インバル-都響のブルックナー交響曲第7番@サントリーホール 狂乱のフィエスタ
インバル-東京都交響楽団のB定期@サントリーホール(2012年4月12日)。ブルックナーの交響曲第7番ホ長調は19世紀末に作曲され、あの美しいノイシュヴァンシュタイン城(http://morph.way-nifty.com/grey/2011/09/post-3647.html)を築城したバイエルン王ルートヴィッヒ2世に献呈された作品だそうです。インバル翁のレパートリーのなかでも、翁が大得意な曲でしょう。コンマスは山本さん、サブはマキロン。特任の店村さんも参加。ノヴァーク版での演奏です。
私も若い頃から朝比奈隆氏の指揮で何度も実演に接していて、荘厳で神聖な音楽だと思っていました。しかし昨夜のインバル翁と都響の演奏はまるで狂乱のフィエスタでした。第1楽章からして、巨竜がのたうち回るような激しい音楽で、テンポもかなり速かったのではないでしょうか。祝祭的な雰囲気もありました。そういえばこれはアレグロ・モデラートなんですね。
第2楽章のアダージョは30分くらいかかる長大な音楽ですが、インバル-都響の演奏は弦の美しさが満喫できて、全くその長さを感じさせない素晴らしいものでした。クライマックスでは、今まで見たことがないくらいの激しいアクションでインバル翁がオケをあおりまくります(翁の血管が切れないように祈っていました)。金管などはのせられすぎて音をはずさないようにと、却って自制して吹いているような雰囲気さえ感じました。この楽章ではワグネルチューバという珍しい楽器が大活躍しますが、演奏者も普段吹いていない楽器をあつかうのは大変なようで、この演奏で唯一の弱点だったかなあ。
第3楽章のスケルツォはむしろ一番普通に、都響らしく整然かつ生き生きと演奏されたと思います。第4楽章のフィナーレは“Bewegt, doch nicht schnell”(運動的に、あまり速くなく)と指定されているそうですが、まさしく最強の筋トレのような終楽章でした。インバル翁も跳んだり、足を踏みならしたりと猛然とオケにムチをいれまくる爆演でした。このような指揮者にきっちりついていく都響のすごさに改めて目を見張りました。誠にお疲れ様です。マイクの立ち方から見て、ライヴレコーディングをやっているようで、そのうちCDが発売されるのではないでしょうか。
最後になりましたが、前半のモーツァルトのピアノ協奏曲第8番ハ長調 (K.246) は若書きの作品で名曲とはいえないでしょうが、モーツァルトらしいフレーズ満載の作品で、ソリストの児玉桃さんが活気を吹き込んで楽しい音楽を聴かせてくれました。すべてが終了してホールが明るくなってから、最近は恒例になったスタンディングオベーションでもう一度翁を呼び出して、聴衆は皆さん熱い心を持って帰路についたのでしょう。まあ中にはこれはブルックナーじゃないと思った方もおられたとは思いますが、私的にはこれも「アリ」ですね。ブルックナー自身セクハラで女子校の校長をクビになったような人なので、これが本当のブルックナーかもしれません。翁は1936年生まれだそうで、タイトなスケジュールの中で、どこからあのようなエネルギーが生まれてくるのか、少しでもあやかりたいものです。
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