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2014年7月17日 (木)

組織標本の作製 よもやま話 その4 切片の作成

標本の切片を作成する

中学生の頃、理科の時間にカミソリで植物の標本を作成して観察しました。試料を固定する器具さえあれば、カミソリで切片をつくっておおざっぱな観察をすることができます。このための器具はアマゾンなどでも数万円以下で売っています。
こちら1

本格的な切片作成装置であるミクロトームともなれば、少なくとも30万円くらいはします。ただときどきヤフオクなどで中古品がビックリするような安価で落札されることもあるようです。大まかに2つのタイプがあり、ひとつは試料を下から上にせり出させて、水平に切っていくタイプ。もうひとつは試料を奥から手前にせり出させて、垂直に切っていくタイプです。水平型ではかんなで木材を削るような感じで手を動かして切片を作成するので、滑走型ともいいます。垂直型ではハンドルで装置を回転させ、1回転ごとに1回試料を上下に動かして切っていきます。手でハンドルを回しながら切るので、ロータリー型ともいいます。どちらが良いかは好みの問題です。

滑走型:
http://www.yamato-web.co.jp/seihin.htm
http://www.wakenyaku.co.jp/ctg/ls.php?i=227
http://www.ikedarika.co.jp/catalog/item/2516.html
http://www.ikedarika.co.jp/catalog/item/2513.html
http://www.soran.net/product/seihin_disp.php?seihinid=4257

http://www.tech-jam.com/optical-equipment/microtome/index.phtml

ロータリー型:
https://www.yakukensha.co.jp/ctg/ls.php?i=226
http://nipponopticalworks.com/micro_c.html
http://www.micro-edge.co.jp/?cat=3
http://www.tech-jam.com/optical-equipment/microtome/index.phtml

http://www.wakenyaku.co.jp/ctg/ls.php?i=226

私はロータリー派ですが、切片作成に使用する小物を写真で示します。

Photo

まず絵や習字用の筆が必要で、切片が刃にくっつかないよう持ち上げたり、切りくずを清掃したりという用途で使います。切片ができあがると水槽に移動しますが、その際はピンセットを使います。一番下の解剖針は切片を切り離したり、整形したりするのに使います。

正直プロのはしくれである私にもどのような条件が切片作成にベストであるかはわかりません。私が教えてもらったのは、氷でぬらした布を切片にあてて冷やしながら切るという方法でした。冷やした後切削した1枚目の切片は捨てて、息を切片に吐きかけて湿度を与えながら2~3枚目をとります。そしてまた冷やして、息を吐いてというくりかえしです。超音波で霧を発生する装置もあるので、それを使ってもかまわないと思います。乾燥するとどうしてだめかというと、切ったときに静電気が発生して切片がくっついたり、丸まったりしてしまいます。

私は今この方法でやっているかというと、そうではなくて普通に室温で切っています。4℃に冷やした方がきれいに切れるというのはわからないでもないのですが、失敗も多かったので、連続切片をつくるのに便利な室温でやることにしました。もちろん室温だとパラフィンがやわらかいのでしわっぽくなりやすいですが、どうせ切片は切った後39℃の水槽に落として伸展させるので(パラフィンは水に反発力をもつのできれいに水面に伸びます)、結果は同じと考えるわけです。

水槽に浮かべた切片は、下図のようなやり方で1~2分のうちにスライドグラスで引き上げます。薄切して、水槽に移して、引き上げてという作業を何度も繰り返すのがいやな場合はとりあえず室温の水に浮かべておいて、まとめて39℃水槽に移して伸展させることもできます。このために「田んぼ」という水槽に区切りの枠をいれたものも売っていますが、切片自体には文字が書けないので、早くスライドグラスにくっつけて、スライドグラスに識別記録を書きたいところです。そういうわけで、私も「田んぼ」は持っていますが、使ったことはありません。

1


引き上げたスライドグラスはホットプレート(39℃)の上に置いて乾燥させます。切片剥離防止処理を施したスライドグラスは、切片とガラスの間に水がはいりにくく、2~3時間も乾燥すれば十分です。免疫組織化学で煩雑な操作を行うときに、切片がはがれないようにという目的での処理ですが、実際には乾燥が早いというのが大きなメリットです。
http://www.matsunami-glass.co.jp/life/clinical_g/data16.html

通常のスライドグラスでも免疫組織化学を行うことは可能です。私ははがれた経験はほとんどありません。ただ切片とガラスの間に水がはいりやすいので、乾燥に時間がかかることがあるのが問題です。多少のお金がある場合は剥離防止スライドを推奨します。

乾燥させてスライドグラスにはりついている標本は、シリカゲルをいれた密閉容器で保管すれば数週間は保管できます。もちろん早く使うにこしたことはありません。

最後に当然のことながら、ひげそり用のカミソリもミクロトーム用の刃も買ったままではグリースが塗布してあるので使えません。アセトンなどでグリースを十分におとしてから使います。アセトンはマニキュアを落とすのに使うので、高純度のものが市販されています。通販でも買えます。グリースを落とすとすぐに錆がくるので、ただちに使う必要があります。

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