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2016年8月29日 (月)

やぶにらみ生物論30: 古第三紀以降の生物1 哺乳類・犬・猫

白亜紀に続く時代は古第三紀です。古第三紀は6600万年前から2300万年前までの時期です。白亜紀末におこった巨大隕石衝突による大災害で鳥類以外の恐竜は死滅し、一方で哺乳類はかなりの種が生き残りました。

やぶにらみ生物論29で、哺乳類の母乳による育児や雑食性について述べましたが、彼らが生き残った理由には、他にもペルム紀大絶滅の時と同様、穴居生活を習慣とする者がかなりいたことや、冬眠・夏眠ができる能力がある者が多かったことが決め手になったのかもしれません。また穴にもぐることと、夏眠・冬眠することとは密接に関連しています。

哺乳類や他の生物についても数千万年も経過した化石のDNAは系統進化の研究に利用できませんが、哺乳類や鳥類の場合、化石しかない絶滅生物群と違って、現在も多数の種が生きているという大きなメリットがあります。この点が古第三紀以降とそれまでの違いです。

現存生物のDNAやタンパク質を比較することによって、それらの姻戚関係の遠近が推定されますし、グループ分けも可能です。またいつそのグループが分岐したのかについても推定できます。もちろん哺乳類・鳥類以外の現存生物、魚類・昆虫・爬虫類・植物などについても同様です。

大絶滅によって鳥類以外の恐竜が絶滅したことは、生き残った哺乳類にとって望外の幸運でした。1億数千万年にわたって恐竜によって閉め出されてきた地上のニッチの大部分がフリーになったわけですから、あっという間にそれらは哺乳類、特に先進的な有胎盤類によって埋められました。樹上生活、穴居生活、夜行性などの条件付きで生きてきた哺乳類が昼間の地上を闊歩し始めたというわけです。ウィンタテリウムやピロテリウムなどの大型草食獣が草食恐竜に代わって出現しました。ネコ・イヌの祖先である肉食獣や絶滅したアンドリュウサルクスなどもいました。私たちの祖先であるサルは相変わらず樹上で生活していました。

図1の進化系統図は M.S.Springer らがまとめたものですが(1)、多くの研究者の研究成果が含まれています。普通の進化系統図と違うのは絶対時系列で分岐点が示されていることです。翻訳した上に簡略化したので、詳しい情報を得たい方は原著(1)をご覧下さい。

Photo_3


ここでちょっと驚くのは霊長類がすでに白亜紀に棲息していて、しかもメガネザル・キツネザル系のグループと、それ以外のグループに分岐していたという点です。霊長類についての詳細は稿をあらためて述べたいと思いますが、白亜紀の終わり頃には、かなりバラエティーに富んだ哺乳類が棲息していたことが示されています。そしてその多くのグループが、白亜紀末の大絶滅を乗り越えて、現在まで命をつないでいるのです。

しかし数多い哺乳類のすべてにここで言及するのは無理なので、犬猫類(本稿)と人猿類(次稿)については少し詳しく、その他は簡潔に述べたいと思います。

図1によると犬と猫が意外に近縁の生物であることがわかります。彼らは第三紀にはいってかなり経過してから分岐しました。

では犬と猫の共通の祖先はどんな生物だったのでしょうか? その候補はミアキス・ヴルパヴス・ドルマーロキオンなどですが、生きた化石のような生物がマダガスカルにいます。それはフォッサです(図2 ウィキペディアより 以下同)。マダガスカルは白亜紀に大陸から分離して孤島になったので、当時の動物がそのままに近い形で生き残っていたとしても不思議ではありません。

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図2をみるとちょっと感動します。体長が60~80cmのこの動物は、容姿が犬のようでもあり、猫のようでもあります。鼻はイヌっぽい感じですね。手足が頑丈に見えます。肉食獣で、樹上に住み、夜行性だそうですが、子供は地上の穴などで育てていたようです。上野動物園で実物を見ることができます。絶滅危惧種なので、無事に生き延びることを祈りたいと思います。

白亜紀には地上はほぼ恐竜に支配されていたので、哺乳類は昼間は樹上か穴で生活し、必要なら夜に地上を徘徊してエサを探すという生活をしていたのでしょう。上野動物園の小獣館地下には、当時を想像させる小型の夜行性哺乳類が飼育されており、その薄暗がりでの敏捷性には驚かされます。フォッサの生態についてはウェブサイト(2)に動画があります。彼らがいかに上手に樹上を移動するかがよくわかります。

