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2014年7月17日 (木)

組織標本の作成 よもやま話 その5 パラフィン切片の利点 

P1010040組織標本の作製について5回にわたって記事を書いてきましたが、実はここで記述したようなパラフィン切片を用いる研究法はどちらかと言えばマイナーなやり方で、メジャーな方法は凍結切片を作成する方法です。

凍結切片法ではパラフィンの代わりにOCTコンパウンドなどの凍結包埋用試薬を使います。コンパウンドは水溶性なので、アルコールやキシレンで置き換えたり、60℃でパラフィンを浸透させたりという手間がかからず、圧倒的に早く切片を用意できます。また試料に有機溶媒や熱を加えないので、細胞成分が変性するリスクが圧倒的に少なくなります。これらの理由でメジャーな方法として君臨するようになりました。
http://www.funakoshi.co.jp/contents/566

にもかかわらず、パラフィン切片を用いる利点は多数あります。

1.凍結切片はパラフィン切片より制作が難しい: まず凍結したブロックが溶けてしまっては困るので、冷凍庫のなかで切削しなければなりません。つまりミクロトームに冷凍庫がついている大がかりな装置が必要なので、これだけで数百万円の出費になります。もちろん大学や研究所には設置してあると思いますが、共通器機なので予約して使用する必要があります。また組織によって、うまく条件を設定しないとよい切片ができない場合もあります。一般にきれいな凍結組織切片をつくるには熟練を要すると思います。
http://www.tech-jam.com/items/KN3321450.phtml

2.ブロックや切片を冷凍庫(-80℃~-20℃)に保管しておく必要があります。誰かが開けたまま整理などをしているうちに溶けてしまうという危険性があります。もちろん予期せぬ停電だとアウト。一方パラフィン切片は室温でしばらくは保管出来るので便利です。パラフィンケーキは室温または冷蔵庫で半永久的に保管出来ます。

3.変性しない方が抗原抗体反応がうまくいくとは限りません。有機溶媒や加熱によって活性部位が露出して、うまく染色出来ることもあり得ます。

4.これがパラフィン切片の最大のメリットだと思いますが、凍結切片に比べてパラフィン切片の方が組織構造の保存が良く、美しい顕微鏡像が得られます。毛根は単層など微妙な組織が多数集まってできている複雑な構造体なので、パラフィン切片のメリットは大きいと言えます。

写真は発生しつつあるふたつの毛芽です。毛はここから出発します。パラフィン切片をヘマトキシリンとエオシンで染色しました。赤くみえる小さな細胞は赤血球です。

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