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2012年8月21日 (火)

肉食とアクチン

243肉が好き、魚が好き、とか食べ物の好みは人それぞれですが、結局筋肉を食べるとするとアクチンとミオシンという蛋白質を食べていることに他なりません。どちらの蛋白質も20億年くらい昔にはすでにできていたと思われる蛋白質です。実は魚にしても、鳥にしても、牛・豚にしても、人にしても、筋肉の成分はほとんど同じなので、肉食すると言うことは自分と同じものを食べていると言うことを意味します。したがって肉食はアミノ酸の割合から言えば非常にバランスのよい食事と言うことになります。

ただ肉食をずっと続けていると、あまりにもバランスがよい食事のため、必要なアミノ酸を自分で合成する経路が失われ、進化的なスケールで言うと生体反応系が退化してしまうという結果になります。肉食動物ではアミノ酸の要求性が高くなっています。たとえばネコはタウリンを合成できませんし、アルギニンなどの要求性も高くなっています。

動物には必須アミノ酸というものがありますが、植物にはありません。必要なものはすべて自前で合成できるのです。そういう意味では、あえてバランスの悪い食事をするベジタリアンも、進化的に重要な意義を持っているといえます。

アクチンは約375個のアミノ酸が連結してできている蛋白質ですが、たとえば哺乳類と昆虫のように、進化的に大きく離れた生物でも骨格筋のアクチンを構成するアミノ酸は20個くらいしか違いがありません。ヒトとニワトリの骨格筋アクチンのアミノ酸配列は完全に同じです。ヒトとニワトリは2億年以上前に分岐しているので、これは驚異的な事実です。

さてこのように進化的に保存されているアクチンですが、1種類しかないかというとそうではなく、ヒトもニワトリもそれぞれ6種類のアクチンを持っています。これらは非常に似たアミノ酸配列を持つ蛋白質なのですが、端の一部(N末)が異なっています。

1.骨格筋αアクチン Asp-Glu-Asp-Glu-Thr-Thr-Ala-Leu-Val-Cys-Asp-----
2.心筋αアクチン    Asp-Asp-Glu-Glu-Thr-Thr-Ala-Leu-Val-Cys-Asp-----
3.平滑筋αアクチン Glu-Glu-Glu-Asp-Ser-Thr-Ala-Leu-Val-Cys-Asp-----
4.平滑筋γアクチン    Glu-Glu-Glu-Thr-Thr-Ala-Leu-Val-Cys-Asp-----
5.細胞質γアクチン        Glu-Glu-Glu-ILe-Ala-Ala-Leu-Val-ILe-Asp-----
6.細胞質βアクチン     Asp-Asp-Asp-ILe-Ala-Ala-Leu-Val-Val-Asp-----

Asp:アスパラギン酸、Glu:グルタミン酸、Thr:スレオニン、Ser:セリン、Ala:アラニン
Leu:ロイシン、ILe:イソロイシン、Val:バリン、Cys:システイン
アスパラギン酸とグルタミン酸はよく似た酸性アミノ酸で、N末から4つまたは3つのアミノ酸がこのどちらかというのがアクチンの特徴です。

これらは非常に似ている蛋白質ですが、それぞれ別の場所で、別の役割を担っています。
5と6は筋肉の蛋白質ではなく、すべての細胞に含まれていて、細胞骨格を形成しています。骨格と言っても骨ではなく、繊維のようなものです。細胞は単なる袋ではなく、通常中には蜘蛛の巣のように繊維が張り巡らされています。細胞膜にも繊維が多数とりついています。毛髪細胞・表皮細胞などでは、細胞の中がケラチン繊維でパンパンに埋め尽くされています。細胞質アクチンはそのような繊維を構成する蛋白質のひとつです。

これらの蛋白質は完全に分業しているのでしょうか?
それを調べるには、生物学ではそれぞれの蛋白質をコードする遺伝子(通常マウス)をつぶしてしまうという手法をとります。その結果・・・。

1.骨格筋αアクチンがない・・・胎児のうちに死亡
2.心筋αアクチンがない・・・・胎児または新生児のうちに死亡
3.平滑筋αアクチンがない・・・生存可能。血圧調節が困難。
4.平滑筋γアクチンがない・・・情報なし
5.細胞質γアクチンがない・・・一部生存可能、矮型、しだいに難聴となる
6.細胞質βアクチンがない・・・胎児のうちに死亡

ということで、概ね分業しているようですが、不完全ながらも代替しようとしている傾向は認められます。たとえば骨格筋αアクチンがない生物でも、心筋アクチン・平滑筋アクチン・細胞質アクチンなどが機能を代替しようとして、筋肉らしきものをつくるのですが、低機能なため十分には筋肉としての機能を発揮できないようです。心筋αアクチンがなくても心臓は形成され、生まれてくる個体もいます。細胞質γアクチンがなくても、かなり細胞質βアクチンが代替できるのかもしれません。

写真は自作 茶色に染まっているのが平滑筋である立毛筋です。SGは脂腺の略号。

参考文献:

LA Schildmeyer et al. FASEB J. 14, 2213-2220 (2000)
MA Jaeger et al. FASEB J. 23, 2205-2214 (2009)
BJ Perrin et al. Cytoskeleton 67, 630-634 (2010)

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コメント

アミノ酸の不思議ですね。人体の神秘。。

投稿: 広告研究@吉田 | 2012年8月26日 (日) 00:42

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