モーリス・ラヴェルの「ラ・ヴァルス」ピアノ版 by 三浦友理枝
ラ・ヴァルスのオーケストラ版は都響の演奏会などで何度も聴いています。しかしピアノ独奏版は、3月24日に都美術館で三浦友理枝さんの演奏ではじめて聴きました。オケ版とピアノ版がある曲は数多いですが、ここまで両者で印象が違った経験はありませんでした。
オケ版では盛大な宮廷円舞会で大団円をむかえるわけですが、ピアノ版ではとてもそんな雰囲気ではありません。優雅なウィンナワルツがしだいに歪み、乱れ、暴走して息絶えます。三浦さんも上記の演奏会では、ピアノを破壊せんばかりに拳を振り下ろしていました。あらためて写真のCD「impression」 (エイベックス AVCL-25035) に収録されている演奏を聴いてみましたが、ライヴと同じくすさまじい演奏です。
ラヴェルは第一次世界大戦に兵士として参戦し、地獄を見たに違いありません。戦った相手はドイツ・オーストリアです。ラヴェルは戦争で体を壊し、療養している間にディアギレフから1917年にバレエ音楽の依頼を受けたそうですが、戦争が終わってから作曲にとりかかって、完成したのは1920年です。ディアギレフが最初に聴いたのは2台ピアノ版だそうですが、この病的・破滅的な音楽を、彼が企画したバレエに使うことはできないと判断したのは納得出来ます。
ラヴェルは1918年から1926年までの9年間で、完成させた曲はこの演奏時間11分と少しのラ・ヴァルスだけというのも、やはり戦争体験によって肉体と精神を破壊されたダメージが残っていたからではないでしょうか。
このユジャ・ワンの演奏も、次第に悪魔が乗り移ってくるかのようなすさまじい演奏です↓↓
https://www.youtube.com/watch?v=qOPF7qnpcVo
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