵素の特徴はエキソヌクレアーゼ活性(3'→5')を持っていることで、そのことによって間違った塩基のペアができた場合、鋳型の上を逆走してそれらを分解し、DNA合成をやりなおすことができます。これは校正機能とよばれています。

また逆方向(5'→3')のエキソヌクレアーゼ活性も持っているため、おしりでDNA合成しながら頭でDNA分解を行うことができます。したがって頭の位置にあるDNAの断点(ニック)を、結果的に進行方向にずらしていくことが可能で、これをニックトランスレーションと呼びますが、この反応を行わせるときに放射性のヌクレオチドを入れておくと、DNAが放射能で標識されます。この機能を使えば手持ちのDNAをとりあえず標識できるので、研究上便利です。

この酵素がなくても大腸菌は生存可能とはいえ、あった場合はDNAの複製に関与すると言われています。ウィキペディアによるとRNAプライマーが分解されたあとのギャップを埋めるのに使われるとされています。
https://en.wikipedia.org/wiki/DNA_polymerase_I

この酵素は真核生物のミトコンドリアに存在するDNAポリメラーゼガンマとオルソログであり、Aファミリーを形成します。

DNAポリメラーゼ II :

この酵素はDNAポリメラーゼI と同様な校正機能を持っていて、しかも忠実度(フィデリティー)が非常に高いので、DNAポリメラーゼIIIが正しいペア形成に失敗したときに修正する機能があるとされています。ラギング鎖のDNA合成を行なうとも言われています。DNAにクロスリンクができてしまったときの処理に働いているという説もあります。バックアップ用の酵素かもしれませんが、まだ未解明な部分が多いと思われます。
https://en.wikipedia.org/wiki/DNA_polymerase_II

大腸菌のDNAポリメラーゼIIは古細菌から発見されたPol B1, Pol B3、真核生物の Polアルファ、Polデルタ、Polイプシロン、Polゼータなどとオルソログであり、Bファミリーを形成しています。細菌のDNA複製の主役はDNAポリメラーゼIII(Cファミリー)なのですが、古細菌や真核生物はこれを没にして、Bファミリーの酵素群を主役に抜擢しています。

DNAポリメラーゼ III :

トーマス・コーンバーグとマルコム・ゲフターによって1970年に報告されました。細胞増殖のために行われるDNAの複製を担う酵素としては、はじめて発見されたDNAポリメラーゼです。DNA合成を行うために他の多くの因子とDNAレプリソームという複合体を形成して働きます。3'→5'エキソヌクレアーゼ活性を持っており、校正機能があります。
https://en.wikipedia.org/wiki/DNA_polymerase_III_holoenzyme

DNAポリメラーゼIIのところで述べたように、この酵素ファミリー(Cファミリー)は古細菌や真核生物では用いられていません。非常に完成度が高かったため、生物の変化に対応できなかった可能性があります。

DNAポリメラーゼIV:

DNA損傷乗り越え修復を行なう酵素です。DNA合成が途中で停止したような場合に大量に出現し、合成を完了させるための損傷乗り越え修復を行ないます。この酵素を欠損する株では、DNAの損傷をひきおこすような薬剤を投与した場合に、突然変異の確率が高まることが知られています。
https://en.wikipedia.org/wiki/DNA_polymerase_IV

DNAポリメラーゼV:

DNAポリメラーゼIVと同様、DNA損傷乗り越え修復を行ないます。IVと共にYファミリーを形成し、古細菌や真核生物にも多くのオルソログが存在する大ファミリーです。Yファミリーの酵素は、忠実度を低くすることによって、鋳型(テンプレート)が損傷を受けてもDNA合成を継続させるのが仕事なのですが、それでも損傷を受けた鋳型に対して、正しい対面ヌクレオチドを選択するに超したことはありません。従って受けた損傷の形に応じて使う酵素を変えて、より正確な複製を行うために種類が増えたのかもしれません。
https://en.wikipedia.org/wiki/DNA_polymerase_V

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真核生物:

DNAポリメラーゼアルファ(α):

プライメースと複合体を形成して、DNA合成をスタートさせる役割を担っています。プライマーの末端3'OHからDNA鎖を延長していきますが、20ヌクレオチドあるいはそれ以内の鎖を合成したところで、デルタやイプシロンと交代します(3)。エキソヌクレアーゼ活性を持っておらず、校正機能が無いため、デルタやイプシロンほど正確な複製ができません。BファミリーのDNAポリメラーゼです。

