寄る辺なき記憶の断片のために3: トライアングル
多分小学校4年生の2学期頃だったと思う。通常お昼は給食だったが、たまに給食が休みで弁当持参になる日があった。
当時の私たち一般生徒は、弁当箱にご飯とおかずを詰め込んだものを食べることになるわけだが、Bは違っていた。Bが持ってくるのは弁当箱ではなく、バスケットだった。まずバスケットからテーブルクロスを取り出して机の上に広げ、手作りの分厚い、しかもレタスやチーズがはみ出しているサンドイッチを取り出す。さらにオレンジ丸ごと1個と果物ナイフをとりだして、起用にオレンジの皮をはがして4分割する。そんな作業をしてから彼の昼食がはじまる。当時はまだマクドナルドのようなファーストフード店が日本に進出していない時代だったので、Bの昼食は結構ものめずらしかったのだ。
そんなBだから、クラスのみんなからは少し浮いていた。Bの母親は水商売をしているといううわさもあった。ただ私はそんなBに興味をひかれたのかそこそこ仲良くしていた。ある日Bが「二人でトイレのボックスに入って面白いことをしてみないか」と私に提案してきた。何をするのか好奇心はあったが、多少不安もあったので、私はCも誘って3人ではいることにした。誰もいないタイミングを見計らって、3人でボックスに入った。
Bはそこでみんなにズボンのチャックを下ろしてペニスを出そうと提案し、さっそく自分のものを引き出した。私はすぐに同調したが、Cがためらうので2人で強引にチャックを開けさせた。恥ずかしがっていたものの、Cも多少興味を感じたのか、ボックスから逃げ出しはしなかった。Bはすぐ私のペニスを握り、「お前もCのを握れよ」 と言った。言われたとおりに私はCのペニスを握り、CはBのを握った。トライアングルの完成だ。Bは私のペニスをしごき始めたので、私とCも同じ行動をはじめた。やわらかい包皮の感触がいまでも残っている。
2~3分やっているうちにベルが鳴って休憩時間が終了した。3人はあわててボックスを出た。幸いにトイレには誰もいなかった。授業が終わって、Bと帰途についた。Bはいつになく上機嫌だった。帰り道の途中にある急な坂道を息をきらしながら登り終えたとき、突然Bが 「セックスってどうやるのかなあ」 と訊いてきたので、私は 「知らない」 と答えた。その話題はそこでおしまいになり、先生やクラスメートの話をしながら帰った。その後3人になったときも、トイレでの出来事が話題になることはなかった。
今から考えてみると、Bは両親か近縁者のセックス行為を垣間見たのではないだろうか。今のように、雑誌やウェブサイトで子供がお手軽にポルノ画像をみられるような時代ではなかったので、多分そうだったのだろう。そして自分のペニスが勃起しないので心配になり、他人の手を使ってみようと試したに違いない。私もCも勃起しなかったので、自分だけに問題があるのではないという結果を見て、「子供には無理なのかもしれない」 という結論に達し、安心したのではないだろうか。私とCは彼の実験動物として使われたわけだ。
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