毛髪夜話2 羽毛の進化
上図は以前にもこのブログに掲載したことがあります。哺乳類の毛 (Hair) も鳥類の毛 (Feather)も表皮から発生するものではありますが、できかたには大きな違いがあります。Hair は表皮の一部が落ち込みながら円筒状の組織を作り、皮膚の深い部分で円筒の底にある細胞の塊が増殖して上に伸び、毛を形成します。一方 Feather は表皮の一部が盛り上がって突起状の組織をつくり、毛を形成します。ただどちらもケラチンというタンパク質が主成分であることにはかわりがありません。
毛と羽毛:http://morph.way-nifty.com/grey/2008/06/post_5c4f.html
皮膚から外に出ている部分の毛の構造を見ると、Hair よりも Feather の方が断然複雑な構造をもっています。Feather の進化の過程を模式的に示したのがこの図です。Feather の原型は恐竜がつくりだしました。1型は哺乳類の毛のようなシンプルなものです。2型に近いような毛は哺乳類にもみられます。しかしこちらの方向に進化した毛をもつ恐竜は鳥に進化することはできなかったと思われます。3型に見られる先端の枝分かれが重要な意味を持っており、ここから羽毛が進化し、ついには7型のような風切り羽を完成することができました。この非対称性が流体力学的に飛翔に適しているそうで、風切り羽によって恐竜は空を飛べるようになりました。現在も大繁栄している鳥類はこのように進化した恐竜の1グループです。
現在では恐竜に毛があったことは認められていますが、それが判明したのはそう古いことではありません。1995年に羽毛らしきものが化石化したシノサウロプテリクスが中国で発見され(上図)、紆余曲折を経て現在では実際に羽毛に違いないという説が有力になってきました。シノサウロプテリクスは白亜紀に生きていた、歯を持つしっぽの長い小型恐竜です(イラストは川崎悟司氏のサイトより借用)。その後そういう目で見たせいか、続々と羽毛恐竜が発見され、次に示す分類表(カッコの中に羽毛の型番号を記載、S は羽毛を持たないとされているグループ)でも多くのグループに羽毛が認められています。
この図(恐竜王国2012@幕張メッセより)の一番下に記されている真鳥類が今見られる鳥が属するグループなのですが、このグループは白亜紀前期にすでに出現していました。そしてこのグループだけが白亜紀末の大絶滅を免れました。他に注目したいのは上の方に記載してある鳥盤類(鳥とは非常に縁遠いグループ)にも毛を持つものがいたということで、このことから恐竜は鳥盤類と竜盤類が分岐する以前の非常に古い段階の祖先動物の時代から毛を持つ種がいたのではないかと想像させられます。
http://morph.way-nifty.com/grey/2012/09/post-2502.html
最後に毛のあるティラノサウルスの図が描かれているサイトを紹介します。
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