「マーラーの交響曲」 by 金聖響+玉木正之
神奈川フィルの常任指揮者である金聖響氏とスポーツライターの玉木正之氏の共著「マーラーの交響曲」(講談社現代新書)です。この本は2011年に出版されたそうですが、私は知らなくて買いそびれてしまいました。今頃になって読んでみたところ、なかなか面白い本でした。玉木さんのお話も面白いのですが、彼はプレトークとアフタートークにしか参加してなくて、メインボディーは金聖響氏が交響曲を1曲づつマーラー初心者向きに解説するという趣向です。これからマーラーの交響曲を聴いてみようという人にとっては最適なガイドブックだと思います。
玉木さんと同様、私がマーラーを聴きはじめたのはまだLPレコードの時代で、最初に手にしたのはエーリッヒ・ラインスドルフ指揮ボストン交響楽団の「交響曲第1番」でした。このいにしえの録音がどうなっているか気になって調べてみたところ、多分同じソースと思われるものがCD化されていました。そればかりか、なんと彼が指揮する第4楽章の映像が YouTube にアップされていました。
https://www.youtube.com/watch?v=WYP_z1_rL4M
今聴いてみても、なかなか鋭角的でわかりやすい演奏です。おかげでマーラーの音楽にその後ずっと親しむことができました。最初にバーンスタインのレコードを聴いていたら、こうはいかなかったと思います。
金さんによるとマーラーの交響曲を演目にすると、圧倒的にチケットが売れるのは「交響曲第5番」だそうです。多分第4楽章がアダージョ・カラヤンに収録されているからでしょうが、映画「ヴェニスに死す」で使われていたのが私にとっては一番印象に残っています。このくらい音楽が映画全体を支配しているような作品には出会ったことがありません。それにしてもあれだけオーケストレーションに長けていたマーラーの最も有名な曲が、弦楽合奏とハープだけで演奏される曲というのは、なんという皮肉なのでしょうか。
https://www.youtube.com/watch?v=wwyYyfP0b0w
https://www.youtube.com/watch?v=6XY3RFBQS58
https://www.youtube.com/watch?v=Fvb1ITRFXhc
https://www.youtube.com/watch?v=KeAos94a-fw
この本で変だなと思ったのは楽譜1-1で、金さんの説明だとコントラバスの第3パートだけppだということでしたが、楽譜を見ると第2バイオリンだけがppでした。はて・・・。
金聖響-神奈川フィルのマーラー
https://www.youtube.com/watch?v=rqTlwJ-avYk
最近アリアCDの店主の口車に乗ってマゼール指揮バイエルン放送交響楽団のマーラー交響曲全集を購入してしまいました。下のようなセールストークを聴くと買いたくもなるでしょう・・・松本店主は天才です。金さんの本を読んだのでマーラーを聴きたくなって、この全集から何曲か聴いてみました。
「まさにぶっ飛んだ。はったりなどという次元を超えた、ヤクザがマジでぶちきれたような演奏。とにかくどこを聴いても強烈なマゼールの体臭。吐き気がするほどにドロドロのマーラー。スピーカーの前を百鬼夜行が通り過ぎる。これはあざとく練られ、周到に張り巡らされた地獄界。テンポを極限に遅いギリギリ一歩手前のところで設定。そんな血の池かマグマかというような中をマゼールは満面の笑みを浮かべながら自在に泳ぎまわる。その様相は悪夢でしかない。4曲すべてが徹頭徹尾マゼールの醜悪な美学と感性で貫かれ、オケは終始張り詰めた緊張状態、全編協奏曲かというような過酷な精神状態を強いられる。そしてマゼールは下品きわまりないドンチャン騒ぎを煽っておきながら、その一方で細部まで偏執狂的こだわりを見せる。・・・とにかくすべてがマゼール。マーラーを踏み台にして、その屍の上でマゼールは酒を飲んで踊り狂っているのである。指揮者がマーラーを超えた演奏を初めて聴いた。」(アリアCD)
http://www.aria-cd.com/arianew/shopping.php?pg=label/greatbox
聴いてみると、たとえば交響曲第3番の第6楽章など、都響なら清楚でピュアの極致の演奏を聴かせてくれますが、マゼールは弦楽をグニュグニュ波打つように弾かせて、実に気持ち悪い演奏です。とても同じ曲とは思えません。それにしてもこのジャケットはなんのデザインもなく、ただ LORIN MAAZEL という字が並んでいるだけです。内容がそうだからでしょうか?
マゼールが遺したものすごいマーラー交響曲第5番
https://www.youtube.com/watch?v=E9D1svZ9Y0s
マエストロ・マゼールはこの7月13日にバージニアの自宅で亡くなったそうです。合掌。
http://www.huffingtonpost.jp/2014/07/13/conductor-lorin-maazel-dies_n_5582960.html
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