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2013年11月20日 (水)

トリアングル by 俵万智

Imga俵万智さんを初めて知ったのは「サラダ記念日」を手に取ったときで、これは熟読しました。それ以来すっかりご無沙汰しておりましたが、福島第一原発事故のあと

「子を連れて 西へ西へと逃げてゆく 愚かな母と 言うならば言え」

という歌を残して、放射能汚染を逃れて子連れで石垣島へ移住したと聞いて、ずいぶん思い切ったことをする人だなと思いました。しかもシングルマザーだというではありませんか。それで関心を持って「トリアングル」(中公文庫 2006年刊 単行本は2004年刊)を読んでみました。

恋愛小説という形はとっていますが、これはどうみても少なくとも半分以上はセルフドキュメンタリーであることを感じさせられます。どうしてシングルマザーになったのかをあれこれ勘ぐられるのを断ち切るため、ちょっとずるいやり方かも知れませんが、小説形式で「どう考えるかはあなた次第」と開き直った感じです。少なくともアクシデントではなく、計画的に出産してシングルマザーになりましたと宣言したかったのかもしれません。

実話と創作が混然と語られていると思いますが、グンゼのパンツの話はきっと友人からの借りものかな? 女子高生の時に、振られた相手に「反省文」を書いて渡したというのは、いかにも俵万智の面目躍如だと思いました。当時から自分をきっちり分析することができたのね。

この小説では、自分の心情や行動を(性行為に至るまで)、まるで天秤で測定したり、顕微鏡で覗いたりするような感じで観察し、精密に分析していますが、それを実行し表現出来る能力はすごいと思います。でもこのスタイルでは、自分以外の分析では必ず大きな不満が残るので、いわゆる普通の小説家にはなりようがない感じがします。それでいいのではないでしょうか。

小説ではありますが、歌人なので随所に和歌が登場します。心情の機微を鋭い切り口で表現しています。

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