DNAポリメラーゼベータ(β):

塩基除去修復に必要とされている酵素です。DNAポリメラーゼラムダやDNAポリメラーゼミューと同じXファミリーに所属します(4)。しかしラムダやミューはベータとは別の役割を果たしているようです(4)。細菌のDNAポリメラーゼXは研究が進んでいないようです。

DNAポリメラーゼガンマ(γ):

ミトコンドリアに存在し、ミトコンドリアのDNA複製に関与すると考えられています(5)。大腸菌のDNAポリメラーゼ I と同じAファミリーに所属しています。ミトコンドリアは活性酸素が多い環境なので、DNAはダメージを受けやすく、この酵素が校正機能を持っていることには大きなメリットがあります。

DNAポリメラーゼデルタ(δ):

DNAを複製および修復するときに用いられます。以前はラギング鎖のみ複製すると考えられていましたが、リーディング鎖の複製も行っているようです(6)。Bファミリーに所属し、校正機能を持っています。

DNAポリメラーゼイプシロン(ε):

DNAを複製および修復するときに用いられます。主にリーディング鎖の複製を行っていると考えられますが、これはデルタで代用できるようです。しかしそれ以外に、2重鎖になっているDNAをほどいてルーズな状態に変化させるヘリケースを活性化する機能があり、これによって複製フォークが形成されるようで、こちらの機能は代替不可だそうです(7)。Bファミリーに所属し、校正機能を持っています。

DNAポリメラーゼ ラムダ(λ)&ミュー(μ):

DNAの2本鎖が両方とも切れたときの修復(非相同末端結合)に使われるようです。また相同組み換えにも使われるようですが、まだ詳しく研究されていないようです(4)。いずれもXファミリーに所属しています。

DNAポリメラーゼ イオタ(ι)、エータ(η)、ゼータ(ζ)、& カッパ(κ)

いずれもこの記事で取り上げたDNA乗り越え修復に関与する酵素です。エータのようにチミンダイマーの対面をきちんとAAに修復できるエラーレスの酵素もあれば、エラーの確率が高い酵素もあります。ゼータはBファミリーですが、他の3つはYファミリーに所属します。

他にも特殊な酵素がいくつかありますが、ここでは述べません。文献(8、9)などを参照してください。

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参照:

1. J. J. WEIGLE, INDUCTION OF MUTATIONS IN A BACTERIAL VIRUS, Proc. Natl. Acad. Sci. USA vol.39, pp.628-636
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1063835/pdf/pnas01592-0060.pdf

2. M.F. Goodman and R. Woodgate, Translesion DNA polymerases., Cold Spring Harbor Perspectives in Biology, No.29, pp.1~20 (2016)
http://cshperspectives.cshlp.org/content/early/2013/07/08/cshperspect.a010363

3. L. Pellegrini, The Pol alpha -primase complex. Subcell Biochem. vol.62, pp. 157-169 (2012)

4. J. Yamtich and J.B. Sweasy, DNA polymerase family X: function, structure, and cellular roles., Biochim Biophys Acta. vol.1804, pp.1136-1150 (2010)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19631767

5. R. Krasich1, W.C. Copeland, DNA polymerases in the mitochondria: A critical review of the evidence. Frontiers in Bioscience, Landmark, 22, pp.692-709 (2017)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27814640

6. R.E. Johnson, R. Klassen, L. Prakash, and S. Prakash, A Major Role of DNA Polymerase δ in Replication of Both the Leading and Lagging DNA Strands., Mol. Cell. vol. 59, pp.163–175. doi:10.1016/j.molcel.2015.05.038. PMC 4517859Freely accessible. PMID 26145172

7. T. Handa et al., DNA polymerization-independent functions of DNA polymerase epsilon in assembly and progression of the replisome in fission yeast., Mol Biol Cell, vol.23, pp.3240-3253 (2012), doi: 10.1091/mbc.E12-05-0339
https://www.bio.sci.osaka-u.ac.jp/newinfo/info72.html

8. 道津貫太郎、横井雅幸、花岡文雄、立体構造解析から見えてきた損傷乗り越えDNA複製の分子メカニズム. 放射線生物研究 vol. 46,pp. 1-14 (2011)
こちら

