« オバマへのおみやげ | トップページ | カフェ・ドセで新年会 »

2013年1月10日 (木)

小麦ゲノムの塩基配列

1

小麦の原種 (from Wikipeda)

2

パン小麦 (from Wikipedia)

日本では小麦の自給率は現在16%ということで、ほとんどは輸入に依存です。日本という国家の存立を危うくする重大問題ですが、それはさておき、小麦は人類にとって最も重要な食料と言えるでしょう。2011年には世界で6億8千万トンが消費されたそうです。

小麦の原種はわれわれと同じ2倍体(染色体2本で1セット、ヒトの場合細胞ひとつにつき23セット=46本の染色体)でしたが、現在のパン小麦は6倍体です。パスタ用の小麦(デュラム種)には4倍体のものもあります。8000年くらい前に、2倍体の種と4倍体の種をヒトの手でかけあわせて、現在の6倍体のパン小麦がつくられたようです。パン小麦は21セット=42本の染色体をもっています。

リバプール大学のグループをはじめとする多くの研究者の協力で、小麦の巨大なゲノムの全貌がほぼ明らかになりました(1)。ゲノムのサイズはなんと17ギガ塩基。ヒトのゲノムサイズは3ギガ塩基ですから、ヒトの数倍あります。遺伝子の数についても、ヒトは約2万6千個であるのに対して、小麦は約9万5千個あるそうです。

植物のゲノムは巨大なものが多いですが、よく実験に用いられるシロイヌナズナという植物はわずか0.13ギガ塩基のゲノムに約2万7千個の遺伝子を収容しています。遺伝子がぎっしり詰め込まれているゲノム(DNA)は効率的かもしれませんが、遺伝子でない部分にはレトロポゾンなど、遺伝子のとりこみや移動などに関係する領域があるので、進化的には遺伝子がまばらに散らばっている方が、変化・加工が容易であるというメリットはあります。

小麦の論文の次のページには大麦ゲノムの論文が発表されました(2)。大麦はわれわれと同じ2倍体の生物です。問題はこのような研究成果をもとにして、小麦・大麦・稲などのメジャーな穀物の遺伝子改変がおこなわれ、大豆やトウモロコシなどのように除草剤・殺虫剤耐性かつ不稔で、毎年種苗を買わなければいけないなどということになれば、特許と種苗を所有する特定の企業や、それにつながる国家によって世界の農業が独占的に支配されるという由々しき事態となる恐れがあると言うことです。ウィルス抵抗性の品種を作ったりすると、たちまちそれを乗り越える強力なウィルスが出現することも目に見えています。

これらに対しては国連が中心となって徹底した規制を行わなければいけません。しかし現在の国連には、そのような世界支配をもくろむ企業や国家に懲罰を与えるような力がありません。私はもちろん遺伝子改変作物全般に批判的なのではなく、田畑を過剰な薬品で汚染するとか(3)、特定企業による世界レベルでの農業支配(4)に問題があると思うだけです。

考えてみれば農業自体がある種の自然破壊ではあるわけですが、パン小麦の起源が8000年前にさかのぼるように、これまでヒトはゆっくりと品種改良を行って、狭い地域で実験し、何千年もかけて世界に品種をひろめていきました。地球はひとつしかないので、上記のような危険性の高い遺伝子改変でない場合でも、世界を実験室として使ってはいけません。

(1) Nature vol.491, pp.705-710 (2012)

(2) Nature vol.491. pp.711-716 (2012)

(3)
http://blog.goo.ne.jp/newvegeculture/e/593d98bc169239124dc04e7a248f691e
http://www.yasudasetsuko.com/gmo/column/030524.htm
http://blog.goo.ne.jp/newvegeculture/e/28c7fbbd1104b1a4b304c92fefa25bd4
http://saibai.cocolog-nifty.com/blog/2008/01/post_43b7.html
http://ameblo.jp/masato1982/entry-11061914646.html
http://www.myspace.com/sneezingsparrow/blog/545282402

(4)
http://uskeizai.com/article/300020962.html
http://tanakaryusaku.jp/2012/03/0003893
http://blog.goo.ne.jp/yampr7/e/4739740d03d5cb5246ac1e079153fab8
http://topics.jp.msn.com/onna_blog/lohas/article.aspx?articleid=1392463
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=269283
http://fujifujinovember.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/post-c63b.html

|

« オバマへのおみやげ | トップページ | カフェ・ドセで新年会 »

生物学・科学(biology/science)」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/133582/56504175

この記事へのトラックバック一覧です: 小麦ゲノムの塩基配列:

« オバマへのおみやげ | トップページ | カフェ・ドセで新年会 »