女子高校の思い出
最近学校での体罰が話題になっていますが、そういう話を聞くと昔を思い出します。私は女子高の非常勤教諭をやっていたことがあります。最初教室にはいったとたんに見た光景は忘れられません。全員が自らスカートのスソをつまんで上げたり下げたりしているのです。しめしあわせて教師の反応を見るわけです。
ほとんどの生徒は授業をまじめに受ける気持ちはなく、弁当を食べたり、コーヒーを飲んだり、漫画本を読んだりしてしています。一応注意はするのですが、まずききません。目に余る生徒を廊下に出して、終わるまで立っていろと命じても、すぐに姿が見えなくなります。どこかに遊びに行ってしまうのです。
そのうち気がついたのですが、リーダー格の生徒とそのとりまきの属性がイーヴィルなので、みんな目をつけられないようおとなしく従っている感じなのですね。日本人のありがちなライフスタイルです。2~3日経つと教頭がやってきて「君らはおぼっちゃん学校を出ていてわからんと思うが、これが日本人の平均なんだから、そこんところをよく理解するように」とアドバイスされました。新人にはかならずこう言っているのでしょう。
しばらくすると学校や生徒の内情がいろいろとわかってきました。生徒の中には男の家から通っている(親には勘当されている)者、夜はネオン街で仕事をしている者、なかには覚醒剤で退学になった者もいるというありさまでした。そんな学校なのに、生徒の服装には結構うるさくて、スカートの丈を測定するというようなこともやっていました。ほとんどの学生は進学しないので、ごく少数の大学進学希望者は隔離して別カリキュラムで授業をやっていました。
先生はベテランの先生が7~8人くらいいて、あとの大部分は2~3年目か新人の若い女の先生と非常勤の私たちです。どうしてそうなるかというと、ほとんどの若い女の先生は2~3年で退職するからです。いくら頑張っても静かで緊迫感のある授業が全くできないような状況なので、1年やれば普通の神経の人なら落ち込みます。
ただ長く勤務しているベテランの先生は教室の静粛化に成功していて、男の先生は学校の看板である部活で ”厳しい”指導をしていて、授業もその延長という感じでなので、生徒が黙るという雰囲気は理解できます。ただ一人だけ年配の女性がいて、彼女は部活とは全く関係がないのに、なぜか教室の静粛化に成功していました。だからこそ長く勤められたのでしょうが、そのテクニックの秘密は最後までわかりませんでした。
ともあれ私立学校としては、学校のフラッグシップである部活はしっかりコアの先生が管理して、あとのどうでもいいところはなるべくローコストですませるという、ある意味非常に合理的な経営に成功していました。お嬢様っぽいおとなしめの(生徒をおさえられない)女性の教諭を重点的に採用していたと思われます。生徒も大勢集めていました。近傍あるいは遠方の中学まで、先生が生徒募集のセールスにでかけるのです。
終業式が終わると、コアの先生方は皆さんタクシー2台に相乗りで、ソープランドに出かけるというのが習慣になっているようでした。「君もこないか」と声をかけられましたが、断りました。コアの先生方のうち、少なくとも二人は奥さんが元生徒だったそうで、まあそういうものなのでしょうか。
静粛化以外で困ったのは、あまりに担当する学生が多すぎたので、試験の採点だけでなく平均点・偏差値などを計算するのが大変だったことです。当時はPCやエクセルなどは学校にはなく、電卓で計算するのですが、電卓で数百回打ち込むと必ずエラーが出ます。ですから同僚の先生と同時に打ち込んで計算すると、どうしても値に違いが出て、何度繰り返しても一致しないという結果でした。これには本当に困りました。同じ内容の授業を、最高2日で12回もやったことがあり、これも結構嫌でした。結局2年で退職しましたが、進学校以外の教育現場の大変さは垣間見ることができました。
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