9. S. Doublie and K.E. Zahn, Structural insights into eukaryotic DNA replication. Frontiers in Microbiology. vol.5, pp.1-34 (2014)

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2016年12月 4日 (日)

2016~2017 リーガエスパニョーラ第14節: 後半45分ラモスの頭でエンパテに沈む 

デイゲームのクラシコです。10万人収容のカンプノウははち切れんばかりの満員。バックスタンドにはフォルサ・バルサ(ばるさがんばれ)の人文字がみえます。

Img_a

カタルーニャ国旗のディスプレイで盛り上がるスタンドです。

Img_b


バルサはFW:ネイマール・スアレス・メッシ、MF:Aゴメス・ラキティッチ・ブスケツ、DF:アルバ・マスチェラーノ・ピケ・セルジ、GK:テア=シュテーゲン。イニエスタは間に合いましたがベンチ。イニエスタはドリブル突破の際に奪われてカウンターを食う確率が高いので、前半は守備重視でAゴメス起用になったのでしょう。

レアルマドリーはFW:ベンゼマ・Cロナウド・ヴァスケス、MF:コバチッチ・モドリッチ・イスコ、DF:マルセロ・Sラモス・ヴァラン・カルバハル、GK:Kナヴァス。ベイルがいないのはバルサにとってラッキーでした。

マドリーはモドリッチ中心に非常に厳しい中盤の守備でバルサペースを阻止する構え。バルサもここ数試合の低調なパフォーマンスとは見違える集中力と活気のあるプレーで戦います。21分バルサはカウンターから、スアレスにシュートチャンスがありましたが、ヴァランのおしりに当てて得点ならず。逆に37分マドリーのカウンター攻撃でCロナウドに左からニアに打たれますが、テア=シュテーゲンが冷静にはじきました。さらに38分にも中央から打たれますが、これは当たり損ないでテア=シュテーゲンがキャッチ。

バルサにとって残念だったのは、41分左に侵入したアルバが中央にパスを出したところ、カルバハルがハンドで止めたのですが、レフェリーの角度が悪くてPKとりませんでした。そのあとピケの危うくオウンゴールなどもありましたが0:0で前半終了。

後半8分、ネイマールのFKをスアレスが頭で合わせてバルサ先制。15分にはラキティッチがイニエスタに交代です。この頃になるとマドリーの守備が目に見えてゆるくなってきて、バルサの勝利が見えてきました。23分ネイマールがうまくカルバハルを交わして1:1でシュートしたのですが、わずかに高くゴールならず。これが死を招くことになりました。

終了直前の45分、モドリッチのFKをSラモスに頭で合わされて痛恨の失点。このときのバルサ選手の位置が高すぎて、Sラモス以外にも3人くらいフリーになっていました。完全にバルサの守備ミスです。試合はそのままエンパテで終了。6ポイント差は縮まらないまま、マドリーは33戦無敗となりました。バルサにとっては非常に苦しいシーズンとなりました。

https://www.youtube.com/watch?v=JGYbfKT4_dg
https://www.youtube.com/watch?v=jiL7nv450zw
https://www.youtube.com/watch?v=sVnpET78l7s

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2016年12月 3日 (土)

JPOP名曲徒然草175: 「乙女の祈り」 by 真野恵里菜

今日は午後1時から「科捜研」のバックナンバー、午後9時から「検事の本懐」と長いTVドラマを2本も見てしまいました。なんとどちらにも真野恵里菜が出演していました。彼女がバリバリのアイドルだった頃は私は全く知らなくて、あとで調べてみてはじめて気がついたという経緯があって、CDは持っていません。

私は真野恵里菜は超B級女優と思っています。その心は、ユーモアとかペーソス、複雑な表情には欠けますが、一本調子の役をやると何のてらいも無く、気持ちが良いくらいストレートにやり抜くという特技を持っているからです。

アイドル時代の曲は昭和時代の面影があって、ちょっと懐かしい感じがします。まあ作詞・作曲がその種の方々なので・・・。

真野恵里菜 「乙女の祈り」 作詞:三浦徳子 作曲:KAN

https://www.youtube.com/watch?v=TVBkEWWnN0Q

http://www.dailymotion.com/video/x8gf6l_%E7%9C%9F%E9%87%8E%E6%81%B5%E9%87%8C%E8%8F%9C-%E4%B9%99%E5%A5%B3%E3%81%AE%E7%A5%88%E3%82%8A-dohhh-up_lifestyle

