« 英国のEU離脱からみえてきたこと | トップページ | 中村正人にエールを送る »

2016年7月 2日 (土)

やぶにらみ生物論24: ジュラ紀の生物1

三畳紀末の大絶滅を経て、時代はジュラ紀(2億年前~1億4500万年前)に突入します。三畳紀には唯一の超大陸だったパンゲアが、この時代に北部のローラシア大陸(中国・ロシア・欧州)と南部のゴンドワナ大陸(南北アメリカ・アフリカ・オーストラリア・南極)に分裂しました。これによって赤道付近の海流が両大陸のまわりに流れるようになって、海洋性の温暖な地域が増えました。動植物にとっては生活しやすい気候になりました。ただ酸素濃度は三畳紀後期のどん底にくらべれば改善されたとは言え15%弱くらいの低濃度だったようです。

三畳紀に地上の覇権を競っていたクルロタルシ、サイノドン、オルニソディラですが、三畳紀末の大絶滅によって、クルロタルシはワニ類などごく一部のグループみが生き残って地上の覇権は放棄しました。またサイノドンもそのひとつのバリエーションである哺乳類やトリティロドンなどのごく1部を残して絶滅し、生き延びたサイノドンの子孫たちは、覇権を狙わない目立たない生物としてジュラ紀を生き延びました。そしてジュラ紀はオルニソディラが地上の主役となりました。

1_2


ジュラ紀に繁栄したオルニソディラの系譜を図1に示します。それまで空は昆虫の独壇場だったのですが、ついに翼竜という脊椎動物が参入してきました。彼らは三畳紀に恐竜の祖先と分岐し、独自の進化を行って三畳紀末の大絶滅を乗り切り、ジュラ紀に繁栄しました。空を飛べるというのは、エサをみつけるには圧倒的なアドバンテージがあります。彼らは第4指と足の間に皮膚の膜をはって(もちろん羽毛ではない)翼をつくり飛翔しました。現存の哺乳類であるコウモリのような方法で空を飛んだわけですが、コウモリほど1~3指は退化していなかったので(第5指は退化)、4足歩行もできたようです。

ジュラ紀の翼竜を代表してプテロダクティルスを図2(ウィキペディアより)に示します。4足歩行しているイラストです。翼を全開したときの幅は種によって異なり、25cm~2.5mくらいの幅があります。彼らはまだ確定的ではないものの、なんらかの毛を持つ内温動物であったと考えられています。浜辺でゴカイなどをあさったり、魚を捕らえて食べたりしていたようです。

2
翼竜を分岐したあとのオルニソディラは、鳥盤類(鳥盤目)と竜盤類(竜盤目)からなる恐竜に進化しました。鳥盤類の起源については、恐竜学の教科書(1)によると、竜盤類から分岐したのではなく、鳥盤類・竜盤類ともに派生的であり、どちらが先に生まれたのかはわからないとしています。

鳥盤類と竜盤類は図3のような骨盤の構造の違いによって分類されています。すなわち鳥盤類では恥骨の一部が座骨に寄り添って平行に後ろに伸びているのに対して、竜盤類では恥骨と座骨は別方向を向いています。このほか鳥盤類は前歯骨という下あごの前端の骨を持っているという特徴があります。恥骨が後ろに追いやられることによって、大きな胃とか長い腸を収める場所ができるという利点があります。植物を消化するには有用です。前歯骨はくちばしをサポートしており、このグループがくちばしのような構造を持っていたことと関係があります。


3


昨年国立科学博物館でクリンダドロメウスの骨格と復元を見ることができました(2、図4管理人が撮影)。クリンダドロメウスは全長1.5mほどのジュラ紀を生きた鳥盤類ですが、なんと羽毛を持っていました。羽毛は竜盤類から鳥類へ受け継がれたものと私は理解していたので、これはショックでした。このことは三畳紀に生きていた鳥盤類・竜盤類の共通の祖先が、すでに羽毛を発明していたことを暗示します。単弓類のサイノドンが体毛を獲得していたのと同時期に、双弓類も羽毛を獲得していたのかもしれません。それだけ三畳紀が内温性を必要としていた時代だったのかもしれません。

4


鳥盤類は恐竜の大スターであるステゴサウルスを生み出しました(図5 ウィキペディアより)。ステゴサウルスはジュラ紀から白亜紀にかけて生きていた体長7mくらいの草食恐竜です。彼らは背中にたくさんの板をしょっていますが、これらはどんな役割を果たしたのでしょうか? 

林昭次氏は国立科学博物館や世界各地の博物館にある実物を切断するという快挙をなしとげ(3)、この板に血管ネットワークがはりめぐらされていて、体温調節に役立ったことを示唆しました。これはペルム紀の盤竜類と同じで、彼らが少なくとも完全な内温性を獲得していなかったことを示唆しています。また中身がスカスカであることや倒れないことから、アーマー(防具)としては役立たないことがわかりました。また思春期に急激に大きくなることから異性へのディスプレイである可能性も指摘しています。

しっぽにある4本のスパイクは、肉食獣との戦闘に役立ったようです。数年前に幕張で恐竜展をやっていたとき、背骨にこのスパイクがささったあとがある肉食恐竜の骨がディスプレイされていました。

5


もう1種鳥盤類の動物を紹介します。やはりジュラ紀に棲息していたフルイタデンス(図6 ウィキペディアより)です。多くの鳥盤類が植物食であるなかで、このグループは雑食性だったと考えられています。中型犬くらいのサイズで、鳥盤類の中では最小クラスでした。ちいさなサイズの内温性動物は、大きなサイズの動物にくらべて熱を失いやすいので、ハイカロリーな食事を必要とします。

Photo

鳥盤類はジュラ紀から白亜紀にかけて多くの種類を繁栄させましたが、白亜紀最後の大絶滅によって世界から消え去り、現在では化石でしかみることができません。鳥盤類はくちばしをもっているなど、現在の鳥類に似た点もありましたが、鳥類は彼らが生み出したものではなく、もうひとつの恐竜のグループである竜盤類が生み出したものです。竜盤類などについては次回に解説します。

1)「恐竜学入門-かたち・生態・絶滅-」 Fastovsky, Weishampel 著 東京化学同人 2015年刊

2) http://morph.way-nifty.com/grey/2016/04/post-d6d5.html

3) http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20141003/418474/?P=5

|

« 英国のEU離脱からみえてきたこと | トップページ | 中村正人にエールを送る »

生物学・科学(biology/science)」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/133582/63859424

この記事へのトラックバック一覧です: やぶにらみ生物論24: ジュラ紀の生物1:

« 英国のEU離脱からみえてきたこと | トップページ | 中村正人にエールを送る »