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2016年11月14日 (月)

やぶにらみ生物論46: リボソーム

mRNA、tRNA、リボソームなどは生命現象を維持するために必須のアイテムであり、細菌からヒトまですべての生物が持っているものです。これらを使ってタンパク質合成を行うというやり方をはずれた生物は1種もみつかっていないので、地球上の生命体はすべて同じルーツという考え方には説得力があります。

リボソームの話に入る前に、生化学者にとっては今でも大切な細胞分画法についてお話します。真核生物の細胞内には核・ミトコンドリア・葉緑体・ミクロソーム・リボソーム・リソソーム・細胞骨格など不溶性の構造体が数多く含まれます。

Douncehomogenizerwhe_2細胞をまずホモジェナイザー(図1、Wheaton 社のサイトより)を使って壊します。図1のホモジェナイザーは先端のテフロン部分が円柱状になっており、ダウンス型といいますが、その他先端のテフロンがボール状のポッター型もあります。

ガラス容器のなかに細胞懸濁液を入れ、ステンレス棒をテフロンブロックに埋め込んだベスルを、回転させたり上下にピストン運動させたりして細胞を壊します。

ガラス容器とテフロンの間にわずかな隙間があり、細胞のサイズや堅さに応じて、その隙間の幅を変えて使います。ガラスとテフロンの膨張率は異なるので、通常4℃で隙間の幅は設定されています。

ホモジェナイザーで作成した細胞破壊液を遠心機にかけて、沈殿と上清にわけ、上清をさらに強い遠心力を使って沈殿と上清にわけるというやりかたで、さまざまな細胞内構造体を段階的に分離するのが細胞分画法で、アルバート・クロード(1899~1983)が創始した方法です(図2、参照1)。

Photo_2

遠心力の強さ(+遠心時間の長さ)によって、沈殿してくる細胞内構造体は変わります。上記の方法では、段階的に遠心力を強めて異なる細胞内構造体を採取できるようにしています。

3georgepaladero0331_2リボソームは細胞分画法で得たミクロソーム画分にあります。

ジョージ・パラディー(1912~2008)は1955年に出版した論文で、電子顕微鏡を用いてリボソームを観察し、それがミクロソーム(エンドプラズミック・レティキュラム=ER)に結合していることを報告しました(2)。

パラディーはルーマニア人ですが、米国ロックフェラー研究所のアルバート・クロード研究室のポストドクとなり、クロードが開発した「生物を電子顕微鏡で観察する手法」を発展させました。母国では現在でも切手になっています(図3)。

アルバート・クロードとジョージ・パラディーの師弟2人は、リソソームの発見者であるクリスチャン・ド・デューブと共に1974年度のノーベル医学生理学賞を受賞しました。

リボソームはタンパク質を製造する工場であり、巨大なRNAと多数のタンパク質の集合体です。直径が20~30nmくらいあるので、容易に電子顕微鏡で粒子として見ることができます(2)。

リボソームは分子としては非常に巨大で、例えば真核生物では分子量420万というような値になるので、種類の違いやサブユニットの区別のためには通常沈降係数で表記されます。

沈降係数S=Vt(沈降速度)/負荷された加速度、つまり遠心力を強くかけたときに沈降速度がどの程度増加するかという単位がS(スヴェドベリ)ということになります。細菌と真核生物のリボソームはいずれも鏡餅のように2つの分子集合体からなりますが、サイズや構造は微妙に異なっています(図4)。

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例えば真核生物の60Sサブユニットは5.8S、5S、28Sの3種類のリボソームRNAと49種類のタンパク質で構成されています。他のサブユニットもすべてリボソームRNAとタンパク質の複合体です。

ウィキペディアにでている立体構造の図などを見るとわかるように(3)、リボソームはリボソームRNA(rRNA)で構成された骨格に、さまざまなタンパク質が結合した複合体で、そのタンパク質の種類の多さからみても非常に複雑なメカニズムで稼働していることが想像されます。

しかもタンパク質合成にかかわっているタンパク質はリボソームを構成しているもののみではなく、フリーのものもあります。分子生物学の教科書「Molecular Biology of the Gene」 Cold Spring Harbor Press 」でも、リボソームにおけるタンパク質合成のメカニズムについて数十ページを費やしているくらい複雑で、ここですべて説明するのは無謀です。詳しく勉強したい方は上記の教科書を読むか、無料の論文なら参照(4)を推奨します。

キーポイントだけ述べますと、リボソームはmRNAをトラップするとともに、tRNAをトラップする2つのサイトがあります(図5)。

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Pサイトにはポリペプチドを結合した tRNA がつながれています(5図左)。Aサイトにはアミノ酸をひとつ持った tRNA がやってきて、Pサイトのポリペプチドの根元にあるCOOを攻撃して、ここにペプチド結合(CONH)を作ります(5図左)。

その結果ポリペプチドはAサイトの tRNA に移行し、Pサイトの tRNA はフリーになってリボソームから離れます(5図右)。すなわちポリペプチドの長さは1アミノ酸分だけ長くなります。そしてこの延長されたポリペプチドを持ったAサイトの tRNA はPサイトに移行し、mRNAも1コドン分移動します。そしてまたAサイトに新たな tRNA がトラップされます(図5)。

この反応をアニメ化したものがウィキペディア「リボソーム」の項目の最後にあります(5)。ちょっとコマ送りが早いですが、よくみるとポリペプチドの合成の様子をわかりやすく表現しています。

参照:

1)Albert Claude, THE CONSTITUTION OF PROTOPLASM. Science vol.97, pp.451-456 (1943)
https://www.ganino.com/games/Science/science%20magazine%201940-1957/root/data/Science_1940-1957/pdf/1943_v097_n2525/p2525_0451.pdf

2)George E. Palade, SMALL PARTICULATE COMPONENT OF THE CYTOPLASM. J.Biophysc. and Biochem. Cytol. vol.1, pp.59-68 (1955)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2223592/pdf/59.pdf

3)https://en.wikipedia.org/wiki/Ribosome

4)Dmitri Graifer and Galina Karpova, Interaction of tRNA with Eukaryotic Ribosome. Int J Mol Sci. vol.16 pp.7173?7194 (2015)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4425011/

5)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%9C%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%83%A0

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