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2014年8月12日 (火)

自家蛍光

小保方氏がSTAP細胞を検出する際に、自家蛍光を発する死細胞をカウントしてしまったのではないかという疑惑が話題になっていましたが(最下部の参考文献)、私も20年くらい前にこの自家蛍光の問題で苦労したことがあるので興味を感じました。というかいまどきになってもまだこの問題が話題になっていることに驚きました。

あるタンパク質がどの組織や細胞にあるかを検出する際、よく使われるのはそのタンパク質を抗原として抗体を作成し、その抗体に蛍光物質を結合させて標本を浸すと、抗体(+蛍光物質)は抗原と結合しますので、抗原のある場所が蛍光を発して位置が特定できます。過剰な抗体(+蛍光物質)を洗い流すと、抗原と結合した抗体だけが残りますので、きれいに抗原の位置を特定できます(下図)。問題は蛍光物質をくっつけた抗体を結合しなくても、自分自身で蛍光を発する物質が、生体内に結構たくさんあるということです。これらの一部は、洗い流しても元の場所にとどまります(下図)。

自分自身で蛍光を発する(自家蛍光)物質としてはNADPHやフラビンが有名ですが、これらに加えてコラーゲンやエラスチンなどある種のタンパク質も蛍光を発するそうです。どうして死細胞の方が強い蛍光を発するかというのはよくわかりませんが、蛍光物質を多量にたくわえているミトコンドリアやリソソームが崩壊することや、死によって物質の酸化が進行することが影響しているのかもしれません。

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私が最初にこの問題に遭遇するのは、赤血球を材料として細胞核の放出機構を研究していたときで、これに関与する物質を蛍光抗体法で検出しようとしたのですが、驚くほど盛大な自家蛍光があって、とてもじゃないけど無理でした。生きている赤血球だとそれほどでもないのですが、遠心力でスライドグラスに押しつけて乾燥し、標本にしてしまうと、減光作用がある水がなくなるので自家蛍光が顕著になるようです。ただ古いパラフィン標本などでは血管が強烈に光ったりするので、おそらく酸化の効果もあるのではないかと考えられます。というわけで蛍光抗体法はあきらめ、研究はすべてDAB(ジアミノベンジジン)という色素を使って行いました*。下図はそれから10年くらい後の蛍光抗体法をもちいた毛髪の染色ですが、ピンクで「ここ」と書いてある部分は赤血球の自家蛍光です。検出すべきシグナルより明るく光っています (orz.....)。

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表皮にもかなり自家蛍光はあって、その自家蛍光をシグナルと見誤って論文を書いた人もいます(その後その人は学会の重鎮になりました)。当時私たちは別の実験結果を得ていたので、非常に困りました。その人は今頃になって当時の論文の誤りを認めていますが、いい気なもんです。

参考文献:

水島昇・鈴木邦律 「蛍光顕微鏡データの誤った解釈」
http://www.mbsj.jp/admins/ethics_and_edu/PNE/2_article.pdf

STAP細胞の真相
http://openblog.meblog.biz/article/21225523.html
http://openblog.meblog.biz/article/22155779.html

*Cell motility and the cytoskeleton 34, 95-107 (1996)

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