やぶにらみ生物論8: 系統樹とその逸脱
生物の系統樹はチャールス・ダーウィンの進化論をもとに、エルンスト・ヘッケルがはじめて考案したものであり、現在でも生物の進化を説明するために汎用されます。
ただ系統樹では説明出来ない進化のイベントが、生物の歴史の中で、少なくとも2回おこったと考えられています。
そのうちのひとつは図のbで、細菌の一種であるα-プロテオバクテリアが、ある真核生物の細胞内に住み着いてミトコンドリアが形成され、そのミトコンドリアを持つ生物が現在まで子孫を残しているわけです。真核生物(原生生物)の中でもまれにミトコンドリアを持たない生物がいるそうですが、それは二次的に喪失したからと考えられています。
そして2回目のイベントは、図のaで真核生物のなかで現在植物と呼ばれているグループの祖先が、シアノバクテリアを細胞内にとりこんで、葉緑体(クロロプラスト)を持つことになりました。
これらのとりこまれたバクテリアは、勝手に増殖するとホストが死んでしまうので、ホストが様々な手段で制御して飼い慣らしているわけです。その最たるものは、バクテリアの遺伝子の一部を奪って、ホストのDNAに組み込んでしまうというやり方です。
このような重要な生物進化の過程を系統樹は表現出来ません。強いて言えばいったん分岐した枝が再びからまりあって融合したという感じでしょうか。葉緑体と細胞内共生については鈴木雅大氏と大田修平氏がわかりやすく説明してくれています。もうすこし専門的な知識に興味がある方は参照してください↓。
http://natural-history.main.jp/Algae_review/Symbiosis/Symbiosis.html
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