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2011年7月19日 (火)

放射線被曝によってなぜ癌になるのか

615pxdna_structure2bkey2blabelled_p私たちの体を構成するほとんどの細胞は、同じ量のDNA(左のような構造を持つ2重構鎖がからまりあったような分子)を持っています。言い換えれば、細胞を2倍に増やすときにはDNAも2倍に増やさなければいけません。DNAを増やすときに働くのがDNA複製酵素です。

DNAを増やさなければいけないのは細胞を増やすときだけではなく、DNAが損傷を受けたときにも、ダメージを受けたDNAを捨てて、新たにDNAを継ぎ足さなければなりません。この場合もDNA複製酵素が仕事をします。

DNA複製酵素は人の場合14種類前後のものがあり、他の動物でもほぼ同様で、何千万年も保存されてきた、すなわち多くの種類のDNA複製酵素の大部分が、進化の過程で失われなかった重要なものと思われます。このようにいろいろな酵素が必要なひとつの要因は、じっくりと校正しながら正確に複製するものと、精度は犠牲にしても迅速に複製するものとがあることにあります。

DNAは2重鎖ですが、片方の鎖が鋳型になって複製が行われます。その鋳型が損傷を受けている場合、通常の複製が困難で、急ぐか急がないかにかかわらず正確なコピーをつくることが不可能な場合もあります。このようなときにもいい加減に複製する酵素の出番となります。そうすると次に正常な複製が行われる場合、いい加減に作ったDNAの情報が正確にコピーされることになり、子孫の細胞すべてが異常なDNAを持つことになります。

さてDNAは普通タンパク質によって保護され、紫外線や放射線の影響を受けにくい形になっています。しかしDNAから必要な情報を取り出すときや、DNAを複製するときには必要な酵素がアクセスする必要があるので、DNAが裸になる必要があります。

裸になったDNAは紫外線や放射線のダメージを受けやすく、化学変化や鎖の切断などが頻発します。そうなると酵素がアクセスできなくなって、情報の取り出しや染色体の複製ひいては細胞分裂ができなくなるので、DNA修復システムが起動します。ここで上記の精度は犠牲にして迅速に処理するDNA複製酵素が働き、配列はいい加減だけれども断点がなく、とりあえず染色体の複製や細胞分裂などができる状態に修復されます。

こうしてできた細胞は、異常なDNAを持つことになり、場合によっては癌化することも考えられます。さらに癌化の方向に向かっている細胞は細胞分裂が盛んで、DNAが裸の確率が高いので、より異常なDNAに変化しやすいということになります。子供は大人よりDNAが活発に活動し、細胞分裂も頻繁に起きているので、DNAは紫外線や放射線による損傷を頻繁に受けやすく、異常なDNAができる確率が高くなります。

体細胞がダメージを受けて癌になった場合、傷害は1代で終わりますが、生殖細胞(つまり精子か卵子)がダメージを受けた場合、代々障害を持った家系が出現する可能性があります。

PS: そういうことなら海岸で水着で遊んでいたりしたら、たちまち紫外線による傷害で癌になってしまうじゃないかと思うかもしれませんが、皮膚の細胞は角質化してすでに死んでいる細胞が多いうえに、1~2週間くらいで垢になってはがれてしまうので、その間に癌化しなければどうということはありません。細胞分裂している細胞は角質化層の下にあって一応保護されていますし、色黒の方はメラニン色素によっても保護されています。

参考:
(1)
http://ja.wikipedia.org/wiki/DNA%E3%83%9D%E3%83%AA%E3%83%A1%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%82%BC
(2)
http://www.youtube.com/watch?v=mxV8LTDMo50

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