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2016年9月 9日 (金)

やぶにらみ生物論32: 現代の大絶滅

800pxlacanja_burnやぶにらみ生物論では、ここのところずっと生物の歴史を俯瞰してきました。そのなかで、ほとんどの生物が死滅してしまうという危機が何度か地球に訪れたということを見てきました。代表的なのはペルム紀末と白亜紀末の大絶滅ですが、どうやら現在の私たちはそれら以上の大絶滅のまっただ中にいるようです。

現在地球上では、ひかえめにみて毎日100種を超える生物が絶滅しています。絶滅というのは、その種に属する個体がすべて死ぬということですから、半端じゃありません。例えば広島に原爆が投下されたときにも、広島市民全員が死亡したわけじゃありません。それよりも何千・何万倍もおぞましいことが毎日おこっているというのが現代です。

ある種が絶滅したとすると、その種に食べられていた生物が異常発生してしまったり、その種を主食としていた生物が道連れ絶滅したりする可能性があり、どんな人間にとっての不都合が発生するかは計り知れません。

Jurriaan M. De Vos博士らの試算によると、現代の種消滅速度はバックグラウンドの約1000倍で、このままいくと将来10000倍までその速度があがるそうです。

<<Estimating the normal background rate of species extinction>>
Jurriaan M. De Vos et al
Conservation Biology, Volume 29, Issue 2, pages 452-462, April 2015
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/cobi.12380/abstract;jsessionid=78F8B9C7E39C7F662636CB049B9D4E71.f02t01

生物の大絶滅によって、自然の秩序が失われ、地球の自然浄化作用も失われて、地球環境は加速度的に悪化し、私たちが住めなくなるようなひどい状態が来るのはここ100年以内の話しかもしれません。

レッドブックに記載された生物を救うことは大事ですが、最も重要なことではありません。種の異常な速度による消滅は地球環境悪化のサインであり、そのことに気がついて、その消滅速度を遅くすることが重要です。ではどうすれば、遅くできるのか?

今地球で普遍的に行われている資本主義は、投資したお金が増えて返ってくることを前提としています。すなわち生産活動の拡大が必須となります。このために人も企業も国も努力するわけです。それを阻害しようとする勢力は排除されます。これをやっている限り、森林伐採(写真 ウィキペディアより)・自然破壊・環境汚染は避けられず、地球によって人類は報復されます。その報復が「適度」なうちに気がついてやめればいいのですが、このままでは人類はきっと最後まで資本主義をやめません。結局無数の生物種を道連れにして、人類は消滅するのでしょうか?

私はCO2排出の協定なんて、極地の氷が溶けてメタンガスが出始めた今となっては意味がないとは言いませんが、手遅れの可能性が高いとおもいます。とりあえず企業の生産活動の拡大を制限する国際的ルールを定めるくらいのことはやらないとダメでしょう。

まず<<世界中すべての株式市場を閉鎖する>>ということからはじめたらどうでしょうか。これによって企業による生産活動の拡大はかなり防げると思います。これすら中国や米国の反対でできないのなら、もうお手上げです。

そうなったら、大部分の人類が滅びても自分たちだけは生き残る・・・という方策を探すしかありません。ちょっとした大雨による北海道や東北のインフラ破壊を修復するめどがたたない日本政府に、そんな芸当ができるでしょうか? ダメだろうね。要するに彼らは企業活動を拡大するために死にものぐるいになっているので、自分たちが生物大絶滅時代を加速して自殺行為を行っていることなど、全く頭の片隅にもないのです。

キーポイントはマスコミです。「景気をよくしろ」とか「株価をあげよう」とか「生産活動を拡大しよう」とかの方向でマスコミが発信している限り、資本主義という<<生産活動が拡大しないとなりたたない>>制度を廃止することはできません。これは日本だけやっても意味ないので、世界レベルでのマスコミの発信が必要になります。そのためには、まず新聞記者やTVプロデューサーと環境問題専門家による国際会議を行うことが必要でしょうね。

<<米国自然史博物館からの警告>>

NATIONAL SURVEY REVEALS BIODIVERSITY CRISIS - SCIENTIFIC EXPERTS BELIEVE WE ARE IN MIDST OF FASTEST MASS EXTINCTION IN EARTH'S HISTORY
http://web.archive.org/web/20070607101209/http://www.amnh.org/museum/press/feature/biofact.html

1)我々は生物大絶滅時代のまっただ中にいます。このことは多くの生物学者が認めていることです。

2)生物多様性の消滅によって、地球が本来もっている空気や水の自浄作用が失われることになります。

3)生物大絶滅は次の世紀における人類の生存を危うくするほどのものなのに、多くの人々はそのことに気がついていない。

<<企業活動と生物多様性>>

ネスレ社がキットカットをつくるために大規模な森林破壊を行ったことで、バッシングを受けましたが、このサイトはそれだけでなく、多方面から生物多様性について分析しています。

http://agrinext.jp/archive/tayousei/chapter1/
http://agrinext.jp/archive/tayousei/chapter1/page02.html
http://agrinext.jp/archive/tayousei/chapter1/page03.html

<<Geographic range did not confer resilience to extinction in terrestrial vertebrates at the end-Triassic crisis>>
by Alexander M. Dunhill & Matthew A. Wills
Nature Communications 6, Article number: 7980 (2015)

http://www.nature.com/articles/ncomms8980

著者たちは三畳紀末の大絶滅に注目しています。この大絶滅は火山の大噴火によって発生したのですが、最初は火山周辺の生物が絶滅しましたが、そのうち地球全体の生物が影響を受け、多くの種が失われました。このときの状況が現在と類似していると著者は警告しています。

<<ミツバチの減少は何をもたらすか >>

多くの植物は、ミツバチによって花粉を運んでもらっています。ミツバチが死滅すると、困るのは人間です。

http://matome.naver.jp/odai/2141000414380297701
http://cosmo-world.seesaa.net/article/127471528.html
http://threebirch.exblog.jp/25737158/

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