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2015年2月12日 (木)

透過型電子顕微鏡 その3 切片作成

1次は切片作成です。包埋版から取り出した樹脂ケーキをミクロトームで薄切するのに都合の良い形に、カミソリを使って整形します。カミソリは薄くて丈夫なものがよいので、通常両刃のカミソリを手で二つに割って(簡単にパキンと割れます)片刃の状態にして使います。そのままではさび止め用のグリースがついているので、あらかじめアセトンボトルを用意しておいて、カミソリを前日からつけておき、使用前にティッシュペーパーなどで十分にグリースを落としておきます。

あるいはこのような目的に制作された専用のカミソリも市販されています。いずれにしてもカミソリは消耗品なので、切れ味が落ちたらすぐに交換します。樹脂ケーキをしっかり固定台に固定し、双眼顕微鏡をのぞきながら慎重に削っていきます。

削るのは二つの目的があります。電子顕微鏡用のミクロトームは非常に薄く切る目的で作られているので、なるべく標本にアクセスするまでの樹脂の厚みを薄くする必要があります。もう一つはミクロトームのナイフが樹脂にガツンと当たらないように=斜めに当たるように整形することです。これは例えばスキーのジャンプ競技で、着地点がフラットだったら、選手は死んでしまうかもしれません。傾斜があるから無事に着地できます。傾斜が急であればあるほど着地のショックは軽減出来ます。

うっかりこれを忘れると、ダイヤモンドナイフを損傷するかもしれません。ダイヤモンドナイフを研ぎ直すには数十万円のお金が必要です。ダイヤモンドナイフの研磨には特殊な装置が必要なので、自分で研ぐことはできません。樹脂にきれいなスロープを作ることは重要です。通常標本の周りを削って、傾斜の緩いピラミッドのような状態にします。

ピラミッド(図)の頂点からミクロトームで切っていくわけですが、まず最初はガラスナイフで切り進み、標本まで到達して適当な位置まできたら、いよいよダイヤモンドナイフを使って切削します。通常1枚の切片の厚みは80nmくらいに設定します。温度変化などの影響で、設定した通りの厚さに切れるとは限らないので、切片の色で厚みを確認します。水に落とした切片の色が銀色が適切で、灰色では薄すぎ、金色は厚すぎます。

参照 

1) http://www.cell-click.net/how-junbi.html

2) http://www.hitachi-hightech.com/jp/products/science/tech/em/sem/technique/chapter1_5.html/

ガラスナイフからダイヤモンドナイフに切り替えるタイミングは次のようなやり方で決めます。ガラスナイフで作成した切片を、金属で作成したループ(市販されています)に表面張力で水を張った状態で切片をひろってスライドグラスにのせ、200℃のホットプレートにそのスライドグラスをのせて水を蒸発させ、切片上にトリパンブルー染色液を滴下し、もう一度ホットプレートにのせて干上がる寸前くらいで離して検鏡します。電顕用切片は非常に薄いのでうまく染色することはできませんが、それでも切片のカタチやおおよその感じはわかります。

ダイヤモンドナイフの価格は刃の幅によって決まります。幅2mmの樹脂を切るとすると、幅4mmのナイフであれば、まず半分の部域ばかり使って刃がなまってきても、残りの部分が新品同様なのでそのまま使えますが、2mmのナイフだと研ぎに出すか中古品と交換しなければなりません。もちろん2個所有していれば問題ありません。4mmの新品ナイフの価格は70万円くらい、2mmは40万円くらいです。4mmのナイフを再研磨すると40万円くらいかかります。研磨済みの中古品と交換しても値段は同じくらいですが即入手出来るというのが利点です。1個しか持っていない場合は、仕事を続けるには交換するしかありません。

(つづく)

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