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2016年3月16日 (水)

やぶにらみ生物論13: カンブリア紀の生物 2

カンブリア紀の地球は現在とは大きく異なり、現在の南アメリカ・アフリカ・南極・オーストラリア・中国が連結して巨大なゴンドワナ大陸を形成し、他の陸地は東欧のバルティカ、北米(バージェス頁岩がみつかった場所を含む)のローレンシア、シベリアの3つの島大陸となっていました。バージェスはたまたま化石が残りやすい条件が整っていたわけですが、他にもそんな場所はなかったのでしょうか?

参照:http://www.geocities.co.jp/NatureLand/5218/w-kanburia.html

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それは中国雲南省の澄江(チェンジャン)にありました(図1)。上のリンクの地図をみると、カンブリア紀の澄江はゴンドワナ大陸の辺境地域の入江にあります。外洋から保護された湾の中で、生物にとっては住みやすい場所だったのでしょう。

ここは1907年にフランスの地質学者達によって発掘されて、カンブリア紀の化石が出ることは知られていましたが、その後日中戦争などの影響で調査がおくれ、本格的な研究は1980年代以降になりました。発掘・調査は主に南京地質古生物研究所と西北大学によって行われました。

その結果バージェスと澄江は数千キロは離れていたと思われますが、図2のアノマロカリスやハルキゲニアなど、バージェスで発掘されたカンブリア紀を代表する生物の化石が澄江でも発掘されています。当時の地球全体で共通の生態系があったことをうかがわせる結果です。

しかしもちろん全く同じ種ではなく、微妙に異なっていますし、すべての生物がそれぞれの地域の化石として残っているわけではないので、現在見ることができる化石だけで判断することはできません。

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私たち人類は脊索動物門というグループに所属するわけですが、ではこの脊索動物門の生物はカンブリア紀にすでに存在していたのでしょうか? バージェスではピカイアという生物(図3左)がみつかっています。ピカイアには脊椎はないと考えられており、脊索動物門のなかでも脊椎動物より原始的な頭索動物に分類されています。現在生きている頭索動物の代表はナメクジウオです(こちら1)。

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ナメクジウオは日本でもみられ、天然記念物に指定されています。ピカイアは武器も甲冑も持たない弱々しい生物のようにみえますが、脊索という硬い組織(骨ではない)を得たことで、そこに結合する左右の強力な筋肉を得て、くねくねと素早く動いて捕食を逃れたと思われます。またうまく泳ぐためには運動神経系とその機能を統合する部位も発達する必要があります。ピカイアは澄江での発掘が進むまで、最も人類に近いカンブリア紀の生物と考えられていました。

ところがピカイアより少し古い澄江の地層から素晴らしい魚類の化石(こちら2)がみつかったことから、カンブリア紀に早々と脊椎動物が出現していたことが示唆されました。この魚類はミロクンミンギアと名付けられました(図3右)。この魚類はアゴを持っていない無顎類なので硬いものは食べられません。現在生きている無顎類はヤツメウナギとヌタウナギです。

結論的にカンブリア紀には、現在存在するすべての生物のグループ(門)が出そろっていたと考えられます。生物の長い歴史の中で、どうしてこのような特殊な時代が存在したのかということは、単に眼が出現したということだけで説明するのは無理かもしれません。今後の研究が待たれるところです。

日本でも茨城県の常陸太田市や日立市にはカンブリア紀の地層がありますが、残念ながら化石の保存に適した条件でなかったせいか、バージェスや澄江のようなお宝はみつかっておりません。

(図はウィキペディアより)

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