恐竜は基本的に2足歩行であり、4足歩行する恐竜は大型草食動物がほとんどだったため、彼らにとって樹上での生活は困難だったと思われます。鳥類は歯を失ったうえに、飛翔に最適化した軽量な体に進化したため、ある程度体重のある哺乳類なら襲われる可能性は少なかったのでしょう。子供は授乳で育てるので、親がある程度守ることができます。ミーアキャットなど集団生活をする哺乳類は、見張りをおくこともできます。

犬と猫が分岐した後、ネコの系統の方にはニムラブス科(ネコ科と近縁ですが、同じではありません)の様々な生物が登場します。ディニクティスの図を貼っておきましょう(図3 Robert Bruce Horsfall の復元 ウィキペディアより)。ヒョウのような生物です。犬歯(牙)が長いので、サーベルタイガーのようでもあります。ニムラブスとネコは耳の構造に大きな違いがあるとされています。しかしその点と犬歯の長さを除外すれば、非常に現在のネコ科の生物と似ていると言えます。

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イヌと分かれたあと、最初期のネコ科の生物にはメタイルルスというピューマのような生物がいます(3)。これははやくもサーベルタイガーのような犬歯を持っており、これが進化とともにどんどん大きくなって、一般にも良く知られているスミロドンのようになったと思われます。ただしメタイルルスがスミロドンの直接の祖先とは考えられていません。ツシマヤマネコがメタイルルスの子孫だという説はあるようです。

スミロドンの犬歯はあまりにも巨大で、却って邪魔だと思いますが、これをどのように使ったのかについては議論があって、まだ定まってないそうです。私の想像では、スミロドン系のネコは中小型のすばしっこい動物を捕らえるほどの俊敏さ、またはスピードがなく、また集団で狩りをするタイプでもなかったので、比較的大型の草食獣にいどみかかるしかなかったため、犬歯が異常に発達したのではないかと思います。

スミロドンのグループは絶滅しましたが、ネコファミリーの中でもうひとつの犬歯を巨大化させなかったグループは、現在も図4のようにトラ・ライオン・ジャガー・カラカル・オセロット・家庭猫・ヤマネコ・チータ・ピューマなど多くの種が生きています。

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さて、では最初期のイヌはどのような生物だったのでしょうか? 土屋氏の著書(4)にしたがって紹介します。最初期のイヌを代表する生物としてヘスペロキオンが知られています(図5 Robert Bruce Horsfall の復元 ウィキペディアより)。まだイヌというよりシベット猫(5)に似ています。ヘスペロキオンは後ろ足の指が5本あり、現在の飼い犬の後肢の指は4本なので、それなりに原始的な生き物ではありました。糞の化石を調べたところ齧歯類(ネズミなど)を食べていたようで、俊敏なハンターであったことが想像できます。

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とりあえずイヌ科の系統図を示しておきます(図6)。ヘスペロキオンの次に出現したレプトキオンは、どちらかといえばキツネに近い生物のように思えます(6)。しかしこの生物の仲間の子孫から、キツネ・タヌキのグループとオオカミ・イヌのグループが分岐したと考えられています。

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オオカミ・イヌのグループの中にもキツネという名前の付いた生物がいます。クルペオキツネなどはがそうですが、彼らはキツネよりひとまわり大きな体で、DNAの研究によって、キツネ・タヌキのグループではなく、オオカミ・イヌのグループに属しているとされています(図6)。図7をみると、風貌はコヨーテ(図8)に似ている感じです。

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見た目からすると、コロコロした体型で泳ぎが得意なヤブイヌと、チータのように草原を快速で疾走するタテガミオオカミが近縁だというのは意外ですが、DNAはウソをつかないのでしかたありません。ヤブイヌは埼玉こども動物自然公園やよこはまズーラシア動物園で見ることができるそうです(7)。タテガミオオカミは上野動物園にいます。先日見に行ったときは、ずっと寝ていたため本領発揮の姿はみられませんでした。残念。

参考文献とリンク先

1) M.S. Springer et al. The historical biogeography of mammalia.  Phil. Trans. R. Soc. B, vol. 366, pp.2478-2502 (2011)
2) http://www.alpacapacas.com/archives/845
3) https://www.youtube.com/watch?v=M72BwXh0Si8
4) 土屋健著 「古第三紀・新第三紀・第四紀の生物」上 技術評論社 (2016)
5) https://en.wikipedia.org/wiki/Civet
6) http://dinosaurs.about.com/od/mesozoicmammals/p/Leptocyon.htm
7) http://matome.naver.jp/odai/2142294579556745401



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