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2016年3月10日 (木)

やぶにらみ生物論12: カンブリア紀の生物 1

Photo1やぶにらみ生物論11で述べたエディアカラ紀に続くのはカンブリア紀です。カンブリア紀は5億4200万年前から4億8500万年前までの時代です。カンブリア紀ともう少し後で述べるジュラ紀は、専門用語であるにもかかわらず、かなり一般に知られています。

ジュラ紀は恐竜のおかげで有名になりましたが、カンブリア紀はカンブリア爆発という、現代の生物に近縁な多くの種が生まれた時代ということで有名です。

図1のように一般向けの文庫・新書も発売されています。左のワンダフルライフの英文原著(この本によって多くの人々がカンブリア爆発について知ることになったと思われます)は1989年に出版されたものなので、そんなに昔のことではありません。しかしカンブリア紀についての研究は19世紀にさかのぼります。

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Photo2カンブリア紀の生物学はバージェス頁岩からはじまりました。バージェス頁岩(けつがん)はカナダのブリティシュコロンビア州にあります( 2図)。

頁岩というのは、まるでページが重なって分厚い本のような構造の岩といういみです。この岩に多くの生物の化石があることは1886年にリチャード・マッコネルとオットー・クロツが独立に発見したとされています。

その後チャールズ・ウォルコットは20世紀の初頭に詳しい研究をおこなって、標本を約6万5千点も収集しました。しかし彼の死後、未亡人が標本を死蔵してしまったため、バージェス頁岩は忘れられたような状況になりました。研究がハーバード大学のハリー・ウィッティントンらによって本格的に再開されたのは、1960年代になってからのことです。

ウィッティントンの仕事は 1 図の本の著者である米国のグールド、モリスやカナダのグループに引き継がれ大きく発展しました。グールドはカンブリアの生物を現代の生物とはかけ離れた存在、モリスは逆に現代の生物との関連性が深いとする考え方だったので、2人はかなり仲が悪かったそうです。カンブリア紀の生物のDNAはさすがに残っていないので、結論を出すことは困難です。カンブリア紀のいろいろな生物の図鑑はウェブサイトにもあります。

http://www.geocities.co.jp/NatureLand/5218/ba-jyesu.html
http://matome.naver.jp/odai/2134225448625644801

地図の下の方の中国のチェンジャンについては、次の記事で述べる予定です。

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Photo3
どうしてカンブリア紀に非常に多彩な生物が登場したのかについては、眼を持つ捕食者から逃れるために、生物は様々な進化を遂げなければならなかったということと、そのための固い体表が化石として残りやすかったという理由が有力です。

この考え方はアンドリュー・パーカーによって発表されましたが( 3 図)、そのパーカーの本が非常な悪文で、私も読むのに大変苦労しました。このあたりのことは過去にブログに書いたことがあります(↓)。

眼の誕生とカンブリア爆発1
http://morph.way-nifty.com/grey/2007/06/post_9cc6.html

眼の誕生とカンブリア爆発2
http://morph.way-nifty.com/grey/2007/06/post_9cc6_1.html

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アンドリュー・パーカーの考え方を簡単にまとめると 下の 図4のようになります。

Photo4


カンブリア紀に食物連鎖の頂点にいたのは、おそらくアノマロカリスという節足動物です。アノマロカリスというのは「奇妙なエビ」という意味ですが、現在のエビと直接の関係はありません(同じ節足動物ですが)。多くのカンブリア紀の生物が体長数センチくらいだったのに対して、アノマロカリスは1メートルくらいもあるものがいたので、捕食動物として圧倒的に優位だったと思われます。

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Photo5


アノマロカリスの祖先に近縁と思われる生物が現在も生きていることが知られています。その生物はニューギニアなどに生息するカギムシという生物で、現代の分類学ではカギムシだけで構成される有爪(ゆうそう)動物門というグループに分類されています。 図5にみられるように、カギムシとアノマロカリスのルーツは同じで、両者の中間的な生物の化石もみつかっています。

実はカギムシはなぜか人気があって、ペットショップで1万円くらいで入手できるようです。カギムシは5億年の間形態があまり変わっていないようで、おそらく粘液でエサを動けなくして食べるという方法で5億年子孫を残したすごい生物だと思われます。あの世界中で大繁栄した三葉虫が、現在全く発見されないことを考えると驚異的です。

最近の研究によって、彼らが粘液を飛ばすメカニズムが解明されたそうです(1)。カンブリア紀については次の記事でも述べる予定です。

1) A. Concha et al. Nature Communications 6, Article number: 6292 (2015)doi:10.1038/ncomms7292.
http://www.nature.com/articles/ncomms7292

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