「NEXT MY SELF」
https://www.youtube.com/watch?v=FrvNPvD6epc

「はじめての経験」
https://www.youtube.com/watch?v=I_gnRUWpL2s

「お願いだから・・・」
https://www.youtube.com/watch?v=G0pZo3E0I98

「春の嵐」
https://www.youtube.com/watch?v=ClJJdbXwHLw

「My Days for You」 このMVをみていると、まわりが意識して昭和ノスタルジアをめざしていると感じられます
https://www.youtube.com/watch?v=NYzZz4CwfZQ

「黄昏交差点」
https://www.youtube.com/watch?v=uCXCtMhEoxk

「Song for the DATE」
https://www.youtube.com/watch?v=kZYpUZ1IUlk

何やってんねん
https://www.youtube.com/watch?v=wnE56bXUpYw

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2016年12月 2日 (金)

連合がついに自民党と連携

Minshinto_logo以前に連合は自民党を支持すべきだと書きましたが、
http://morph.way-nifty.com/grey/2016/10/post-8bc6.html

そのようになりそうです。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161130/k10010790081000.html

これは当然の成り行きで、連合組合員689万人がしらずしらずのうちにこの国のエリートになってしまったからです。非正規労働者1989万人と格差ができて、同じ船に乗れなくなってしまうほどになりました。

民進党は非正規労働者と農林漁業者、国内で事業をやりたいと思う企業、TPP・TiSAに反対する理念を持つ人々、奨学金で学ぶ学生、年金がわずかな老人、障害者、母子家庭、思想統制と軍国主義に反対する人々、レイシズムに反対する人々 etc. に支持される政党になるべきです。連合の離反は民進党が主義主張を明確にするためにはむしろ好機です。どっちつかずの政策では、支持者がいなくなります。

最近感じるのは、前原誠司氏が新自由主義をあきらめたように思われることです。先進国全体がアンチグローバリズムあるいはブロック経済体制に移行していく中で、さすがに自由貿易推進一辺倒で行くのはピエロのようだということがわかったのではないでしょうか。喜ばしいことです。

新興国でもさまざまな工業製品が生産されるようになった今、国別で競争すれば賃金の高い先進国が敗北するのは目に見えているので、結局先進国の企業はグローバル企業となって生産拠点を新興国に移転し、関係者だけが利潤にありつこうという作戦に出ますが、その結果は、「関係者」と「部外者」という階層分化が生まれ、米国ではついに「部外者」の革命が成功しました(トランプが彼らの期待に応えるかどうかは、しばらくみていく必要がありますが)。

トランプは早速個別企業に介入して、生産拠点の海外移転を阻止しました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161202-00000041-asahi-int

日本にもこれから求められるのは、日本人が必要とする最低限の物資は、可能な限り国内で生産できるようにすることです。それが当面困難なら、物資を食糧に置き換えてもかまいません。一見不可能なようでも国家がそういう方針で歩めば、エネルギー問題も含めてその方向に行けると思います。海外に拠点を移転するのは悪者というムードをつくれば、意外にやりにくくなると思いますね。

私が何気なく買った身の回りのものをよく調べてみると、Tシャツはバングラ、靴はミャンマー、パジャマはベトナムのグンゼ、ズボンと上着は中国、鞄はイタリア(ブランドはそうだけど多分中国製)、家電の一部は中国、パソコンは台湾、今日買ったナスの漬け物のナスはタイ、トマトはニュージランド、ですが、そんなのがいつの間にか当たり前になっているのはおかしくありませんか? このような物資は昭和時代までは日本製が当たり前でしたし、日本には農業に必要な水と、マグマというエネルギー源があります(一億人が死滅するほどの http://indeep.jp/caldera-eruptions-could-be-soon-in-somewhere-include-japan/ )。排他的経済水域の境界線付近で、中国は原油を採掘して吸い取っていますが、日本は掘っていません。

鉄材も船も航空機も木材も、国内で使う分も生産できないというのはおかしくありませんか? 前原誠司氏にはこのあたりのことまで考えて欲しいと思います。

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