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2016年7月10日 (日)

やぶにらみ生物論25: ジュラ紀の生物2

地球史の中での生物多様性の推移を示した図1(ウィキペディアより)を見てください。カンブリア紀・オルドビス紀に順調に増加していた生物多様性が、デボン紀(矢印A)から三畳紀(矢印B)の2億年弱の間、徐々に低下しています。しかしジュラ紀にはいると反転して上昇をはじめています。これは生物が住む環境が豊かになったことを意味していると考えられます。

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ジュラ紀・白亜紀の豊かな環境の中で、地上で最も繁栄したのが竜盤類(竜盤目)です。鳥盤類と竜盤類が分岐したのは三畳紀と考えられ、その後図2(管理人作成)に示すように、原始的な竜盤類から獣脚類のグループと、竜脚類・古竜脚類(まとめて竜脚形類)のグループに分かれました。

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竜盤類の中で最も鳥盤類との分岐点に近い生物は、今のところテコドントサウルス(図3 ウィキペディアより 以下同)が第一候補でしょう。竜脚形類に所属します。彼らは三畳紀に生きていた体長2m程度の小型恐竜です。初期の鳥盤類と似ています。三畳紀に生きていた恐竜では、プラテオサウルスもよく知られています。

ひとつ問題があって、それはテコドントサウルスもプラテオサウルスも後ろ足の指が4本で、5本の指を持つ竜脚類とは直接つながらないということです。そういうわけで、これらはとりあえず古竜脚類として別枠におさめられています。またエオラプトルも以前は獣脚類に近いとされていましたが、竜脚形類のグループに属するのではないかとも言われています。竜盤類や竜脚形類のルーツについては、まだまだ議論の余地があります。

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哺乳類が肺の拡張や横隔膜収縮、すなわち胸郭周囲の筋肉による呼吸を発達させたのに対して、鳥類は気道に気嚢というポンプを設置し、空気の吸い込みと押し出しを複数のポンプによって効率化していることが知られています。鳥類の祖先である竜盤類も気嚢システムを持っていたのではないかと推測されていて、多少の証拠もあります(1,2)。

鳥類の直接の祖先である獣脚類はもちろんですが、竜脚類は巨大化した種が多かったので、体温が上がりすぎるのを防ぐためのラジエーターとしてや、また重すぎる骨の重量を軽くするための空洞として利用するなど、より切実に気嚢システムが必要だったのではないかと思われます。空を飛ぶ鳥は、竜脚類とは別の理由で体重を軽くするために骨を空洞化して、気嚢システムの一部として利用しています。鳥類の呼吸システムは哺乳類より優秀で、標高1500メートル(ほぼジュラ紀の酸素濃度)ではほぼ2倍の効率で酸素をとりこめるそうです(4)。鳥類の中にはヒマラヤ山脈を越えて渡りをする者もいるので、呼吸システムの優秀さは哺乳類をはるかに凌駕しています。

恐竜の中で、竜脚類(科と目の中間の分類群)は基本的に植物食です。ジュラ紀のはじめ頃に生きていた原始的な竜脚類としてヴルカノドン(図4)があげられます。背中が人の身長くらいの控えめなサイズの竜脚類です。後ろ足の指は5本で、ヒトと似ています。ジュラ紀も中盤以降になると、やはり原始的なタイプであるマメンキサウルスなども巨大化してきます。

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新しいタイプの竜脚類であるディプロドクス(図5)やアパトサウルス(図6)も登場します。これらは全長20メートル以上の巨大草食恐竜です。キリンのように高い位置の葉を食べるために首が長くなったという説もありますが、そのためには血圧を非常に高く上げる必要があり、現実的ではないという説が有力です。足は動かさず、首だけ動かして食事するほうが省エネだからというのが新しい考え方のようです。

ただこれだけ巨大になったのは、やはり肉食の獣脚類に食べられないためだったのでしょう。長いしっぽはムチとして使えば、かなり強力な武器になったと思われます。草食恐竜はいくら巨大化したといっても、子供の時代はあるわけで、集団生活で子供を守ることはマストだったのではないでしょうか。

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獣脚類は三畳紀のヘレラサウルスなどが根元にあたる系統のグループで、多くの種は肉食で2足歩行でした。ジュラ紀になって草食恐竜が巨大化するにしたがって、肉食恐竜も巨大化せざるを得なくなりました。ジュラ紀の獣脚類を代表するのは、やはり当時の食物連鎖の頂点に君臨していたと思われるアロサウルス(図7)でしょう。全長は8.5mくらいの凶暴な肉食獣で、後足は5本指ですが1本は地面につきません。前足はかぎ爪つきの3本指で、2足歩行をしていたため、ほぼ手として使っていたのでしょう。ディロフォサウルスやケラトサウルスもジュラ紀を代表する獣脚類です。

今のところはアロサウルスは図7のような復元になっていますが、鳥盤類のクリンダドロメウスが羽毛を持っていたことから、ひょっとすると彼らも羽毛を持っていたかもしれません。それが証明されれば、かなりイメージチェンジされた復元がなされなければならないことになります。

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1990年以降、中国の遼寧省から発掘される獣脚類の化石の中に羽毛の痕跡が残っているものが多数あることがわかって、獣脚類が羽毛を持っていたことは動かしがたい事実となりました。すでにジュラ紀にして、ニワトリと見まがうようなアンキオルニス(図8)という獣脚類が現れました。色素タンパク質も調べられていて、体はほぼモノクロですがトサカが茶系統だったことが示唆されています(5)。始祖鳥も出現しました。白亜紀にはこれらの仲間から、鳥類への進化を行う系統のグループが出現します。

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空飛ぶ爬虫類の翼竜も健在で、ダーウィノプテルスというダーウィンの名前が付いた種の形態が注目されました。彼らは三畳紀の頭が小さく尾が長い翼竜と白亜紀の頭が大きく尾が短い翼竜の中間的な形態をとっており、まさしく進化の道筋をリンクさせる存在です。

哺乳類も恐竜の陰に隠れて、さまざまな進化を遂げて生き延びていました。ビーバーのように水かきや平たい尾をもつカストロカウダや、モモンガのように滑空するヴィラティコテリウムなどが知られています(6)。さらに中国遼寧省の1億6000万年前の地層から、真獣類(発達した胎盤をもつ)の化石もみつかっています。体長5cm~10cmの小さな生物でジュラマイア(図9)と名付けられました。

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さて陸から離れて海をみると、まず三畳紀にひきつづいて魚竜が繁栄していました。ステノプテリギウス(図10)は全長4m弱であり、イルカとそっくりな形態で、出産途中の化石が発見されたことから胎生であるとされています。首長竜もプレシオサウルス(図11)などが健在でした。ネッシーのモデルになった動物ではないでしょうか(7)。魚類も健在で、条鰭類のリードシクティスは体長8.9m~16.5mの巨大な魚でした(6)。

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1) http://dinosaur-fan.net/naruhodo/news/29/

2) http://www.dino-paradise.com/news/2013/07/a-new-sauropod-dinosaur-from-the-early-cretaceous-oftunisia-with-extreme-avian-like-pneumatization.html

3) http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0608/dinosaur.html

4) 「恐竜はなぜ鳥に進化したか」 ピーター・D・ウォード著 文藝春秋社刊 2008年 p.264

5) Li, Q. et al (2010). "Plumage color patterns of an extinct dinosaur". Science 327, No.5971, pp.1369–1372.

6) 「ジュラ紀の生物」 土屋健著 技術評論社 (2015)

7) https://www.youtube.com/watch?v=c2A4_Leh67A









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