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2015年2月14日 (土)

報道の自由

フリーカメラマンの杉本氏が、外務省にパスポートを無期限で取り上げられたと報道されています。シリアへの渡航予定が明るみに出てしまったので、さすがに政府も黙ってはいられないでしょう。憲法の移転の自由も「公共の福祉に反しない限り」という条件付きです。杉本さんがシリアに行かなくても、シリアの内情がわからないというわけではありません。

テレビ局は多くの仕事をアウトソーシングしています。フリーランスから記事を買うのではなく、シリアの取材をしたければ、アラビア語がネイティブの現地人に依頼したらよかったのではないでしょうか。依頼すると何かあったときに責任が生じるので嫌なのでしょうが、それでは報道機関としての責任放棄なのでは? 

そういうわけで、今回は政府の処置は適切だったと思っていました。

ところが!!
田中龍作ジャーナルを読むと、ちょっと違った感想をもつようになりました。
http://tanakaryusaku.jp/

今回の杉本氏のシリア渡航予定は、新潟の新聞記者からの電話取材を受けるうちに、知り合いだったので話してしまった(まさか書かれるとは思っていなかった)ことで、政府の知るところとなったそうです。これは杉本さんも軽率でしたし、記事にした新聞記者もひどいと思いました。知り合いだったのに、本人に事情を詳しく聞きもしないでさっさと記事にしてしまえば、杉本さんがバッシングをうけるのは火を見るより明らかです。

しかも杉本さんは決してイスラム国の支配地域にはいるつもりはなく、取材は周辺地域に限られ、宿泊はトルコの常宿、ガイドは懇意にしている元自由シリア軍の兵士、ドライバーは数年間使っているお馴染みさんということで、安全対策はこれ以上はできないくらい十分に練られたものだったようです。テレビはこういうところをきちんと取材してから報道しないのがいけませんねえ。

今回のようなルールだと、記者やカメラマンはナイジェリアにもイエメンにもリビアにもマリにもニジェールにもアルジェリアにもアフガニスタンにもウクライナにも行けないことになりかねません。そうなると報道の自由にかなり制限がかかっている状態とも言えるのではないでしょうか。

もちろん「イスラム国支配地域に行く」と宣言して行くような人からは、パスポートを事態収拾まで無期限で取り上げてもよいと思いますが、いわば隣国に行くというような人から、「返納しないと逮捕する」とまで言ってパスポートを取り上げるのは行き過ぎだと思います。杉本さんはフリーランスの戦場カメラマンなので、パスポートがないと失業してしまいます。

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