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2013年8月 3日 (土)

淺川凌氏の本

Imgxx福島第一原発事故については、東電や学者の意見だけではなく、現場の方の意見を聞いてみたいと思っていました。淺川凌というこの本の著者は、プロフィールを見ると具体的な経歴が隠されているので、ペンネームではないでしょうか。人物が特定されることを恐れているものと思われます。原子力マフィアはかなり怖いところのようです。原発の定期点検を請け負う会社の社員で、点検作業の現場監督をやっていたようです。

現場関係者だけあって生々しいお話満載で、今となってはさもありなんと思います。この本は2011年9月出版(宝島社)なのですが、2013年8月現在でも状況は大して変わっていない、というよりむしろ悪くなっている点もあるようで、かなり参考になります。興味深いエピソードはたくさん紹介されています。たとえば、格納容器の蓋をあけるときには、ボルトにレンチを当て、それを作業員が30kgの巨大ハンマーでたたいてゆるめるというお話(30kgのリュックサックの場合、背負うという体勢になるのも一苦労。私は2kgのマスコットバットもちゃんと振れません)。制御棒の5%は手動で引き上げるとか、思わずのけぞるようなお話もありました。

彼が全体で強調しているのは、配管破断がこわいという点です。福島第一原発事故においても、1号機ではデータから見て配管が破断して冷却水が漏れたと著者は指摘しています。配管の破断というのは、特に地震などなくても老朽化によって各地の原発で頻発していたそうです。配管を取り替えるためにいちいち原発を止めていたのでは採算が合わないという電力会社の方針があって、問題だと思っていても、現場関係者にはどうしようもなかったのでしょう。

私も昔高速液体クロマトグラフィーをやっていたとき、ステンレス製のパイプだったにも関わらず、食塩入りの溶液を流していたところ、1ヶ月もたたないうちに腐食して使えなくなりました。さすがにメーカーがよりハイグレードのステンレスのものに取り替えてくれて、こちらは2年くらいはもちました。そして福島原発には海水が注入されています。もう配管はボロボロでしょう。また著者の経験によると、30年くらい放射線にさらされたコンクリートはレンガみたいに柔らかくなるそうで、これも怖い話です。こんな原発が再稼働したらどうなるのか、背筋が寒くなります。

現在の福島第一原発は汚染地下水の漏洩が大問題で大変なのですが、著者は小出助教の地下ダム説に反対の立場をとっています。原発本体は岩盤の上に建っているので、地下水の心配はなく、むしろたまった汚染水がどうなるかが問題だとしています。下記は小出さんの反論です。

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小出「そうですね。ただ東京電力の入ってる地下ダムは深さ30メートルまでやると言ってるんですね。私はもうそんなものは後でもいいからとにかくあの原子炉の周辺だけでも、5メートルでも10メートルでもいいから、バリアーを作って欲しいと私は思っています」

吉田照美「なんでそういう方向に行かないんですかね。今の小出先生のようなアイディアが、やっぱ、考える人だっているはずだと思うんですけど……」

小出「ただ、私がこういうことを言ってることに対して、えー……他の技術者の方が、なんていう方だったかな……浅川さんという方が本を出されて。小出の言ってるのは間違えてると。原子炉は岩盤の上に立ってるから仮にめり込んだって地下水なんてないから大丈夫だと、いうようなことをあのご指摘なさっている人がいるらしいんですけども。私は日本というこの国にコンクリートのような頑丈な岩盤などないと思っていますので。一度地下に出てしまえば危ないと思っている、のですね、ですからとにかくコンクリートでも何でもいいからバリアーを作って欲しいと言っているのですが。え……、私のこの判断もどこまで正しいのかがわからない、のです。それで東京電力も、まあ、最後はやはりバリアーが必要だと彼らも思っている、のでしょうけれども。それをいつの時点でやらなければいけないかというところで、多分、判断が様々あるのだろうと思います」

吉田照美「なるほどねえー」

小出「私は早いのがいいと思っています」
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結局地下ダムを造るしかないと思いますが、それはどんどん水がたまってくるという状況を回避できればの話で、ALPSが働いていないのでは、たとえ上流から流入する微汚染水を海に流しても苦しいでしょう。今でも原発に水をかけているわけですから、汚染地下水は増え続けています。あまりの濃厚汚染なので、原液をくみ上げて保管というわけにもいかないのでしょう。このままだと原発敷地に汚染地下水が湧き出す危機を払拭することはできない・・・というのが今の状況でしょう。ALPSが働きだしたとしても、タンクをつくるのが間に合わなければ大変なことになります。最悪の場合、敷地内にどんどん人が立ち入れない領域が増えてきて、全くコントロール不能になるという恐れがあるのではないでしょうか。

現在の状況:遮水壁(土を薬剤で固めてつくるらしい)は工法の制約で地下1・8メートルより深い部分しか造れない(東電発表)。すでに、観測井戸の水位が遮水壁の上端を上回っており、完成しても海への流出が止められないのではと懸念されている。このままのペースで上昇すれば3週間で水が地面にあふれ出す。

淺川さんのブログ:http://blog.goo.ne.jp/genshiryoku_2011
ツイッター:https://twitter.com/RyouAsakawa

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今頃になって突然出荷停止!!
http://www.kantei.go.jp/saigai/pdf/20130730siji_fukushima.pdf

そもそも総研
http://www.youtube.com/watch?v=4gYpai5e3O8

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