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2014年5月 1日 (木)

毛髪夜話4 毛の生長

Photo真核生物の細胞は、細胞周期というプロセスを経て、細胞分裂を行うことによって増殖します。「病気のバイオサイエンス by 野島博」によると「ヒトの細胞が細胞周期を1周するのに30時間はかかる。その時間配分はおよそ、G1(細胞の体積を2倍にするためタンパク質などをためこむ 6~12時間)、S(DNAを複製する 6~8時間)、G2(細胞分裂の準備 3~4時間)、M(実際に細胞がふたつなる 0.5 ~1時間)である。一般に癌細胞は細胞周期にかける時間が短く、20時間くらいで1回転するものもある。」ということになっています(カッコ内筆者註)。
http://www.biken.osaka-u.ac.jp/biken/BioScience/page20/index_20.html

しかし癌細胞ではなくても、腸上皮細胞や血液細胞などはよりはやく細胞分裂しているようですし、肝臓細胞などは1年かけてやっと1回細胞分裂するなどさまざまです。では毛髪細胞はどうでしょうか?

毛は1ヶ月にほぼ1cm伸びます。毛髪は単一の細胞からなっているのではなく、様々な種類の細胞が存在しますが、だいたいその高さ(毛が伸びる方向の長さ)は5~10μmです。毛は植物のように先端の細胞が分裂して伸びるのではなく、根元の細胞が分裂して上の細胞を押し上げるというかたちで伸長します。根元の親細胞(=幹細胞)が分裂したときに、できた娘細胞がどちらも毛の細胞になってしまうと、毛に分化した細胞は分裂出来ないので、すぐに親細胞が枯渇してしまいます。ですから2人の姉妹のうち片方はもとのまま、他方は毛の細胞となります(ただし親細胞→親細胞+親細胞と親細胞→毛細胞+毛細胞という分裂が同じ割合でおこるということがあってもよい)。

さて1ヶ月にどれだけ毛の細胞が生み出されるかは、毛が伸びる長さを細胞の長さで割れば計算できます。5μmの場合は200個、10μmの場合は100個ということになります。そうすると前者では1日に6~7個、後者でも3~4個の新しい毛髪細胞が生まれなければなりません。このためには、おそらくどんな癌細胞よりも高速に細胞周期をまわす必要があります。すなわち毛髪細胞はきわめて特殊な細胞といえるでしょう。

ではどうしてこんなに高速に増殖する細胞が癌化しないのでしょう? それは細胞内がすぐにケラチン繊維でびっしりと満たされ、細胞分裂が不可能になるうえに細胞の動きが制限されて、癌細胞の特性である無秩序な増殖や転移ができないからだと思われます。この意味で、上記の親細胞→親細胞+親細胞というかたちの細胞分裂が異常な高速度で進行するとすれば、癌化の可能性が高くなるので危険なやり方といえるでしょう。したがってこのような細胞分裂はあり得るとしてもルーティンではなく、親細胞が枯渇しそうなときの臨時的なことだと推測できます。

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