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2015年12月 4日 (金)

やぶにらみ生物論2: 生物のはじまり

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私たちが住んでいる地球は、地球科学者によれば46億年前に出現し、そのできたばかりの地球に他の天体が衝突して(ジャイアントインパクト)、そのぶつかった天体は粉々になり、地球は衝突の衝撃で温度が上昇しマグマ化してしまったとされています。そのマグマは現在でも地球のほとんどの部分を占め、私たちはようやく冷えて固まった卵の殻のような表層の地殻に住んでいます。地球の周りに発生した衝突天体のかけらは次第に集積して月となったという説が有力であり、最初は極めて近くにあった月は次第に地球から離れていきました。今でも毎年月は地球から3cmづつ遠ざかっています。

マグマオーシャンとなった地球ですが、宇宙の低温によってしだいに冷やされ、43億年前には地殻が形成されたといわれています。地表が灼熱地獄だったときには地面までとどかなかった雨が降るようになり、40億年前には海洋が形成されました。大気が無い地球の地殻表面には、とても生物が生きていけないような中性子線やγ線が降り注いでいたので、それらを遮蔽する機能がある海洋が形成されたのは、生物が生まれる上で決定的に重要なことだったと言えるでしょう。すなわち水の中で生きる生物なら宇宙線の影響を受けなくてすむわけです。

生物は化学反応の集積であると言えば、それはウソではありません。しかし45億年前の地球でも、現在の地球でも、CO2(二酸化炭素) + H2(水素)→ HCOOH(ギ酸)という化学反応は全く同じであるのに対して、45億年前の地球には生物は存在しませんでした。しかし現在の地球には無数の生物が住んでいる。このことを考えれば、生物に関する科学には、化学とは異なる独自の理論や説明が必要であることがわかります。

生物学の基本は地球の歴史の中での生物の進化であり、またその進化の中で作り上げられた独特なシステムを、物理学や化学の言葉で説明することです。広い宇宙には無限のバラエティに富んだ生物が存在するでしょうが、幸か不幸か私たちがそれらに接触するチャンスはこれまで一度も無かったし、これからもわずかな可能性しかないでしょう。地球に住む生物のルーツが複数あるという証拠は、これまでのところ存在しない。すなわちすべての生物には共通の祖先があり、したがってなんらかの共通点を持っています。

生物学者は普通なんらかの生物種を選び、その限られた素材を用いて研究するので、その研究結果そのものは無数にある各論のひとつに過ぎませんが、それらは進化という1本の樹木につながる枝葉という意味ですべてつながっていて、それによって生物学という大伽藍が成立していると言えましょう。

さて、ではその共通の祖先である生命体はどのように生物で無いものから生まれてきたのでしょうか? それについては今のところすべては仮説です。しかし無機物からどのように有機物ができたかというメカニズムについてはいろいろな実験が可能です。ただ当時の地球環境がどのようなものであったかはよくわからないので、確定的なことは何も言えません。したがってここではそれらはすべてスキップして、現在の科学の力によって解明されつつある進化という一つの樹木の根についてみてみましょう。

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図にみられるように進化系統樹の根元には5つの系統の生物群があります。一昔前までは細菌・古細菌・真核生物の3つのドメインというのが、最もおおまかな生物の分類だったのですが、そう簡単にはいかないようです。系統樹からも想像出来るように、古細菌というのは細菌よりもむしろ真核生物と共通な部分が多い生物なのですが、その生活は地球創世時代の海底火山周辺の熱い海に生きていた頃の状況を、今でも引き継いでいる種が大部分です。そういう意味で古という枕詞がつくのも納得出来ます。

ロキ古細菌については私の記事もあります。
http://morph.way-nifty.com/grey/2015/10/post-d3d8.html

現在でも海底に熱水が噴出している場所はいたるところにあります(こちら)。例えば鹿児島湾には水深100メートル以下の浅い海にも熱水噴出口がみられ、その周辺に古細菌が生きています。多くの古細菌は高温に順化しているので、例えば酵素の場合、40℃のような低い温度では反応速度が遅すぎて役に立たず、生きていけません。彼らが生きているような100℃近い高温では、DNAもタンパク質も構造的に強い制限をうけるので、進化の速度が極めて遅くなってしまいます。そういうわけで、昔ながらの生き方しかできないのです。ごく一部の種が低温に順化し、そのなかから真核生物が生まれてきたと思われます。

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