シェックマン博士と3大科学誌
今年のノーベル生理学・医学賞を受賞したランディ・シェックマン博士が、世界的に有名な3大科学誌 (Nature, Science, Cell) は商業主義的な体質で科学研究の現場をゆがめているとして、今後、3誌に論文を投稿しないとの考えを明らかにしたというニュースが業界を越えて衝撃を与えています。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131213-00000638-yom-sci
非常に潔い決断だと思います。Nature, Science, Cell 誌は科学の世界にファッションを持ち込みました。みんながその方向を向いてしまうためその分野の論文の閲覧頻度が高くなり、閲覧頻度はほとんどそのまま論文の評価となりますので、研究費を集めやすくなります。みんなが蜜に集まるハチのように集合するので研究テーマが偏ってしまいます。しかしこの3誌はある意味商業的な雑誌でもあるので、あの手この手で売れ行きを伸ばすのは企業努力とも言えます。つまり悪いのはそこに投稿しようとする研究者と、その雑誌に掲載されたということで高い評価をする政府や大学ということになるでしょう。
研究テーマが偏ると研究費利権を握っている人々にとっては好ましい状況となります。政府に重点研究ということで莫大な資金を出させて、その配分を決める権限を握っていれば、みんなひれ伏します。しかしそれ以外の分野の研究者は干上がってしまって、彼らの研究は頓挫してしまいます。政府も研究費をまんべんなく削減するという政策を実行すれば、科学技術を軽視しているというそしりを免れないので、重点分野(本当に重要かどうかはわからない)に多額の配分をして、他の分野をこっそり軒並み削減すれば、この非難を回避出来るので大歓迎です。
特に日本人や韓国人は一方向に向きやすいので、ファッション的な科学は弊害が出やすいでしょう。これを避けるには、研究者は原著論文については、極力自分が所属している学会が出版している雑誌に投稿すればよいと思います。上記の3誌は、レヴューを中心に編集すればいいのではないでしょうか。
| 固定リンク | 0
「生物学・科学(biology/science)」カテゴリの記事
- 続・生物学茶話253: 腸を構成する細胞(2024.12.01)
- 続・生物学茶話252: 腸神経(2024.11.22)
- 続・生物学茶話251: 求心性自律神経(2024.11.14)
- 続・生物学茶話250: 交感神経と副交感神経(2024.11.06)
- 自律神経の科学 鈴木郁子著(2024.10.29)
コメント