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2010年11月25日 (木)

シロアリという生き方

399pxcoptotermes_formosanus_shira_2働き蜂というのは本当に気の毒な存在です。若い頃はお部屋の掃除にあけくれ、大人になると蜜をせっせと巣に運ぶ毎日で、週末も日曜日もなく、愛も知らず1ヶ月くらいで生涯を終えます。一方女王蜂は卵を産むだけの毎日で、寿命も1年~数年あるそうです。

ただすべての点において女王がすぐれた能力を持っているわけではなく、女王は視覚や嗅覚は劣り、刺し針はもっていませんし、花粉バスケットもありません。またダンスで餌の場所を教えたりもできません。

このようにまるで別の生物のような違いがあるにもかかわらず、単為生殖で生まれた場合DNA=遺伝子は全く同じなのです。どうしてこのような違いが生まれるのかについての有力な説明は、DNAのメチル化に相違があるというものです。これによってRNAの加工に差が生じるという説が提唱されました(1)。

1)http://www.plosbiology.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pbio.1000532

アリも蜂と同様な生態ですが、ではシロアリはどうなのでしょう? 私は中学生になってその手のクラブに所属して、はじめて部室にいくと、早速先輩に「お前たちは山に行ってシロアリを採集してこい」と命じられました。山にシロアリがいるのかといぶかっていると、「朽ち木の根元をさがせ」というアドバイス。ともかく新入生数人で近くの山にはいって探しました。運良く巣がみつかり採集したのはいいのですが、ひとりが女王蟻を探そうと言って巣を壊し始めました。それで女王蟻をみつけたのですが、そのおぞましい姿態には、虫には昆虫採集でなれていた私も吐きそうになりました。体長2cm近い、ブクブク太ったシロアリは気分のよいものではありません。

あとでわかったのですが、家を破壊するのはイエシロアリで、山にいるのはヤマトシロアリという種類です。これらの日本本土でみられるシロアリは下等なシロアリで、腸内にセルロースを分解するバクテリアを共生させていて、それらの助けで木を分解して栄養にしています。高等なシロアリのように、巣でキノコを培養して餌にするという芸当もできません。先輩がシロアリを捕ってこいと命じたのは、腸内のバクテリアを顕微鏡で見るのが目的だったのです。そのバクテリアをシャーレで飼ってみようという試みは当然失敗しました。現在でも多分できないと思います。

実はシロアリは同じ社会性昆虫でも、アリや蜂とは全く違う系統の生物で、ゴキブリが進化したものです。分類学的にはシロアリはゴキブリ目、アリと蜂はハチ目です。アリや蜂と違って腹と胸の間がくびれていないズンドウの体型です。不完全変態のライフサイクルで、さなぎを経由せず大人になるところもアリや蜂と大きく異なります。シロアリでは多くの場合王と女王がペアで生殖するのも大きな違いです。

考えてみればシロアリは死んだ植物を餌にして生きる非常に平和的な生物で、毒針で刺したりしませんし、集団で生き物を襲ったりしません。これが人間の敵になったのは、たまたま人間が死んだ植物を使ってねぐらを作ったからにすぎません。

参照:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%AD%E3%82%A2%E3%83%AA

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