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2011年4月18日 (月)

放射性同位元素による海洋汚染

220pxboiled_wakame文部科学省から福島原発放射能漏洩による海洋汚染のシミュレーションが発表されています。4月15日のところをみると、福島県沖だけではなく宮城県や茨城県沖にもかなりの汚染がみられます。銚子漁協が茨城の水産物を拒否したことで批判されましたが、これをみれば当然の措置だったとことがわかります。だいたい福島・茨城方面から津波で壊れた家や家具の破片・汚物(行方不明の1万体の遺体はどこに行ったのか)が流れてくるような状況で、どうして茨城の魚をひきうけることができるのでしょう。一方岩手の船や水産物を受け入れているというのは、汚染地図からみても妥当な判断なのでしょう。
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/04/12/1304939_0412.pdf

Nature という英国の雑誌は、おそらく科学の領域では最も権威があり、多くの科学者が読んでいる雑誌だと思いますが、4月14日号をみると多くのページを福島原発事故に割いています。例えば「Radiation release will hit marine life」pp145-146 では海洋汚染について、直ちに海洋生物に危害が及ぶことはないが、半減期の長い放射性同位元素が残留し、魚類や海獣に生物濃縮されることによって、それらの死亡率が高まることが予想されると記しています。この記事の中には福島原発近傍の海洋汚染が、ヨード131とセシウム137についてわかりやすいグラフで表示されています(最も汚染が激しかった3月31日のデータだけがないのはなせなのでしょう・・・ここだけ公表されていないというのは不気味です)。

この記事ではさらに、海洋に50種類以上の放射性同位元素が放出されたと記してあります。空中への放出は揮発性であるかどうかというのがポイントになるらしいですが、海洋へはそんなことは関係なく、水溶性のものであれば炉心にあったものは、ストロンチウムやプルトニウムの放射性同位元素のようなきわめて危険なものも含めてすべて出てくるので、ある意味より深刻ともいえます。

コロラド大学のウィッカー博士は、海水・沈殿物からはじまって生態系のあらゆるレベルの多くの生物について調査することが有意義であると述べています。一方シェルブールIRNSのフィエヴェ博士は、たとえばワカメ(写真 from Wikipedia)のようにヨードを1万倍も濃縮するような生物について詳しく調査するというやり方もあると述べています。ただデータを解釈する際に、津波によって発生した(放射能とは関係ない重油・汚泥などによる)海洋のよごれの影響が問題となって、かなり結論を出すは難しくなると予想されています。

すでにテレビなどでも明らかになっていますが、日本の原子力研究者の多くは事故の影響をなんとか小さく見積もろうとする見苦しい努力ばかりやっているので、全く信用できません。なんとか安心したいとか、風評被害を止めようという感情から、そのような怪しい連中を持ち上げようとするマスコミも問題です。海外の科学雑誌から正しい情報を得るのが得策でしょう。新聞・雑誌と違って、科学雑誌はウソは書きません(人間のやることなので、まれにウソの論文が掲載されることはあります。あとでスキャンダルになって取り下げられたこともありました)。

海草や貝類などについてはその付近のサンプルを採集して測定すれば安全かどうかわかりますが、広い海域を回遊する魚類などの場合、たまたま福島沿岸の猛烈に汚染されている海を泳いだという個体もいる可能性がありますし、汚染の生物濃縮は断固として存在するので、単にわずかなサンプル調査でシロだったから大丈夫というのは甘いと思います。長期にわたる詳細な科学的調査が必要です。

”Radiation release will hit marine life” の記事はウェブに公開されているので無料で読めます↓。
http://www.nature.com/news/2011/110413/full/472145a.html

そのほかにも無料で読める記事はたくさんあるので、英語が読める人はチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
http://www.nature.com/nature/current_issue.html

最近桜井よしこ氏などをはじめとして、日本人は優秀・有能だというプロパガンダをやろうとしている人々がいますが、これはダメです。福島原発関連設備を設計した人、安全だと吹聴した人、危険だという科学者を弾圧した人、大事故の後も小さな事故にすぎないと強弁していた人、原発は真水で洗えばまた使えますと言っていた大学の先生、東電、保安院、経済産業省、自民党、民主党、経団連、原子力研究者、東電からお金をもらっててなずけられていたすべての人々、電力会社を民営化したため浜岡原発を廃止できない政府、マスコミ、みんな大バカだったということが証明された今回は、日本人がいかに愚かであったかということを反省するまたとないチャンスではないでしょうか?

註:ワカメは緑色なのに brown seaweed というのは矛盾しているようですが、もともと褐色だったのを、採集した後すぐボイルして緑色になるためです。

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コメント

 こんばんは、ご意見に全く同感です。

 先日の地方選挙にての投票率ものきなみ50%以下だったとかで、この期に及んでこの国は一体どうなってんだと嘆いておりました。

 真実を見つめ、そして伝えようとするmonchanさんのような方々の存在に救われる思いがいたします。
 感謝です。

投稿: カキ | 2011年4月19日 (火) 22:43

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